第40話 早乙女研究所 その1
武蔵とゼンガーが離脱した後、ハガネとヒリュウ改はジュネーブに停泊していた。既に崩壊しているとは言え、連邦の本部である。貴重なデータなどの回収の任務がハガネとヒリュウ改には下されていたのだ
「皆様。助けていただきありがとうございました」
シャイン皇女は自分達を助けてくれたハガネとヒリュウ改のクルー1人1人に感謝の言葉を告げ、そして今こうしてブリーフィングルームに訪れたのだが、きょときょととブリーフィングルームの中を見回している
「シャイン皇女。どうかしましたか?」
「ライディ様……あの、私を助けてくださった、大きくて丸い御方はいないのでしょうか?」
大きくて丸いの言葉にブリーフィングルームにいた全員が噴出す、その姿にシャイン皇女は慌てた素振りを見せながら違いますと手を振る。
「い、いえ、そのあんまり覚えてないのですが……その大きくて丸いということは覚えているのですが……それらしい御方はいませんでしたわ」
「……皇女。武蔵は既に行きました」
「行った? どちらへですか? すぐに戻られるのでしょうか? ラトゥーニ」
よっぽど直接感謝の言葉を告げたいのか、何時ごろ戻ってこられますか? と尋ねるシャイン。
「んふふ。色男さん、眼中にないみたいね?」
「……俺は別に構わん。元々、子供の扱いは苦手だ」
シャイン皇女がライよりも武蔵に興味を持っている事に気付き、エクセレンがにやにや笑いながら言う。だがライは肩を竦めるに留まるが、その顔は武蔵のことを何と説明するかと言う事を考えているように見えた。
「皇女、武蔵は軍人ではなく民間人なのです……そしてその……」
「どうかしたのかしら? 何か問題があるのならぜひ教えて欲しいのですが?」
指名手配にされていると言う言葉を切り出せず、もごもごしているラトゥーニに詰め寄るシャイン。その圧力に負けたのか、武蔵が指名手配されていると伝えるとシャインは一瞬きょとんとした顔をした後。
「判りました、ええ、判りました。私少し急用を思い出したので失礼しますわ」
頭を下げて出て行くシャイン。その目的地は間違いなく、艦長室だろう
「なんか、凄いことになりそうだな」
「まー良いんじゃない? 元々冤罪だし、あ、でも今回色男のお兄さんと一緒だったしね、そこはどうなるのかしら?」
間違いなくシャインは武蔵の冤罪について、リクセント公国側から連邦に苦情を出すだろう。その姿にブリーフィングルームにいたエクセレン達は肩を竦めた
「それよりよ、なんで破壊した量産型ドラゴンだっけ? それを回収しているんだ?」
タスクが思い出したように告げる、ハガネとヒリュウ改に下された命令には量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンの残骸の回収命令も含まれている
「んー量産機の割には強かったし、その分析じゃないかしら?」
「そうだとしても、やはり納得はいかないがな」
何故大破している量産型を回収させたのか? その理由が判らず首を傾げる中。ラトゥーニにはまさかと言う考えが脳裏を過ぎっていた
(……流石に無いはず)
連邦が量産型を回収し、それを修理して運用しようとしている。そんな馬鹿な事は無いはず、ラトゥーニは首を左右に振り、その馬鹿な考えを頭の中から追い出し、椅子に座り込んで考え事をしているリュウセイに近寄る、今一番精神的に弱っているのはリュウセイだ。その焦燥しきった姿にラトゥーニは何かしたいと思ったのだが、何をすればいいのか判らず、せめて話だけでも聞こうと思っていた。
「大丈夫?」
「ん、ああ。大丈夫って言えたら良いんだけどな……ちょっと正直今回のことは堪えてるよ」
疲れた表情で笑うリュウセイの隣に座る、ラトゥーニ。喋る訳でもなく、慰めるわけでもない。ただ傍にいると言うことを示すその行動にリュウセイは小さく笑い、その良い感じの雰囲気にジャーダやガーネット、そしてエクセレンは微笑ましい物を見るような表情で2人に暖かい視線を向けるのだった……
ハガネとヒリュウ改の格納庫にはドラゴン、ライガー、ポセイドンの比較的無事な部分が集められていた。かなりの数が集められているので、これだけあれば無事な部分を組み合わせ1体くらいは復元できるかもしれないなと、分析の陣頭指揮を取っているロブは苦笑する
「オオミヤ博士、分析の結果は出たか?」
「ああ、少佐。ある程度ですけどね、出てますよ。リョウト、分析結果を」
ロブの助手をしていたリョウトがロブにバインダーを渡し、ロブはそれをイングラムに手渡して分析結果を話し始める。
「まず基礎フレームですが、この段階からPTやAMとは規格が違いますね。作られたのはここ数日のことですが、使われているのは殆ど再現されたロステクです、性能は落としても外見を再現するだけならマオ社やテスラ研でも可能ですね」
「なるほど、他には?」
「はい。テンザンの乗っていたドラゴンが無理やり分離していたように見えましたが、構造的には一応分離は可能だったようです。全ての量産機にコックピットブロックが搭載される部分が動力部に換装されてますが、テンザンのドラゴンは一応コックピットブロックを搭載し、分離機構も復元していたようです」
ただしそれを合体させられるかどうかは別ですけどねとロブは告げる。アードラーが運用していた量産型ドラゴン達、それは本来ゲッターロボやゲッターロボGのように分離・合体が出来たはずだ。それを敢えて潰していたようだが、一部の機体は分離機構もある程度は使用できる段階だったようだ。
「タクラマカン砂漠の物よりも、完成度が高いですね。分析が進んだということなのか、技術が向上したのかは判りませんが、少なくともこの量産機は限りなくゲッターに近い贋作と言うことになります」
「贋作? どういうことだ?」
「はい、それは僕が説明します。色々と分析したのですが、ゲッターロボを構築しているのはゲッター合金。それに対して量産型ドラゴンはゲシュペンストやリオンに使われる複合金属です。耐久力や柔軟性はゲッター合金と比べて格段に低いです、だから合体構造をオミットして、1体ずつを完成させたんだと思います。それとこれが一番の理由なんですが、ゲッター炉心を搭載できなかった。それが贋作と言う理由ですね」
「つまり炉心をゲッター炉心に換装し、そして装甲をゲッター合金にすれば。この量産機は完全なゲッターロボになるというのか?」
「まぁ理論上はそうですけど、まず無理でしょうね。ゲッター炉心は新西暦でも再現できない代物ですし、ゲッター合金は高密度のゲッター線が必要ですしね」
そのどちらも入手できない以上、この量産機が本物のゲッターロボになることはないとロブもリョウトも断言した。
「それでゲッターロボGの修復は可能か?」
「いや、それはもっと無理ですね少佐」
上層部の命令で回収されたゲッターロボG、ボロボロのドラゴンへの合体形態でハンガーに吊るされているドラゴン・ライガー・ポセイドン号を見ながらイングラムが尋ねたが、ロブの返答は無理と言う物だった。
「まずドラゴン号ですけど、ゲッター炉心は無事ですけど、それ以外の部分がスクラップ寸前で、ライガー・ポセイドン号はゲッタービームの熱で中の基盤が纏めてお釈迦に加えて、ゲッタートマホークで炉心と動力の連結部分のパイプが寸断されてますからね。修理出来るとしても、ゲッターロボとしてのポテンシャルはもう発揮出来ないでしょうね」
武蔵はもう2度とゲッターを悪用されないように念入りに動力部などを破壊していた。念の為に回収したがロストテクノロジーの結集である動力部分の修理は困難を極める事が予想され、仮に修理できたとしても新西暦の技術と旧西暦の技術の違いによってまともに起動する事すら危ういというのがロブの出した分析結果だった。
「そうか……では、量産型の方をテスラ研にサンプルとして回す、各機体の残骸と分析結果を纏めてコンテナに詰めておいてくれ」
「ゲッターロボGはどうなるんですか? 少佐」
「上層部が所有権を主張しているが、スクラップなら丁度良い。伊豆基地に到着次第、回収に来ている上層部に引き渡して終わりだ。ああ、何ならもう少し壊しておいてくれても構わんぞ、オオミヤ博士、リョウト。ゲッターロボは新西暦の人間には無用の長物だ」
上層部がゲッターロボの戦力を見て徴収に動いたが、壊れているなら好都合。むしろもっと壊してくれても構わないとイングラムは2人にそう告げ、格納庫を後にした
「む……ぐっ」
だが自室に辿り着く前に激しい頭痛に襲われ、頭を押さえて通路にもたれかかる
「少佐!? どうしたのですか!?」
「……アヤ……か、なんでもない、頭痛がしただけだ。直に収まる……」
「少佐無理をしないでください、今肩を貸しますから」
アヤに肩を借り、自室へと足を向けるイングラム。何故かアヤに触れている間だけはイングラムを襲う頭痛は不思議と納まっていた
「ドクターを今呼んできますので」
自室のベッドに横にされ、アヤが出て行くと同時に再び激しい頭痛がイングラムを襲う
「うっぐ……痛い……ぐっ……う……ッ」
そしてその痛みに耐え切れず、イングラムの意識は闇の中へと沈んでいく……そしてその闇の中でイングラムはどこか自分に似た少年に出会うのだった……
【思い出せ、自分の使命を……成すべき事を思い出すんだ……】
それは、アヤがドクターを連れてきて慌てて救護室に運び込まれた後も、その少年の声は何度も何度もイングラムの脳裏に響き続けるのだった……
武蔵の事で抗議に来たシャイン皇女がその整った顔を怒りに歪める。その姿を見てダイテツは深く溜め息を吐いた、だがそうしなければならない理由があったのも事実だ
「……国へ戻れと言うのですか?」
睨みつけられたダイテツに変わり、ショーンが理由を説明する
「ええ、DCの残党軍との戦いは事実上終結しましたし……皇女が狙われることは恐らくないでしょうからね」
「それに一国の皇女を何時までも連れ回す訳には行かない」
ぐうの音もでない正論にシャインは唇を噛み締める。
「それに、皇女にはやってもらわなければならないことがあります。これは貴女にしか出来ないことでもあるのです」
「わ、私にしか出来ないことですか?」
ダイテツは真剣な目でシャイン皇女を見つめながら、頭を下げる。
「私達に協力し、そして皇女を救出してくれた武蔵君。だが彼は今、ありもしない罪で追われる罪人となっている。それを覆すことが出来るのはシャイン皇女……貴女だけだ」
国家転覆罪等の思想家扱いされている武蔵、だがそんな事実はなく、既に滅んだが連邦上層部の暴走とシュトレーゼマンの策略だ。だが軍人である以上、それに対してダイテツは動く事が出来ない
「シャイン皇女、どうかこちらをお持ちください」
「……レフィーナ艦長、これは……?」
渡された記録媒体、それを見つめるシャイン皇女。それが何か理解していない様子だが、これこそが武蔵の無実を証明するための証拠の1つとなる
「武蔵君が貴女を救助する為に戦った戦闘データです、これをどうかお持ちください」
リクセント公国は小さな小国だが、それでも連邦に対しての発言力は高い。そしてその皇女を救出した武蔵を最悪リクセント公国の客賓として招くことで連邦が手を出せない状況を作り出す。それがダイテツ達が出来る、武蔵を助ける方法だった
「……判りました、確かにお預かりします。私には国に戻ってやらなければならないことがあるのですね」
1度閉じられた目が開かれた時、その眼には強い決意の色が宿っていた。それは自分の恩人を助けるという強い意志の光だった
「判りましたわ、私は国に戻ります。もしも、もしも武蔵様にお会いできましたら、どうか私が感謝を告げていたとお伝えくださいませ」
幼くても強さを持つシャイン皇女は自分の戦う場所、護る場所を理解していた。
「そしてリクセント公国は貴方の味方だとどうか、お伝えください」
深く頭を下げ、艦長室を出て行くシャイン。その幼くても強い背中を見送るダイテツ達
「恐らく武蔵は正しい意味のDCの残党と行動を共にしている」
「でしょうな。ですが、不幸中の幸いもあります」
リオンやクロガネと直接的に行動を共にしている姿は目撃されていない、あくまで正体不明の特機を操る革命家として連邦は武蔵を指名手配にしている、だがそれらしい活動はしておらず。不信感を抱いている軍人は少なからずいる、そこに今回の救出劇。シャイン皇女を武蔵を救う手段の1つとして、ダイテツ達は幼い少女に全てを押し付ける形になった事を悔いるのだった……
ジュネーブ攻防戦の後、ゼンガーやリリーと言った統合軍の生き残りは砂漠の地下にあるバン大佐の隠しアジトに訪れていた。
「良く来てくれた、リリー中佐、ゼンガー少佐」
出迎えたビアンの姿にリリーもゼンガーもその顔を驚愕に染める。死んだはずのビアンが生きていれば、驚くのは当然だ。
「……ビアン・ゾルダーク総帥……」
「リリー中佐。マイヤーの事は本当に申し訳なく思っている、出来る事ならば私もまたマイヤーと共に死ぬべきだった。だが私にはまだやるべきことがあるのだ」
マイヤーに心酔していたリリーを初め、統合軍の生き残りはマイヤーが死んで、ビアンが生きている。その事に複雑な表情を浮かべた……
「父は生きていれば、必ずビアン総帥の味方をしただろう。そして仮にビアン総帥が死に、父が生きていたとしても共に死ねなかったことを後悔し、だがビアン総帥と志した物を貫く為に戦っただろう」
リリー以上にビアンを憎んでいてもおかしくないエルザムの言葉にリリー達は何も言うことが出来なかった。エルザムが許しているのに、自分達がビアンを許せないと責める事は出来ないのだ。
「ビアン総帥、どうかマイヤー司令が無駄死にではなかったと……生きて証明してください。それが私達の願いです」
リリーの言葉にビアンは勿論だと頷き、バンにリリー達の案内を頼み。自身の前を通過しようとしていたゼンガーを呼び止めた
「ああ。すまないが、ゼンガー少佐。悪いが私達に同行してほしい」
「……それは構いませんが何事でしょうか?」
「それはクロガネの中で説明する、武蔵君、エルザム。急ごう、私達には時間がない」
「判りま……うっ」
「大丈夫ですか? エルザムさん」
返事を返そうとしたエルザムだが、その顔は真っ青でその場に膝を突き掛け武蔵に支えられていた。
「やはり無理ならば、残っても構わないぞ?」
「い、いえ。大丈夫です、同行出来ます」
ビアンの残っても良いのだぞの言葉に頭を振って、立ち上がると大丈夫だとエルザムは返事を返す。
「エルザム、一体何が……」
「クロガネの中で説明する、行きましょうビアン博士、武蔵君」
心配そうなビアンと武蔵に大丈夫だと返事を返し、ジュネーブでの戦闘を終えて半日。休む間もなく、ビアン達はクロガネに乗り込みアメリカを後にするのだった。
「浅間山ですか?」
「そうだ。ジュネーブの地下に隠されていたデータベースには、浅間山の地下に早乙女研究所が眠っているとされていた」
クロガネの目的地は日本、そして浅間山の地下だ。
「この正体不明の異形とは?」
「判らないが、可能性としてあるのは爬虫人類だな」
捜索隊40名が行方不明となった原因の正体不明の異形。武蔵がメカザウルスと戦っていたこともあり、その地下に武蔵同様にタイムスリップしてきた爬虫人類が居たとしても不思議ではない。
「大勢で突入して、各個撃破されても不味い。よって浅間山の地下に向かうのは、私、エルザム、ゼンガー少佐、そして武蔵君の4名とする。武器として用意出来たのがさほど数が無いと言うのもあるが、この4人ならば問題なく対応出来るはずだ」
ゲッター線コーティングのされた日本刀が4本、これは2本ずつ武蔵とゼンガーが所持する。エルザムやビアンはゲッター線コーティングの銃弾とそれを撃ち出すハンドガンが2つずつと大型のショットガンが2つ。それがビアンが準備できた武器だった
「ビアンさん、浅間山の地下らしいですが、場所は特定できているんですか?」
「いや、それに関しては不明だ。出発前にクロガネのレーダーで金属反応を探知し、そのままクロガネで突っ込む形になる」
その一撃で早乙女研究所を破壊する可能性もあるが、それは事前の調査で出来るだけ空洞のある場所を選んで突入するとビアンが追加で説明する。ジュネーブに眠っていたとすれば、浅間山の地下にそれがあるという事は当然連邦も把握している。
「細心の注意を払ったが、バン大佐達が監視カメラに発見されている。連邦が動き出す前に調査を完了し離脱する」
下手をすればジュネーブよりも危険度の高い浅間山の地下に眠る早乙女研究所の捜索。ゼンガーやエルザムもその表情を固くしながら、ビアンから配られた資料に何度も何度も目を通す。そして武蔵はと言うと、上手く説明出来ないが浅間山で何かが待っている。それをおぼろげながら感じているのだった……。
「それで、エルザム。随分と調子が悪そうだがどうしたのだ?」
日本へと向かう道中でゼンガーがエルザムの不調を尋ねる。ミーティングまでの間ずっと眠っていたエルザムの顔色は大分回復しているが、それでも万全と言う様子ではなかった。
「最後の大雪山おろしの回転でな、脳震盪を起こしていたのと、酷い車酔いに近いありさまだったのだ」
「いやあ、途中で静かになったなあとは思っていたんですけど……気遣いが足りませんでした」
グレイストークを投げ飛ばした時の回転でエルザムはそのGに耐え切れず失神、そして更にその状態でゲッター1へチェンジした事で打撲と三半規管を揺らされ立つ事もままらない状況だった。
「心配しなくて良いと言ったのは私だ。気にする事はないさ」
「でも本当すいません」
静かになったとは感じていた武蔵だが、まさか気絶しているとは思っていなかったのだ。クロガネに着艦し、ジャガー号から出てこないエルザムに武蔵が覗き込んだらぐったりしている姿を見て慌ててジャガー号から引っ張り出したのだ。
「お前でもそれほどまでに操縦に苦しむのか」
「ゲッターロボのパワーには驚かされるばかりだ。ゼンガー、お前も乗ってみるか?」
「……興味はある」
エルザムの話を聞いてゲッターに興味を持ったゼンガーに武蔵は大丈夫かなあと心配そうな顔をする。
「大丈夫だよ、武蔵君。エルザムが乗ってくれた事でスーツの更に改良も進む。次は大丈夫だ……多分」
「そこで絶対大丈夫とは言ってくれないんですね、ビアンさん」
武蔵の問いかけににこやかに笑うビアン、あえて返答しないという方法に出たビアンに武蔵は苦笑するしか出来ず。
「それでどんな感じなのだ?」
「ゼンガーも覚えていると思うが、高機動ゲシュペンストの試作型より酷い」
「……あれよりも酷い機動兵器が存在するのか……」
教導隊時代の悪夢と言えるブースターを増設しまくったゲシュペンストよりも酷いと聞いてゼンガーはその顔を引き攣らせる。危険な場所に向かうと判っていたが、それでも武蔵達の表情に恐怖の色は無くむしろリラックスした表情でクロガネは日本へと向かうのだった。
「ここか……確かにこの感じ、早乙女研究所ですね」
それから2時間後、クロガネはビアンの話通り浅間山の地下に眠る早乙女研究所に辿り着いていた。真っ先にクロガネを降りた武蔵は辺りを見回しながら告げた、ここは間違いなく早乙女研究所だと……
「ここら辺は知ってる区画かい?」
「はい、ここらへんは多分プロトゲッターの墓場と言われてる場所ですね」
「行き成り墓場か……些か心配になるな」
強行突入用の装備に身を包んだゼンガーが鋭く辺りを見回しながら呟いた。捜索に来て一番最初に辿り着いた区画がゲッターの墓場と聞けば不安に思うのは当然だろう。
「まずは地下に続く階段を見つけよう。ここは恐らく、焼き払われた早乙女研究所の格納庫の無事な一区画だろうからね」
ビアンの言葉に頷き、武蔵達は懐中電灯を手に、薄暗い早乙女研究所の地下を歩み始めるのだった……
早乙女研究所を進む4人の先頭を進むのは当然武蔵だ。早乙女研究所に土地勘のある武蔵が先頭を進み、ビアン達を先導する。
「駄目ですね。ここの階段を上に行けば、居住区とか、早乙女博士の研究室だったんですけど……」
武蔵の視線の先には焼け焦げた階段が見え、その先はコンクリートで塗りつぶされている。地下へ続く階段だけではなく、格納庫自身も相当厳重に封印をしたらしい、クロガネでそのコンクリートの先に直接来たが、どうも目に見えるだけの通路ではなく全ての通路を念入りに封印したようだ。
「そうか、となると次の進路はどうするつもりだ?」
「……そうですね、ゲッターの墓場を通って、それでプロトゲッターの試験場の方に向かってみますか」
最初はゲッターの墓場を避けて移動した。もしかしたら早乙女博士の研究資料を手に出来るかもしれないと思っての事だが、当てが外れた武蔵はすみませんと謝罪する
「気にするな、武蔵。お前が居なければ俺達はまともに前に進むことも出来ないのだからな」
「ゼンガーさん。すいません、ありがとうございます」
ゼンガーの慰めの言葉に感謝の言葉を告げ、来た道を引き返していく。目的地はゲッターの墓場だ、ハザードマークが刻まれている扉、その横のレバーを降ろして武蔵達はゲッターの墓場に足を踏み入れる。一同の目の前に広がったのはまさしくゲッターの墓場と呼ぶに相応しい、凄惨な光景だった。
「これか……いや、圧巻の光景だな」
「これだけのゲッターロボが製作されていたのか……」
上半身だけのゲッターロボ、腕が無いゲッターロボ、脚部だけのゲッターロボ……あらゆる部分が欠損しているゲッターロボが所狭しと配置されている、これはまさしくゲッターロボの墓場と言うべき光景だった。
「何故プロトゲッターを破棄しなかったのだ?」
ここまで破壊されていては修理も出来ないだろう、それなのに何故地下に安置していたのか? ゼンガーがそう尋ねると武蔵は首を傾げて、必死に思い出すような動きをして、思い出したと手を叩いた。
「ゲッター線ですね。放射線なんで環境に影響を与える事を考えてらしいです」
ゲッター線が完全に霧散するまでは廃棄することも出来ず、地下に封印していたと聞いたエルザムは僅かに顔を歪める。
「人体の影響は無いのか?」
「いえ、余り長時間いるのは危険らしいので、早く移動しましょう。こっちです」
武蔵が慌てて移動しようとするが、それはビアンによって制された
「いや、このゲッター線レーダーは反応していない。どうもこの区画のゲッターロボはゲッター線が殆ど残されていないようだ」
これだけのスクラップの山を焦って移動するのは危険だ。ゲッター線がなければ周囲を確認しながら進もうと言われ、武蔵は判りましたと返事を返し、慎重に歩を進める。確かにビアンの言う通り慌てて進むには危険すぎた、瓦礫やスクラップが道を塞いでいて、すぐ目の先に見える出口に向かうには2回も3回も回り道をする必要があった。
「これはゲッターロボに似ているな」
「これはドラゴンですね」
プロトゲッターの中にはやはりゲッターロボやドラゴンに似ている機体も多数ある。地下に封印されていたからか、その状態は極めて良好に見える。
「可能ならばいくつか回収して、ゲッターのスペアパーツにしたいな」
「ですね、正直ゲッターもボロボロですし」
1度捜索を終えてからガーリオンやゲッターロボでプロトゲッターのパーツを回収する事を決め、武蔵達はゲッターロボの墓場を抜けた。
「な! なんでこいつがここに!?」
武蔵の絶叫が響く、ゲッターの墓場を抜けた先には大破し、全身が焼け焦げたゲッター3が鎮座していた。
「ゲッター3……か、もしかするとゲッターロボも量産していたのかもしれないな」
「ですね、ドラゴンを量産出来たのですからね」
ゲッタードラゴンを量産していたのだ、それよりも低コストのゲッター3を量産していた可能性もゼロではない。だがそうなると何故大破したゲッター3が安置されているのかと言う謎は残るが……
「機動試験中に爆発したのかも知れんな」
「……ビアンさん、この区画のゲッター線はどうなってますか?」
ゲッター線は少量で膨大なエネルギーとなる、ゼンガーの言う通り機動に失敗し爆発した可能性もゼロではない。
「ゲッター線の反応がある。このゲッターロボのゲッター線はまだ残っている」
骨組みが見えるほどに崩壊しているが、まだゲッター線が残っていると言うことは再起動出来るかも知れない。
「ビアンさん、どうしますか? 再起動してみますか?」
ゲッターを再起動して、何があったのか調べてみますか? 武蔵がそう尋ねる。だがビアンは首を左右に振る
「起動に失敗してゲッター線が暴走しても困るから止めておこうか」
脱出経路も確保できていない今、ゲッター線の爆発に巻き込まれるわけには行かない。ビアンはそう判断し、前に進む事を促す。そしてゲッター3の残骸が安置されている区画を抜けた時、ビアン達を待ち構えていたのは予想だにもしない光景だった
「これは……」
「なんと面妖な……」
「ここは本当に早乙女研究所なのか?」
今までビアン達が進んでいたのは劣化し、錆び付いた通路や機能しない電子ロックが並ぶ扉の数々。だが今ビアン達の目の前に広がるのは、建造されたばかりと言っても通用するであろう綺麗な金属で覆われた通路だった。
「ここから先が捜索班が消息不明となったエリアになるのだろうな、見てくれ」
ビアンが差し出したゲッター線の計測装置はメーターを振り切らんばかりに動く赤い針の姿があった。ゲッター3を発見するまでは、何の反応も示さなかった計測装置が凄まじい反応を示している。それだけで、ここから先が危険と言う事をゼンガー達は感じ取った。
「武蔵、ここからは俺とお前で先陣を切ろう」
「ですね……いやな予感がびんびんと伝わってきますよ」
武蔵とゼンガーがそれぞれ背中に背負っていた刀と腰に挿した刀を抜き放つ、無人の筈の研究所の筈なのに、突き刺すような妖気とも言える不気味な気配が通路の奥から瘴気の様に漂よい始めているのだった……
第41話 早乙女研究所 その2へ続く
判っている人も居ると思いますが、この早乙女研究所は「世界最後」から「新」の早乙女研究所へと繋がっています。そしてそれが何を意味しているかわかりますね?そう、バイオハザードです。……はい、すいません、調子乗りました。私の文章力ではバイオ的な戦闘は難しいので、多分とても残念なことになると思いますが、どうか温かい目で見てください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い