進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第230話 白騎士と紅き巨人と その3

 

第230話 白騎士と紅き巨人と その3

 

エクサランスから放たれる光によってアルフィミィが展開している結界が無力化され、やっとギリアム達は出撃する事が出来た。

 

「各員に告げる。エクサランスは長くは持たない、キョウスケがヴァイスリッターに接近出来るように支援班、アインストを迎撃する迎撃班、ヒリュウの護衛の3つに分ける。バン大佐はエクサランスの防衛をお願いします」

 

出撃と同時に全員の機体に響いたギリアムの指示に誰も反論しなかった。マオ社の前で光を放っているエクサランスの機体の各部は火花を散らし、カメラアイも点滅を繰り返している。その姿を見ればエクサランス……いや、ラウルがかなりの無茶をしているのは目に見えていた。悠長に戦っている時間はなく、メンバーをわけ速攻を仕掛ける。そうでなければエクサランスが限界を迎えるのは誰の目から見ても明らかだった。

 

『リョウト、リオ、それとラミアとエキドナは俺とギリアムに続け、イルムとカチーナはマオ社とヒリュウを守れ、ラッセル、タスク、アイビス、スレイ、リンはキョウスケの支援、マサキとリューネは臨機応変にヒリュウ、エクサランスの支援を行え。時間が無い、各員速攻を心掛けろッ! 戦況開始ッ!!』

 

『『『了解ッ!』』』

 

エクサランスの限界だけではなく、アインストに寄生、あるいは操られているエクセレンの限界も間違いなく近い、必要最低限の打ち合わせだけを済ませギリアム達は弾かれたように動き出す。

 

「アインストが相手か、慣らし相手に申し分ないな」

 

『悠長に慣らしをしている時間はないぞ、ギリアム』

 

カイの言葉にギリアムは分かっていると返事を返し、操縦桿とは異なるレバーを下にひき下ろした。ゲシュペンスト・MK-Ⅳ XNユニットのバイザー型のカメラアイから光が消え、背部のバックパックが補助アームによって可変を開始し、膝関節が太腿に収納され、爪先同士がくっつくとバックパックが上半身を覆い隠し、両腕の装甲が変形し翼が展開される。

 

「悪いが時間が無い、一気に決めさせてもらうッ!!」

 

凄まじい轟音と共に巡航形態へ変形したXNユニットはアインストの密集地帯を強引に突破し、アインストの後ろを取ると一瞬でPT形態へ変形する。

 

『速い……ッ! なんて加速力だッ』

 

『加速力だけじゃない、変形速度も恐ろしいほどに早い』

 

カイのゲシュペンスト・MK-Ⅳ XXユニットは機体各所にアルトアイゼン・リーゼと同様に変形機構と装甲内部にスラスターが内蔵されており、クロスレンジでの運動性と機動力の向上、そして打撃の速度を爆発的に加速させ百鬼獣に負けない馬力と攻撃力の取得、更にゲシュペンスト・リバイブ(S)に装備されていた武装メガバスターキャノンを改良したメガバスターキャノン改、ニュートロンビームの内蔵と白兵戦に特化しつつもオールレンジ対応の武装を数多く搭載している。それに対し、XNユニットはほぼ一瞬と言える可変機構を有し、突破力と防御力に重点をおいており、XXユニットと異なり新製作の武装は搭載されていないが、プラズマボムスの膨大なエネルギーがあれば通常のPTの兵装をXNユニットのサイズまで拡張し、ゲシュペンスト・リバイブ(S)はギリアムの機体なので搭載されていたメガバスターキャノンも改造して搭載しているので、火力はPTベースの改造機とは想えないほどに高い物に仕上がっている。難点があるとすればかなり操縦の癖が強い事にあるが、教導隊であるギリアムとカイにとっては誤差の範囲に過ぎない。

 

「行け、スラッシュリッパーッ!!」

 

アインストの背後を取ったゲシュペンスト・MK-Ⅳ XNユニットの背部から無数のスラッシュリッパーが射出され、漆黒の閃光が次々にアインストを両断する。

 

【……】

 

【……】

 

だがその程度ではアインストは死なない、両断された箇所から伸びた触手が上半身と下半身を繋げて再生を始めるが……。

 

「遅いッ!!」

 

その再生が完全に終わる前にゲシュペンスト・MK-Ⅳ XNユニットが腰にマウントしていたメガビームライフルを抜き放ち、再生を始めているアインストのコアを的確に討ち抜き、アインストを次々と消滅させる。

 

『ステークセット。ぶち抜けッ!!』

 

【!?!?】

 

カイの咆哮と共にゲシュペンスト・MK-Ⅳ XXユニットが急加速し、メガライトニングステークの一撃がアインスト・グルンガストの胸部装甲ごとコアを貫き一撃で消滅させる。

 

『行ける。これなら百鬼獣にも遅れは取ら……「カイ、油断が過ぎるぞ」……ふ、年甲斐も無くはしゃいでしまったな』

 

月面から飛び出したアインストが背後からゲシュペンスト・MK-Ⅳ XXに組み付こうとした瞬間に、振り返らずにメガビームライフルの引き金を引いたゲシュペンスト・MK-Ⅳ XNユニットによってアインストは弾かれ、ゲシュペンスト・MK-Ⅳ XXの脚部の装甲が変形し現れたビームエッジを展開したまま放たれた回し蹴りでアインストは袈裟切りに両断され断末魔の悲鳴を上げながら消滅する。

 

『これがカイ少佐とギリアム少佐の操縦技術を100%発揮できる、最新のゲシュペンストの性能……ッ』

 

『桁違いね……タイラントより強いんじゃないの……?』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイラントのコックピットでリョウトとリオが唖然とする。カイとギリアムの操縦技術が余りにも高すぎてゲシュペンスト・リバイブでさえも追従出来ず、百鬼獣に遅れを取っていた。だがゲシュペンスト・MK-Ⅳ、そしてXX、XNユニットによって、カイとギリアムは自身の能力を100%発揮出来る相棒を手に入れたのだ。

 

【シャアッ!!】

 

『リオ、行くよッ!』

 

『ええ! 行きましょうリョウト君ッ!!』

 

飛びかかって来たアインスト・ゲシュペンストの突き出すジェットマグナムのように放電を繰り返す拳をヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイラントは左の掌で逸らし、バランスを崩したアインスト・ゲシュペンストのむき出しになっているコアに燃え盛る右拳を叩きこむ。打撃と熱によってコアを砕かれ、のた打ち回りながら消滅するアインスト・ゲシュペンストの頭部をヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイラントは踵で踏み潰し、フォトンライフル・Hでクレーターから姿を見せるクノッヘン達を次々と撃ち抜いた。

 

『もう適応されて……ッ!』

 

最初は一撃で倒す事が出来ていたアインスト・クノッヘンは5体の仲間の犠牲を引き換えに、熱に耐性を持ったアインスト・クノッヘンへと新生した。

 

『十分だ! エキドナッ!!』

 

『分かっている』

 

完全な熱耐性ではなく、僅かに生態装甲が融け、コアが見えていれば十分だとラミアが叫び、ヴァイサーガが五大剣を構えアインスト・クノッヘンへと肉薄し、その後をアンジュルグのファントムアローを装備したアンジュルグ・ノワールが放つファントムアローが追従する。

 

『はッ!!』

 

【ギッ!?】

 

【ギギャァッ!?】

 

ファントムアローが突き刺さり、亀裂の入ったコアにヴァイサーガの振るう五大剣が叩きつけられ、コアを両断されたアインスト・クノッヘンは呻き声と共に消滅する。

 

『究極……ゲシュペンスト……キィィイイックッ!!!』

 

更に月面を砕きながら放たれたゲシュペンスト・MK-Ⅳ XXユニットのゲシュペンストキックがアインストの群れを一掃する。

 

【……】

 

【……】

 

だが転移反応と共に再び無数のアインストが出現し始める。アインスト・クノッヘン、グリート、ゲミュートに続き、アインスト・ゲシュペンスト、アインスト・グルンガスト、アインスト・アイゼン……。

 

【……】

 

『そんな、もう真似されてる……ッ』

 

『嘘でしょ……』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイラントを模したであろうアインスト・タイラント……。

 

『……猿真似はアインストの十八番だが……』

 

『ここまで早いのは異常だぞ』

 

完全に変異出来ていないが、ゲミュートが変異している途中であろうアインスト・ヴァイサーガ、アインスト・アンジュルグと少数ながら白銀の生態装甲を持つ上位個体のアインストが姿を見せ始める……異常な適応速度の速さ、そしてゲシュペンストやグルンガストを模倣する白銀のアインスト……それが意味する事はただ1つ。

 

「各員に告げるッ! 真打は俺とカイで受け持つッ!」

 

『俺達の支援はいらんッ! ヒリュウ、ラウル、キョウスケの支援を徹底しろッ!』

 

ギリアムとカイの怒号の直後、凄まじい熱線がゲシュペンスト・MK-Ⅳ XX、XNユニットに向かって放たれ、2機の姿が消える。

 

『おっさんッ!? それより今のどっから来た!?』

 

『熱源も転移反応も無かったよ!?』

 

サイバスターとヴァルシオーネからマサキとリューネの驚愕の声と共に、マオ社の正面に2機のアインストが姿を見せる。

 

【……】

 

黒と白銀の装甲を持つゲシュペンスト・タイプSを模倣したアインスト・ゲシュペンストS、そして紫と金の装甲を持つR-SWORDを模倣したアインスト・R-SWORDがバイザー型のカメラアイを光らせ、正面突破せんと突撃する。

 

『甘いわッ! この程度で俺を倒せると思うなよッ!!』

 

「その通りだ、アインストッ!!」

 

だがその突撃はゲシュペンスト・MK-Ⅳ XX、XNユニットによって防がれ、2体のアインストは威嚇するような唸り声を上げながら戦闘態勢に入り、カイとギリアムのまたそんな2体をいかせまいとマオ社、ヒリュウ改、そしてエクサランスの前に立ち、アインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDの前へ立ち塞がるのだった……。

 

 

 

エクサランスの重要性をビアンから聞いていたバンはアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDが出現しても、エクサランスの前を動く事は無かった。

 

(やはり総帥の言う通りだった)

 

時流エンジンをアインスト……いやアインストだけではなく、インベーダーも求めているというのが今回の事で立証された。今まで姿を見せなかったアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDに加え、小数だがインベーダーが出現した事がその証明だった。

 

「ラウル・グレーデン。まだ機体は持つか?」

 

『あ、ああ……まだなんとか……でもこれ以上時間が経つと出力が落ちると思う』

 

エクサランスの出力が低下すれば今もまだ月面の半分を覆っている念動フィールドの中和が出来ず、再び機体が機能停止に陥る事になる。

 

「アイビス、スレイ。ゲッター線放射装置を今から指定するポイントへ打ち込め」

 

『ば、バン大佐!? それではインベーダーを呼び寄せる事になりますよッ!?』

 

ネオジャガー号のジャレッドがバンへと通信を繋げ、ゲッター線照射装置を使用する危険性を叫ぶが、バンはその言葉を鼻で笑った。

 

「それくらい分かっている。だがゲッター線がアインストの弱点である事も忘れるな、悔しいが……アインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDを倒すには現状の戦力では不可能だ、いやもっと言えば時間が無い」

 

カイとギリアムが奮闘しているが、アインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDにダメージを与える事は出来ているが倒すには火力が圧倒的に不足している。時間制限がある今再生能力を持つアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDと戦うのは寄生されるリスクを高めるだけだ。

 

『だけどバン大佐、インベーダーが来ても寄生されるリスクを高めるだけなんじゃ?』

 

「リューネ嬢。アインストに我々の戦闘技術を模倣され、より脅威となるアインストが出現するよりも、獣同然に暴れまわるインベーダーの方が目がある」

 

再生能力、適応力に加えての戦闘技術のコピーがアインストの恐ろしさなのだとバンは語る。パイロットしては最高峰と言えるカイとギリアムとアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDは「互角」に戦っているのだ。戦う中で技術は洗練され、その戦闘能力を高めている。

 

「分かったら照射装置を打ち込め! これ以上学習させるなッ!!」

 

【キシャアアッ!!】

 

エクサランスを狙って突撃してきたアインスト・ジガンスクードの振るうアンカーナックルを回避させながら、バンはアイビスとスレイに向かって叫んだ。カイとギリアムが抜け、代わりにカチーナ、タスクが前に出て戦線を維持していたが、それすらも突破してきた。それを見てスレイとアイビスは、マオ社の前にゲッター線照射装置を打ち込んだ。

 

【!?】

 

【!!!???】

 

ゲッター線が照射されクノッヘンやグリート等の下位アインストは目に見えて弱体化し、グルンガストやヴァイサーガを模倣したアインストも動きが鈍くなる。

 

『……うっ』

 

『あ……ああ……あ』

 

アルフィミィとエクセレンの苦しそうな声が響き、エクサランスが押さえ込んでいる念動フィールドに亀裂が走った。

 

『よっしッ! 後はインベーダーが来る前……に?』

 

インベーダーが来る前にとタスクが言おうとするとヒリュウ改とマオ社から警報が鳴り響いた。

 

【インベーダーと思わしき熱源多数ッ! 3分で月面周辺に現れますッ! 各員は警戒を強めてくださいッ!】

 

『てめえ! タスク余計な事を言いやがってッ!』

 

『俺のせいじゃないっすよッ!?』

 

ユンからのインベーダー接近中という連絡を受けてカチーナがタスクを怒鳴りつけるが、これはタスクが悪いわけではなく純粋に運が悪かっただけだ。

 

『キョウスケ聞こえてたか! 時間の猶予は後3分だ! 3分で決めろッ!!』

 

『了解ッ!!』

 

最早時間の猶予はないとアルトアイゼン・リーゼが加速し、ペルゼイン・リヒカイトとラインヴァイスリッターへと突撃する。

 

『マサキはキョウスケの進路を作れッ! 俺達はヒリュウに向かってくるアインストを迎撃するぞッ!』

 

サイバスターから放たれた光がアインスト達を弾き飛ばし、その間を潜り抜けペルゼイン・リヒカイトとの距離を詰めるキョウスケ。エクセレンを取り戻す戦いはアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDの出現によって目まぐるしく流れが変わり始めていた。

 

【……静寂なる……世界の……為にぃいいい】

 

だがその戦いの中で、永い眠りによって傷を癒していた恐るべき者が、目覚めようとしていた……。

 

 

 

ヒリュウ改のメインモニターに映る戦況を見つめながら、レフィーナは無意識に親指の爪を噛んでいた。悪癖と言うのはレフィーナも理解している……だがそれでも、親指の爪を噛む癖はどうしても治せなかった。

 

「艦長。戦況はとても不味いですな」

 

ショーンの言葉にレフィーナは親指を噛んでいた事に気付き、小さく息を吐いた。

 

「いえ、想定通りです」

 

「ほう? この状況がですかな?」

 

「あ、いえ、厳密に言えば少し違います。ですが武蔵さん達がいなければ強襲を受ける可能性は十分に考えていました」

 

最大戦力であるゲッターD2と武蔵がいなければ襲撃を受ける可能性は十分にあった。それを把握した上でレフィーナは武蔵、ラドラ、コウキの3人をアースクレイドルの攻略戦に回したのだ。

 

「これからを考えればいつまでも武蔵さん達を主軸にした作戦を立てる訳には行きません。アインスト、インベーダー、そして百鬼帝国……多面からの作戦実行が考えられる以上、私達だけで戦う術を確立させなければなりません」

 

その為のゲシュペンスト・MK-Ⅳであり、グルンガスト改であり、アルトアイゼン・リーゼなのだ。確かにアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDは想定外の強敵ではあるが、これからを考えれば自分達だけで切り抜けなければならない敵だ。

 

「なるほど、残るといっていたコウキ主任まで降下させたのはそういう考えでしたか」

 

「無謀と言いますか? 副長」

 

「いえ、私が艦長でも同じ選択をしたでしょう。余りにも武蔵達は強すぎる、無意識に彼らを主軸にした作戦を考えてしまいますからな」

 

「ええ、ですが、それでは駄目なのです」

 

それではオペレーションSRWの二の舞なのだ。確かに敵は強い、有効打を与えれる武器も少ない。だがそれでもレフィーナは、今ある戦力でアインストとインベーダーを退けなければならなかった。

 

「ゲッター合金弾を主砲と副砲へ装填するように整備班へ通達してください」

 

「り、了解。ただちに連絡をいれます」

 

「それに加えてゲッター線照射装置を、それとインベーダーが向かってくる方角の熱源感知をもう1度行なってください」

 

矢継ぎ早に指示を出し、レフィーナは再び親指の爪を噛み締める。

 

(考えろ、考えるのです、レフィーナ・エンフィールド)

 

才女と言われる事もあるが、レフィーナは自分が才能があるなんて夢にも思っていない。だからこそ常に最悪を想定し、何故を考える。

 

(インベーダーの出現が余りにも早すぎる、それに今まで沈黙していたアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORDの出現……アルフィミィの言葉……)

 

何がどうなっているのか、自分達が何をするべきなのか、それを幾つも考え、対策を打ちそれによって齎される可能性を何通りもシュミレートする。

 

(ゲッター合金弾の温存……これは間違いじゃなかった)

 

ゲッター合金弾に内包されているゲッター線の濃度は高い物ではない、万が一外した場合アインスト・インベーダーに取り込まれて進化を促す事になれば目も当てられない。下位アインスト相手に使わない判断を下したのは間違いではない。ではゲッター線照射装置の追加はどうだ?

 

(……アインストの生態装甲を弱体化させることを考えれば間違いじゃない、だけど長期戦になれば……)

 

長期戦になりゲッター線に耐性を持たれれば再び進化を促す事になる……現状攻勢に出れているので追加射出を決定したが、状況次第では自分達で破壊する必要も出てくる。

 

(インベーダーの出現速度の速さ……これが1番のイレギュラー……)

 

ゲッター線照射装置を使ったとしてもインベーダーの出現までが早すぎる……その理由を考え、レフィーナはある答えを出した。

 

「副長」

 

「なんでしょうかな?」

 

「アギーハを独房から解放してください」

 

「……その意図は?」

 

メキボスとシカログがホワイトスターへ向かい、人質として残したアギーハをこのタイミングで解放する。それは戦力として運用するつもりであるとショーンは即座に理解した。確かにアギーハは大人しく独房に収容されていたし、レフィーナ達にも協力的だった。だがそれでもインスペクターの幹部であり、このタイミングでの解放はありえないというのがショーンの考えだった。

 

「インベーダーの出現が余りにも早い。恐らくホワイトスターからメキボス達が逃走して来ていて、それを追ってインベーダーがこちらに向かって来ていると私は考えます。メキボス達の持っている情報は稀少ですが、こちらから戦力を回すつもりはありませんし、助けるつもりもないです。ですがアギーハなら問題ないでしょう」

 

「……了解です。ではそのように、機体はどうしますか?」

 

「ヴァイスリッター・アーベントを回して下さい。誰に回すか決めてないので初期状態ですから」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲ等ではセッティングに時間が掛かる。フォーマットを弄っていないアーベントなら即座に出撃させられる状態にある。

 

「了解です、ですが操縦が出来ますかな?」

 

「移動するくらいは出来るでしょう、牽引用の装備を回して下さい。それで十分です、後はアギーハ次第です」

 

残酷な決断ではあるがこれがベストであるとレフィーナは考えていた。インベーダーに追われているメキボス達に戦力を回すだけの余裕は無い、いや、仮に戦力を回す余裕があってもレフィーナは支援を出す事はしなかっただろう。

 

(インベーダーに追われてる段階で状況は分かりましたから)

 

インベーダーに追われている。それ即ちインスペクター勢力はインベーダーによって壊滅したと見て間違いない、ここまで来るのならば保護するくらいの器量はあるが、地球圏に混乱を撒き散らしたインスペクターを進んで助ける意思はレフィーナには無かった。

 

「直援を減らしても構いません! キョウスケ中尉がエクセレン少尉に取り付けるように支援を行ってくださいッ! インベーダーが月に来るまで時間がありません! 急いでッ!」

 

インスペクターを救うよりも今は仲間を取り戻すのが最優先であり、インベーダーが出現する前にエクセレンをなんとしても救出するのだとレフィーナは指示を飛ばし、この場をどう切り抜けるのか、全員無事でこの戦いを終わらせるにはどうすればいいのかとその頭をフルに回転させ、矢継ぎ早に指示を出し続けるのだった……。

 

 

 

 

ステルスシェードを展開している百鬼帝国の戦艦のブリッジに、興奮した声が響いた。

 

「うおッ!! あのおっさんもついに新型持ち出したかッ!! 良いね良いねッ!」

 

「イルムガルドも新型を手にした、こうでなければな」

 

自らの敵と定めたカイとイルムが新型機を手にしている事にヤイバと闘龍鬼は好戦的な笑みを浮かべ、溢れ出る闘志を押さえ込めないでいた。

 

「少しは落ち着きなさいよ、それよりも本当に大丈夫なのかしら? 龍玄」

 

「大帝と破壊魔共は協力関係だ。問題はなかろう」

 

インベーダーに制圧されているであろうネビーイームに向かい、シャドウミラーと合流せよと言う命令を受けたヤイバ達はその命令通りに宇宙へと上がっていたが、どうしても不安を払拭し切れなかった。

 

「それもあるが、俺はヴィンデルと合流しろという事は納得していない」

 

「俺もだ。あいつはよお、戦いに割り込んできやがって本当にむかつくぜ、しかも龍王鬼様と虎王鬼様は地球に残ってんだろ? あーあー武蔵と龍王鬼様の戦い見たかったぜ、ちくしょうめッ!」

 

地球へ降下するゲッターD2達の行き先は間違いなくアースクレイドルであり、そこで龍虎皇鬼とゲッターD2……いや、武蔵と龍王鬼の戦いがあるのに、自分たちは宇宙にいるという事にヤイバは不満を口にする。

 

「それならば……月へ行くか? ヤイバ」

 

「え? 良いのかよ!?」

 

龍玄の言葉にヤイバが目を輝かせ、座っていた椅子から跳ね起きる。

 

「ちょっと」

 

「どうせ案内役のコーウェンとスティンガーとやらも来ておらん、このまま騒がれるよりもずっとましだ。風蘭、お前はどうだ?」

 

「まぁ……私もそう思うけど」

 

闘志を垂れ流しにしている闘龍鬼に騒いでいるヤイバには風蘭もほとほと困り果てていた。だからこそ龍玄の意見に同意した。

 

「よっしゃあ、行こうぜ闘龍鬼ッ!」

 

「ああ、あいつと刃を交えるのが楽しみだ」

 

「待て待て、誰が人間と戦えと言った? お前達の敵はアインストとインベーダーだ」

 

カイとイルムと戦う気満々だったヤイバ達は振り返り、鋭い視線を龍玄へ向ける。

 

「龍王鬼様がいないのに人間と戦って良い訳ないだろう? 流石にそこまでは超越行動だ。アインストとインベーダーは百鬼帝国にとっても脅威……ならばこの一時のみ人間と共闘しても、文句は誰も言うまい?」

 

龍玄の言葉の真意を悟ったヤイバと闘龍鬼は獰猛な笑みを浮かべて、今度こそブリッジを飛び出していった。

 

「さてさて、どうなることか」

 

「まぁいいんじゃないの? コウメイがいればうるさいけどさ、私達で好きにしていいなら文句を言われる筋合いはないだろうし?」

 

闘龍鬼と闘刃鬼が戦艦を飛び出して行く姿を見ながら龍玄は笑い、風蘭は仕方ないと言わんばかりに肩を竦める。

 

「まだあいつらに死なれては困るからな、少し位手を貸しても龍王鬼様は怒るまいよ」

 

「はぁーもういいわよ、好きにしたら?」

 

貧乏くじ引いたなあとぼやく風蘭を見ながら龍玄は楽しそうに笑みを浮かべ、月面へと向かう闘刃鬼と闘龍鬼のスラスターの光を見つめているのだった……。

 

 

 

第231話 白騎士と紅き巨人と その4へ続く

 

 




今回もややシナリオ重視になりましたが、次回は戦闘をしっかり気合を入れて書いて行こうと思います。エクセレン奪還とアインスト・ゲシュペンストS、アインスト・R-SWORD戦はしっかり書いて最後にまさかのキャラを一瞬参戦させたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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