進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第39話 ゲッターロボ対ゲッターロボG その5

第39話 ゲッターロボ対ゲッターロボG その5

 

 

ゲッターロボによるゲッターロボGの撃破……いや、シャイン皇女の救出は量産型ドラゴン達と戦っていたリュウセイ達にとってなによりも喜ぶべき事だった。

 

「武蔵がやってくれたか……」

 

ゲッターロボとゲッターロボGの戦い……確かにそれは新西暦の戦いの常識を超えていた。それでも、武蔵1人に負担を掛けることなど誰1人して良しとはしなかった……だがそれでも武蔵とゲッターロボGの戦いに割り込む事が出来なかったのだ。

 

 

「くそッ! またなにも出来なかったッ!!」

 

サイバスターのコックピットでマサキが怒りの声を上げる。ハガネとヒリュウ改の搭載機の中でもっとも機動力のあるサイバスターならば、確かにゲットマシンの間に割り込む事も不可能ではなかった……だがそれは何の妨害も無い前提が必要だったのだ。

 

「「「「!!!」」」」」

 

「くそったれ!! 良い加減にしやがれッ!!!」

 

量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンの3体のAIに設定されていたのはハガネとヒリュウ改のPTの足止めを行えという物だった。ゲッターロボがゲッターロボGに戦闘を挑むのはアードラーにとっても想定の内、ゲイムシステムを搭載したゲッターロボGの戦闘力はゲッターロボを超えるとアードラーは慢心でも油断でもなくそう思っていた。だがそれは1対1が前提だった、如何にゲッターロボGとは言え、四方八方からの攻撃を受けては合体が妨害されるかもしれない。そう考え、量産型ドラゴン達には徹底してハガネとヒリュウ改の足止めを行うようにプログラミングがされていた。

 

「マサキ! 無理をするなッ!」

 

「ちっ! 判ってるッ!!」

 

ポセイドン3機によるサイクロンの暴風に煽られてはサイバスターと言えど、スピードを十分に生かすことは出来ないでいた。

 

「厄介な事をしてくれるッ! エクセレン何とかならないかッ!」

 

「出来るならやってるわよッ! キョウスケッ!」

 

サイバスターを初めとした空を飛べる機体を足止めするのは基地からの動力と直結しているポセイドンだ。動きが制限される変わりに基地の動力から与えられる無尽蔵のエネルギーでサイクロンを維持する。空中のサイバスターやアーマリオンだけではなく、その身体の角度を変えるだけでアルトアイゼンを初めとした陸戦機の足止めすらも可能なポセイドンは厄介と言うレベルではなかった。

 

「ひ、ひいいいーーーッ! 誰か早く何とかしてくれええええッ!!!」

 

ジガンスクードがその巨体を生かし、ライガーのドリルミサイルやドラゴンのダブルトマホーク、さらにはポセイドンのサイクロンの盾となり、その影からゲシュペンストMK-Ⅱやビルドラプターが攻撃を繰り返すが、ドラゴンやポセイドンの強固な装甲を貫けないでいた。

 

「こうなったらサイコブラスターで……「止めろリューネッ!」……マサキッ! でもッ!」

 

範囲攻撃のサイコブラスターとサイフラッシュ……確かに攻撃範囲は出撃している機体の中でも有数だ。だがその分攻撃力が低く、サイコブラスターとサイフラッシュを重ねて使用してもドラゴン達の装甲を貫ける保障はなかった。むしろ、エネルギー切れを起こして的となる危険性が高かった。

 

「各員に告ぐ、ライディース少尉のハガネへの帰還をサポートしろ、繰り返すライディース少尉のハガネへの帰還をサポートしろ」

 

R-2がゲッターロボからシャイン皇女を受け取り、コックピットに回収すると同時にホバーで敵陣を突き抜けてハガネへの向かってきている、それを見たキョウスケから撤退の支援命令が飛ぶ。

 

「ヒャーはハハハハハッ!! ボーナスユニットを逃がすかよおおッ!!!」

 

「させるかよッ!!!」

 

R-2を追いかけようとした量産型ドラゴンの前に立つR-1。そしてその支援に入るR-3……シャイン皇女と言う人質が消えた事で流れはわずかに変わり始めていた。

 

「グルンガスト零式の後、各員臨機応変に対応せよ」

 

「はいはい、好き勝手にやれって事ね」

 

「ふっ、臨機応変にだ。それに全員何をするべきかは判っている筈だ」

 

シャイン皇女は無事に救出された、グルンガスト零式とゲッターロボが量産型ドラゴン達との戦いにも参加した。耐える時は終わった、今から反撃へと打って出る時が来たのだった……。

 

 

 

 

 

武蔵からシャイン皇女を預かったライは1度ハガネへと帰還していた。ゲイムシステムと言う危険極まりないシステム、更に常人なら耐えられないゲッターロボに乗せられていた事を考えての事だ。

 

「ラーダ女史! よろしくお願いします」

 

「ええ! 任せて!」

 

マオ・インダストリーから出向しているラーダと、その隣に控えていた医療班にシャイン皇女を預け、再びR-2のコックピットに戻る。

 

『ライ! 出撃は少し待て、装備の換装を行う! 今のままだと足手まといになるぞ!』

 

ロブの言葉に舌打ちしながらも了解と返事を返す、今のR-2の装備は量産型ライガーやドラゴンの動きを削ぐ為の「スパイダーネット」や「チャフグレネード」と言った攻撃力の低い装備で固められている。勿論メガビームライフルや、ビームソードなどの装備も搭載していたが、ドラゴンやライガー、ポセイドンの執拗な攻撃で破損しているため装備を交換しなければ、再び戦闘に出るのは自殺行為に等しい。

 

(……エルザム兄さん……)

 

リリー中佐を助けに現れた漆黒のガーリオン。それは紛れも無くエルザムだった……武蔵が単独行動している可能性もあったが、新西暦の地理に詳しくない武蔵が単独行動している可能性は限りなく低かった。可能性の中だがビアンも生存しているかもしれない以上、武蔵がビアンや、エルザムと言った正しい意味でのDCの生き残りと行動している可能性はイングラムを初め全員が考えていた。だが実際に一緒に行動しているのを見ると複雑な気持ちを抱くのもまた当然の事だ、無実の罪で連邦に追われているとは言え、まさか本当に連邦に追われているビアン達と行動を共にしている。それでは本当に言い逃れが出来なくなるが……

 

(いや、兄さんがそんな当たり前のことを考えていないわけが無い)

 

元々リクセント公国はDCの前組織のEOTI機関に出資していた。そういう面では、DCの決起でその立場は悪い物となったが、連邦がシャイン皇女を護れなかった事。そして今武蔵によって救助された事で間違いなくシャイン皇女の武蔵に対する心証は良い物となっただろう。

 

(それが狙いか……)

 

そんなことは考えていないと思いたいが、武蔵の立ち位置は余りにも悪い。リクセント公国と言う後ろ盾を手にし、そして連邦へ武蔵への指名手配の撤回を求める。それが武蔵の後ろにいるであろうビアンやエルザムの考えではないかと愚考してしまう……そんな自分の性格が嫌になるとライは小さく溜め息を吐いた

 

『出撃準備OKです!』

 

オペレーターの声に従い再びハガネから出撃する。シャイン皇女の救出こそ成功したが、まだ量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンはかなりの数が残っている。更にアードラーの乗るグレイストークも健在、シャイン皇女の救出に安心している場合ではない。まだ戦うべき相手は残っているのだから、安心するのは全てが終わった後だ。

 

「ゲッタートマホークッ!!!」

 

「チェストオオオオオッ!!!」

 

ゲッターロボ、グルンガスト零式は量産型ドラゴン達の軍勢に引けを取らない戦いを繰り広げている。さきほど、ゲッターに乗り込んだエルザムを心配したライだが、次の瞬間には思わず苦笑していた。

 

『チェンジッ! ゲッター2ッ!!!』

 

4方向からの鎖攻撃を分離することで回避したゲッター1がゲッター2に再合体を果たしたのだが、その時に聞えてきたエルザムの声に心配するだけ無駄だったかと呟く。

 

「リュウセイ! 今支援に入るッ! 無闇に突っ込むなッ!」

 

「ライか! ありがてえ! 早く合流してくれ、なんか……こいつおかしいッ!!!」

 

リュウセイが焦った様子で叫ぶ、リュウセイだけではなく、イングラムやラトゥーニを相手にしているテンザンの量産型ドラゴン。あちこちから火花が散り、今にも爆発しそうなのだが、それでも暴れ続ける量産型ドラゴン

 

『ヒャーハハはハハハハハハハハッ!!!!』

 

更にそこにバグっているとでも言うのか、ノイズ交じりのテンザンの狂った笑い声が重なる。どこからどう見ても異常としか取れない光景にライはメガビームライフルをR-2に構えさせ、リュウセイ達のフォローに入る。だがライが支援に入った時には既に遅すぎたのだ、オーバーヒートしつつある量産型ドラゴンの関節部から上がる黒い煙に僅かに緑の光が混じり始めていた。それは量産型ドラゴンが本当のゲッターロボになろうとしている証拠なのであった……

 

 

 

 

ジャガー号の操縦桿を握り締めるエルザムは唇を噛み締め、その殺人的な加速に耐えていた。ビアンの開発したテスラドライブを応用した強化スーツで確かにゲッターの殺人的な加速には耐える事が出来た、そして合体の衝撃にも耐える事が出来た。だが、エルザムはまだゲッターに関しての理解が圧倒的に足りていなかった。

 

(戦うとなると別物か!?)

 

ゲッター2……高機動を武器とする形態。エルザムと相性がいいはずのそれですら、エルザムを苦しめていた。エルザムもふざけて叫んでいるのではない、そうしなければならない理由があるのだ

 

「ドリルアームッ!!!」

 

機体の内部が激しく揺れる、そしてそれはドリルの切っ先がポセイドンに刺さればその勢いを爆発的に加速させる。ゲッターの操縦で武蔵が叫ぶ理由は既に癖になっているのだろう、次はこれをする、これをするぞと言わなければ他のパイロットに掛かる負担が大きすぎるのだ。そしてそれは勿論攻撃をする際のコックピットも例外ではない、ドリルアームでポセイドンを貫いた衝撃でエルザムの意識は一瞬完全に飛んでいた

 

『エルザムさん、オープンゲットだッ! 囲まれているッ! エルザムさん! 大丈夫か! 聞えてますかッ!?』

 

武蔵の叫びで我に帰ったエルザムはレバーが折れるんじゃないかと言う勢いでレバーを倒すと同時にペダルを全力で踏み込む。次の瞬間に身体が座席に飲み込まれるのではないかと思う凄まじい加速に歯を食いしばって耐える、確かに辛い、だがシミュレーターの時の様に意識を失うことはない

 

『大丈夫ですか、エルザムさん』

 

「あ、ああ。大丈夫だ、予想よりも些か衝撃が強かっただけだ』

 

ドラゴンやライガーを攻撃したときは平気だったが、ポセイドンは装甲が厚い分跳ね返ってくる衝撃も凄まじかった。それがエルザムが一瞬とは言え意識を失った理由だった。

 

「ハイパーブラスターッ!!!」

 

『無理そうなら、自動操縦に切り替えますよ?』

 

ゲッター2を囲んでいたライガー4機の内2機はグルンガスト零式のハイパーブラスターの熱線の中に消え、残りの2機はゲットマシンを追いかけて来ている。レーダーの反応でそれは判っているからか武蔵がそう問いかけてくる。だが任せろといって乗り込んでやっぱり無理と言う情けない真似は出来ずエルザムは再び操縦桿を強く握り締める

 

「いや、問題ない。大丈夫だ、武蔵君は私の事を気にしないで全力で戦ってくれれば良い」

 

今ので大体の衝撃の反動は理解した、次は意識を飛ばすなんて事は無いとエルザムは断言する。武蔵はその言葉を聞いて、分かりましたと返事を返す。

 

『ゲッター3で行きます』

 

「了解だ!」

 

シミュレーターで何度も何度も練習した、だから大丈夫だと自信を持って返事を返す。

 

「チェーンジッ!! ゲッタースリーッ!!!」

 

ゲッター3への合体はジャガー号の上にイーグルとベアーが順番に突き刺さってくると言っても過言ではない。その衝撃は恐らく、全ての形態でもダントツの衝撃だろう

 

(ぐうっ!?)

 

コックピットの中で身体が跳ね上がる、上からの連続の衝撃でシートベルトをしていても慣性で身体は跳ね上がるのが判る。

 

「!!」

 

「へっ! 舐めんなよッ!!!」

 

突っ込んできたライガーのドリルをゲッターアームで受け止め、そのまま機体を反転させ上空から追いかけてきたライガーにライガーをぶつけ、2機を地面に叩きつける

 

「ゼンガーさん! 今だッ!!」

 

「応ッ!!!」

 

グルンガスト零式が凄まじい勢いで突進し、ライガー2機を胴体部で両断する。前口上を述べていたのだが、生憎ゲッター3への合体の衝撃に加え、即座の横運動で三半規管がめちゃくちゃになっていたエルザムがそれを聞くことが無かったが……なんとか意識は飛ばさないで済んだ。ビアンの強化スーツの事もあるが、やはり武蔵の気遣いもかなり大きい。確かに合体の衝撃こそ大きいが、合体さえしてしまえば、ゲッター3の構造上……ジャガー号にかかるのは移動の衝撃と旋回等で発生するGだけになる。PTやAMと比べればその衝撃は凄まじい物だが、ゲッター1やゲッター2と比べればその衝撃は微々たる物だ

 

「ブーストナックルッ!!」

 

「ゲッターミサイルッ!!」

 

グルンガスト零式のブーストナックルとゲッターミサイルが今正に突風を放とうとしていたポセイドンに向かって放たれる。ブーストナックルがポセイドンの頭部を押し潰し、体勢を崩した所にミサイルが命中しポセイドンの胴体を貫き爆発させる。ハガネ、ヒリュウ改のPT隊も量産型ドラゴン達を次々破壊していく、リリーを助けたので残るエルザムの懸念は1つ。ジュネーブの地下に侵入しているビアン達だ

 

(まだ連絡は来ないか)

 

脱出したという連絡がまだ来ないことに僅かな不安をエルザムが抱いた時、ジャガー号のコックピットに武蔵の悲鳴が木霊した

 

「武蔵君! どうした! 何か機体トラブルか!?」

 

ゲッターロボの修理は依然完全には完了していない、ゲッタードラゴンとの戦いで何か不具合でも起きたと思いエルザムが叫ぶ

 

『ち、違います! ゲッター線が上昇してる! 何が、何が起こっているんだ!?』

 

困惑する武蔵と状況を把握できていないエルザム、そしてその2人の前に信じられない光景が広がるのだった……

 

 

 

 

ジュネーブの最深部にまで侵入に成功したビアン達。だが戦闘の余波は大きく時間を掛けていると脱出する時間がないと判断し、急いで回収準備を始めていた

 

「ゲッターに関する資料だけを全て持ち出せ! Sクラス以上の物だけで良い! 急げッ!!」

 

バン自身も資料に素早く目を通し、必要な資料だけを持ち出す。この中には連邦の急所となる物も多く存在している。だが膨大なデータや、資料の中からそれだけをピンポイントで見つけるのは難しい。それこそ砂漠から米粒を見つけるような物だ

 

「良いか! 無理をするな、持ち出せる物だけで良い!」

 

連邦の政治形態を一気に崩せるかもしれないという資料の山の数に部下が暴走しかねないとバンは一喝して、それを止める。仮にここで貴重なデータを手にしても、持ち帰れなければ意味がない。だから無理をするなと叫びながら、自身も素早く資料に目を通しては、鞄の中に詰めて行く

 

「……見つけた、これだ!」

 

ビアンはシュウから受け取っていたパスワードでやっと連邦のデータベースにアクセス出来た。

 

(違う、これじゃない、これでもない)

 

アイドネウス島でハッキングで入手出来た資料には用は無い、ビアンが求めているのは焼き払われる前に早乙女研究所の格納庫から持ち出された資料だ。

 

「総帥! お急ぎください!」

 

「判ってる! 準備が出来た者から撤退して行け!」

 

壁が軋み、天井もあちこち落ちて来ている。時間はさほど残されていないが、それでもここまで侵入したのだ。目的の情報も手に出来ず脱出するわけには行かない

 

「あった、これだ!」

 

USBメモリを突き刺し、必要なデータを次々とコピーしていく。コピーが完了するまでの僅かな時間でさえも惜しい

 

「くっ! 総帥! これ以上は!!」

 

「あと少しだ! あと少し!!!」

 

天井が落ち、炎が広がる。口元に布を当てて煙を吸い込まないようにしながらコピーが終わるのを待つ。そしてコピーが完了すると同時にUSBメモリを乱暴に引き抜き、持って来たアタッシュケースの中に収める。

 

「すまない! 行こう!」

 

最後まで待っていてくれていたバンに謝罪し、ビアンは連邦本部の地下を後にし、外で待機していた特殊ガーリオンにバンとビアンが乗り込むと同時にガーリオンは最大速度でジュネーブから離脱する

 

「大佐すまないが、エルザムに脱出を成功したと連絡してくれ」

 

ビアンはそう告げるとUSBメモリの中身の確認を始める。流し見しただけだが、ここにビアンも武蔵も求めて止まない情報がある。浅間山付近に埋没する形で出現した早乙女研究所の格納庫……そこにBTー23と量産型ゲッタードラゴンが眠っていた。それが最初にビアンが入手した情報だ、だがそれにはまだ続きがあった

 

(……これか)

 

格納庫から浅間山地下に続く階段を発見、捜索班が地下へと向かったが全員が消息不明となり捜索を断念。捜索用の小型ラジコンカメラで内部を捜索した結果正体不明の異形を発見、階段にコンクリートを流し込み通路の封鎖。その後格納庫の焼却処理を行ったとある……

 

(行かねばなるまい)

 

正体不明の異形の正体は気になるが、それでもビアン達は向かわなければならない。何故ならば……資料の最後に出てきた写真付きの報告書……ぼやけているが、その形状。その姿は紛れも無くゲッターロボ……新西暦の浅間山の地下にゲッターロボが眠っている事が明らかになったのだから……

 

 

 

 

R-1のコックピットでリュウセイは恐怖に震えていた。今まで何度も死を覚悟したことはあった、だが今回は今までを遥かに上回る恐怖をリュウセイに与えていた。

 

『リュウゼエエエエエエッ!!!!! じねえええええええッ!!!』

 

テンザンの異常な叫び声と時々回転を止めながらもR-1に向けられるドリルの切っ先……機体の各所から鮮血のようにオイルを撒き散らし、いたる所から配線があちこちから飛びだし、その先端からはショートしているからか、激しく発光を繰り返していた。装甲も砕け、罅割れ、剥がれ落ち骨組みまで露出している、さながらその姿はゾンビのようであり、そんな有様で迫ってくるライガーにリュウセイの顔は恐怖に染まる

 

「くそっ! 来るんじゃねええッ!」

 

ジャイアントリボルバーの銃弾が、R-2のメガビームライフルが、ビルトシュバインのM-13ショットガンがライガーに迫る。

 

『きひゃやはやあああああッ!?!?』

 

命中する寸前にライガーが爆ぜる、それは何度も見たオープンゲットの動き。だが決定的に違う所がある、部品を撒き散らし、ゲットマシンにも見えない異形の姿となり空を飛ぶ3つの塊にしか見えない、僅かに緑のゲッター線の輝きが走っているが、その光に機体の方が耐えれないように見える

 

『どうなってやがる! 量産型は分離出来ないはずだろ!』

 

『中尉、あれは分離していると言うよりも……自らを破壊しているように見えます』

 

ドラゴンが爆ぜ、ライガーになり、そしてまたポセイドンに変化した。だが、シルエットこそはポセイドンなのだが、フレームがむき出しになり、そしてオイルを撒き散らす姿は強引に合体しているようにしか見えず、足は辛うじて形になっているが、両腕は最早、骨組みしかない。

 

『けひゃあえはとおわろばまた!?』

 

最早言葉すらも発せられないテンザン。だがそれでもポセイドンは背中に背負ったミサイルを投げ付けてくる……しかしミサイルは途中で失速し、R-1にすら届かず地面に落ちる。しかも爆発すらしない

 

『見るに耐えんな、イルム。終わらせろ』

 

『了解したぜ、少佐』

 

もはやテンザンは脅威でもなんでもない、だが量産型ドラゴンは複数の動力を積んでいる為このまま爆発でもされて、巻き込まれるわけには行かない。そう判断したイングラムの命令に従い、グルンガストが動き出そうとしたのだが

 

「教官、俺がやる」

 

「……良いだろう、決めて見せろ」

 

PTの攻撃力では足りないと判断したのだが、リュウセイがやるというのならばやって見せろとイングラムが告げる

 

『■■●△▽■■■■ーーーーーーッ!!!』

 

ポセイドンが爆ぜ、再びドラゴンになるが、胴体は完全に拉げ、辛うじてドラゴンと判る姿をしているが、その姿は最早ただのスクラップにしか見えなかった。最早、ああなれば終わらせる以外の手段は無い

 

「うおおおおッ!!!」

 

ドラゴンが両手にトマホークを持ち、駆け出すと同時にR-1も同時に走り出す、ドラゴンに向かうRー1のコックピットの中にはいくつものメーターや、エネルギー表記が浮かんでは消えていく、そして最後に「T-LINKシステム F-C」の文字が浮かび上り、R-1の左拳が緑の閃光に包まれる。

 

(テンザン、この馬鹿野郎が……)

 

何度も戦った、そして憎みもした……だが今は哀れにしか思えなかった

 

『じねええええええええッ!!!!』

 

機体を爆発させながら迫るドラゴン、だがそのスピードは余りにも遅い。振りかぶると同時にはじけ飛ぶ右肩の装甲……最早完全にドラゴンは限界を迎えていた……

 

「必殺ッ!! T-LINKナッコォッ!!!」

 

振り下ろされたダブルトマホークを左のT-LINKナックルで受け止める、収束した念動力で右腕が千切飛び、がら空きの量産型ドラゴンの胴体にT-LINKナックルが突き刺さり、風穴を開けるリュウセイはRー1の全身の姿勢制御のバーニアを使い、即座に左腕を引き抜くと同時に機体を反転させる

 

「くらえッ!! T-LINKダブルナッコォッ!!!」

 

最初の一撃で装甲が崩れ落ち、外部に露出した量産型ドラゴンの動力部に返す右拳が突き刺さる、それは完全な致命傷になり、ドラゴンの姿が大きく震えると同時に糸の切れた人形のように膝を付く

 

「破ぁッ!!!」

 

叩き込まれた右拳から収束した念動力が叩き込まれ、ドラゴンは内部から爆発を繰り返す。

 

『○▼※△☆▲※◎★●ーーーーーッ!!!』

 

そして最後まで意味の判らない言葉を発しながらテンザンは爆発するドラゴンから脱出することも叶わず、爆発に飲み込まれドラゴンと共に消えていく……

 

「テンザン、俺とお前は違う。俺には仲間がいる……ライや、アヤ達のような仲間が……」

 

爆発でR-1の足元まで飛んできた量産型ドラゴンの頭部を見つめながら、リュウセイは沈鬱そうに告げる

 

「斬艦刀!! 疾風怒涛ッ! はああああああーーーーッ!!!!」

 

アードラーの乗るグレイストークはゲッターロボとグルンガスト零式によって追詰められていた、護衛の量産型ドラゴン達を失い、無防備なグレイストークにはグルンガスト零式とゲッターロボを止めることは不可能だった……

 

「チェストォォォォッ!!!」

 

大上段から振り下ろされた斬艦刀を防ぐ手段も避ける手段も無いグレイストークはその横っ腹に斬艦刀の一撃を喰らい大きく吹き飛ぶ。そして吹き飛んだ先ではゲッター3が両腕を広げグレイストークを待ち構えていた。

 

「てめえの悪行をあの世で悔いなぁッ!!!」

 

グレイストークの巨体を受け止めたゲッター3はその場で回転を始め、その遠心力に沿ってゲッターアームが螺旋回転しながらグレイストークを巻き上げ上空へと吹き飛ばす。

 

「おいおい、あんなのありかよ……」

 

「信じられねえ……あんなの喰らったらジガンでも1発でお釈迦だぞ……」

 

ゲッター3の脚部を生かした円回転、そしてそこから伸ばされるゲッターアームによる螺旋回転。その勢いは通常の大雪山おろしを越える、凄まじい嵐を巻き起こしていた。

 

「大ッ! 雪ッ!! 山ッ!!!!」

 

『ぬ、ああああああああーーーーッ!?!?』

 

オープンチャンネルで混乱しきったアードラーの叫びが響くが、その叫びに同情する者はいない。

 

「おろしいいいいいいいいーーーーーッ!!!!」

 

上空へと投げ飛ばされたグレイストークは再び空を飛び立つ力を持たず、投げ飛ばされた勢いのまま地面に叩きつけられ爆発した動力によって炎に包まれた。

 

「ば、馬鹿な! わ、ワシはビアンやマイヤーなどととは違う、ワシは世界を! 支配する男じゃぞッ!!」

 

パニックになったアードラーの叫びがジュネーブに響き渡る。逃げようともがいたのか、広域通信のレバーを倒してしまったようだった。

 

「ここでワシが死ねば、人類に未来は無い! なんとしても、アースクレイドルへ帰らねばッ!!! あ、あそこに行けば、貴様らやエア

ロゲイターと言えども、手出しは出来んッ!!」

 

脱出しようとしているが、既にグレイストークの周りにはグルンガスト零式やゲッターロボ、更にサイバスターやヴァルシオーネが囲い込んでいる。もはやアードラーに逃げ道など存在していなかった……、

 

「脱出じゃ! 脱出するぞ! 小型機を用意……ヒッ!? な、なんじゃ!? な、何故! 何故お前達がここに!?」

 

だがその声に恐怖と困惑の色が混じる。それと同時に広域通信でグレイストークの内部で、形容しがたい何かを引きずるような音が響く

 

「く、来るな! 来るなあ! わ、ワシに近づくなッ!! こ、こー…… や、止め……止めてくれええええええッ!!」

 

アードラーは最後まで何かに怯える様な声をあげたまま、グレイストークは機関部が爆発し墜落していく。グレイストークから脱出艇が出た素振りは無く、アードラーが率いていたDCの残党はジュネーブの地で全て滅びたのだった……

 

 

 

 

「敵機の全機撃墜を確認!」

 

エイタの報告がPT全機に伝わる、それでもまだ警戒を完全に緩めることは無い

 

「これで、DCの中核部隊は全滅……」

 

「残るはゼンガー・ゾンボルト少佐とゲッターロボ、そしてアースクレイドルか」

 

ハガネとヒリュウ改と距離を取るグルンガスト零式とゲッターロボ。それはハガネとヒリュウ改とは共に行かないと言うゼンガーと武蔵の意思表明のように見え、ダイテツは小さく溜め息を吐いた。

 

「ゼンガー隊長」

 

「キョウスケ、クレイドルの責任者ソフィア・ネート博士は……地球人同士の戦闘を良しとせず、純粋に人類の未来を案じている人物だ。アードラー達が死んだとなれば、お前達に敵対することはあるまい」

 

ゼンガーはそう告げるとハガネとヒリュウ改に背を向ける。

 

「隊長……自分は隊長にお願いがあります。隊長の力を自分達に貸してください」

 

ゼンガーが行ってしまうと思ったのか、慌ててブリットがゼンガーを呼び止め、それに続くようにリュウセイも武蔵に声を掛ける

 

「武蔵、今回の事で指名手配は解かれると思う。だから俺達にまた協力してくれよ」

 

今回の事で決して武蔵は敵では無いと連邦にも伝わっただろう、それにリクセント公国も味方になる。だから心配ないと告げるリュウセイ、だがゲッターロボは首を左右に振り、拒絶の意を示す。

 

「悪いな、オイラにもオイラの都合があるんだよ。だからまたどこかで会おうぜ」

 

「そういう事だ、俺達はお前達と共に行くことは出来ない」

 

武蔵の言葉に続くように無理だというゼンガー。話し合う余地も無い拒絶の言葉にカチーナが苛立った様子で叫ぶ

 

「なんでさ!? あんた達の目的は大体わかった。DCとも決着がついたじゃないさッ! それに武蔵! お前もだ! 何時までも冤罪で追われていいと思ってるのか!? ここでてめえの無実を証明するべきなんじゃないのか!」

 

もう敵対する理由は無いと筈だとカチーナが言い、ライもそれに続いた

 

「皇女も無事保護することが出来た。彼女の事だ、武蔵。お前に礼を言いたいと言うはずだ、それでも行くのか?」

 

ライの言葉に対する武蔵の返答はゲッターロボを飛翔させる事だった

 

「悪いな、何回も言うがオイラにもオイラの都合がある。皇女様にはよろしく言っておいてくれよ、まー多分オイラの事何ざ覚えてないと思うけどさ」

 

助け出した時に意識が朦朧としていたから自分の事なんて覚えてないさと武蔵は笑う。その言葉は感謝が欲しいから助けたのではないと言うことが伝わってくる、そしてそれと同時に自分達の道と武蔵の道はまだ重ならないと言う証のようにリュウセイ達には感じられた。

 

「使命の為とは言え、俺が今まで犯して来た罪は重すぎる。……今更連邦に戻る事は出来ん」

 

そしてゼンガーの返答もまたヒリュウ改、ハガネとは共に行かないと言うものだった

 

「さらばだ。お互い命があればまた会う事もあるだろう……」

 

「じゃあな、リュウセイ達も元気でな」

 

グルンガスト零式、そしてゲッターロボがジュネーブから去った事により、ジュネーブ攻防戦はここ幕を閉じたのだ。……だがその裏で暗躍してる者達もまた、このジュネーブ攻防戦を境にして一気動き出そうとしているのだった……

 

 

第40話 早乙女研究所 その1へ続く

 

 




今回の話はゲッターロボとゲッターロボGがメインだったので、それ以外の部分が少し弱かったかもしれないですね、もしそう感じられたのならば、きっと私の力不足です。申し訳ありません、でも全力は尽くしたと思っております。ここからは暫くオリジナルルートで、裏切りの銃口まではハガネ、ヒリュウ改のルートの話は為しで生きたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い

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