進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第250話 不屈の意思 その2

 

第250話 不屈の意思 その2

 

ゲッターD2のエネルギーの大半と引き換えに放たれたストナーサンシャインはL5宙域全域を埋め尽くしていたアインストとインベーダーを消滅させるだけではなく、幕のように宇宙空間に留まりアインストとインベーダーの進軍を押し留めていた。当然ながら永続的に効果のある物ではなく、ゲッター線の減退量から長く考えて10時間、短く考えて4時間。それがビアン達に与えられた最後の猶予であり、マオ社で急ピッチで補給・修理作業が行なわれていた。

 

「どうだ、シキシマ博士ー。4時間でゲッターのエネルギー回復しそう?」

 

「んんむ。ちっと厳しいの……ストナーサンシャインじゃったか? あれはまず使えんぞ」

 

「マジかぁ……まぁすぐに使える武装じゃないからいいけど、いざって時に使えないのは不便だな」

 

ストナーサンシャインは文字通り現在のゲッターD2の最終兵器だが、溜め時間、コントロールの難しさを考えるとおいそれと使える武器では無い。それでも使えるか、使えないかでは使える方が良いのは言うまでも無く、武蔵は何ともいえない表情を浮かべる。

 

「ストナーサンシャインを除けば宇宙空間だからエネルギーの回復は早い、あとは計画通りにことが進めば、2時間もあれば戦えるだけのエネルギーは回復するじゃろ」

 

「フルパワーは?」

 

「それは厳しいの、ライガーかポセイドンでエネルギーを温存しつつ戦えば別問題じゃが……」

 

「出し惜しみは出来ればしたくねえなあ」

 

インベーダーもアインストも無尽蔵に沸いて来る事を考えれば、出し惜しみしてる余裕などない。だがホワイトスターがインベーダーとアインストに制圧されていることを考えれば、ゲッターD2と武蔵は間違いなく突入班であり、シキシマの言う通り余力を残す必要があることは武蔵も分かっていた。

 

「せめてパイロットが後2人いればのう……」

 

「頭数を減らすか、戦力を強化するかだからなあ」

 

エキドナをドラゴン号に、ゼンガーかレーツェルをライガー号に乗せれば3人揃うが、そうなればエキドナとラミアしか操縦出来ないヴァイサーガとアンジュルグが倉庫番になり、ゲッター炉心を搭載し実質ゲッターロボと同程度の能力を持つダイゼンガーとアウセンザイターが使えなくなることを考えれば、武蔵は単独操縦を続けるしか無かった。

 

「カーウァイはどうじゃ? あやつなら乗りこなせるじゃろ?」

 

「あの人自分で先陣切るタイプですからねぇ、多分ゲッターチェンジしてくれないんですよ」

 

「ああ、相性が悪いのか」

 

カーウァイは確実に乗れるが、頭バーサーカーなのでゲッターロボの最大の攻撃パターンを失う可能性が高く、それが理由で武蔵はカーウァイにゲッターロボに乗って欲しいと言い出せなかったのだ。

 

「そういうことですねぇ。ついでにイングラムさんも同じですね。あと乗れると乗りこなせるじゃ大きな隔たりがありますし」

 

頭数だけ揃えても、気絶させてしまいパワーダウンする危険性もある。アインストとインベーダーとの戦いが控えている中では安全運転など出来るわけも無い。

 

「厳しいのう」

 

「本当ですねぇ」

 

最終決戦を控えても尚全力で戦う事が出来ないという問題を抱えている武蔵は、シキシマと揃って深い深い溜息を吐き、ゲッターD2の真向かいのハンガーへ視線を向けた。

 

「あれは大丈夫なんです?」

 

「さぁのう、ビアンがやってることはワシにはわからんが、戦力になるのは間違いないじゃろ。後あれが終われば増幅炉にして回復を早めるぞ」

 

ネオゲッターロボにゲッター炉心搭載改造を行い、ネオゲッターロボとゲッターVのゲッター炉心と直結し、ゲッターD2のゲッター線を回復させる。それがアースクレイドルとインベーダーとアインストを殲滅するのにエネルギーを使いきったゲッターD2を戦闘可能レベルまで回復させる為の、シキシマの考えたゲッターの回復方法だった。

 

「ネオゲッターとVは大丈夫なのか? その増幅炉にして」

 

「問題ない! これに関してはワシの方が専門家じゃ、どーんっと任せておけ」

 

自信満々に笑うシキシマを見て、だから不安なんだよなあっと思う武蔵の不安は的中し、一時ネオゲッターとゲッターVの炉心が爆発する寸前にまでエネルギーが高まった。

 

「だからあんたに任せるの不安なんだよ!」

 

「文句を言う暇があったら炉心を早く停止させい!」

 

「わぁってる!」

 

口論をしながらもゲッターVとネオゲッターの炉心を停止させた武蔵とシキシマだったが、1歩間違えば月の地形が変わっていたかもしれない事態に2人は額の汗を拭いながら大きく安堵の溜息を吐くのだった……。

 

 

 

 

 

 

カーウァイのゲシュペンスト・タイプSに、マオ社で製造されたXXユニットの予備パーツが急ピッチで装着されていた。

 

「これがお前が本来乗っていた機体を再現したアーマーか、ギリアム」

 

「再現度は4割ほどですが機体性能は段違いに向上しますよ。カーウァイ大佐」

 

本来はゲシュペンスト・MK-Ⅳに装着させるアーマーだが、ゲッター炉心を搭載しているゲシュペンスト・タイプSならば問題なく装着する事が可能だ。

 

「問題は慣らし運転をしている時間が無いことですが」

 

「戦ってるうちに慣らし運転を済ませる。カイ、使ってみた感想はどうだ?」

 

「ゲシュペンストの正統進化という感じですね。汎用性・武装のバリエーションどれをとってもピカイチです。ただ操縦には少しばかり癖がありますが」

 

「その程度は戦ってるうちに調整する。どうせOSもないんだろ?」

 

「はい、OSは準備が出来ていないので完全マニュアル操縦です」

 

機体の開発に時間を取られ、OSがないというギリアムの言葉にカーウァイは楽しそうに笑った。

 

「昔を思い出すな、カイ、ギリアム」

 

「俺も同じ事を考えていました」

 

「確かに懐かしいですね」

 

初期のゲシュペンストにはOSなど無く、OSを少しずつ作っていた事を考えればOSがあろうがなかろうが、機体性能が向上していれば文句はないというのがカーウァイの考えだった。

 

「ただこれは余剰パーツなのでXXユニットのリアルタイムの武装の変形は出来ませんし、恐らく使用できる回数もかなり厳しい物になりますが」

 

「下手にリアルタイム変形を組み込んで不調が出ても困る。その代わりタイプSとユニットの誤差を限りなく低く仕上げてくれ、この戦いが地球の命運を分ける。次の事など考えなくて良い」

 

「分かりました。すぐに準備を始めます」

 

アインストとインベーダーが地球に到達した瞬間に人類の負けは確定し、そしてホワイトスターを落とさなければアインストとインベーダーの無限沸きは続く。文字通りの最終決戦に後の事を考えるなというカーウァイの言葉は、暴論ではあったが間違いではなく、マオ社から応援に来ていたスタッフ達はこれが教導隊の隊長かと恐れ戦きながらSユニットの調整と設定に取り掛かった。

 

「オッハロ~ご注文の品は仕上がってるヨ~」

 

「あ、ありがとう。ラルトス」

 

独特のテンションのラルトスに、エキドナはやや引きながらもハンガーに固定されているアンジュルグ・ノワールに視線を向けた。翼が1対増え4枚翼になり、両腕には装甲と一体化したバックラー、全身の装甲も全体的に鋭利になりアンジュルグの正統強化と呼べる姿をしていた。

 

「武装は?」

 

「ラミアのアンジュルグかラ、ファントムアローを借りて来て改造してるヨ~後はゲッター合金で作ったガンランスネ!」

 

「……近接武器に銃器を組み込んだのか? 耐久度は大丈夫なのか?」

 

攻撃に使う武器に精密機器である銃器を組み込んだと聞いてエキドナは引き攣った顔で大丈夫なのかと尋ねる。

 

「YES! こういう武器大好きネ! 耐久はちょっと下がったけどねェ」

 

「戦闘には耐えれるんだろうな?」

 

「それは大丈夫ヨ、無茶な扱いをし無ければ全然大丈夫ヨ! 後はミラージュソードも改良してるシ、ゲッター線カートリッジを使う事になるけどファントムランサーや、ミラージュアローをゲッター線で発射出来るヨ」

 

色物改造ではあるがアインストやインベーダーとも戦える装備をラルトスは作り上げていた。

 

「……お前は何者なんだ。PTやAMなら分かる。だがアンジュルグは通常の機体じゃない、何故ここまで改造出来る? お前は……Wシリーズなのか?」

 

エキドナの踏み入った言葉にラルトスは瓶底眼鏡をダボダボの袖で上げた。

 

「さぁねえ~良い女には秘密が付き物ヨ~ラルちゃんまだお仕事あるから~」

 

手を振りながらエキドナに背を向けるラルトスだが、エキドナはそうはさせまいとその肩を掴んで止めた。

 

「これだけ教えてくれ、お前は敵か、それとも味方か? お前は何を知っている?」

 

「んー……んじゃ、取引ネ。貴女とラミアの願いが叶ったら私が何なのかを教えるネ! でも今はとりあえず味方ってことで我慢するヨ!」

 

これ以上は何も聞き出せないとエキドナは判断し、へらへらと笑うラルトスの肩から手を離し、もう1つのハンガーへと足を向けた。

 

「ラミア、お前のほうはどうだ?」

 

「……こっちもだな。正当に改造されている。あのラルトス・パサートという女は何者なんだ?」

 

「分からん、聞いた限りでは孤児で機械工学に秀でているという事で一時は軍に所属したこともあるらしいが……」

 

「偽造経歴か?」

 

「可能性はあるがどうも聞きだせそうに無い、機体の強化は上手く行っているなら今は目を閉じよう」

 

ギリアムやヴィレッタも警戒しているラルトスは十中八苦ラミア達の事情を知る人物だ。Wシリーズなのか、Wシリーズの開発に関わった学者なのか、それともこの世界に流れ着いたあちら側の機械を拾ったのかは不明だが……あちら側を知っている人物であるのは間違いないと、今回のヴァイサーガとアンジュルグの改造でラミアとエキドナは確信した。

 

「反マグマプラズマジェネレーターを組み込んで、その熱を利用出来る武装も追加された。アインストとインベーダーとも互角以上に戦えると思う。後は……私達の我侭が許されるかどうかだが」

 

「……許されなかったら全力で謝るとしよう。武蔵は自分が悪いと思ったら何度でも謝れば良いと言っていた」

 

エキドナの言葉にラミアは小さく噴出し、そうだなと頷いた。インベーダーとアインストとの戦いを控え、皆がそちらに意識を向けていることはわかっている。だがエキドナ達はホワイトスターにいるであろうレモン様の身を案じていた。レモン様もアインストとインベーダーに寄生されてしまったのか、まだ人間なのか、化物になっていて私達は介錯出来るのか……。

 

「ナンバーズでなくなって弱くなったな」

 

「ああ、だがそれ以上に強くなったと思う」

 

Wシリーズとしては弱くなった。だが人間としては強くなれたと思うとラミアと共に笑いあうのだった……介錯するにしろ、問答をするにしろ、私とラミアはもう1度レモン様に会わなければ前にも、後にも進めないのだから……。

 

 

 

 

レフィーナ、ショーン、テツヤ、ビアンと各艦の艦長達のいるマオ社のブリーフィングルームには、本来ならばこの場にいてはいけない龍王鬼とメキボスの姿もあった。

 

「ホワイトスターには乗り込めないと」

 

「そこまでいっちまったら俺様はお前らの敵だぜ? あの化物の足止めは引き受けてやっても良いが、それ以上は流石に駄目だろ」

 

龍王鬼一派はブライが地球圏にいないという事で共闘を聞き入れてくれていたが、それでも越えられない一線はあるという言葉にビアンは頷いた。

 

「それで構わない、我々は可能な限り無傷でホワイトスターへ辿り着かねばならない」

 

ホワイトスター周辺にはPTやAMに寄生したアインスト、インベーダーだけではなく、量産型のドラゴン、ライガー、ポセイドンの姿もあった。

 

「百鬼帝国からオリジナルのゲッターGが譲渡されてる。おそらくそいつらも寄生されてるだろうぜ」

 

「となるとゲッターノワールのように変化してる可能性もありますね」

 

メキボスからの情報に自分達が思っている以上に状況が厳しいと分かり、レフィーナも険しい表情を浮かべる。

 

「地球からの増援はどうするおつもりで?」

 

「マオ社とコロニーからの避難シャトルを守ってもらう。ホワイトスターでの戦いには着いてこられないだろうからな」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲは量産されているが、それでもアインストとインベーダーとの戦いには付いて来られないのは明白であり、ビアンのいう通り月、そしてコロニーからの避難シャトルの護衛が一番正しい選択であった。

 

「ゲッター線の幕が消えるまでは可能な限り補給と修理、それとパイロット達には休んで貰う必要がありますね」

 

「特にヒリュウ組の疲労は凄まじい、集中力と体力が切れた状態で戦うのは危険だ。無理せず休んでもらうとしよう。メキボス君、何か私達に話す事はあるかね?」

 

「6階層に転移装置がある。そいつを早めに破壊した方が良いんじゃないかと俺は思うぜ」

 

「なるほど……アインストやインベーダーが転移してくる可能性がありますからね」

 

アインスト・アルフィミィとの戦いの中に現れた巨大な腕……それがベーオウルフと呼ばれる別の世界のキョウスケであることはレフィーナ達も分かっている。転移装置が健在ならば別の世界からこちらに転移してくる可能性もあり、メキボスから転移装置の場所が伝えられたのは幸いだった。

 

「じゃあ俺らは広域攻撃で化けもん共を吹っ飛ばしてやるよ。後はお前らで頑張れ」

 

「それで構わない。お前達ならば後ろから撃つなんて真似はしないだろうからな」

 

テツヤの言葉に龍王鬼は大声で笑いながらそんなちゃちな真似はしないと告げ、瓢箪に口をつけてその中の酒を飲み大きく息を吐き、酒臭い匂いはブリーフィングルームに広がり、酒に弱いテツヤとレフィーナは眉を細めるが、そんな2人を見て龍王鬼はますます楽しそうに笑った。

 

「俺様達は応援してるぜ、後で戦うとしても今だけはな」

 

龍王鬼達が百鬼帝国に属してる限り何れ龍王鬼達とも戦う事になる。その力はビアン達は勿論テツヤ達もいやというほど知っている。だがだからこそ、今この一時でもその力を借りれるということは何よりも頼もしい事だった。

 

(だがこの戦いを終えたとしても終わりではない)

 

暗躍している謎の勢力

 

百鬼帝国

 

そしてインベーダー

 

ここでインスペクターとシャドウミラーを退けたとしてもそれで終わりではなく、次の戦いは目前であり、その戦いで間違いなく敵になるであろうビアン達に一時的とは言え力を貸すという龍王鬼の姿にビアンはブライよりも龍王鬼のほうが脅威であると考えていた。

 

(仮にブライを倒したとしても龍王鬼が生きていれば百鬼帝国は再建する。やはり龍王鬼は脅威だな)

 

強さだけではない、そのカリスマ性、覇気……どれをとっても1級品であり、ブライよりも龍王鬼が脅威であるとビアンが考えるのもある意味当然であった。

 

「まぁそんな怖い顔すんなよ。今は味方だぜ俺様はよ。んで、俺様はどうすれば良いんだ?」

 

「君達には我々がホワイトスターへ向かう為の進路の確保を頼みたい」

 

「へえ、おもしれえじゃねえか。安心しろよ、俺様達はお前達の考えている通りに動いてやるさ」

 

朗らかに笑いながら何をすれば良いんだという龍王鬼に邪気や悪意はなく、今は味方であると言う龍王鬼の言葉に嘘も偽りも無い事を感じ取ったビアンは龍王鬼が裏切ることを計算に入れず、クロガネがネビーイームに向かう為の進路の確保を龍王鬼一派に任せたいと話を切り出すのだった。そしてビアンのその堂々とした態度、裏切ると微塵も思っていないその姿勢を見て龍王鬼は面白いと笑い、ビアンの作戦通りに動く事を約束するのだった……。

 

 

第251話 魔星へ巣食う邪鬼 その1へ続く

 

 




次回はゲームで言う特殊マップです。龍虎皇鬼達を操作して、ハガネ達を特定マップへと移動させるという時機が一切出ないタイプの話を書いてみようと思います。かなり特殊な話の形式ですがたまにはこういうのも良いなと思ってチャレンジして見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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