第237話 開かれし地獄門 その4
慌しいアースクレイドルの司令部を見てコウメイは小さく鼻を鳴らした。分かっていた事である、こうなる事は分かっていた。だがそれを目の当たりにしうろたえている鬼やアーチボルド、アギラに対してコウメイが抱いたのは失望……ではなく愉悦であった。
龍王鬼がクロガネを通す事は予想……いや分りきった事であった。防衛戦を抜けらたれた段階でコウメイの指揮下をでる許可をブライに龍王鬼は取っていた。アギラ達が最終防衛ラインと考えていた龍王鬼とウォーダンは最終防衛ラインではなく、ただのフリーパスとなったのだ。
(予想外があるとすれば疲弊が無いことだけか)
コウメイからすれば龍王鬼とウォーダンの離脱は想定内である。だが想定外があるとすれば、それは全くのダメージを負わずに防衛線を突破して来たクロガネにあった。
「ビアン・ゾルダークは何か新しい兵器を開発したようだな?」
「イーグレットですか、そうでしょうね。ビアン・ゾルダークには時間を与えすぎた。対策は十分に出来たという所でしょう」
ビアンの天才性はコウメイは勿論、ブライも認める所だ。ここまで戦ってきた回数、回収された残骸等を考慮すれば十分に対策を練ることは可能だろうとコウメイは呟き、手を打ち鳴らした。
「何をいつまでおたおたしているのです? 龍王鬼は最大戦力である武蔵を地上へ足止めし、ウォーダンもまたゼンガーを足止めしている。十分ではないですか、何をそこまでうろたえるのです?」
「しかしコウメイさん。クロガネが全くの無傷で乗り込んできているのですよ?」
「そうじゃ、当初の計画では消耗した連中を鹵獲する事が目的であったはずじゃ」
百鬼獣とマシンセルを投与して変化したガーベルゲルミル、ゲーゲルミルによる防衛線で消耗させる計画ではあったが、計画はあくまで計画、何もかも思い通りになる訳ではない、それなのに計画通りではないと不満を露にするアーチボルド達にコウメイは柔和な笑みを浮かべた。
「それが何か? アーチボルド、アギラ。貴方達は分不相応にも大帝から機体を与えられている。それなのにまさか勝てない等というつもりではないでしょうね?」
コウメイの言葉にアーチボルドもアギラも黙り込んだ。笑顔とは本来攻撃的なものであり、コウメイという龍王鬼クラスの鬼に微笑みかけられた事にアーチボルドとアギラは冷静になることが出来た。なぜならばコウメイがその気ならば自分が今死んでいたと理解したからだ。
「真っ向勝負は柄じゃないんですけどねぇ……」
「仕方あるまいよ、コウメイよ。百鬼獣の残骸を使わせてもらうが良いか?」
「お好きにどうぞ、クロガネがここまで乗り込んでくるまでまだ時間はあります。今の内に準備を進めると良いでしょう」
コウメイの言葉にアーチボルド達は司令部を出て行き、司令部に残ったのはコウメイ、イーグレット、そしてウルズの3人だった。
「コウメイ様。本当にパパを保護してくれるのですか?」
「ウルズ。私は優秀な者が好きだ、だが君はまだ幼い。そうやって尋ねてしまうのは悪手だと覚えておくと良い、大帝様はイーグレットと
君を大変高く評価している。このような場所で死ぬべき者ではないとね、さ、出撃準備をしてくると良い。死を偽装するのだろう?」
「行くぞウルズ。コウメイは嘘をつかない、信用してかまわない」
「はい、パパ」
イーグレットに連れられウルズも司令部を後にし、1人残されたコウメイは背もたれに背中を預ける。
「さてと、後はどうアースクレイドルを破壊するかだな」
コウメイもブライもアースクレイドルが守りきれるとは思っていない、それ所か百鬼帝国の修理完了の目処が立った段階でアースクレイドルに価値を見出していないのだ。
「百鬼羅王鬼でもろとも……といかないのが辛い所か」
コウメイが視線を向けたモニターにはアースクレイドルに回収されていたオーガと名付けられた旧西暦の遺物が映し出されていた。それはかつて百鬼帝国の最後の百鬼獣として作られた文字通り百鬼帝国の最終兵器にして自爆装置……それがオーガ、いや百鬼羅王鬼の正体なのだった……。
アースクレイドルの内部に侵入したクロガネからグランゾン、ゲッターロボVがまず出撃し、バリアを展開してから次々と機体が出撃する。
「やはりまたつかって来たか」
『そのようですね、ビアン博士。理に叶っているのは間違いないですが、このような兵器は二度は通用しないという事が分からないのでしょうね』
クロガネ、グランゾン、ゲッターVによって展開されている3重の複合バリアに次々とゲットマシンが追突し大爆発を起こす。
『またこれか……』
『リュウセイ余り前に出るな、このバリアとて絶対ではない。抜かれる可能性も考え、周囲の警戒を怠るな』
特攻兵器として運用されているゲットマシンを見て渋い顔をしているリュウセイにイングラムが警告を口にする。アースクレイドルは百鬼帝国の拠点として運用され、既に最初に建造されたアースクレイドルとは似ても似つかない姿にへと変貌を遂げていたからだ。
『悪趣味だな。ゼンガーに聞いていた人類の揺り篭というのが嘘のようだ』
百鬼獣を製造する為のラインには臓器に見えるパーツや骨が乗せられており、ハンガーに固定されている作りかけの百鬼獣は骨や血管らしき物が見える。レーツェルの言う通り実に悪趣味な光景であり、アースクレイドルが建造された理由である人類の揺り篭とは到底思えない光景だった。
『あたし達がいたときはこんなふうじゃ無かったんだよ? ね、ユウ』
『ああ……プランタジネットの後から一気に改装を進めたのかもしれない』
オペレーションプランタジネットからたった数日でここまで改造したと聞いてビアンは小さく、百鬼帝国の脅威の科学力かっと呟いていた。
『無駄話は止めろ、本当に新西暦の人間と言うのは警戒心がゆるい。そうは思わないか? コウキ』
『同意する。気を引き締めろ、来るぞッ!』
コウキの言葉の後に轟音が響き渡り、クロガネの前方が崩れ落ち、そこから巨大な手が姿を見せ、まるで地獄から這い出るように巨大な影が姿を見せる……ラングレー基地でゲッターD2によって破壊された筈の異形のゲッターノワールの姿だった。
『……もうあそこまで回復しているのですかッ!』
シャインにとって、いやシャインだけではなくこの場にいる全員にとって特別な機体であるゲッターロボ。それがマシンセル、そして百鬼帝国によって見るも耐えないおぞましい姿へと変貌を遂げているのを見て誰もが嫌悪感をあらわにした。
『アヒャハハハハッ!! お久しぶりですねぇッ! ようこそようこそ、人類の希望の地アースクレイドルへ! しかし許可も無く踏み入れた人達にはそれ相応の裁きを受けて貰いましょうかねぇッ!!』
ゲッターノワールG・変異型の周辺に塗装が施されていないドラゴン、ライガー、ポセイドンが現れ、ノワールG・変異型から伸びたパイプがドラゴン、ライガー、ポセイドンを貫き、リュウセイ達の見ている前でその姿をガーベルゲルミルへと変化させる。
『アヒャハハハハッ!! くくくく……貴方達に勝てますかねぇッ!!』
耳障りなアーチボルドの狂笑と共に無数のガーベルゲルミル、ゲーゲルミルが姿を見せる。
『当初の作戦通りだ。俺とSRXチームであの紛い物のゲッターロボを叩くぞ』
『待て、私も加わる。あの化物を倒すには火力が足りない筈だ。ビアン総帥。私もSRXチームに加わります』
アウセンザイターのレーツェルからの通信にビアンは少し考えた後にレーツェルにSRXチームに加わるように正式に命令を下し、続け様に指示を続ける。
「ブリット君とクスハ君、それとタスク君とバリソンはシャイン王女達のグループに加わってくれ、シュウとユウキ少尉、ユーリア、ラーダ女史は私と共にクロガネを守りながら支援を行う。百鬼獣不知火の強襲及び、ラングレー基地で出現したゲッターヘッドへの警戒を緩めるな。全方位から攻撃が来る物と思って行動せよ」
指揮官はテツヤなのでビアンのこの指示は独断と言えるがテツヤは何も言わなかった。それはビアンとテツヤの考えている事が同じであり、どちらが指示を出しても相違はないという事でビアンの指示にテツヤは口を挟まなかった。
『さあさあ! 無粋な侵入者たちを追い返しますよぉぉおおおおッ!!』
アーチボルドがそう叫ぶとゲッターノワールG・変異体の頭部のカメラアイ、そしてその胴体に取り込まれている無数のゲッターロボのカメラアイが光り輝き、耳障りな金きり音を響かせながら一斉に動き出すのだった……。
アースクレイドルの内部へ突入したクロガネとゲッターノワールG・変異体と百鬼獣、そしてマシンセルを投入され変異した量産型ゲッターロボ、ゲッターロボGが変異したガーベルゲルミル、ゲーゲルミル達との戦いはほぼ互角という状況だった。
「周囲のゲッター線反応が高すぎて、ゲッターヘッドの反応が感知出来ません」
ゲッターノワールG・変異体と共に出現した触手の先にゲッターロボの上半身や頭部だけを持つワームのような化物をゲッターヘッドと呼称された。これは百鬼獣やガーベルゲルミル、アインストやインベーダーよりも遥かに厄介な存在だった。ゲッターロボの高い攻撃力に加えて隠密性も高く奇襲を受ければ一撃で機体が大破も考えられ、組み付かれれば脱出装置を起動させれない可能性もあり、厄介という言葉では片付けられない敵としてテツヤは勿論ビアンも強く警戒していた。
「微弱なゲッター線に絞ってくれ、出現と消滅を繰り返す反応があればそれでも構わないッ! とにかくゲッター線反応に細心の注意を払ってくれ」
ゲッターノワールG・変異体から生み出されるゲッターヘッドはゲッターノワールG・変異体のゲッター炉心からエネルギーを供給されているので反応が極めて感知しにくい、周囲のゲッター線反応の位置を記録し、反応のない場所にゲッター線反応が現れたかどうかで調べる必要がありオペレーター達への負担を知りつつもテツヤは警戒しろと繰り返し言う事しかできない。
(くそ、ほかに掛ける言葉が無い……)
警戒しろ、記録しろとしか言えない自分にテツヤは顔を歪める。指揮官としてこれほど情けない事はない、何一つ具体的な指示を出す事が出来ず、オペレーターとパイロットに負荷を与える事しかできない……これは指揮官として上官として余りにも情けない状態だった。
『アヒャハハハハッ!! そんなゲッターの出来損ないで僕に勝てるとお思いですかぁ!?』
『機体に振り回されている馬鹿に俺が負ける訳が無いだろう!』
ダブルシュテルンを振り回し、ゲッターノワールG・変異体へと挑みかかるゲッターザウルスをSRXチームとアウセンザイターが支援を行い、ゲッターノワールG・変異体が思うように動けないようにその動きを大きく制限していた。
『はぁッ!!』
『とっととくたばれ! このメタルビーストモドキがッ!』
ゲシュペンスト・タイプSの振るった参式斬艦刀でガーベルゲルミルが両断される、だがそれでも身体を繋げて動こうとしたガーベルゲルミルにスヴァイサーのゴールドバングルの銃弾が何十発と打ち込まれ、再生出来ないほどのダメージを受けたガーベルゲルミルはやっと沈黙した。
『こいつを喰らえ! シーズアンカーッ!!』
ジガンスクード・ドゥロのシールドが変形しゲーゲルミルを捕らえ、放たれた電撃でゲーゲルミルのカメラアイから光が消える。
『やっぱりだ! 再生するって言っても中身は脆い! アラドッ!!』
マシンセルによる回復は確かに厄介ではある。だが機械であり、それも超がつく精密機械であることも間違い無く高圧電流によって中の電子頭脳を破壊してしまえばマシンセルの回復能力を無力化する事が出来るとタスクが声を上げる。
『了解っす! いっけッ!!』
ビルトビルガーのスタンアサルトライフルに撃たれたガーベルゲルミル、ゲーゲルミル、百鬼獣は一瞬痙攣しその動きを止める。確かにガーベルゲルミル達は強力ではあるが、動きを止めてしまえばそれはただの的に過ぎなかった。
『そこだッ!』
『悪意は……そこねッ!!』
『照準OK、ユウッ!!』
『分かったぞ、カーラッ!!』
テキサスマック、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ、ラーズアングリフ・ゲイルレイブンの放った銃弾に貫かれ、ガーベルゲルミル達は爆発炎上する。
『よっしゃあッ!』
『アラド、気を緩めては駄目よ。貴方の武器が有効と分かれば攻撃が集まります。必要以上に前に出ず、攻撃と回避に専念するように、ゼオラ。アラドを2人でフォローするわよ』
『はい! オウカ姉様ッ!』
ビルトビルガーをビルトファルケンとラピエサージュが守り、アラドがスタンアサルトライフルで敵を感電させる。
『行ってストライクシールドッ!』
『いくぜえッ! T-LINKナッコオッ!!』
ゲッターノワールG・変異態と戦うラドラとゲッターザウルスの妨害をさせないようにスタンアサルトライフルで動きを止めた機体をリュウセイ達が手早く破壊する光景を見たラトゥーニはフェアリオンのコックピットで首をかしげた。
『あの時みたいに変化しない……? シャイン王女、これは』
『性能を落として量産したゲッターロボだからだと思いますわ。ですが、全てが全て同じとは限りませんわ! 皆様気をつけてください! ゲッターロボが変異した機体はメタルビーストに変異する可能性がありますわ!』
前に確認されたガーベルゲルミルは撃墜された後に百鬼獣を取り込みながらメタルビーストへと変異した。その戦闘記録は全員が共有しているので撃墜したと思ってもどうしても安心出来ない。その上アギラの乗る百鬼帝国の技術で作られたガーリオン、不知火もまた周囲の残骸を取り込みボデイを作り出す性質がある。今アギラと不知火が姿を見せないのはまず、間違いなく残骸が増えるのを待っている事に間違いが無く、それらの残骸を利用されないように完全に残骸を破壊する必要性もあった。
「各機はクロガネの射撃軸から離脱してください、繰り返します。各機はクロガネの射撃軸から離脱してください!」
『それなら、これでッ!』
クロガネが発射したナパーム弾と龍虎王の放ったマグマヴァサールで残骸が焼かれる。だがそれでも完全に残骸を焼きつくすということは出来なかった。
『厄介だな。破壊される前提でありながら完全に破壊することが出来ないとは』
『それに加えて特攻してくるゲットマシンも健在ですからね、これは中々に厳しい戦いですよ』
ゲッターVの重力攻撃、グランゾンのワームスマッシャー、そしてフェアリオンとビルトビルガー、ファルケン、ラピエサージュの奮闘にによって特攻してくるゲットマシンは特攻兵器としての役割を果たす事無く墜落していくがその残骸が徐々に徐々に積み上がっていく。だが撃墜しない事にはクロガネの轟沈の可能性もあり対処しない訳にも行かない。
「高エネルギー反応感知!」
「どこからだ! 地下か!?」
「違います! ゲッターノワールGからですッ!!」
クロガネのモニターにはゲッターノワールG・変異体の頭部から這い出るように姿を見せたゲッターノワールGの姿が映し出される。
「馬鹿な!? 変異態も動いているだと!?」
ゲッターノワールGにアーチボルドが乗っているのは間違いない、だがゲッターノワールG・変異体も活動を続けており、その光景にテツヤが思わず声を荒げる。
『さあーて、お遊びはここまでですよぉ! 正義の味方さん達ぃいいいいッ!』
『その通りじゃて、本当の戦いはここからぞ。サンプル共めッ!』
「不知火を落とせ! 奴の思い通りにさせるなッ!!」
警戒していた不知火の姿を見て、テツヤは撃墜命令を下すが不知火を守るようにアースクレイドルの地面から生えてきたゲッターヘッドに妨害され、不知火と無数の百鬼獣の残骸、撃墜されたゲットマシンの残骸の融合を止める事が出来なかった。
『不知火鬼神の装。ひゃひゃひゃひゃッ!! 上手くいったわいッ!』
『やれやれですねえ、随分と下準備に時間が掛かるじゃないですか、アギラ博士』
不知火はゲッターD2を模倣した姿へとその姿を変え、その隣にゲッターノワール・Gが並び立つ、そしてその下ではゲッターノワールG・変異態がゲッターヘッドを展開しながら活動を続ける。
「敵はゲッターロボ軍団かッ!!」
マシンセルによる自己修復機能を持ち合わせた無数の量産型ゲッターロボ、ゲッターロボG、そしてガーベルゲルミルとゲーゲルミルがゲッターノワールGの周りへと立ち並ぶ、それは軍団としか呼び様のない絶望的な光景なのだった……。
第238話 開かれし地獄門 その5へ続く
リュウセイ達は圧倒的なハードモードで戦っておりました。そこまで強いわけではないのですが、やはり数と言うのは極めて厄介ですね。この絶望的な戦いはここで1度休憩、次回はゼンガーとウォーダンの決着のみで1話を書き上げて見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い