第255話 魔狼の咆哮 その1
ホワイトスターの壁を破壊して現れたツヴァイザーゲイン・変異態が平行世界の門を開こうとしているのはイングラム達も把握していた。だがイングラム達には、ツヴァイザーゲイン・変異態が平行世界の門を開くのを防ぐだけの余力が無かった。
【【【アハハハハハ、アハハハハハッ!!!】】】
「くそがっ! 増えてるんじゃねえよッ!! いくら化けものに寄生されてもそこまで人間やめんじゃねえよッ!!」
複数の方角から響いて来る狂笑に武蔵が増えてるんじゃないと怒鳴るのは当然の事だった。アインストとインベーダーに寄生されたウェンドロとディカステス・変異態はゲッターD2、ゲッターザウルス、轟破・鉄甲鬼と龍虎王、ゲシュペンスト・XNユニット、ゲシュペンスト・タイプS、そしてRーSWORD、グレイターキン改、ダイゼンガー、アウセンザイターと戦う為に自身と全く同じ能力を持つ複製を作り出したのだ。
「ちいっ! 武蔵! 俺とギリアムは抜ける! SRXなら平行世界の門の制御に割り込める!」
「それが出来るならイングラムさんに任せます!」
「頼む! 今の俺1人では門を塞ぐことはできんがイングラムとリュウセイなら目があるッ! ここは任せるッ!」
タイムダイバーとしての能力を持つイングラムとサイコドライバーのリュウセイならば、ツヴァイザーゲイン・変異態の開こうとしている平行世界への門を閉ざせる可能性が僅かにある。
「テトラクテュス・グラマトンッ! 来い! アストラナガンッ!!」
R-SWORDの前に複数の魔法陣が展開され、そこから溢れ出した闇がR-SWORDを飲み込み、その姿をR-SWORD・シーツリヒターへと変化させる。
「出し惜しみは無しだ! 全力で行くッ!! アトラクターシャワーッ!!」
大きく開かれたシーツリヒターの翼から放たれた無数の重力弾により、ホワイトスターから顔を出していたディカステス・変異態の触手が一時的に姿を消した。
「カーウァイ大佐! ゼンガー、レーツェル! ここは任せる! 急ぐぞイングラムッ!」
再び触手が伸びるまでの間にR-SWORD・シーツリヒターとゲシュペンスト・XNユニットはホワイトスターの上から離脱し、SRXチームの元へ向かう。
【馬鹿めえええええッ!! 逃がすわけないだろうぅぅううッ!! 無限の光イイイイィッ!!】
だがウェンドロ……いや、ウェンドロに寄生しているインベーダーとアインストがインフィニテイシリンダーとゲッター炉心という2つの無限に等しいエネルギーを持つRーSWORD・シーツリヒターと平行世界の門を開ける存在であるイングラムとギリアムを見逃す訳が無く、胸部の装甲を展開し触手を伸ばす。
「馬鹿はてめえだッ! ラドラ! コウキッ!!」
「言われなくても判っている!」
「タイミングを間違えるなよッ!」
分身したディカステス・変異態の胸部から伸びた触手をゲッターD2、ゲッターザウルス、轟破・鉄甲鬼が掴み凄まじい力でそれを引っ張り寄せる。
【【【うお!?】】】
ディカステス・変異態の巨体が宙を舞い、無防備な背中がダイゼンガー達の前に晒される。
「ゼンガーさん! 使ってくれッ!」
「レーツェルッ! 使えッ!!」
ダブルトマホークと斧がダイゼンガーとアウセンザイターへと投げられ、武蔵とコウキの思惑を理解したゼンガーとレーツェルは飛んで来た斧を掴みそのままディカステス・変異態の背中へと飛び乗り、手にした獲物でディカステス・変異態をホワイトスターへ縫い付ける。
「動きは押さえたぞッ!!」
「このまま畳み掛けるぞッ!」
ダブルトマホークで昆虫標本のようにホワイトスターへ縫い付けれられたディカステス・変異態に向かってゲッタービームや、炎の渦、高出力のビーム砲が次々と撃ち込まれる。
「許せよウェンドロ。兄貴として俺がお前を終わらせてやるッ!」
その中にはウェンドロの兄であるメキボスも加わっており、そして誰よりも苛烈にディカステス・変異態を攻め立てていた。
【【【舐めるなあアアアアッ!!】】】
だが、それでもディカステス・変異態は倒せなかった。インベーダーとアインストが融合しているレベルが違うのか、内部に大量のアインストコアがあるのかは不明だが、メガフラッシャーでホワイトスターを破壊しながら立ち上がったディカステス・変異態は受けたダメージのその殆どを回復させて再び武蔵達の前に立ち塞がった。
「ちいッ! 頑丈な野郎だなッ!!」
「全くだ! これだけ畳みかけても倒せんとはッ!」
「はっ! この程度で終わる雑魚なら俺達もここまで苦戦しないだろうよ!」
「「確かにッ! ならこの後はッ!」」
「「「突っ込んでぶちのめすッ!!」」」
一斉攻撃を受けても尚健在のディカステス・変異態を睨み、獰猛な笑みを浮かべた武蔵、ラドラ、コウキの3人は迷う事無く、3機ディカステス・変異態へと突撃する。
「1人で戦わせるな! 支援に入れ! あいつの回復力は武蔵達でも手に余るぞ!」
自らも指示を出しゲッターD2と共にディカステス・変異態へと向かうゲシュペンスト・タイプS。それに続いてゼンガー達もラドラ、コウキと共にディカステス・変異態へと向かうのだった……。
両腕の袖口、肩部から伸びている2本ずつ、計4本の触手の先に展開されている高周波ブレードがグレイターキン改の目の前を高速で動き回る。直撃は疎か、掠めただけでも両断されかない攻撃の嵐には流石のメキボスも冷や汗を流した。
「くそっ! ダメージが全然通らねえッ!」
『文句を言ってる暇があったら支援しろッ! クスハ! 岩を召喚しろッ!』
『は、はい! 龍王移山法! 神州霊山ッ!!』
龍虎王の眼前に札が浮かび上がり、龍虎王が剣指を振るい空中に印を結ぶ。
『移山召喚ッ!!』
「……マジか」
メキボスの目の前で空間に穴が開き巨大な岩山が召喚される。その信じられない光景にメキボスは言葉を失う。
『コウキ博士! この後どうすれば!』
『そのまま維持していろッ!! ゲッタァァアアアア――ッ!! ビィィィイイイムッ!!!』
轟音と共に放たれたゲッタービームが宇宙の闇を焼きながら龍虎王の召喚した岩山へと直撃する。だが不思議な事にゲッタービームは岩山を破壊せず、岩山全体がゲッター線の翡翠の輝きに包まれる。
『メキボス! 砕けッ!!』
「そういうことか! 任せろッ!! サンダァァアアアアクラァァアアッシュッ!!」
裂帛の気合と共に放たれたサンダークラッシュがゲッター線に包まれた岩山を破壊し、砕かれた岩山の残骸がホワイトスターへ次々突き刺さる。
【ギャア!?】
【!?!?】
【う、うああああッ!?】
高密度のゲッター線に汚染された岩山はそれ自体がインベーダーとアインストに取っては猛毒だった。ゲッター線に汚染された岩山同士が共鳴しゲッター線の力を何倍にも引き上げ、それに耐え切れないインベーダーとアインストはホワイトスターから生まれ出ると同時に溶けるように消滅し、ディカステス・変異態もその再生力を大幅に低下させる。
『長くは持たんぞ! 今度こそ畳み掛ける!』
『了解! ブリット君お願い!』
『任せろッ!!』
龍虎王が虎龍王へと変形しディカステス・変異態へと飛び掛り、それにグレイターキン改と轟破・鉄甲鬼も続く。
【舐めるなあアアッ!!】
8本の高周波ブレードは袖口の2本と左右の肩から伸びる2本と4本までに減少したが、その代りにエネルギーの密度が跳ね上がっておりホワイトスターの壁すら切り裂きながらグレイターキン改と轟破・鉄甲鬼へ迫る。
『舐めているのは貴様だッ!』
「ひゅー! やるね! それいただきッ!!」
斧で高周波ブレードの柄、刃を発生している部分だけを切り落とすコウキの神技を見て口笛を吹いたメキボスも同じ様に柄の部分のエネルギー発生装置だけをグレイターキン改の高周波ブレードで切り落とす。
『合わせろインスペクター!』
「あいよっ! 喰らいなッ!」
ブラスターキャノンとメガバスターキャノンを続け様に胸部に撃ち込まれ、胸部が大破したディカステス・変異態は耳障りな叫び声を上げながら大きくのけぞける。
【ああああああッ!!】
高周波ブレードを失い、胸部も破壊され内部装甲を露出させられたことで苛立った様子で叫ぶウェンドロが、その視線をグレイターキン改と轟破・鉄甲鬼へ向けた。
「普段のお前なら絶対そんな真似はしなかっただろうよ」
『化物に取り込まれた者が通常の思考など出来るわけもなかろう』
目の前に虎龍王という敵がいるのにグレイターキン・改と轟破・鉄甲鬼にその視線を向ける。それは機動兵器のパイロットなら絶対にやらない悪手。インベーダーとアインストという闘争本能の塊に思考が引かれているからか、目の前の大きなダメージを与えて来たグレイターキン・改と轟破・鉄甲鬼をもっとも排除するべきと判断した。
『タイラントドリルッ!!』
【う、うがあああああああ!?!?】
隙だらけのディカステス・変異態の背中にタイラントドリルが突き刺さり、オイルとインベーダーの体液を撒き散らしながら胴体の装甲が抉り取られディカステス・変異態の胸部に風穴が開いた。
『見えた! コアだッ!』
『こっちでも確認した! 大物だな』
「あれをぶっ壊せばこっちに勝ちってか」
ディカステス・変異態の胸部、肋骨のようなパーツに守られた巨大なアインストコア。圧倒的な再生能力を持つディカステス・変異態の弱点が露出した。
【あああああッ! 殺してやる! 殺してやるウウウウッ! この下等生物共ガアアアアアアアッ!!!】
だがそれはウェンドロの自分以外を見下しているという本性を呼び起こし、アインストとインベーダーの生存本能までを強く刺激し、ディカステス・変異態をより凶暴に、より邪悪へと変異させるトリガーになってしまった。
【オオオオオオオンッ!!!】
高密度のゲッター線によって再生能力は封じられているが、進化・変異能力は健在であり、胸部を頭部とし巨大な獣へと変化したディカステス・変異態の咆哮が周囲を大きく揺らした。
『変異した所でコアは見えている! あれを壊せばあの化物は死ぬ!』
「簡単に言ってくれるぜ、でもまぁやるしかないかッ!」
『相手より早く動いてあれを破壊すれば良い、簡単な事だ!』
ディカステス・変異態の口の中に収納された巨大なアインストコア。だが弱点が露出した事をディカステス・変異態も理解しており、無数の触手が飛び交う中をグレイターキン改と轟破・鉄甲鬼、虎龍王は畏れる事無く飛び込んで行くのだった……。
アインストとインベーダーの融合態に寄生されたディカステス・変異態から分裂したディカステス・変異態はディカステス・変異態でありながら全くの別物へと変化を遂げていた。
【あは、アハハハハハッ! アハハハハハッ!!】
分裂した段階で別個体へとなったディカステス・変異態はコウキ達が戦っているディカステス・変異態とは別の変化を遂げた。右腕はゲッターザウルスの頭部を模倣したのか巨大な牙を持つ龍の頭部を持つ篭手へと変化し、左手には参式斬艦刀を模倣したであろう巨大な実体ブレード。そして背部にはランツェカノーネを模した砲塔が出現している。
「相手によって姿を変えているのかッ」
『厄介だな』
『何が厄介な物だ。こういうときは……』
姿を変化させているディカステス・変異態を厄介な敵だと判断したゼンガーとレーツェルを尻目に、ラドラはゲッターザウルスを操りディカステス・変異態に組み付かせる。
『機械なら壊せば済む、生きているなら殺せば死ぬ! 俺含めて色んな化け物を見てきたが殺せない者は見たことが無いッ!』
生きているのならば殺せば済む。余りにも蛮族的な考えではあるが、それが1番の解決策である事は間違いない事実だった。
「レーツェル! 援護を頼む!」
ダブルシュテルンでディカステス・変異態を滅多打ちにするゲッターザウルスにダイゼンガーも続く。
【喰らってやる! お前の進化の力をッ!!】
【シャアアッ!!】
『お前が喰うには俺達は上等すぎる! 瓦礫でも喰っていろッ!!』
龍の口が大口を開けてゲッターザウルスとダイゼンガーへと迫るが、その牙が2機に届くよりも先にゲッターザウルスがその尾でコウキ達が作り出したゲッター線に汚染された巨大な岩石を弾き飛ばす。
「ラドラ!? そんな事をして」
『大丈夫だッ!』
ゲッター線を与えてディカステス・変異態が更に変異する事を警戒したゼンガーだが、岩を噛み砕いた龍の首は口から白い煙を吐き出しながら苦痛にのた打ち回る。
『高密度のゲッター線にこいつらは耐えれん! 再生能力が弱まっている内に叩くぞッ!』
「承知ッ!」
再生能力が弱まったとしてもディカステス・変異態の圧倒的な攻撃力と進化の速度は健在だ。
【死ねえええええッ!!】
高密度のゲッター線を吸収して焼け爛れた腕から黄色い光線が放たれる。
『その程度で俺の命を取れると思うなッ!!』
ゲッターザウルスの胸が大きく膨れ上がり、吐きだされた炎が光線を相殺し大爆発を起こす。
「はぁぁああああああッ!!」
【斬艦刀・疾風迅雷】
その爆発、いやゲッター線を伴った炎を纏ったダイゼンガーの燃える斬艦刀を真横に構え突進する。
【そんな攻撃に当る物かッ!】
『いいや、当ってもらうぞッ!』
ダイゼンガーを迎撃しようとディカステス・変異態がエネルギー弾を乱射する。それはダイゼンガーであれど直撃すれば大きなダメージを受ける程のエネルギーが込められた攻撃だったが、ランツェカノーネのゲッター合金弾によって全て迎撃される。
「チェストオオオオオッ!!!」
ディカステス・変異態の胸に裂帛の気合と共に振るわれた斬艦刀によって真一文字の深い斬撃痕を刻み付ける。
【ギ、ギイヤアアアアアアア!?】
胸部の傷から白い煙を出しながら暴れまわるディカステス・変異態からゲッターザウルスとダイゼンガーはホワイトスターを蹴って大きく距離を取る。
「随分と苦しんでいるようだな。ラドラ」
『少し熱いが我慢出来るか?』
「問題ない、やってくれ」
『男だからな、少し熱いくらいで丁度良い』
ゲッターザウルスが吐きだした炎に斬艦刀とダブルシュテルンが突きこまれ、翡翠色に輝く炎が斬艦刀とダブルシュテルンを覆う。
『我慢比べだ。俺達と俺達の機体が限界を迎えるか』
「お前が先に消滅するかだッ!」」
ゲッター線の炎を纏えば、当然ながらゲッターザウルスとダイゼンガーもダメージを受ける。だがディカステス・変異態への有効打となるのならば、焼け死ぬかもしれない可能性などラドラとゼンガーにとっては微々たる物であり、ゲッターザウルスとダイゼンガーは炎に焼かれながらディカステス・変異態へと突貫するのだった……。
凄まじい爆発音やアインストとインベーダーの叫び声が響くホワイトスター内部を、ソウルゲインとヴァイスセイヴァーの2機は最大速度で突き進んでいた。
「アクセル。もう少しで貴方の出番よ」
6階層の転移装置はもう使えないと判断したレモンは6階層へ向かうのではなく、ディカステス・変異態がクロガネの前に出現した際に発射したメガフラッシャーの破壊痕を利用し、外へ脱出する事を考えていた。
「ちょっとアクセル聞いてる?」
『……聞いていない』
「しっかりしてよ、そんなに私の話がショックだった?」
レモンの言葉にアクセルは小さく呻き、その反応だけでレモンはアクセルの心情を理解した。
「私は何度もいったわよ。私達の世界とこの世界は違うって」
『……ああ。覚えている』
「それなのに貴方とヴィンデルは元の世界に固執した。その結果がこれよ」
世界は違えどどうしても覆せない物がある。世界の修正力とでも呼ぶべき力がある。
「キョウスケ・ナンブの代わりにヴィンデルがベーオウルフになった。今日、この日がベーオウルフの生まれた日だから」
ベーオウルフの生まれた日。逆説的に言えばこの日にベーオウルフに匹敵するアインストが生まれる。
『運が良かっただけなのか』
「多分ね」
レモンもアクセルもベーオウルフになりえた可能性があった。だが運が良かった、レモンが虎王鬼の元にいてゲッター線への理解を深めていたから作り出せた小型ゲッター炉心⋯それによってレモンとアクセルは守られたが、もしもレモンが虎王鬼からゲッター線の事を聞いて無ければ、そしてそれを利用した道具の作り方を聞いて無ければ、レモンもアクセルもヴィンデルと同じ様にアインストとインベーダーに喰われていただろう。
『……俺はどうすれば良い』
「さぁ? それは自分で決めなさいよ。私はもう決めてるけど、アクセルは自分で考えて自分で決めなさいよ。もうシャドウミラーは終わりなんだから」
迷いを見せ、どうすれば良いと問いかけて来るアクセルを突っぱね、レモンはヴァイスセイバーを進ませる。ヴィンデルがアインストとインベーダーに喰われ、ツヴァイザーゲインも乗っ取られた。その段階でシャドウミラーは完全に壊滅したと同意義であり、永遠に続く闘争の世界という理想も消えた。残されたのは自分達のせいで生まれてしまったベーオウルフと等しい存在に成り果てたヴィンデルとツヴァイザーゲイン。それを作り出した者としての責任を果たそうと前に進むレモンに対し、アクセルはまだその場で足踏みを続けていた。
「……行かなければ」
ヴァイスセイヴァーとレモンが姿を消してからしばし時がすぎた後、外から響いて来る狂笑にアクセルは再び前へ進み始めた。その目には、決して消す事の出来ない憎悪の炎が宿っているのだった……。
第256話 魔狼の咆哮 その2へ続く
次回はツヴァイザーゲイン・変異態との戦いを書いていこうと思います。ウェンドロから分裂したウェンドロ BとCですが、分裂した段階で別個体なので進化と変異の先も違うという風にしてみました。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い