進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第246話 悪鬼羅刹皇、守護者へと至れなかった物 その4

 

第246話 悪鬼羅刹皇、守護者へと至れなかった物 その4

 

スレードゲルミルのコックピットで操縦桿やフットペダル、コンソールを叩く音が響く。だがそれもいつまでも続かず、拳を振り降ろす音と砕け散ったコンソールの保護ガラスの音がスレードゲルミルのコックピットに響き渡った。

 

「くっ……ここまで……いや、まだだ、まだ出来る事がなにかある筈だッ!」

 

ソフィアを救出し、スレードゲルミルを取り込もうとしたアウルゲルミル、マシンセル構成態を星薙ぎの太刀で一掃する事には成功したゼンガーだったが、ゼンガー自身との戦いでダメージを負っていたスレードゲルミルは斬艦刀を振り切った姿勢でシステムダウンを起していた。

 

「ダイゼンガーまで戻る事ができれば……ッ!」

 

腕と足を失い立ち上がる事が出来ないダイゼンガーだがブースターは生きている。ダイゼンガーまで戻る事が出来れば脱出出来るとゼンガーは拉げたスレードゲルミルのコックピットハッチに何度も何度も蹴りを入れ、強引にコックピットハッチを開放しようとしていた。

 

「ぐうっ!?」

 

だが何度目かの蹴りでゼンガーは呻き声と共に動きを止めた。ゼンガーの履いている靴底からは煙が上がり、蹴り破ろうとしていたコックピットハッチも目に見えて赤くなり始めていた……。

 

「まだ、まだだッ! 俺は戻ると言ったのだッ! 諦める物かッ!」

 

羅王鬼の自爆まで時間が無いからかアースクレイドルの内部は異常な熱に満たされていた。コックピットも既にサウナ状態であり、ゼンガーの額からは大粒の汗が流れ、コックピットハッチを蹴り破ろうとしている靴底は焼け、素足が見えかけている。だがそれでも諦めずに1蹴りごとに呻き声を上げながらもコックピットハッチを蹴り続けるゼンガー。しかし何度目かの蹴りで、肉の焼ける音と不快な臭いがコックピットに広がった。

 

「がっ!? ぐっぐううッ!」

 

スレードゲルミルに篭もった熱によって靴が完全に潰れ、足の裏が焼け爛れたのだ。その余りに強烈な痛みに流石のゼンガーも呻き声を上げその動きを止めた。ゼンガーが強靭な肉体を持っていたとしても、自分の身体が焼ける痛みには流石に一瞬硬直した。だがゼンガーはすぐに蹴り破るのを再開しようとし、コックピットに響いた声に動きを止めた。

 

『止めろゼンガー。お前にはまだやるべき事がある』

 

「ウォ……ウォーダン?」

 

『お前はソフィアを連れて帰らねばならない、ここは俺に任せてもらおう……ぐうううッ!?』

 

「ウォーダンお前何をッ!?」

 

通信越しに凄まじい轟音とウォーダンの苦悶に満ちた声にゼンガーがそう叫ぶと、ノイズ交じりのスレードゲルミルのモニターにウォーダンの姿が映し出された。

 

「ウォーダン……お前ッ!」

 

ウォーダンは両腕を開かれたコックピットのコンソールの中に突き入れ、全身を高圧電流で焼かれながら無理やりスレードゲルミルを動かしていた。

 

『ぐう……敗者は……勝者の道を作る……物だッ! それにお前は運が……良いッ 俺はラミアとエキドナと違い半分は機械人形だ。あの2人ならこうはいかんぞ、ゼンガーよッ!』

 

肌のスキンが焼かれ、その下の機械を剥き出しにさせながらウォーダンはスレードゲルミルをダイゼンガーの近くまで移動させると、ゼンガーが乗っている頭部のコックピットハッチを抉じ開けた。

 

『ダイゼンガーへ乗り移れッ! メイガスはこの温度には耐えられんぞッ!』

 

「しょ、承知ッ!」

 

コックピットから飛び出し、スレードゲルミルの手の上に乗り移ったゼンガーはそのままダイゼンガーのコックピットへと飛び込んだ。

 

「……良し動く、まだ動く、ウォーダン! ソフィアをッ!」

 

駆動系が生きているのを確認したゼンガーがそう叫びながらダイゼンガーのコックピットを飛び出す。

 

『受け取れ……メイガスを、いやソフィア・ネートを』

 

「すまない、ウォーダンッ!」

 

スレードゲルミルの手の上に乗り移ったゼンガーは素早くメイガスに備え付けられたポッドを開け、ソフィアを抱き上げてダイゼンガーの中へ戻るとすぐに操縦桿を握り、ダイゼンガーの残された右腕をスレードゲルミルへ向けた。

 

「ウォーダン! お前も乗り移れッ!」

 

ウォーダンがいなければソフィアを救うことが出来なかった、そしてダイゼンガーに戻る事も出来無かった事も分かっているゼンガーはウォーダンにスレードゲルミルを捨てて乗り移れと叫んだ。

 

「な、何をする!?」

 

だがウォーダンは返事を返さずダイゼンガーを掴んで持ち上げた。

 

『己の幕引きは分かっている。これ以上……死に際を惨めな物にさせないでくれ……ゼンガー』

 

「ウォーダン……だがッ」

 

『良い。俺は満足している……もし俺に感謝すると言うのならば……人造人間に……あの世があるとは思えんが……俺のオリジナルはこんなにも強かったのだと、あの世で誇れる男であれ、ゼンガー』

 

放電によって顔の肌も溶け落ち、機械の骨組みを露出させ、それでも残った右側で僅かに微笑んだウォーダンはダイゼンガーをしっかりと掴んで振りかぶる。

 

『しっかり掴まっていろ、お前の大事な者を落とすなよ、そしてさらばだッ! ゼンガー・ゾンボルトッ!!!』

 

裂帛の気合と共に、ダイゼンガーをアースクレイドルの天井に開いた大穴に向かって投げた。

 

「ウォーダン……さらばだ。別の道があれば友になれた男よ……」

 

アウルゲルミルが機能停止したことで崩れ落ちていくスレードゲルミルから背を向けたダイゼンガーは、残されたブースターを全開にし、アースクレイドルから外へと飛び出していった……。

 

「……満足……だ。これほど……充実した終わりは……ない……いや……悔いは……あるか、ゼンガー……ああ……そうだな……ゼンガー……お前に勝ちたかった……」

 

崩れ落ちていくスレードゲルミルのコックピットの中で、ウォーダンは信じられないほど穏やかな声でゼンガーに勝ちたかったと呟き、操縦桿を握り締めた。ウォーダンは満足しきっていた、だがまだ自分にはやるべき事が残っている事に気付き、再び燃え盛るような闘志がウォーダンの全身から溢れ出した。

 

【アアアアアアア――ッ!!】

 

星薙ぎの太刀で両断されても尚動き、制御装置であるソフィアとメイガスを求めて動き出したアウルゲルミルの残骸からはゲッタードラゴン、ライガー、ポセイドンの一部が這い出るように姿を見せる。

 

【ワシはアアアア、しなぬうううううううッ!?】

 

アギラもまた取り込まれており、老婆と若い姿を交互に繰り返しながら死ぬものかと繰り返し叫ぶその姿をウォーダンは心底嫌悪した視線で睨みつけた。

 

「いい加減に……くたばれッ!!」

 

両断されても尚ダイゼンガーへ触手を伸ばしているアウルゲルミルに、斬艦刀を突き刺した。

 

【ギイヤアアアアアアアアアッ!?】

 

「因果応報……貴様もまた地獄へ落ちろ、アギラ……」

 

【死なぬうう、ワシはわしはしなぬゆうううううううッ!?!?】

 

アウルゲルミルを磔にしたスレードゲルミルは完全に錆び付き、その下からグルンガスト参式の装甲を見せたスレードゲルミルと、狂ったように死なないとアギラの声で叫ぶアウルゲルミルは羅王鬼の爆発の中へと消えていった……。

 

 

 

 

羅王鬼の爆発を宇宙へ逃がすために最後までアースクレイドルに残っていた武蔵と龍王鬼達は、その愛機であるゲッターD2と虎龍王鬼と共に羅王鬼の爆発したクレーターの中に倒れこんでいた。

 

「おおい……生きてるかぁ、龍王鬼、虎王鬼」

 

『おう……なんとか生きてるぜ、武蔵ぃ』

 

『あたしも生きてるわねえ……いやあ、死んだと思ったわ』

 

「いや、マジでそれな。オイラも死んだと思ったわ」

 

重力トンネルとワームホールによって爆発の大半が宇宙へ逃れたとはいえ、爆発元のすぐ近くにいたゲッター達のダメージは凄まじく、到底動ける状態ではなかった。

 

「しかしあれだな、ちょっと意外だ」

 

『あん? なにがだ?』

 

「いや、最後までバリアで守ってくれるとは思ってなかったぜ」

 

虎龍皇鬼のバリアが無ければゲッターは消し飛んでいたという確信があった武蔵はぽつりとそう呟き、その呟きを聞いた龍王鬼は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

『対等な条件で決着をつけてえって言っただろうが、まだ俺様とお前の決着はまだついてねえ、こんな終わりなんて認めるわけねえだろ?』

 

「分かってる。分かってるぜ、別にお前を疑ってた訳じゃねえさ」

 

武蔵と龍王鬼の決着はまだついていない、だからこそ龍王鬼と虎王鬼は武蔵を守った。何の邪魔も、気掛かりもない対等な条件で心から納得できる決着を望んでいるのは何も龍王鬼と虎王鬼だけではなく、武蔵も紛れも無く同じ気持ちだった。敵同士ではあり、必ず最後は殺し合いになるのは決まりきっているが、それでも武蔵と龍王鬼の間には奇妙な友情とも呼べるものがあった。

 

『とりあえずこっちは回収にきてくれる相手はいないわけだけど、少しの間でもそっちで回収してくれるのかしら?』

 

「オイラに言われてもなぁ、まぁテツヤさん達なら捕虜扱いにしてくれると思うけど……」

 

『俺様と虎を閉じ込めてられる檻なんかねぇぜ』

 

自信満々に言う龍王鬼の武蔵はだよなあっと呟いた。そもそも武蔵だってヴィンデルに掴まった際に電流が流れているから抉じ開けるのを諦めただけで、牢屋に閉じ込められただけなら武蔵も龍王鬼もその腕力を持って牢を破ることなんて簡単な事だ。龍王鬼達を保護しようが、捕らえようが最終的な結果が龍王鬼達が自由になるという結果なら、無駄な努力はするべきではないというのが武蔵の考えだった。

 

「助けられた礼もあるし、飯でもご馳走してくれるように頼むわ」

 

『飯か! それは良いな、酒も出せよ』

 

「それは自分で交渉しろよ、飯は出してくれるようには頼んでやるけどさ……あーしかし腹減ったなあ、救助要請ちゃんと届いてるかなあ」

 

機体を動かせる状態ではないので早く向かえに来てくれないかなあと武蔵が呟くと、ゲッターD2と龍虎皇鬼の前に小柄な人影が現れた。

 

「くふふふ、外にまで連れて行ってやろうかの?」

 

「……お前、共行王。んだよ、何が目的だ」

 

共行王、鯀鬼皇、そして窮奇鬼皇の3体を前にしても武蔵は平然としていた。ゲッターが動かない中で敵対する態度を見せるほど武蔵は馬鹿では無く、何の目的があってこの場に訪れたのかというのを冷静に問いかけた。

 

「素晴しい闘争を見せてくれたのでな。お前を仲間の所へ連れて行って酒盛りでもしようと思っておる」

 

「きゅーちゃんは美味しい物が食べたいだけだぞー」

 

「と言う訳だ。お前達を外へ連れて行ってやろうか? 礼は美味い飯と酒でいいぞ?」

 

「一応聞いておくけど饕餮鬼皇はいないか?」

 

超機人の中でも明確に敵意を見せている饕餮鬼皇はいないかと問いかけた武蔵に共行王達はいないと返事を返した。

 

「んじゃあ外に連れてってくれよ。このままこの場所に残るのも危ないしよ」

 

「くふふ、任された。そのかわりちゃんとお前の仲間の人間に口引きするのだぞ? 戦いの熱で火照っておる、下手にちょっかいを出されるとうっかり殺してしまいかねんからの」

 

火照っているの言葉の通り頬が赤く染まっている共行王には怪しい色気があったが、瞳の色が反転し、瞳孔が開いている姿を見れば極度の興奮状態であるのが一目で分かる。

 

「然り、礼節をもった対応を望むぞ、武蔵」

 

「にゃはははは、無礼なことをするとぶっ殺すぞ♪」

 

「分かってる。ちゃんとみんなに説明するから大人しくしててくれよ、んで。龍王鬼はどうすんだ?」

 

『おう、俺様も行くに決まってるだろ? 頼むぜ共行王』

 

『そういうことー』

 

「分かっておるわ。では行くぞ、しっかりと己の機体に掴まっておれよ」

 

どの道羅王鬼が自爆した場所に留まり続けるのは共行王達も危険であり、共行王の言葉と共に発生した水球がゲッターD2達を飲み込み、瞬きほどの一瞬でゲッター達の姿はアースクレイドルの外へと移動していた。

 

「こちら武蔵、こちら武蔵。クロガネ、応答してください」

 

外に出た事で通信が可能になった武蔵はすぐにクロガネに向けて通信を行い、その返事は殆ど一瞬で来た。

 

『ビアン! ビアン! 武蔵君から通信だぞッ!』

 

『本当か! 武蔵君、大丈夫かッ!?』

 

『シャイン王女が生きていると言っていたから通信をONにしておいてよかった、無事かね!?』

 

ブライアンから始まり、ビアン、グライエンと続く声に武蔵は苦笑しながら口を開いた。

 

「オイラは無事ですけど、ゲッターのダメージが深刻で動ける段階じゃなないですね」

 

『修理が必要なレベルかね?』

 

「出来ればシキシマ博士を呼んで欲しいかなあって所ですね、ある程度は自己修復で大丈夫だと思いますけど、これからを考えれば出来るだけ万全にしておきたい所ですから」

 

アースクレイドルの制圧、月面の奪還とくれば残るはホワイトスター……最終決戦が近いのはビアンも分かっており、武蔵からシキシマ博士を呼んで欲しいと言う申し出を2つ返事で了承した。

 

『というわけだ。頼むぞ、シュウ』

 

『ビアン博士、貴方はもしや私を便利なタクシーかなにかと思っていませんか?』

 

『……ソンナコトハナイゾ?』

 

『思ってましたね? まぁ良いでしょう。LTRのシキシマ博士を呼びに行って来ますよ』

 

シュウのどこか呆れたような口調と片言のビアンに噴出した武蔵だが、いつまでも笑っていられないと咳払いをしてから本題を切り出した。

 

「ビアンさん、食べ物とお酒を用意してくれませんかね?」

 

『食べ物はかまわないが、君は未成年だろう?』

 

「あ、いえ、オイラが飲むんじゃなくて「ワインとやらで良いぞ!」「日本酒! 日本酒だ!」「きゅーちゃんは果実酒ーッ」」

 

通信に割り込んできた共行王達の声にクロガネのブリッジが静まり返ったのが通信越しでも武蔵には分かった。

 

『どういう……事だね?』

 

「いや、なんか共行王達に助けられたんですよね。あとついでに龍王鬼と虎王鬼もいます」

 

グライエンが引き攣った声で武蔵にどういうことかと問いかけ、龍王鬼と虎王鬼もいると聞いて再びクロガネが沈黙した。

 

『……分かった。とりあえず用意をしよう、今の状態ではとても戦えない。酒で引いてくれるならありがたい事だ。ゼンガーを回収した後すぐに迎えに行く、暫くそのまま待っていてくれ』

 

今のクロガネの戦力で共行王達と戦うのは不可能であり、ビアンは共行王達を警戒しながらも迎え入れる事を決断した。だがその決断を下す要因はもう1つあった。

 

「これで良いのだね? シャイン王女」

 

「はい、ここで共行王達と話しておく必要がありますわ。いずれ戦うであろう守護者を名乗るバラルと戦う為にはここが重要になる筈です」

 

シャインに予知でここが重要な分岐点になると聞かされた事も、ビアンが共行王達を迎え入れる決断を下した理由でもあった……。

 

 

第247話 超常たる者 その1へ続く

 

 




アースクレイドル編はこれにて一時終了となります。次回からの超常たる者が最後のインターミッションでホワイトスター攻略、そしてOG2のラストへと向けて進めて行こうと思います。一応予定ではOG2の後にゲッター関連で10話くらいのサブの話をはさんでみようと思っているので、 どんな話が入ってくるのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

バーンガーンガチャ

ガトリングドライバー
ストナーサンシャイン
真ゲアタック

と敗北

FGOは伊吹童子(水着)狙いで30連

すり抜けでアナスタシアさんが完全体になりました。ちゃうねん

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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