第267話 次元の狭間 その9
アインスト・シーツリヒターから作り出されたアインスト・SRXはメタルビースト・SRXよりも遥かに弱い個体だった。そもそもメタルビースト・SRX……いや、メタルビースト・アルタードは旧西暦で真ゲッターやゲッターD2といった強敵と戦い続け、生き延びそして進化を繰り返した個体だ。それと比べれば今SRXと戦っているアインスト・SRXは姿を模倣しただけの個体であり強さはSRXよりも遥かに低い、だがそれでもリュウセイ達はアインスト・SRXとの戦いで苦戦を強いられていた。
【……ッ!!】
「……くっ! ドミニオンボールッ!!!」
アインスト・SRXとSRXの左腕から鏡合せのようにドミニオンボールが放たれる。しかしその数はSRXの方が遥かに少ない物で、アインスト・SRXの放ったドミニオンボールがSRXの近くで炸裂し、リュウセイ達の苦悶の声が次元の狭間に木霊する。
「くそっ!! まただ、また邪魔されたッ!」
『落ち着けリュウセイ! 熱くなるなッ!』
「……分ってるッ!!」
アインスト・SRXは念動力を持たない、姿形が似ていても念動力が込められた技ではない。本来ならばサイコドライバーに覚醒しているリュウセイとアヤとマイと3人の念動力者を有するSRXにアインスト・SRXは本来ならば戦いにすらならない。だがそれはベーオウルフが自ら作り出したワンオフのアインスト・SWORDから複製されたアインスト・SRXには当て嵌まらない。
【ッ!!】
「くっ!? ガウンジェノサイダーッ!!!」
ゴーグル上のフェイスパーツから放たれたビームと念動力の光がぶつかり合い消滅し、その煙から飛び出してきたSRXとアインスト・SRXの両拳が何度もぶつかり合う。だが拳がぶつかるごとにザインナックルの輝きが弱くなってくる。
『っううう……』
『うっう……』
『リュウセイ! これ以上は大尉もマイも持たないぞッ!! 離れろッ!』
ライの警告にリュウセイは拳の連打からブレードキックへと切り替え、ブレードキックの一閃がアインスト・SRXの胸部に傷をつけ、アインスト・SRXが怯んだ隙に離脱した。
「アヤ、マイ。大丈夫か!?」
『……な、なんとか……でも駄目ね、集中力が維持出来ない』
『かなり厳しいな……あいつの妨害は』
妨害……アインスト・SRXは念動力の高まりを感知して不の念とも言えるものを放出していた。それにリュウセイ達はどうしても引っ張られてしまい、念動力が大きく乱れていた。
「ライ。こう、どっかから放出されてるとか分からないか?」
『アニメじゃないんだと言いたいが……可能性は1つあるぞ』
「どこだ!? 先ずはそいつをぶっ壊してから……『イングラム少佐が戦っているアインストだ。恐らく俺達の目の前のアインスト・SRXはただの受信機、念動力を妨害しているのは恐らくあの個体だ』……マジか」
激しい撃ち合いを繰り広げているR-SWORD・シーツリヒターとアインスト・シーツリヒターの戦いはまだ決着がつくとは思えない状況だった。
『つまり私達は少佐の邪魔をさせないことね』
『なんとか喰らいついて止めるしかない』
『その通りです、というわけだ、リュウセイ。アインスト・SRXを俺達で食い止めるぞ』
「ああ、やってやるぜッ! 念動力が上手く使えなくたってなんとかして……ライ、アヤ、マイッ! フルバーストで行くぞッ!」
【……ッ!!!】
アインスト・SRXが両腕を突き出し、脚部のテレキネシスミサイルのコンテナを開いているのを見たリュウセイは避けるでは無く相殺の為に動いた。
『くっ……やっぱりTーLINKシステムが完全にシンクロしない……ッ』
『……シンクロ率65……これ以上は無理だわッ!』
『トロニウムエンジンの出力でカバーしますッ! リュウセイ行けッ!!』
「おおッ! 天上天下超爆散轟撃破ッ!!」
【……ッ!!】
ハイフィンガーランチャー、ガウンジェノサイダー、テレキネシスミサイルがアインスト・SRXから放たれ、SRXも同じようにハイフィンガーランチャー、ガウンジェノサイダー、テレキネシスミサイルが発射されるがSRXにはそれに加えてもう1つの武装ドミニオンボールを加えていた。だがそれでもT-LINKのツインコンタクトが完全ではないSRXのフルバーストはアインスト・SRXのフルバーストに押し込まれ、アインスト・SRXとSRXの間で凄まじい爆発が起き、2機の姿は爆発で発生した煙の中へと消えていくのだった……。
アストラナガンと融合したR-SWORD・シーツリヒターはゲッターD2に匹敵する能力を持った新西暦最高峰の能力を持った機体であることは間違いない、だがR-SWORD・シーツリヒターとアインスト・シーツリヒターの戦いはイングラムが押されていた。
【……】
【……】
【……】
アインスト・R-SWORDが縦横無尽にR-SWORD・シーツリヒターへと襲いかかり、イングラムはそれを迎撃するのに武装の出し惜しみをしていられなかった。ガンビットを、ZO・サイズを、メス・アッシャーを、ラアム・ショットガンを、アトラクターシャワーを……その全てを駆使しなければならなかった。
「悪知恵の働く奴だ」
【……】
この異空間だからこそ出来る学習方法だった。無尽蔵のアインストを、自身のコピーを作り出し、イングラムとR-SWORD・シーツリヒターにぶつける。組み付かれれば寄生される可能性があり迎撃するしかないイングラムは必然的に撃墜することを強要された。そしてその戦いを見て、そして破壊された自身の複製を見てアインスト・シーツリヒターはこの身体の使い方を十全に理解した。
【……ッ!】
「ちいっ!」
ZOサイズとZO・サイズがぶつかり合い、激しい火花を散らす。
「偽物などと侮っていられんなッ!」
自立操作のガンビットと念によって操作するガンファミリアを駆使してアインスト・シーツリヒターを引き離し、メス・アッシャーで追撃を撃ち込む。
【……ッ!?】
ガンビットはガンビットで相殺したが、ガンファミリアを学習していないアインスト・シーツリヒターはガンファミリアに対抗出来ず、翼を撃ちぬかれ動きが鈍った所にメス・アッシャーが直撃し、その姿が煙の中へと消える。
(かなり学習された……な。まだ武装は残っているが……これもすぐに学習される)
ベーオウルフの分身とも言えるアインスト・シーツリヒターの再生力は他のアインストを凌駕していた。
「もう学習したかッ!」
ガンファミリア同士の激しい撃ち合いが繰り広げられる中をアインスト・シーツリヒターとR-SWORD・シーツリヒターが飛ぶ。
「はぁッ!」
【……ッ!】
ビームの雨の中を縦横無尽に飛び、何度も何度もZO・サイズが振るわれる。だが少しずつ、少しずつだがR-SWORD・シーツリヒターへ攻撃が掠め始める。
(攻撃は俺の方が当たっている。だが回復力が高すぎる)
R-SWORD・シーツリヒターも自己修復能力を持ち、無限動力を持つので条件は同じ。違うのは自己修復の速度の違いだった、お互いに損傷は回復している。アインスト・シーツリヒターは何度も装甲を斬り飛ばされ、ビームで焼かれ体組織を失っているがその損傷すらも回復している。R-SWORD・シーツリヒターも回復能力を持つがさすがに風穴を開けられれば修復は出来ないし、失った腕を即座に回復することも出来ない。
「これがアクセルが危惧したベーオウルフの力か、複製でこれだというのだから手に負えんな」
1つの世界を滅ぼしたアインストから生み出された固体。その能力は裏腹だがイングラムを持ってしてもR-SWORD・シーツリヒターと互角と認めざるを得なかった。
(リュウセイ達も劣勢だ。早くこいつをなんとかしなければ……)
アインスト・SRXとSRXの戦いも少しずつSRXが押し込まれている。
(考えられるのは念動力の妨害か、不味いな)
サイコドライバーであるリュウセイがいるから均衡を保てているが、リュウセイが疲弊すればその均衡は一気に崩れるだろう。その前にアインスト・シーツリヒターを倒すとしてもその回復力を上回るのは用意ではなかった。
【……ッ!】
何度目かのZO・サイズの斬り合いでR-SWORD・シーツリヒターが弾かれ、好機と判断したアインスト・シーツリヒターが大きくZO・サイズを振り被った瞬間R-SWORD・シーツリヒターの両肩の水晶が分離し、R-SWORD・シーツリヒターを挟み込み、ZO・サイズが振るわれると同時にR-SWORD・シーツリヒターは転移し、アインスト・シーツリヒターの背後を取った。
【!?】
「ZO・カリバーッ!! デッドエンドスラッシュッ!!」
ゲッター線の光を纏ったZO・カリバーの一撃がアインスト・シーツリヒターの背部に大きな傷痕を刻み付ける。追撃にZO・カリバーを突き出すが、その切っ先が当る前にアインスト・シーツリヒターは転移でZO・カリバーの切っ先から逃れた。
「学習したか、だとしてもこれで良い」
転移という札を見せたが、転移はアインストに取っては基本的な技能だ。だがアインストの転移とR-SWORD・シーツリヒターの転移の理屈は全くの別物だ。
(これは賭けだ。この詰め将棋のような戦況を覆せるか否かの賭けだ)
自分自身との戦いなどと禅問答のような事をイングラムはいうつもりは無いが、ほぼ同じ能力を持つ者同士、そう近い内に千日手になるのは目に見えていた。だからこそその均衡を覆せるかもしれない楔をイングラムは打った。異なる原理の転移を学習させる事で転移のバグを起させ、そこから切り崩す。本来打つなどあり得ない博打にイングラムは突破口を見出すしかないのだった……。
フルバーストのぶつかり合いで大きく弾き飛ばされたSRXとアインスト・SRXの戦いは少しずつ、少しずつだがSRXの優勢に傾き始めていた。アインスト・シーツリヒターがZO・カリバーの一撃で胸部を潰された事で念動力の妨害が少しだけ弱くなったのだ。
『このまま一気に畳み掛けるッ!』
「リュウセイ! 調子に乗るな! 慎重に立ち回るんだ!」
この隙に一気に叩くと言ったリュウセイをライの怒号が止めた。
『あいつをこのままにしておいたらやばいじゃねえか』
「リュウセイ……良く考えろ。相手はSRX、そして向こうにも少佐の乗るR-SWORDをコピーしたアインストがいるんだぞ」
その言葉にリュウセイは一瞬考え、そして小さく舌打ちした。
『DiSRX・シーツリヒター……』
メタルビースト・アルタードを倒したSRXとR-SWORD・シーツリヒターと融合したDiSRX・シーツリヒター。能力で言えばゲッターD2を超える可能性を秘めた融合形態だ。
『複製体だから、いえ、複製体だからこそより脅威になりかねないわね』
「その通りです、大尉。俺達には時間制限がある、ですが向こうに時間制限があるとは限りません」
DiSRX・シーツリヒターはその圧倒的な出力に機体が耐え切れないという問題がある。戦闘時間は長くて5分、最大可動で戦えば3分持つかどうかというほどにSRXにもR-SWORDにも負荷をかける。
「まだ俺達にはベーオウルフを倒す事が残っている。ここで全てを出し切るわけには行かない」
ベーオウルフの分断策は恐らく自分を倒しうる可能性を持つ者を疲弊させる事にあるとライは考えていた。これで終わりじゃない以上、全てを出し切るわけにはいかない、難しい事は承知で力を温存しこの戦況を突破する必要があった。
『じゃあ、あのアインストはどうするんだ? このまま戦ってもジリ貧だ』
『ライ。なにか考えがあるんだろ? どうすれば良い』
「均等にダメージを与える。撃破するにしても同時にだ、出来るならR-SWORDを叩きたい」
アインスト・SRXはアインスト・シーツリヒターから生み出された言うならば分身だ。アインスト・シーツリヒターが健在の状態でアインスト・SRXを撃破しても、アインスト・SRXを取り込んでほぼ完全な形でDiSRX・シーツリヒターを模したアインストに変化するだけだ。
『ドミニオンボールとストライクシールドで動きを封じて、少佐と一緒にあのアインストを叩く、リュウセイ。少佐と合流出来る?』
『……少し厳しいけど何とかしてみる。ライ……目で見えてる距離と実際の距離は同じか?』
「……かなり遠いかもしれん。だがリュウセイ、お前なら何とか出来る筈だ」
アインストによって歪められた異空間は見た目よりも近く、そしてその逆に近いが遠いかもしれない。確実に触れることが出来る距離であればその距離は正確に割り出すことが出来るが、遠く離れているR-SWORDとの距離は近いのか、離れているのかも定かではない。
【……ッ!】
「先ずは合流だ。そこからプランを立てるぞ! そもそも俺達が戦っているアインストも本体とは限らないんだからな」
このまま戦っていても埒が明かない、最悪の可能性を考えれば今リュウセイ達が戦っているSRXも、そしてイングラムが戦っているR-SWORDも本物とは限らない。このまま闇雲に戦い最悪の展開に繋がる可能性が高いと考えたライの指示に従がい、リュウセイはイングラムと合流する為に動き出した……それがベーオウルフの思惑通りとも気づかずに……
【……ッ!】
『オラアッ!!』
SRXとアインスト・SRXのザインナックルがぶつかり、アインスト・SRXが大きく仰け反った隙を……いや、演出された隙という罠に食いついてしまった。
『はぁッ!!!』
拳に集束した念動力を剣の形へと作り変え、念動力の刃による一閃がアインスト・SRXの胸部を切り裂き、そのまま返す刀で次元を切り裂いたSRXは次元の裂け目の中へと飛び込み、少し遅れアインスト・SRXもSRXが切り開いた時限の裂け目の中へとベーオウルフの計画通りに飛び込んでいくのだった……。
第268話 次元の狭間 その10へ続く
SRXとアインスト・SRX、そしてR-SWORD・シーツリヒターとアインスト・シーツリヒターの初戦は一旦終了。第二戦は合流しての、ゲームのシステムで言うツインユニット同士での戦いになります。前回の話のラストで消えた教導隊は次回の最後で触れて行こうと思いますが、予定としてはSRXチームは3話使って書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い