第238話 開かれし地獄門 その5
閃光と火花がダイゼンガーとスレードゲルミルの間を幾重にも走る。袈裟、逆袈裟、突き、払い、切り下ろし、切り上げ……ありとあらゆる角度から剣戟が放たれ、ダイゼンガーとスレードゲルミルの装甲を切裂く。だが互いに急所は外していて装甲はボロボロであってもダイゼンガー、スレードゲルミル、両機共に戦闘に支障が出るような損傷は受けていなかった。
『ウォーダン。マシンセルによる自己修復はどうした?』
鍔迫り合いとなった所で接触通信で問いかけてくるゼンガーにウォーダンは小さく笑った。
「互角の条件で勝たねばそれは勝利とは言えぬ。ゼンガーよ、仮にお前と俺の立場が逆だったとして、自己修復する機体で勝ったと胸を張れるか?」
ヴィンデルやアクセルがいれば、何を馬鹿なと言うだろう。レモンであれば、何も言わずに笑みを浮かべるであろう。今スレードゲルミルにマシンセルによる修復機能はない、ゼンガーと互角の条件で戦うことを望んだウォーダンはマシンセルの修復機能を良しとしなかったのだ。そしてレモンによってマシンセルの抑制機能がスレードゲルミルへと搭載された。
『愚問だったな。お前を侮辱する意図は無かった、許せ』
「命のやり取りをしている者同士の間に謝罪など不要! 謝るくらいならばお前の全力を、真のゼンガー・ゾンボルトを俺に見せる事が謝罪と知れッ!」
裂帛の気合と共に振るわれたスレードゲルミルの斬艦刀の一閃を防いだダイゼンガーだが、スレードゲルミルの斬艦刀に持ち上げられ大きく弾き飛ばされる。今までのような全力で斬艦刀を振ることの出来ない距離ではなく、全力で斬艦刀を振れる距離になった事でウォーダンはこのまま流れを掴む為に勝負に出た。
「はぁッ!!!」
【斬艦刀・龍神一閃】
斬艦刀の切っ先からエネルギーを飛ばすと同時にブースターを全開にし、龍の頭部を模したエネルギーを盾としダイゼンガーとの距離を一気に詰める。
「臆したか! ゼンガーッ!!」
攻防一体の斬艦刀・龍神一閃は並大抵の攻撃で止めれるものではない、背を向けたダイゼンガーを見てウォーダンがそう怒鳴った直後、ダイゼンガーがスレードゲルミルを上回る速度で突撃してきた。
「何!?」
『チェストォォオオオオオッ!!!』
迎撃に出るか、防ぐか、避けるか、一瞬とも呼べぬ刹那ウォーダンが迷った。その一瞬の間にダイゼンガーは手にしていた斬艦刀をスレードゲルミルへと振り下ろした。
「ぐッ! ぐうううッ!?」
斬艦刀・龍神一閃で突撃したままの勢いで地面に叩きつけられたウォーダンの口から、己の意思に反して苦悶の声が零れる。
『く……ッ』
だがダイゼンガーのゼンガーからも苦悶の声が響き、その間にウォーダンはスレードゲルミルを立ち上がらせ、ダイゼンガーとの距離を取らせ、自分がどんな攻撃を受けたのかを理解した。
「無茶をするものだな、ゼンガー」
『己を大事にしていて、お前に勝てると思うほど俺は楽観的ではないのだ』
ダイゼンガーの異常な速度の突撃の正体は肩部から放たされたゼネラルブラスターだった。ゼネラルブラスターを背後に向かって発射し、その発射の反動とブースターを併用した爆発的な加速がウォーダンの斬艦刀・龍神一閃をダイゼンガーが上回った正体だった。確かに斬艦刀・龍神一閃は攻防一体ではあるが、それを上回る攻撃を受ければその防御は絶対ではない、だがゼンガーの取った方法は下手をすれば自爆、そうでなくとも加速状態から無理矢理攻撃に移るので、無理な機動によってダイゼンガーの機体の各所からは黒煙が上がっていて、その一撃はどれだけダイゼンガーに負担を掛けたのかは一目で分かる。だがゼンガーから放たれる闘志は弱まる所か強くなる一方だった。
「それでこそ、ゼンガーだ。俺が越えるべき……倒すべき敵だッ!!」
己の全てを賭して、いやそれでも届かないかもしれないゼンガーの強さにウォーダンは獰猛な笑みを浮かべながらスレードゲルミルの操縦桿を握り締め、斬艦刀を構えなおすのだった……。
モニターに映るイエローアラートをコンソールを操作し、消したゼンガーはそのまま袖口で口元を拭い笑みを浮かべた。
「俺も大分武蔵に毒されたか……いや、己の身を大事にしていて勝てる相手ではないな」
ゼネラルブラスターを地面に向けて発射し、発射の反動を利用してスレードゲルミルに突撃する。少しでも反応が遅れれば正面衝突、スレードゲルミルがエネルギーの壁を前面に展開しているので追突した瞬間にダイゼンガーは大破していただろうが、ゼンガーは最高のタイミングでダイゼンガーを切り返し発射の反動を利用した切り下ろしを見事スレードゲルミルに当てる事に成功した。その一見無謀にも見える突撃はゲッターロボと武蔵の戦い方に酷似していた。
「ウォーダンに学ばされたか……」
カーウァイからPTの操縦を教わり、リシュウから示現流を教わり、それがゼンガーの戦いの基礎であり、それを磨き上げる事でゼンガーは今の強さを得た。だがそれだけでは駄目なのだとゼンガーはウォーダンに教えられた。
「ふー……ッ」
バスターソードモードの斬艦刀ではなく、日本刀モードの斬艦刀を正眼に構えたダイゼンガーに対し、スレードゲルミルは切っ先を背後に向け、腰だめに構えている。
『参るッ!!』
裂帛の気合と共に切り込んできたスレードゲルミルは斬艦刀の切っ先を地面に突きたて、切っ先で砂を大量に巻き上げた。
「ぬうッ!?」
予想外の攻撃にゼンガーは一瞬怯んだ。その隙にスレードゲルミルはダイゼンガーの懐にまで潜りこんでいた。
『はぁぁああああッ!!』
土砂で視界が塞がれていたが、ゼンガーはウォーダンの殺気を感じ取り咄嗟にダイゼンガーをバックステップさせ、斬艦刀の切り上げを紙一重で避けた。
『外したか……それでこそだ』
不意打ち、卑怯とウォーダンを罵る事は出来なかった。その戦い方は、周りにある物すべてを利用し、確実に敵を倒す、勝利する為の戦い方は武蔵の物だ。ウォーダンの戦い方のなかには確かにゼンガーの物がある、だがそれと武蔵の戦闘技術を組み合わせた実戦剣術……一撃必殺の薩摩示現流、一撃必殺でありながら、小技にも長けた武蔵の戦い方を組み合わせたウォーダンの剣術は超がつく実戦剣術。
(同じ実戦剣術でもこうも違うか)
ゼンガーの剣術もまた実戦剣術である。だがウォーダンはその一歩先を行く、勝つ為の、生き残る為の技だ。そこに卑怯も卑劣もない、勝って生き残る為の剣術はなんでもありであり、そして最も効果的に相手の出鼻を挫くという事に優れていた。
『悠長に考え事か、ゼンガーッ!!』
振るわれた斬艦刀の切っ先から放たれたエネルギー刃……斬艦刀・電光石火を見て、ゼンガーもそれを相殺する為に斬艦刀・電光石火を放つと同時にサイドステップでスレードゲルミルから距離を取ろうとしたが、それを諦めスレードゲルミルを迎え撃つ為に迎撃の構えに入った。
『はぁぁあああッ!!』
【斬艦刀・龍嵐】
斜め下の構えからの半回転しながらの切り上げ……だけではない、切っ先から斬艦刀を固定するエネルギーを放出しながらの切り上げは射程を大きく伸ばしており、ゼンガーの予測よりも攻撃範囲が広くなっている事に気付いたゼンガーは回避ではなく、迎撃に出た自分の判断が間違いでは無かったと悟った。
「ぐう……ッ!! はぁぁッ!!!」
だがゼンガーもただではやられない、エネルギー刃を攻撃と防御に使用するのは何度も見てきた。飛龍電一閃や龍神一閃のように密度のあるエネルギー刃ではなく、電光石火を使って来たことで、次の攻撃に繋げる為の牽制、あるいは囮だと見抜いたゼンガーは機体の動きに影響を受けない箇所で攻撃を受けた。そして反撃の斬艦刀の一閃がスレードゲルミルの胴体に真一文字に深い傷痕を刻みつけながらスレードゲルミルを大きく弾き飛ばした。
「すまないな、ダイゼンガー……俺が未熟なばかりにお前の力を十分に引き出せていないのだな」
ゼンガーの呟きに当然ながらダイゼンガーは応えない。だがスレードゲルミルをウォーダンを見ていれば、己がダイゼンガーの力を100%引き出せていないのは明らかであった。だがウォーダンとの戦いの中で自分が成長をしているのを実感しているゼンガーは日本刀型の操縦桿を強く握り締めた。
「ここからだ、ウォーダン。俺達の勝負はここからだ」
『当たり前だ。ゼンガー……この程度で俺達の勝負に決着がつく等ありえんッ!!』
互いの機体の胸に大きなダメージが刻まれ、コックピットには火花が散っている。しかしそれでもウォーダンとゼンガーの闘志は弱くなる所かより一掃激しく燃え上がるのだった……。
ダイゼンガーとスレードゲルミルの激しい剣戟を見つめる1人の男……いや超機人鯀鬼皇はその激しい闘志のぶつかり合いに身震いしながら、歓喜の笑みを浮かべていた。
「素晴しい、これでこそ益荒男同士の戦いという物だ。武蔵と龍王鬼の戦いも気にはなるが……この漢同士の戦いを見ぬわけには行かぬ」
激しい闘志と闘志のぶつかり合い。だがそこに憎しみや恨みなどは無く、ただ純粋に己の譲れぬ者を掛けての戦いに鯀鬼皇は興奮を抑えきれず、手にしていた酒瓶に直接口をつけてその中身を飲み干し、新しい酒瓶の封を開ける。
「良い酒だ、良い酒だがこの戦いの熱の素晴しさには劣る」
最高の酒をまるで水のように飲み干しながら鯀鬼皇はダイゼンガーとスレードゲルミルの戦いに視線を向ける。
『はぁあああああッ!!!』
『うぉおおおおッ!!!』
2人の漢の咆哮が周囲に響き、2振りの斬艦刀が幾重にもぶつかり合い激しく火花を散らす。
「互角……ふふふ、面白い。全くの互角とは……」
互いの剣術には僅かに差がある。だがそれはほんの僅かな差であり、言うならば剣術の流派の違い程度の差だ。そしてマシンセルの回復能力を自ら捨てたスレードゲルミルとダイゼンガーの機体性能もほぼ互角である。ゲッター炉心を搭載しているダイゼンガーの方が僅かに機体性能が上だが、ウォーダンは対人向けに秀でているのでその差はほぼ零に等しい。
「勝敗を分けるのはどちらがより勝ちたいか、純粋だ。これでこそ闘争、ヴィンデルの語る闘争など子供の児戯に等しいではないか」
永遠の闘争を謳うヴィンデルだが、ヴィンデルの語る闘争は鯀鬼皇にとっては子供の遊び、戦いがしたいのではなく、自分達の思いとおりになる世界が欲しいのであって戦いがしたいわけではないと鯀鬼皇と共行王は感じていた。
「本当に戦いを欲しているのならば鬼に戦いを挑めば良いのだからな」
真に戦いを欲しているのならば百鬼帝国という強大な敵に挑めば良い、だがそれをしない段階で永遠の闘争がしたいのではなく、ヴィンデル達はただ自分達が勝利者でいたいだけなのだと、子供のように自分達の正しさを証明したいのだけなのだと理解し、鯀鬼皇も共行王もヴィンデルへの興味を失った。
「もっとだ。もっと見せてくれ……その素晴しい魂の輝きをッ!」
魂を振るわせる素晴しい益荒男同士の戦いに鯀鬼皇の瞳孔は開き、完全に興奮しきっていた。魂を喰らい、己の動力とする超機人の性質上、魂の質を見抜く眼力を持つ鯀鬼皇にとってゼンガーとウォーダンの戦いはどんな美酒にも勝る素晴しい戦いであった。
「むう……あちらも凄まじい戦いを繰り広げているようだな……」
だが武蔵と龍王鬼の激しいぶつかり合いによって磨かれる魂の輝きは鯀鬼皇の興味を引く、武蔵と龍王鬼の戦いを見たいという気持ちはあった。まだ決着が付かないのならば、少し見に行っても良いかと悩む鯀鬼皇はダイゼンガーとスレードゲルミルに背を向け……ずに再びダイゼンガーとスレードゲルミルの戦いに視線を向けた。
「……決着だ。決着がつくぞ、どちらが勝つのだッ」
互角の戦いは互いに勝負に出るタイミングも似通った物となる。ゼンガーとウォーダンの闘志がはち切れんばかりに膨れ上がるのを感じ取った鯀鬼皇は次の激突で決着がつくと悟り、岩場から身を乗り出し、ゼンガーとウォーダンの最後の激突を前にした異様な静けさに身を震わせるのだった……。
火花を散らすスレードゲルミルのコックピットでウォーダンは歓喜に身を震わせていた。越えるべき壁であるゼンガーとの何の横槍も、邪魔者もいない……己のすべてを出し切る事が出来る戦いにウォーダンは満足し、そして楽しんでいた。
「我思う、故に我あり……」
己の意志でマシンセルの回復機能を無効にし、龍王鬼の提案を受け入れアースクレイドルへの道を譲り、ゼンガーとの一騎打ちによる決着を望んだ。それは最早W-15の考えではない、W-15の考え……シャドウミラーの考えであれば、マシンセルの修復機能を無効にする事はなく、龍王鬼の提案も受け入れず、量産型Wナンバーズと共に集団で戦う事を選んだ筈だ。
『ウォーダン。お前もまたエキドナとラミアと同じか』
「そうなのだろうな、だとしても俺はエキドナとラミアとは違う。俺はメイガスの剣であり、それ以外になろうとは思わん」
W-15ではなく、ウォーダン・ユミルとしての自己を確立したとしてもウォーダンはウォーダンであり、メイガスの剣である事に変わりはない。
『俺はネート博士の剣だ。ネート博士は返して貰う』
「それで良い、俺とお前の道は決して交わらない、そして俺とお前、両方が生き残る事もない」
生き残る者はただ1人、そして欲する物を手にする事が出来るのもまた1人……それ故にゼンガーとウォーダンの道は決して交わる事が無いのだ。
「次の一撃、次の一撃に俺の全てを賭けるッ!」
『望む所だッ!』
ダイゼンガーもスレードゲルミルももう何度も攻撃をする余力はなく、機体もボロボロでいつ動かなくなるか分からない状況であった。ならば動ける間に決着を、己の全てを賭けた最後の戦いをウォーダンは望み、ゼンガーもそれを受け入れた。
「甘いぞ、ゼンガーッ!!」
ダイゼンガーの動く予兆を感じ取ったウォーダンは斬艦刀の切っ先で土砂を巻き上げ、ダイゼンガーの初動を潰す。
「これが我が乾坤一擲の一撃、我が奥義ッ!! 我はウォーダン! ウォーダン・ユミルッ! メイガスの剣なりッ!!」
バスターソードモード……ではなく、斬艦刀の液体金属を固定する為のエネルギー全てを放出しながらスレードゲルミルはダイゼンガーへと突撃……いや、巨大な刃を振るう為の距離を作る為にスレードゲルミルは加速する。
「伸びろ斬艦刀ッ!!」
地表を砕きながら脚、腰、腕、肩……その全てを連動させスレードゲルミルは斬艦刀、いや星を断つ剣を振るう。
「薙ぎ払えッ!! 星ごと奴をッ!!」
斬艦刀・星薙ぎの太刀――あちら側の世界で大量に発生したアインスト・レジセイヤへの対抗策であり、その膨大のエネルギーを持って地表を薙ぎ払いアインスト、インベーダーを一掃する。文字通り星を断つ剣が地表を砕きながらダイゼンガーへと迫り、ダイゼンガーの姿は星薙ぎの太刀の光の中へと消えた……。
「……」
勝ち名乗りをせず斬艦刀を振り切った姿勢のまま、スレードゲルミルの手から斬艦刀が零れ落ちる。
「……無念。我が魂の太刀は届かなかったか」
顔を上げたウォーダンの視界には右足、そして左腕を失いながらも健在のダイゼンガーが右手1本でバスターソードモードの斬艦刀を支え、急降下してくる姿だった……。
「俺は全てを出し切った……その上で負けるのならば……なんの後悔もない」
敗北を受け入れたウォーダンの操るスレードゲルミルは急降下してくるダイゼンガーに向かって両手を広げ、ダイゼンガーを迎えいいれるように仁王立ちした。完全に己は負けているのに、みっともなく足掻く事をウォーダンは良しとしなかった。己の敗北を、そして己に勝った漢の勇姿をその目に刻むように天を見上げた。
『チェストォォオオオオオオオッ!!!』
【斬艦刀・雲燿の太刀】
「見事なり……ゼンガー……ゾンボルト……」
裂帛の気合と共に振り下ろされた斬艦刀がスレードゲルミルを捉え、砕かれた大地の中にスレードゲルミルとダイゼンガーは飲み込まれ、闇の中へと消えていくのだった……。
第239話 開かれし地獄門 その6へ続く
決着その1ですね、星薙ぎの太刀と雲燿の太刀。互いの奥義のぶつかり合いで決着としました。ゼンガーとウォーダンがどうなったかは、また次のアースクレイドル内での戦いで触れて行こうと思います。次回は龍王鬼と武蔵の決着を書いて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
Gジェネはマスターリーグでハイスコア12万までいけましたが、流石にここで終わりですね。課金勢にはちょっと勝てそうに無いですが、十分なスコアには辿り着けたと思います。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い