第38話 ゲッターロボ対ゲッターロボG その4
シャイン皇女を助けると言って1人でゲッタードラゴンと対峙する事を選んだ武蔵……それはこの1分にも満たないやりとりで正解だったと確信させていた。
(強い……これが新ゲッターロボ)
自分が死んでから完成した新ゲッターロボ。ゲッターロボのデータを下に作られていることもあり、1つ1つが自分が乗るゲッターよりもはるかに強力になっている。
「ゲッタートマホークッ!!」
「……ダブルトマホーク」
振り下ろされるゲッター1よりも巨大な両刃のゲッタートマホーク。それを受け止めるが、ゲッタードラゴンのパワーは凄まじくゲッターの足が地面にめり込む
「くっ! このッ!!!」
ドラゴンの口元……ゲッター1の時のリョウと同じくそこに小柄な人影が見えている。その人影が恐らく、シャイン皇女なのだと判断し、腕の側面についている刃「ゲッターレザー」を振るう。トマホークで鍔迫り合いをしている中でのリズムの変化、通常ならば対応しきれないはず……なのに、その攻撃は空を切る。この理解不能な回避に武蔵も流石に頭を抱えた
(まただ! どうなってやがるッ!?)
見えていると言わんばかりにゲッター1の攻撃が全て回避される。どれほど考えても、どんな奇襲であっても完全に対応される
「……攻撃回避……反撃します」
「ぐっ、うおおおッ!!」
ゲッターレザーよりも強力なスピンカッターの回転する刃が肩にめり込み、それを両手で掴む。だが地力の差は明らかで徐々に、徐々にだがスピンカッターは深くゲッター1の肩にめり込んでいく
「我慢してくれよッ!!」
流石に無傷で皇女を助けるのは不可能だと判断し、膝を振り上げゲッタードラゴンの背部を蹴りつけようとする。だが、ゲッタードラゴンはそれを飛び退いて躱す。
「おりゃあッ!!!」
「……! 被弾……損傷軽微……」
回避した直後に繰り出したゲッターの右拳が胴体を穿つ、それは戦いが始まってから初めてと言えるクリーンヒットだった
(……今なんで当たった)
今まで回避され続けていたのに、今のは何故か命中した。命中したのに何か理由があるのかもしれない……それがシャイン皇女を助けるヒントになるかもしれない
「……ゲッタービーム」
「オープンゲット!!!!」
地面を焼きながら迫ってきたゲッタービーム。炉心に直結しているゲッター1よりも出力の高いゲッタービームを見て、武蔵は即座にレバーを引いてゲットマシンに分離する。
「ちっ! 追ってきやがるッ!!」
向こうもゲットマシンに分離して追いかけてくる。それだけゲッターを脅威と思っているのか、それともアードラーの爺に命令されているのかは判らないがPTを狙わず、ゲッターだけを追いかけてくるのは都合が良い。問題はゲッタードラゴンをどうやって行動不能にしてパイロットであるシャイン皇女を助けるかだ
「チェンジッ! ゲッター2ッ!!」
急反転し、降下しながらゲッター2にチェンジする。元々ゲッター2は飛行に適していないが、背中と足のブースターを全開にすれば短時間なら飛行は可能だ。最大加速で急降下し、地表に戻ろうとする。
「……チェンジ……ライガー」
背後でライガーに合体し、高速で迫ってくる。ゲッター2のほうが先に降下しているのに、ライガーはもう背後に迫っている。
「ちいっ!!!」
「……目標……補足」
反転しドリルアームを突き出すゲッター2。高速回転するドリルがぶつかり合い火花を散らす、だが飛行能力がライガーとは格段に劣るゲッター2はバランスを崩し、がら空きの胴にチェーンアタックが叩き込まれる。
「ぐっはっ!? なろおッ!! オープンゲットッ!!」
地面に叩きつけられる前に分離し、レバーをフルスロットルに叩き込み地面に衝突する寸前にゲッター3にチェンジする
「捕まえたぁッ! 必殺! 大雪山おろしッ!!!」
追いかけてきたライガーのドリルを掴み、大雪山おろしに持ち込む。局地的に発生した竜巻はライガーを完全に捕える、短いやり取りだが、ゲッターよりもドラゴンの方が遥かに装甲が厚い。この一撃でドラゴンが撃沈されることは無いと確信したからこその大雪山おろしだ。
「……オープンゲット……チェンジ……ポセイドン」
投げ飛ばされながら空中でゲッターポセイドンにチェンジし、胸部のパーツをパージし、そこから放たれた暴風がゲッター3に叩きつけられる
「ぐっ……うおおおおおッ!?!?」
ゲッターアームを地面に叩きつけ、吹き飛ばされないように堪えていたゲッター3だが耐え切れず吹き飛ばされ、ジュネーブの基地に背中から叩きつけられる。
「……ストロング……ミサイル」
「ぐっ! ゲッターミサイルッ!!!」
投げ付けられるストロングミサイルを撃墜するべくゲッターミサイルを放つゲッター3。それは武蔵の思惑通りストロングミサイルの撃墜に成功する。だが爆炎を突っ切ってドラゴンが姿を見せる
「……ゲッタービーム」
「なっ!? もうチェンジしているだとッ!? くそッ! オープンゲットッ!!!」
戦いの中でドラゴンの動きは徐々に良くなっていた、量産型ドラゴンを破壊しながら迫ってくるゲッタービームを見て、武蔵は即座にオープンゲットを選択し、ペダルを全力で踏み込む。ゲッター1とゲッタードラゴンが戦闘を始めて約2分……武蔵とシャインに残された時間はもう僅かしか残されていなかった……
ジュネーブの放棄された基地の上でコーウェンとスティンガーはゲッターロボとゲッターロボGの戦いを見つめていた。
「こ、コーウェン君。このままでは駄目じゃないかな?」
「そうだねえ……些か想定外だねえ」
ゲッターロボとゲッターロボGの戦いはゲッターロボが完全に劣勢に追い込まれている。ゲッター線増幅装置のおかげでゲッターロボGの出力はゲッターロボの10倍パワーアップしているが、それでも2人の予想では6ー4でゲッターロボが有利だと思っていた
「やはり流竜馬と神隼人と比べれば、巴武蔵は劣るということだな」
「む、武蔵はやはり役立たずなんだね」
ゲッター線には多少選ばれているようだが、やはりあの2人と比べれば劣る。コーウェンとスティンガーはそう結論付けた
「でもこのままじゃあ、篝火の種火も用意できないね」
「わ、我らの同胞を再び地球に呼び寄せるには、前よりも強力な篝火が必要だからね」
ゲッターロボGを破壊し、10倍に圧縮された炉心から零れたゲッター線をばら撒く事で同胞であるインベーダーを呼び寄せようとしていたのに、このままでは計画が狂うと2人は顔を歪める。
「ゲッターロボの炉心で足りるだろうか」
「む、難しいかもしれないね」
ゲッターロボの炉心で全ての始まりのインベーダーが生まれた。だが、完全に進化したインベーダーを呼ぶにはゲッターロボの炉心では明らかに力不足だ。
「まぁ良いさ、ゲッターロボが破壊されたら、私達でゲッターロボGを破壊すればいい。そうだろう? スティンガー君」
「そ、そうだね。コーウェン君」
計画は狂っているが、まだまだ修正の範囲内だと2人は笑う、そしてその2人の邪悪な意思に呼応するかのように戦況は再び変化する。
「む! みたまえコーウェン君!」
「おお……あれぞ正にゲッター線の意思ッ!!!」
量産型ドラゴンの1機に吸い込まれていくゲッター線。それはまだ微々たる物だが、この調子で行けば新西暦のエンジンをベースにしたゲッター炉心の完成だって夢ではない
『ヒャはハハはハハは! 死ねええ!!』
『な、なんだ!? 急に動きが!』
粗悪な複製品と思っていた量産型ドラゴン。それにゲッター線がもぐりこむ事で量産型ドラゴンはゲッターロボGに進化する
「しかしだ。不安要素もあるねえ、ゲッター線がアレをGと勘違いしないだろうか?」
「む、た、確かにその可能性はあるねえ」
ゲッター線は戦車などで運用すれば進化は始まらない、だが人型になれば話は違う。形の無いゲッター線が人の形を持つことで凄まじい勢いで進化が始まるのだ。コーウェンとスティンガーの興味はゲッターロボ対ゲッターロボGから、量産型ドラゴンが量産型ゲッターロボGに進化するのか、それに完全に移っていた。だから2人は気付かなかったのだ、量産型ドラゴンに吸い込まれる以上のゲッター線がゲッターロボに吸い込まれて行くことに……
扱いなれていないゲッター1やゲッター2では勝機はない。そう判断した武蔵は自分がもっとも得意とするゲッター3での勝負に出ることにした。残された時間は余りに短い、強引にでもゲッタードラゴンを無力化する事を決めたのだ
「チェンジ! ゲッタァアアアースリーッ!!」
「……チェンジ……ポセイドン」
ゲッター3にチェンジした瞬間、今まで純粋な機体性能の差に驚愕するばかりで気付かなかったゲッタードラゴンの弱点に気付いた
「……フィンガーネット」
「オープンゲットッ!!」
ポセイドンからネットが放たれると同時に、分離し再び上空へ逃れる。ポセイドンから距離を取りながら、武蔵は間違いないと心の中で呟いた
(遅かった……)
ゲッター3にチェンジしてから、3秒にも満たない時間だが確かに合体のタイミングが遅れていた。そこに武蔵は勝機を見出す、だがそれと同時に別の不安が湧き上がる
(オイラ1人で出来るのか?)
これがもしリョウや隼人と一緒の3人乗りならば出来るという自信があった。だがイーグル、ジャガーが自動操縦……いくら武蔵がゲッターになれてもいても成功する確率は低い……
「武蔵! 急げ! 最早一刻の猶予は無いぞッ!」
イングラムの通信に武蔵は決断するしかなかった。量産型ドラゴンやライガーを押し留めてくれているイングラム達、それがどれだけ厳しいことなのかは武蔵が一番良く知っている
「やってやる! やってやるさ!!」
もう悩んでいる時間も、躊躇っている時間も無い。これが正真正銘最後のチャンス……これを逃す訳には行かない、失敗したらと思うと震えてくる手を闘志で押さえ込みレバーを握り締める
「チェンジッ! ゲッタァアアアッ!! ワンッ!!!」
グレイストークのブリッジでアードラーは武蔵の叫びを聞いて嘲笑を浮かべた。
「ヒッヒヒッ……どうもまだ力の差が判らんようじゃな、チェンジドラゴンじゃ」
「了解です、チェンジドラゴン」
グレイストークからの指令でシャイン皇女もチェンジドラゴンと呟き、レバーを操作する。6機のゲットマシンが宙を舞う
(ぐっぐぐぐうっ!!!)
ベアー号のエンジンを全開にし、ゲッタードラゴンのチェンジが完了するまでにその間に割り込もうとする。だが自動操縦のイーグルとジャガーは武蔵の行動についてこれない
(だ、駄目だ! 今のまま突っ込んだら……ッ!)
ベアー号は既に変形を完了しているがイーグルとジャガーはまだ変形態勢にも入っていない。コックピットの中でタイマーがレッドアラートを鳴らす、それはこのタイミングでは合体できないと言う事を示しており……それが武蔵を焦らせる。これに失敗すれば、シャイン皇女は助けられない。だがこのまま突っ込めば合体が成功する可能性は限りなく低い……助けたいのに助けることが出来ない、そのことが武蔵を焦らせ、そしてその焦りは武蔵ではありえないミスを呼ぶ
「しまっ!?」
ジャガー号との合体に失敗し、ジャガー号とベアー号が螺旋回転をしながら降下する。螺旋回転する視界の隅でポセイドンとライガーが合体し、ドラゴンの胴体と脚部が合体するのが見えた
「くそっ! くそッ!!! くそおおおおッ!!!!!!」
ベアー号のコックピットの中で武蔵は何度も何度も叫ぶ、自分のミスでやっと見つけたシャイン皇女を助ける機会を手放してしまった。不甲斐無い自分への怒りで武蔵はどうにかなってしまいそうだった……
『あきらめるなッ! 巴武蔵ッ!!!』
『まだよ! まだ間に合うッ!!』
自分を叱責する男の声と女の声がベアー号のコックピットに響いた。
「ミチルさん!?」
男の声は判らないが、確かに女の声はミチルだった。その声だけは聞き違えない、紛れも無く今の声はミチルだった。そして無人の筈のイーグルとジャガーには誰かの半透明の後姿が映し出され、操縦桿を握っている姿が見えた……
(これは……あの時の……)
3連続のゲッターチェンジの時と同じだ。イーグルとジャガーが無人機なのに、誰かが乗っているような感覚。だがそれは今までよりも遥かに強く、そしてその人物の声までもがはっきりと聞えた
『もう1度合体だ!』
『武蔵君! 貴方なら出来る! 自分を信じてッ!』
諦めかけた気持ちに再び火が着く、まだだ、まだ失敗した訳じゃない。思わず手放してしまったベアー号の操縦桿を再び握り締め、雄叫びを上げる
『『「チェンジッ!!! ゲッタァアアアアアーッ!!!!」』』
ドラゴン号と胴体は合体させる訳には行かない、今までの自動操縦とは違う。イーグル、ジャガーも恐ろしい速度で加速していく……。
「ヒッヒッヒ、無駄じゃ無駄じゃ」
合体準備を終えているドラゴン号を見てアードラーが嘲笑を上げた。何をするつもりかは判らないが、合体に失敗したゲッターロボなど恐れるに足りない……アードラーはそう思っていたが、次の光景にその笑みを凍らせた。
「ば、馬鹿なッ!? 何が! ええいッ! 合体はまだかッ!?」
ドラゴン号達とゲットマシンの距離は離れていた、だが突如翡翠色の光に包まれたゲットマシンはその距離を一気に縮め、ライガー号とポセイドン号と合体し、胴体部と脚部へと変形し、ドラゴン号と合体しようとしていた2機の間にその機首を滑り込ませた。
「合体完了まで後2秒ですッ! 駄目だ! 合体に割り込まれるッ!?」
『『「ワンッ!!!!」』』
ドラゴン号とライガー号の間に割り込みながら合体に成功したゲッター1はドラゴン号のブースターを掴み、足でライガー号を押さえ込んでいた
「今助けてやるッ! もう少しだけ頑張れよッ!!!」
ベアー号のコックピットを開き、ドラゴン号に飛び移る。整備用に設置されている取っ手を掴み武蔵は恐ろしい勢いでドラゴン号のコックピットへと向かう
「……合体失敗、エラー……発生……システムを一時フリーズに移行します」
合体が失敗した時のパターン等アードラーは想定しておらず、ゲイムシステムは深刻なエラーに対応出来ずそのシステムを一時的に停止させる。
「な、何じゃと!? ゲッターロボGの合体をあんな力技で妨害するとは!?」
想定外の行動、ゲッターの合体に割り込み合体を失敗させるなんて誰も考えても見なかった
「ぐぐ……大切な実験道具を……ええい! 貴様らに奪われるくらいならこのワシがッ!! 目標ゲッターロボ、ゲッターロボG! 照準あわせッ!!」
武蔵がドラゴン号のコックピットに辿り着いたのを見て、アードラーはグレイストークの照準をゲッターロボとゲッターロボGに向けろと叫ぶ、だが照準を合わせる為に防衛のガーリオンがグレイストークの正面から移動する。それは攻撃するタイミングを計っていたリリーを始めとした、アードラーの隙を伺っていた者達が動き出す最大のチャンスとなった。
「……これ以上、あの男に非道な真似をさせる訳にはいきませんッ! 主砲。発射用意! 目標、グレイストークッ!!」
リリーの乗るストークの主砲がグレイストークを側面から撃ち抜く、それにより主砲は狙いを大きく逸らす。そしてその隙に武蔵はドラゴンの口元に辿り着いていた。
「こいつが本当にゲッターの後継機ならッ!!」
キャノピーの側面に僅かな窪みを見つける、武蔵はその窪みに手を突っ込み下にずらす。するとコックピットを開放するレバーが現れた、武蔵は強風に煽られながらもレバーを掴みそれを全力で降ろす。操作に反応し音を立てて開放されるゲッタードラゴンのコックピット、その中に武蔵は身体を滑り込ませる
「……う……うう……だ……誰?」
ゲイムシステムがフリーズした事で意識を取り戻したシャインが焦点の合わない目を武蔵に向け、何者かと問いかける
「あんたを助けに来たんだよ、皇女様。ちょっくら失礼するぜ」
背中に背負っていた日本刀を抜き放ち、シャインが着ている強化スーツとゲッタードラゴンを繋いでいるパイプを切り捨て、ヘルメットも脱がして武蔵はぐったりしているシャインを抱き上げる。その間もリリーの乗るストークはグレイストークへの砲撃を繰り返す
「「!!」」
ドラゴンとライガーが反乱と判断し、ダブルトマホークやライガーミサイルがストークに向かって放たれるが、リリー達は一切怯まずグレイストークへの攻撃を繰り返す
「今の内です! ライディース様! レオナ! 皇女を助けなさい!!」
ゲッタードラゴンから少女を背負ったままゲッターに戻るのは武蔵でも不可能だ。
「!! リリー中佐……!? 感謝しますッ!!!」
リリーの言葉で我に帰り、R-2がゲッターに駆け寄る
「武蔵! シャイン皇女を!」
「ライか! 頼んだッ!!!」
ドラゴンの口元に向かって伸ばされたR-2の腕に飛び乗る武蔵。その掌にシャイン皇女を乗せ、自分はそのまま掌を足場にしてゲッターロボに向かって飛ぶ
「よっしゃあッ!!」
ベアー号に飛び移ると素早く乗り込みゲッターロボを再起動させる。パイロットを失ったことで機能を停止したゲッタードラゴンの頭部に拳を叩き込みコックピットを破壊し、そこから更にゲッタービームでライガーとポセイドン号を吹き飛ばし、2度とゲッターを悪用させまいとゲッタートマホークでライガー号、ポセイドン号を地面へ磔にする。
「よし、シャイン皇女の救出とゲッタードラゴンの破壊は完了した」
「ふーやれやれ。あのストークが隙を作ってくれたおかげだな」
最も重要なシャイン皇女の救出に成功し、ハガネとヒリュウ改のPT隊にも安堵の空気が広がる。
「リリー中佐……あなたは……」
「気にすることはありません、これは……総司令から私に与えられた使命なのです」
リリーの言葉がオープンチャンネルで告げられる。
「使命じゃと!? うぬぬ!! 最初からそのつもりでワシの元に来おったのか!!!」
リリーの妨害で虎の子であるゲッタードラゴンも、シャイン皇女も失いアードラーが激昂する。
「許せん! 裏切り者は死ねえい!!!」
グレイストークの強化された主砲がストークに向けられる。ドラゴン、ライガー、ポセイドンの攻撃を受けていたストークに避ける余力は無い。今正にグレイストークの主砲が放たれようとした時、黒い風が吹いた……
「トロンベよッ! 今が駆け抜ける時ッ!!! シュツルム・アングリフ……突撃ィッ!!!!」
アルプス山脈を強行突破してきた高機動型ガーリオンがグレイストークに全速力で突っ込み、グレイストークは爆発を繰り返し、大きく後退する。
「ぐおおおッ!? き、貴様! ワシが誰だか判っているのかぁ! エルザムゥゥッ!!!!」
漆黒のガーリオンがストークを庇うように滞空する。その姿を見てアードラーは唾を撒き散らしながらエルザムの名を叫ぶのだった……
リリーはストークのブリッジで困惑していた。今この場にいるはずの無い機体……漆黒のカラーリングにブランシュタイン家の紋章……それを呆然とした表情で見つめる。
『リリー中佐、聞えるか』
「エルザム様なのですか……何故ここに……」
消息不明だったエルザムがここにいるはずが無い、誰かがエルザムの機体に乗っていると思っていたのだが、エルザム直々の声にあのガーリオンに乗っている人物がエルザムだとリリーは確信した。
『こんな所で貴方を死なせる訳には行かない、我が父の本意を知る貴女達には、生きて私達に協力して欲しいと思ったからだ』
エルザムの言葉にマイヤーの意思を継ぎ、殉死する事を決意していたリリー達の心に迷いが生まれた。
『ここは私と私の親友に任せてくれ、そうだろう? ゼンガー』
今まで姿を見せなかったグルンガスト零式がエルザムのガーリオンの隣に立ち、リリー達のストークをその背に庇うように並び立つ
「貴方だったのですね、ゼンガー・ゾンボルト……」
今まで消息不明だったエルザムがこのタイミングで現れた。それは、リリー達の決意を誰かが話したとしか思えなかった。そしてそれはエルザムと親友であるゼンガー・ゾンボルト以外ありえなかった。
『……はい、リリー中佐。貴女が死ぬにはまだ早い、だからエルザムに助けを求めました』
ゼンガーはリリーの責める様な口調に自分がエルザムを呼んだ事を認めた。
『リリー中佐。ゼンガーを責めないで欲しい、我が父とビアン総帥の真意を知り、そしてその意思に殉ずる覚悟を持つのならば、死なずに協力して欲しいと思ったのは私なのだから』
エルザムに言われれば、リリーは口を噤むことしか出来ない。
『死を持ってマイヤー司令の遺志に殉じるのではなく、生きてマイヤー司令の遺志を継いで欲しいと愚考した事をお許しください』
そしてゼンガーの言葉には自分の身を案じ、そしてマイヤーの遺志を継いで欲しいと言う願いが感じ取れた
「……エルザム様、ゼンガー少佐。私達は死してマイヤー司令の遺志に殉ずる事を決めておりました……ですが……生きてその遺志を継げと言うのならば……私達にマイヤー司令を護れなかったという汚名をそそぐ機会を頂きたいと思います」
リリーはそう告げるとストークを反転させ、ジュネーブから高速で離脱していく。ドラゴンとライガーがそれを追おうとするがガーリオントロンベとグルンガスト零式によって阻まれる。
「ややこしいときに出てきたな」
「イルム中尉! 様子がおかしい待ってくれ」
グルンガスト零式とガーリオントロンベが同時に現れた。乱戦のこの状態で、エースパイロットが2人も増えた。量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンと戦わなければならないのに状況が更に厄介になった。イルムがグルンガストを前に進ませようとしたが、それはキョウスケによって制された
「どこで油を売っておった! ゼンガー!! じゃがまぁ良い! 今すぐに裏切り者を斬れ! 斬り捨てろ! そうすれば不問としてやる! ええい! どうした! ワシの命令が聞けんのか!「黙れッ!! そして聞けッ!!!」
アードラーのオープンチャンネルで告げられる言葉をゼンガーは鋭い一喝で止める。その凄まじい覇気と威圧感にアードラーは言葉を失った。アードラーのような小心者には耐える事が出来ない覇気に満ちた叫びだった……
「今こそ使命を果たす時ッ!!!」
「使命じゃと!? 貴様何を言っている!?」
零式斬艦刀をグレイストークに向けながらゼンガーは力強く叫ぶ
「我が使命とは異星人に対抗しうる戦力を見出し、鍛え上げる事ッ!!」
自分達を裏切ったとは思いたくなかったブリットがその叫びに笑みを浮かべる
「! やっぱり、隊長は…!」
「もう、回りくどいわねえ……だけど……時は来たみたいね」
「器用に立ち回れる男でもない……それは俺達も同じだがな」
ゼンガーの部下だったキョウスケもエクセレンもそれぞれの機体の中で笑みを浮かべた。何度も敵として戦った……だが、ゼンガーが自分達を裏切ったとは思っていなかったからだ。
「そして、アードラー! お前達のように本来の目的を見失い、私欲に走るDCの残党を倒す事ッ! その為に俺は裏切り者の汚名を受け、数多くの同胞の犠牲を乗り越えて、ここまで来たッ!!」
「ふん……貴様達など、所詮ビアンやマイヤーの亡霊に過ぎぬわ」
ゼンガーの気迫に飲み込まれながらもアードラーはビアンとマイヤーを馬鹿にする言葉を告げる。
「黙れッ!!! そして聞けッ!!!! 我が名はゼンガーッ!! ゼンガー・ゾンボルト!! 悪を断つ剣なりッ!!! 大義を失ったDCは! 今日この地で、零式斬艦刀によって潰えるのだッ!!!」
「ぼ、亡霊風情が! 調子に乗りおって!! 死ぬのは貴様らの方じゃ!! 行け! ドラゴン! あやつらを倒すのじゃあッ!!!」
アードラーは半狂乱なって零式とガーリオン・トロンベに量産型ドラゴン達を差し向ける。
「おっと、オイラを忘れてもらっちゃあ困るなッ!! ゲッタービィィムッ!!!!!」
再起動したゲッターロボのスパイラルゲッタービームが背後から量産型ドラゴン達を貫き、爆発させる。オリジナルのゲッタードラゴンならまだしも、新西暦の技術で作られた量産型ドラゴン達にゲッタービームに耐えるだけの装甲は無かった。ガーリオン・トロンべと零式の間に並び立つゲッターロボの姿にアードラーは引き攣った声を上げた。
「笑止! 貴様の地獄への旅路は我がグルンガスト零式が案内つかまつるッ!!!」
零式斬艦刀の切っ先がブリッジに向けられているのをみて、アードラーは震え上がり艦長席に逃げるようにすわり、残っている量産型ドラゴン達を出撃させろと叫ぶ
「ゼンガー……いや、ゼンガー隊長」
「キョウスケ……俺を隊長と呼ぶか……俺の今までの行いを許せとは言わん。だが今は眼前の敵を全て切り捨てるのみッ!!!」
「了解……!!!」
互いに言いたいことはある、だがそれをキョウスケもゼンガーも言うことは無く、グレイストーク、ライノセラスから再出撃する量産型ドラゴンやライガーに向かってリボルビングステークと零式斬艦刀の切っ先を向けるのだった……
ガーリオン・トロンベ……いや高機動型ガーリオンのコックピットでエルザムは一瞬笑みを浮かべたが、すぐにその顔を歪める。一発限りとは聞いていたが、ハイソニックブレイカーでガーリオンの中身はボロボロ、辛うじて浮遊していると言う状況だった。かと言って離脱するだけの燃料も無い
「ゼンガー。悪いが少しばかり時間を稼いでくれ」
『……どうしたのだ?』
怪訝そうなゼンガーにエルザムは今のガーリオンの状況を説明し、戦闘にもこの場からの離脱も出来ないと告げる。
『どうするつもりだ。流石の俺でも、お前を護りながらでは戦えんぞ』
「ふっ、その必要は無いさ友よ。少しだけ、そう、機体を乗り換える時間を稼いでくれれば良い」
零式とガーリオンの間に立つゲッターロボに視線を向けるガーリオン、それを見てゼンガーは心得たと返事を返す
「斬ッ! 艦ッ!! 刀ッ!!! 大ッ! 車ッ!! りぃぃぃんッ!!!!!」
零式斬艦刀がドラゴンとライガーに向かって投げ付けられる。高速で迫る斬艦刀にドラゴンやライガーのAIも危険だと判断したのか、一時離脱して斬艦刀を回避する
「武蔵君! 私をジャガー号に!」
「え!? で、でも大丈夫なんですか!?」
まさかジャガー号に乗せてくれと言われると思っていなかった武蔵は逆に大丈夫なんですかと尋ねる。だがエルザムは既にガーリオンのコックピットを開放し、乗り移る準備をしている。それを見た武蔵はゲッターの手をガーリオンに向けエルザムが乗り移りやすいようにし、ジャガー号のコックピットを開放する。その中に身体を滑り込ませたエルザムはジャガー号の操縦桿を握り締める
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、この新型のパイロットスーツならゲッターにも耐えられるッ!」
自信満々に告げるエルザムに武蔵は判りましたと返事を返す、エルザムがゲッターロボのシミュレーターに何時間も篭もっていたのは知っている。ここまで言い切るのならば大丈夫だろう武蔵はそう判断した
「じゃあ行きますよッ!」
「ああ! 私に遠慮せずに全力で行けッ!!!」
2人目のパイロットが乗り込んだゲッターロボの目が力強く輝き、ゲッターウィングと叫んだ武蔵の叫びが周囲に響き渡りゲッターロボの巨体は宙を舞い、ドラゴン達へと向かっていくのだった……
第39話 ゲッターロボ対ゲッターロボG その5へ続く
ゲッター1でゲッタードラゴンの合体を妨害するのは、漫画版真ゲッターロボの「ゲッターロボ対ゲッターロボG」と世界最後の日の「メタルビーストドラゴン対真ゲッター」のシーンが好きなのでそこを使わせていただきました。次回は決着まで書いていこうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い