第261話 次元の狭間 その3
ディカステスの面影を残したまま、アインストの鎧に似た生体装甲と関節部を全てインベーダー細胞へと置換え、より強靭により凶悪に進化した。ディカステス・変異態は本来ならばダイゼンガーやアウセンザイター、ゲッターザウルスや轟破鉄甲鬼が相手をするような相手であり、マグマ原子炉で稼働しているヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントやプラズマボムスと小型ゲッター炉心で稼働しているネオゲッターロボでは火力は勿論、装甲にも不安がある。短期決戦によるコアの破壊……それだけがリョウトとバンの唯一の勝ち筋だった。
「突っ込むぞッ! 続けッ!!」
『了解!! リオ、行くよ!』
『あたしは大丈夫ッ! 行こうリョウト君!』
ディカステス・変異態から放たれるエネルギーの嵐は一発でもまともに被弾すればその瞬間が終わりだ。だがその圧倒的な破壊の嵐にバンもリョウトも畏れる事無く、真っ向から身を投じていた。
((ここで引いたら、ここで怯えたら、何を守れる、何を救えるッ!))
立場も年齢も何もかも違うがバンとリョウトの胸中は同じだった。ここで逃げたら、ここで臆したら、何も守れない、何も救えない。生きる為に恐怖心は必要だ。だがそれだけでは駄目なのだ、勇気を持って恐怖を捻じ伏せる。
「うぉおおおおおッ!!」
ネオゲッターの両拳に装着されたゲッター合金製のナックルガードが翡翠色の輝きを宿し、迫り来るエネルギー弾を殴り飛ばす。
『バン大佐! 先に前へッ!』
「了解したッ!!」
ヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントが作り出した炎の壁を盾にし、そして両腕で頭部を守りながらネオゲッターとバンはディカステス・変異態との距離を詰める。
(まずは距離を詰めなければ話にならんッ!)
ネオゲッターもヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントも近接距離特化の機体だ。まずは懐まで飛び込む、それが出来なければバンとリョウトに勝機はない。
「気張れよ! 歯を食いしばって意識を保てッ!」
ジャレッドとオーギュストから返事はない、特殊パイロットスーツに身を包み、意地と気合で操縦桿を握っているだけの2人に返事を返す気力は無い、だがその眼だけは爛々と輝き不屈をこれでもかと訴えていた。
「ショルダーミサイルッ!!!」
音を立てて開いた肩の装甲から発射されるミサイルの雨がディカステス・変異態へと向かう。
『降下させるぞ、受け取れッ!』
そのミサイルの雨に紛れ、ヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントの頭上を通過したベルガリオンがなにかを降下させる。
【はは、はははははははッ!! は……が?】
ディカステス・変異態に対して余りにも小さいミサイルによる反撃を嘲笑うかのようにウェンドロの狂笑が響くが、その笑いは次の瞬間には凍り付いていた。
『狙いは外さない! いっけええッ!!!』
ヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントが使うにしても巨大すぎるビームライフルの砲身からは翡翠色の輝きが漏れ出し、徐々にその砲身に亀裂が走る。ビアン達が作成した試作型のゲッター線を利用した兵器の1つ、メガゲッタービームキャノンの引き金が引かれ、翡翠色の輝き……いや、恐竜――それもティラノザウルスが大きく口を開けた幻を伴った一撃が、ディカステス・変異態のバリアに文字通り喰らいついた。
オオオオオンッ!!!!
リョウトの闘志と勝つという意志に呼応したマグマ原子炉が唸り声を上げ、バリアがティラノザウルスの牙によって噛み砕かれ、その直後にメガゲッタービームキャノンの閃光がディカステス・変異態の左半身を飲み込んだ。
【クッ!? は、ハハハハハハハハッ!】
半身が潰されてもディカステス・変異態から響くのは狂笑だけ、ウェンドロの意志は4分割され希薄になっており、このディカステス・変異態へ残されているのは地球人を下等な存在と見下している傲慢な部分だけだった。だから気付かない、いや、インベーダーとアインスト細胞による回復力があるからコアを一撃で砕かれなければ良い、防御はバリアを再展開すれば良いと考え、即座に反撃に動いたディカステス・変異態だったが、展開されるはずのバリアは何時までも再展開されなかった。
「この距離ならバリアは張れないなッ!」
バリアとは基本的に異物を拒む物である。接触するほどにネオゲッターロボが接近していればネオゲッターロボを異物と認識し、バリアは展開されない。そんな物はバリアを展開する能力を持つパイロットの基本的な知識だが、インベーダーとアインストにそんな基本を理解する知性はない。ネオゲッターの装甲を半壊させながら懐にもぐりこんだバンの双眸が、バリアを展開するために露出しているディカステス・変異態のコアを睨みつけた。
「プラズマサンダァァアアアアアアッ!!!」
【グッギャアアアアアアアッ!?】
ディカステス・変異態のコアを守る装甲が再展開される前に、ゲッター線の輝きが混じった稲妻の槍がディカステス・変異態のコアを貫いた……。
「やった」
「やったか!?」
ゲッター合金製の弾頭を搭載したミサイルで支援を行っていたアステリオンのアイビスとベルガリオンのスレイは、絶叫を響かせたディカステス・変異態の姿に思わずやったかと口にしてしまった。
【ウオオオッ!!】
その直後に爆煙を突き破って姿を現したディカステス・変異態から伸びる触手にアイビスとスレイは顔を青褪めさせながら機体を急上昇させて伸びた触手を必死に躱した。
『くそっ! あれで決まらないのか! アイビス! もうワンアプローチ行くぞ!』
「分かったッ!!」
バンとリョウトがディカステス・変異態と戦いやすいように再び機首を下に向けて急降下したアステリオンとベルガリオンの放ったミサイルが、ディカステス・変異態の装甲に突き刺さり大爆発を起こす。
【グルアアアアアアッ!?】
爆発自体はインベーダーとアインストには有効打にはなり得ない。だがスピキュールに搭載されているゲッター合金と僅かなゲッター線のエネルギータンクの爆発がディカステス・変異態の装甲ではなく、その内部の体組織を焼いた。
『どこを見ている! お前の敵はッ!!』
『僕達だろッ!!!』
【ギャアアアアアッ!?】
燃え盛る炎の大剣レーヴァティンと放電を繰り返す斧と剣が融合した独特の形状をしたゲッターブレードがディカステス・変異態の胸部に突き刺さり、ディカステス・変異態の絶叫が再び周囲へ響き渡る。
『無理に近づくな! 取り込まれるぞッ!』
『離れて支援をお願いします!』
近づくなというバンとリョウトの言葉にアイビスとスレイは歯がゆい思いをしながら機体を再び上昇させ、ネオゲッターロボとヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントの戦いに視線を向ける。
【アアアアアアッ!!】
プラズマサンダーの一撃でバリアの発生機関を破壊されたのか、ディカステス・変異態を覆っていた厄介なバリアは既にその姿を消している。だが4本の腕に1本ずつ巨大なビームソードを発生させ、更に触手までも伸ばしネオゲッターロボとヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントへ向けている。どう考えても絶望的な戦いだが、バンの駆るネオゲッターロボも、リョウトの駆るヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントも伸ばされる触手を紙一重で躱し続け、レーヴァティンとゲッターブレードを駆使し、4本の腕と切り結んでいる。
「……ここまで出来ないと駄目なんだ……」
『自分達の未熟さを思い知らされるな』
逃げながら戦うのではない、ほんの僅かでも掴まればそこから取り込まれかねない中で、攻撃を全てかわしながら前に出続けて攻撃を続ける。それはアイビスとスレイには出来ない精密なマニュアル操作によって支えられた、バンとリョウトの鍛錬が形になった物であった。
「やれることを全力でやるんだ。今、私達に出来る事をッ!」
『分かっている、分かっているさ』
自分達に出来るのはほんの僅かな支援しかない、共に戦っていても同じ舞台で戦う事が出来ない悔しさに顔を歪めながら、少しでもバンとリョウトの助けになれればと支援を続けるのだった……。
プラズマサンダーを突き刺されたディカステス・変異態の胸部の装甲は焼け爛れ未だ回復する予兆はなく、亀裂の入ったコアも完全に修復されていない。今はバンとリョウトにとって大きなチャンスであった。
「くっ! 目の前に見ているのにッ!」
『リョウト君! 落ち着いて、冷静にッ!』
「リオ……う、うん。分かってる! 分かってはいるんだッ!」
ほんの少しずつコアの修復が行なわれているのを見れば冷静にならなくてはならないと分かっていても、どうしても焦りが勝る。
『チェーンナックルッ!!』
そんなリョウトの目の前を凄まじい勢いで射出されたチェーンナックルが通過し、罅割れたコアに直撃する。
『スレイ! アイビス! コアを狙えッ! リョウトお前は右だッ!』
「りょ、了解!」
リョウトの焦りが頂点を向かえる前にバンの指示が飛び、リョウトはその指示に従い、左側の2本の腕と触手を封じる為に前へ出る。
【はは、ははははははははッ!! はーっはははははッ!!】
少しずつ傷とダメージが回復しているのか再び笑い出したディカステス・変異態の攻撃は、苛烈などという言葉では片付けることが出来ない激しい物だった。
「くっ! これくらい何とかしてみせるッ!」
炎を纏ったレーヴァティンとディカステス・変異態の高周波ブレードがぶつかり合い火花を散らす。
「ちえいッ!!」
横薙ぎの高周波ブレードの一撃をブレードキックで相殺し、伸ばされた触手をヒートガイストナックルで殴り飛ばす。
『リョウト君! マグマ原子炉の熱が下がってきてる! もう長くは持たないわ!』
「リオッ! 分かったッ!」
マグマ原子炉は確かに無限動力である。だが炉心の温度が下がれば必然的に出力も下がる、これだけの長時間フルパワーで稼働していたのはリョウトもリオも初めての事だった。
(出力はもう上げられない、それならッ!)
どの道マグマ原子炉は近いうちに熱を失い、ヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントはその機体性能を大きく落とす。それならばまだエンジンがその熱を保っているうちに、戻る事を考えずその全てを一撃に賭ける事をリョウトは選んだ。
「この一撃に全部つぎ込むッ!!」
リョウトの叫び声に呼応するようにマグマ原子炉が最後の力を振り絞るように唸り声を上げ、レーヴァティンの刀身から凄まじい炎が噴出す。
「これで……どうだあああああッ!!」
【ギッ! ギギャアアアアアアッ!?】
熱に強いヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントの表面装甲が融解するほどの一撃はディカステス・変異態の左側の2本の腕を体組織ごと焼き切り、異空間にディカステス・変異態の苦悶の絶叫が響き渡る。
『エンジン停止まであと47秒! 安全装置が起動するわよリョウト君!』
「ま、まだまだあああッ!!」
熱に耐え切れずヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントのあちこちからオーバーヒートを示す白い煙が上がり、熱によってAMタイラントの強化装甲がボロボロと剥がれ落ちる。そして振り切った勢いでヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントの右腕が肘から捻じ切られるが、それでもその一閃はバンとネオゲッターの動きを抑え込んでいた右側の2本の腕を焼き切った。同時にヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラントの全身から白い煙が上がり、そのカメラアイから光が消え完全にその機能を停止させた。
【ア、アギャアアアアアアアッ!?!?】
両腕を切り落とされた痛みにディカステス・変異態が頭を上げ、凄まじい絶叫を響かせる。アインストとインベーダーは確かに強く、恐ろしい相手だ。だが生物である、生物である以上痛みには耐えられない。苦悶にのた打ち回るディカステス・変異態の姿にバンは勝負所だと、最後の切り札を切るのはここしかないとその拳でカバーを砕きながらボタンを押し込み、ネオゲッターの機体各部から翡翠色の光が溢れ出す。だがそれは諸刃の剣でもあった。ネオゲッターロボにゲッター炉心の膨大なエネルギーに耐えるだけの強度は無く、末端から装甲が崩壊し、骨組みが露出し、コックピットにレッドアラートが灯るがバンはそれらを全て無視し、操縦桿を強く握り締めた。
『これでトドメだぁッ!!! ゲッタァァ――ッ! ビィィイイイムッ!!!』
【あ、アアアアアアアアア――……】
ネオゲッターロボの胸部ビーム発射口から放たれたゲッタービームが罅割れたディカステス・変異態のコアを貫き、断末魔の咆哮を上げながらディカステス・変異態から光が溢れ、ネオゲッターロボ、ヒュッケバイン・MK-Ⅲタイラント、アステリオン、ベルガリオンの4機は光の中へ飲み込まれ、光が消えた時ディカステス・変異態の装甲の残骸だけがその異空間へと残されているのだった……。
「ネオゲッター、ヒュッケバインMK-Ⅲ、アステリオン、ベルガリオンの反応を感知しました!」
ディカステス・変異態の作り出した異空間に取り込まれていたバン達は無事に異空間から脱出し、クロガネが閉じ込められている異空間へと帰還したが、クロガネからの通信に誰も応答しないのだった……。
第262話 次元の狭間 その4へ続く
バン達の戦いはバンたちの勝利ですが満身創痍でここで一時リタイアとなります。あとネオゲがゲッタービームを使えたのはビアンによって搭載されたゲッター炉心のおかげで弾数1の武器って感じですね。アインストとインベーダーでも両腕を焼ききられたら痛みで動けなくなると思ったのでこういう締めとしてみました。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い