進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第248話 超常たる者 その2

第248話 超常たる者 その2

 

羅王鬼の自爆でアースクレイドルを吹き飛ばす筈だったが、ビアン達によってその爆発を宇宙へ飛ばされアースクレイドルは原形を保つ事になってしまった。

 

「申し訳ありません。大帝……」

 

龍王鬼の考えを読みきれていなかった事がコウメイの失敗であり、アースクレイドルが地上へ残ってしまった事を謝罪するコウメイにブライは手にしていた書類を机の上においた。

 

「龍王鬼をあわよくば共に排除しようとしただろう。それがお前の敗因だ」

 

ブライの言葉にコウメイは肩を竦めた。元より龍王鬼とコウメイの考えが合うわけも無く、アースクレイドルの爆発に巻き込んで龍王鬼を亡き者にしようとしたのをブライは見抜いていた。

 

「まぁ良かろう。どの道我々は暫く地球から手を引く、戻る頃には龍王鬼も頭を冷やしているだろう。だがコウメイよ、殴られる事は覚悟しておけ。それはワシの計画を乱した罰だ」

 

「……畏まりました。大帝の温情に心より感謝します」

 

ブライの計画を乱した罰と言われればコウメイは反論出来る訳も無く、ただただ深く頭を下げた。ブライから見てもコウメイは優秀な部下だからこそ許したが、龍王鬼が地球圏に残ってしまったのはブライにとっての誤算だった。

 

(龍王鬼が来るまで待機していたあいつらの部下も地球圏に残ったとなると……ワシらの戦力はガタ落ちだな)

 

宇宙のどこかにいるであろうウザーラを求めて地球圏を出る準備をしているブライ達の元に龍王鬼達が自力で帰還する術は無く、名前持ちの鬼はいるにしろ龍王鬼達と比べれば1枚も2枚も劣る手勢では、ブライも思い切った行動に出る事が出来ない。

 

「おーい、鬼よおお! 帰ったぞぉ!」

 

「あはははははッ! あー楽しかった」

 

「ひっく。あひゃはははは」

 

どうするかと悩んでいる所にぐでんぐでんに酔い潰れた共行王達が戻って来た。コウメイは酔い潰れている3人を見て眉を顰めたがブライは小さく笑った。

 

「コウメイ、酒と食べ物を出してやれ」

 

「は、は?」

 

「龍王鬼がいないのだ。こいつらが頼みの綱になる。良いか、臍を曲げさせるなよ」

 

コウメイの返答を待たずにブライは酔い潰れている共行王達の脇を通り執務室を後にし、格納庫へと向かった。

 

「ほう。これがお前が作り出したゲッターロボか」

 

「これはこれはブライ議員。視察に来ていただけたのですか」

 

イーグレットが作業を中断し恭しく頭を下げるのを横目に、ブライは格納庫に固定されているゲッターロボを見上げる。

 

(真ゲッターに似ているな、忌々しいがこれがワシの力になるというのならばそれも良かろう)

 

まだ骨組みだけだが、ブライはそのゲッターロボを見て真ゲッターに似ていると感じた。無論細部は異なるが機体のサイズ、全体的なシルエットは紛れも無く真ゲッターに酷似していた。

 

「これはゲッターロボGをベースにしたのか?」

 

「いえ、これは巴武蔵がDC戦争時に使っていたゲッターロボをベースにしております」

 

「ほう、何故戦闘力に劣るゲッターロボをベースにした?」

 

「ゲッターロボGは確かに戦闘力に優れていますが、ゲッターD2の模造品しかなりませぬ。故にゲッターロボをベースに開発することを選びました」

 

ゲッターD2があるからゲッターロボをベースにしたと説明するイーグレットの説明を聞きながら、ブライは骨組みだけのゲッターロボを見上げる。

 

(これがお前の意志か、ゲッター線)

 

ゲッター線の意思に取り込まれたブライの記憶も持ち合わせているブライは、イーグレットが真ゲッターに酷似したゲッターロボを開発した理由を見抜いていた。自分が……いや、百鬼帝国全体が「当て馬」にされているという事実に、ブライは随分と前から気付いていた。

 

(エンペラー。ワシはそう簡単に御せぬぞ)

 

地球……いや、フラスコにやって来ている来訪者は皆武蔵をエンペラーの器とするために送り込まれている者に過ぎない。そしてそれにはブライ自身も含まれているが、ブライは当然それを受け入れるつもりは無かった。

 

【……】

 

「忌々しい奴だ」

 

「は?」

 

「いや、独り言だ。イーグレット必要な物があれば言うがよい。完成するときを楽しみにしている」

 

エンペラーの意思が格納庫に満ちている。それはこれを完成させろ、そして武蔵と戦えと命じられていることに他ならない。宇宙へウザーラを求めてやって来た事で対面したエンペラーに、自分の行動全てがエンペラーの手の上の出来事だったとしてもそれを食い破ってみせると強い決意をその瞳に宿し、ブライはゲッター線の光に包まれている骨組みだけのゲッターロボを見上げるのだった……。

 

 

 

 

 

共行王達が百鬼帝国に帰った事で、やっとグライエン達はアースクレイドルの復興についての話を始める事が出来た。

 

「とりあえず……私の私兵を出そう。旧式機ばかりだが、ここまで大破したアースクレイドルに拠点としての価値はない。十分に守りきれるはずだ」

 

「それならトロイエ隊とLB隊、それと生き残ったノイエDCの兵士も残そう。アースクレイドルは数少ない安全な僕達の拠点になる筈だ。しっかりと守ろうじゃないか」

 

「あれはどうする。共行王達が残していったコンテナは」

 

開けれるのなら開けて見せるが良いと残していったコンテナは、もし開けることが出来ればビアン達の力になるだろうとの言葉を思い出しながらグレイグが尋ねると、ビアンが冷やしたタオルを顔から退けながら顔を上げた。

 

「とりあえずはスキャンなどをしてから考える。恐らくだが、超機人の一種だと踏んでいる。リュウセイ達念動力者に話を聞いてみよう」

 

共行王たちがニマニマと笑いながら残して行った巨大な、それこそ特機が納まっているであろうコンテナ。鬼が出るか蛇が出るか、それとも仏が出るか……怪しさと危険しか感じないが、それでもアースクレイドルに残していくには惜しい思わせるコンテナにビアン達は頭を抱えていた。

 

「良いのか。ゼンガー」

 

「何がだ。レーツェル」

 

「ネート博士だ」

 

救出したネート博士に会いに行かないと言ってクロガネに残っているゼンガーにレーツェルが本当に良いのかと尋ねると、ゼンガーは手にしていた木刀を脇に置き、タオルで汗を拭った。

 

「俺達の戦いはこれからだ。浮いた事を考えている場合ではない」

 

「せめて一目見るべきではないのか?」

 

「それも良い。未練が残る、会うのならば、言葉を交わすのならば生きて戻ってからだ」

 

生きて戻りソフィアを再会する為に、あえてソフィアと会わないという選択をしたゼンガーにレーツェルは頑固な奴めと呟きかけ、続く言葉に笑みを浮かべた。

 

「それでだな。女性に贈る花は何が良いのだ? レーツェル」

 

「……フッ、そうだな。互いに生きて戻れば相談に乗ろう」

 

「すまん」

 

「良いさ、帰る理由は多い方が良いからな」

 

朴念仁のゼンガーが花を送ろうと考えている事に、レーツェルは笑いながらゼンガーの背中を軽く叩くのだった……。

 

 

 

 

アトランティスの遺産を求めて外宇宙へ向かうと一方的に伝え、地球圏を離脱した百鬼帝国をウェンドロは何の感情も宿さない目で見つめていた。

 

「遺産、遺産ねええ……は、ははははは……そんな物に頼るんだね、ブライはぁぁああ?」

 

馬鹿にするように喋り出すウェンドロの声は金きり音のように甲高く、そしてノイズに満ちた物だった。

 

「あああ……ああ、そうか、うん、そうだったんだ。あはははははッ! こんなに簡単なことだったんだねええ」

 

メキボス、アギーハ、シカログの3人はゲッターD2の装甲から採取された高純度のゲッター合金を所持していた。だがヴィガジとウェンドロは所持していなかった。それがメキボス達との命運を分けた。ウェンドロもヴィガジと同様にアインストの意思……いや、インベーダー、妖機人の三種の意思にその自我を大きく蝕まれていた。

 

「……支配、支配……ああ、そう。支配して管理しないとね。進化進化だ、進化をして……あはは、あはやはははははははッ!?」

 

既にウェンドロ・ボルクェーデという個は死んでいた。見かけはまだ人間だが身体の中は既にアインストとインベーダー細胞へ置き換わり、インベーダーとアインストの意思に交互に支配され、アインストとインベーダーの意思が疲弊した時に僅かに自我を取り戻すという事を繰り返していた。

 

「……ああああ。シャドウミラアア……クフふふふはハハハハハハッ!? 見つけた、見つけた、みいいつけたあああああッ! 僕は僕は、俺はぁ、俺はアア!! 煉獄の炎に耐えたぞおおおおおッ!?」

 

アインストの意思……だがその意思はこの世界のアインストの意思ではない、アクセル達の世界の……アインストへ寄生され、ベーオウルフという異形に成り果てたキョウスケの意思だった。アルフィミィ、アインストとインベーダーに取り込まれたウェンドロ・ボルクェーデをビーコンにして、時限の狭間を彷徨っていたアインスト・ヴォルフはこのフラスコの世界へと完全に足を踏み入れた。

 

「あああ。あああああ……忌々しい、いましいマシいいいいいいいッ!」

 

当然ウェンドロ・ボルクェーデの身体を手にしたベーオウルフはシステムXNを手に入れようとした。だがそれは出来なかった。どれ程己の分身を生み出しても、インベーダー細胞を送り出してもそのどれもがシステムXNの元へ辿り着く事は無く、そのかわりにヴィンデルを喰らったが、それでもなおシステムXNの元へは辿り着けなかった。まるで「世界」に阻まれているように突如にして消え去ってしまうのだ。その事に苛立った様に顔を掻き毟り、皮膚が剥がれ落ち、血が噴出し、本来肉である筈の場所は既にゴムのようなインベーダー細胞と蔦のようなアインスト細胞へ置き換わっていた。

 

「良いさ良いさ。僕は、俺は全部、全て何もかも手に入れる!! 次元を越える力も、進化の光も全て俺の物だぁッ!」

 

執務室の壁はおぞましい音を立て肉壁へと変わり、ウェンドロもまた肉壁の中へ取り込まれて消えていく……。

 

ドクン……ドクン……。

 

ネビーイームを完全に取り込んだアインストとインベーダー細胞は不気味な鼓動と共にウェンドロの切札であったディカステス、そしてゾヴォークの兵器を取り込み、おぞましい変異と進化を始めているのだった……。

 

 

 

 

コンソールを叩く音だけが響くレモンの自室のエアロックが開く音がした、それでもレモンは振り返らずにコンソールを叩きながら口を開いた。

 

「早く入ってきてくれない? 入らないなら出て行って欲しいわ、アクセル。ここが数少ない安全圏なのよ」

 

その言葉にアクセルは返事を返さないがエアロックが閉まった音がし、そして部屋の中に気配が1つ増えた事でアクセルが部屋の中に入って来た事が分かったレモンだが、それでも作業する手を止める事は無かった。

 

「いつからだ」

 

「何が?」

 

「いつからヴィンデルはアインストとインベーダーに食われていた?」

 

「は? ヴィンデル……食われたの?」

 

ヴィンデルがアインストとインベーダーに食われたと聞いて、レモンはやっとその手を止めて振り返った。

 

「知らないのか?」

 

「知らないも何も、ウェンドロがなんかおかしいなあって気付いて、もしかしてここ全部やばいんじゃって思ってゲッター線照射装置を作っただけで、ヴィンデルが食われたから作ったわけじゃないわよ?」

 

レモンからすればヴィンデルが食われたというのは予想外の事であり、どういうことだとアクセルに尋ねる。

 

「ヴィンデルの奴が異常だ。あれは食われた奴の初期症状に似ている」

 

「それってアインストじゃないの?」

 

「いや、虫が蠢くような音もしていた」

 

虫が蠢くような耳障りな音はインベーダーに食われた者の症状であり、それと支離滅裂な言動はアインストの寄生の初期段階。

 

「ヴィガジみたいに両方に食われたわけ……ね。さてと、最悪な状態になったけど、私の話を無視していたことに関してはどう思う?」

 

「……俺はベーオウルフを倒す」

 

「意見は曲げないわけね。それがこの結果を齎したのに」

 

シャドウミラーの理想も、そしてアクセルのこだわりも、その全てが再びこの世界に地獄を齎したとレモンに指摘されても、アクセルは己の意志を曲げなかった。その様子を見てレモンは深く溜め息を吐いて、パソコンに刺していたUSBメモリをアクセルに投げ渡した。

 

「新型のソウルゲインの機動キーよ。格納庫にはゲッター線照射装置を置いてるからアインストもインベーダーも寄生されていないわ」

 

「……すまない」

 

「謝らなくても良いわよ。止めれるタイミングはずっとあったのに止めなかったから、私の責任でもあるわ」

 

ネビーイームがインベーダーとアインストの巣窟になったのはヴィンデルに恩があるから、アクセルにまだ愛情を抱いているからと、何度も止めれるタイミングが合ったのにそれを無視したレモンにも責任があった。だからレモンは、アクセルを責める事はしなかった。

 

「あいつらの元へ行くのか?」

 

「どの面下げていくのよ、馬鹿ね。ここまで来たら最後まで付き合うわよ、ま、精々人として死ぬくらいは許して欲しいわね」

 

争乱を広げたのはシャドウミラーだ。自分達の手に負えなくなったから助けてくれなんて筋が通らないとレモンは笑い、自分の作業していたPCの初期化操作を行なった。知恵のあるインベーダーに自分達の情報が渡らないようにし、ヴァイスセイヴァーやソウルゲインの模造品が作られないようにする為の保険だった。

 

「貴方も気を抜いて食われないようにしなさいよ、アクセル」

 

「……分かっている。最後まで付き合ってくれてありがとう、レモン」

 

恐らくこれが最後の顔合わせになるだろうとアクセルもレモンも理解し、その上で恋人同士とは思えないほどあっさりとしたやり取りで最後の別れを告げた。

 

「さぁてと……これからどうなるのかしらね」

 

ウェンドロもヴィンデルもアインストとインベーダーに食われた。ネビーイームの周辺がアインストとインベーダーの巣窟になるのは時間の問題であり、恐らくそれを止める為にハガネ……いや武蔵達は動くだろう、そしてその中には自分を母と呼ぶラミアとエキドナもいる。

 

「破滅主義って訳じゃないけど……なにか楽しくなってきたわね」

 

自分達が原因で地球の終焉が近づいている。それなのにそれが何故か楽しい、いや、そうではなく自分が娘と思っている者達の成長を目の当たりに出来る事をレモンは楽しんでいた。

 

インスペクターから始まった地球を巡る戦いは百鬼帝国とシャドウミラーによって争乱が加速され、敵勢力はアインストとインベーダーへと変わった地球を巡る戦いはいま、最終局面を迎えるのだった……。

 

 

第249話 不屈の意思 その1へ続く

 

 




と言う訳でOG2のラストに向けてのラストスパートには入りたいと思います。次回は最後の味方の強化イベントと龍王鬼達がどうなったのかを書いてみようと思います。何故一緒に百鬼帝国に帰還しなかったとかですね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

スパロボDDは今回はがチャ見送り

GジェネはGガン狙いでガチャして、何故か赤ユニコーン完全体に解せぬ

FGOはガチャせず、キングハサンWコヤンでグランドアサシンを集会しております。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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