第41話 早乙女研究所 その2
通路の奥から妖気の様に漂ってくる殺気……それを感じ取ったゼンガーは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
(これは……人なのか……いや、だがこれは……獣とでも言うのか)
人間のようでありながら獣のような獰猛な気配。今まで感じた事も無い気配に恐れよりも不気味さを感じる
「ゼンガー、どう思う」
「……可能ならば即座に引き返すべきだ」
だろうなとエルザムも頷く、ここは明らかに異常だ。この奥にビアンと武蔵が求める情報があるとしても、安全性を考慮するならば即座に引き返すべきだろう。
「……2人には悪いが前に進む」
壁に備え付けられていたコンソールを操作し、端末にこの研究所の見取り図をコピーしていたビアンがコードを回収しながら前に進むと告げる
「それで武蔵君、ここは君の知ってる早乙女研究所ではないと言うことで良いのかね?」
「……はい、こんな区画は見たことがないですし、それにこの地図を見てもそうですね」
武蔵が早乙女研究所の内装を知るからこその強行突入。それが無駄になった以上、今まで以上に慎重に進む必要がある
「ゼンガー、そして武蔵君。先頭は頼む、慎重に進もう。最悪の場合は離脱することも考慮するが、まずはここで何が起こったのか……それを知ってからでも遅くは無い」
ここまで来て、何の成果も無しには帰れない。それに次に来ても、恐らくその頃にはこの研究所は消滅している。それが判っているからこそ、ビアンは危険は承知で前に進む事を決断した
「……クリア」
「こっちも大丈夫です」
一本道の通路を前に進むとその先は十字路になっていた。進む先は右か、左か、それとも直進か……通路の陰に隠れながらエルザムとゼンガーが周囲を警戒する
「この先が格納庫、右が標本室と居住エリア、左が談話室と研究室か……武蔵君。格納庫に直接向かって、入れるかね?」
「いえ、早乙女博士なら格納庫は念入りにロックしてるはずです。パスワードか、鍵を見つけないと……」
自分の乗るゲッターロボの格納庫でさえ、5重のロックで念入りに閉鎖されていた。最終目的地は目と鼻の先だが、遠回りする必要があるようだ
「となると、研究室か早乙女博士の自室を見つける事か……」
「どうしますか? 総帥」
「研究室ですね。オイラ早乙女博士が自分の部屋で寝てる所なんて見たことないですし」
居住エリアに向かうか、それとも談話室に向かうかと話し合っているビアン達に武蔵が研究室しかないと告げる。
「確かに私も余り自室には戻らないな」
妙に説得力のある言葉にゼンガーもエルザムも何も言わず、談話室に向かい、そこから研究室に向かう事を決めた。だが談話室に近づくにつれ、その顔が険しい物に変わっていく
「血の匂いだな」
「ああ、だがありえないがな」
メテオ1の落下と共に現れたと言うこの早乙女研究所。少なくとも100年以上前の話だ、それなのにここまで鮮明に血の匂いがするのは明らかにおかしい
「ビアン総帥、エルザムは後ろへ。武蔵」
「了解です」
刀を抜き放ちゼンガーと武蔵が談話室の扉を蹴り開ける。開かれた扉の先血に満ちたおぞましい光景が広がっていた
『ギイイッ!!』
『シャアアッ!!!』
明暗を繰り返す談話室の奥からトカゲを人型にしたような異形が飛び掛ってくる。その動きは素早く、並みの軍人ならば成す術もなくその鋭い爪で切り裂かれていたが、トカゲにすれば相手が悪かった。
「むんっ!!!」
ゼンガーが鋭い気合と共にトカゲの胴を横薙ぎに切り払い、返す刀で頭を叩き割る
「せいっ!!」
武蔵も素早く刀を振るいトカゲの頭を切り落とすと同時に、刀の切っ先を下にしてトカゲの頭を談話室に縫い付ける。
「……手馴れているな」
「別になれたいわけじゃないですけどね、それよりやっぱり爬虫人類です」
顔に飛び散った鮮血を拭いながら武蔵が痙攣している爬虫人類の身体を蹴り飛ばす。それは談話室の机を吹き飛ばし、壁に叩きつけられる。温厚な武蔵とは思えない行動に、それだけ爬虫人類を危険視しているとビアン達は理解した
「う……誰か、誰……げほ、いるのか?」
ありえない生存者の声にビアン達も顔を顰める、100年近く前の負傷者が生きているとは思えない。エルザムがハンドガンを構えながら声の元へと向かう
「……う、誰だ? 俺たちの部隊じゃないな……」
そこに居たのは足を噛み千切られた、旧式の装備に身を固めた男の姿だった。見覚えの無いエルザムに不審そうな顔をしたが、血塗れの手で懐から何かを取り出す
「ここにいるって事は……増援って事でいいんだよな……悪いが、俺はもう駄目だ……これを……軍に届けてくれ」
「……判った。引き受けよう」
差し出された旧式のビデオカメラを受け取るエルザム。その姿に血塗れの男は安堵の溜め息を吐き
「……間違っても、標本室と居住エリアには行くな。あそこには……鬼がいる。皆喰われて、鬼になった。俺達は……封鎖して、ここまで逃げたが……
ここにも化け物が居た……皆……皆……死んじまった……くそ、最初から……嫌な……気がしてた……んだよ」
負傷兵は最後にそう呟くと事切れ、その手が血の海の中に沈んだ。エルザムは渡されたビデオカメラを手にビアン達の元へ戻る
「ビアン総帥、これは一体どういう事なのですか?」
「……判らない、判らないが……この研究室の時間は止まっているのかもしれない。そうでなければ説明がつかない」
100年前の負傷兵がこの時まで生きているわけが無い、もっと言えばあんなに若々しい訳が無い。ありえないが、ありえないと一蹴出来ない理由もある
「……」
死んだ兵士の前にしゃがみこみ、手を合わせる武蔵だ。彼もまた旧西暦の人間であり、そして過去よりタイムスリップしてきた人間だ。だからこそ、ありえないとは言い切れない
「なんにせよ、今までよりも更に警戒して前に進もう」
「……その方がいいですね。気配がどんどん増えて来ている」
断末魔の叫びさえも上げさせなかったが、同胞が死んだ事に気付き爬虫人類が近づいて来ているのだろう。
「どうしますか? ビアンさん」
「決まっている、前に進むぞ」
ここにはやはり何かがある、危険は承知。だがそれでも前に進まなければならない、武蔵達は談話室に作られているバリケードが外から何度も殴られる音を聞きながら、それぞれの武器を構えるのだった……
それは悪夢のような光景だった、破壊された扉から雪崩のように飛び込んできたのはトカゲの頭部を持ち、鋭い爪を持つ異形の人型の群れだった。話には聞いていたが、実際に目の当たりにするとエルザム達はその動きを止めてしまった。
「おらあああああッ!!」
硬直したエルザム達を庇うように背中に背負った日本刀を抜き放ち、爪を振りかざして突撃してきた爬虫人類の腕を切り落とす武蔵。
「ぎしゃあッ!「黙って死んでろッ!!」
即座に腰から抜き放ったマグナムを苦悶の声を上げた爬虫人類の口の中に突っ込んで、引き金を引く武蔵。その動きに躊躇いも容赦も何一つ無かった。
「ギイイ!?」
「ギギィッ!?」
その一瞬の蹂躙劇、だがその必要があると言うのは武蔵の性格を知っているゼンガー達が正気を取り戻すには十分な時間であり、そして爬虫人類が武蔵がいる事に気付き、その顔を引き攣らせ動きを止めさせるのに十分な時間だった。
「ゼンガーさん、相手は身体が両断されようが動く化けもんだッ!! 容赦せず頭を狙ってくださいッ!!」
「シャアアッ!!」
「舐めんなッ!!」
上段から爪を振り下ろしてきた爬虫人類の一撃を受け止め、その腹に蹴りを叩き込んで距離を取ると居合いの要領で爬虫人類の首を切り落とす。
「落ち着いて! 胴体や足じゃ効果が薄いんで頭を徹底的に狙ってくださいッ!」
武蔵の指示に従いゼンガー達もまた爬虫人類との戦いを始めるのだった……
「おおおおーーーーッ!! 大雪山おろしいいいいいッ!!!!」
狭い通路の中に武蔵の雄叫びが響き渡り、天井に突き刺さった爬虫人類。あの後すぐに破られた談話室のバリケード、そこから雪崩れ込んでくる爬虫人類と戦い続け、いまやっと押しかけてくる爬虫人類の最後の1匹を葬った。
「ふーやれやれ、相変わらずしつこいぜ。ビアンさん達は大丈夫ですか?」
武蔵がぱんぱんっと手を叩きながら尋ねてくる。だがその問いかけにエルザム達はすぐに返事を変えさせなかった、噎せ返るような血の匂いと飛び散った脳漿……その凄惨過ぎる光景は如何に軍人と言えどそうそう許容出来る物ではなかった。
「良い腕前をしているな。武蔵」
「どうも、でもこれでもオイラは弱いほうですからねぇ……リョウとか、隼人ならもっと素早く処置出来たと思うんですけど」
「いや、十分だ。武蔵君、正直武蔵君がいなければあの段階で全滅していたかもしれない」
軍人である以上ヘッドショットは無意味と言う訓練をつんでいるエルザムは、当初長年染み付いた足打ちで相手の動きを止めようとして、逆に組み付かれる結果となってしまった。だがそこに武蔵の右ストレートからの、自分が所持していたマグナムで相手の頭を吹き飛ばす事で無力化した、もし少しでも反応が遅れていればエルザムもまた。あの談話室の兵士のように物言わぬ屍となっていただろう……
(しかし、凄まじい……と言うよりも凄い)
自分が助けられることは想定しなかったエルザムは苦笑しながら、大丈夫ですか? と手を差し伸べてきた武蔵の手を借りて立ち上がる
「ビアン総帥。やはりこの場所の長時間の捜索は余りに危険です」
「そのようだな。鬼と言う言葉も気になる……「あああッ!!」 な、なんだ!? どうかしたのか!」
突然武蔵が手を叩き叫ぶので、何事かとビアン達の視線が武蔵に向けられる。武蔵はなんで忘れてたんだと叫んで
「オイラは鬼を知ってる! そうだ、あの時だ。リョウが記憶喪失になったときの病院ッ! あそこの院長が鬼だった!!」
忘れていたという武蔵だが、それを責める事は出来ないだろう。その後すぐにリョウと隼人を救う為に特攻することになったのだ、確かに一大事だった。だがその記憶がすっぱり抜け落ちていても、おかしくはないのだから
「……クロガネに念の為に搭載しているガーリオンでプロトゲッターの残骸を回収させておこう」
「そうですね、まだ何か起きそうですからね」
捜索を終えてからプロトゲッターの墓場の捜索をする予定だったが、その時間は生憎ながらなさそうだ
「地震……ってわけじゃ、無さそうですね」
「うむ。これは明らかに何かが暴れる音だ」
反対側の区画から地震のような音が響くが、地震とは異なり甲高い金属音も響くことから間違いなく何かが暴れているのだろう。あの生き絶えた軍人が告げた鬼が暴れているのかもしれない
「研究室に向かい、ロックが見つけられなければ離脱し、連装砲で早乙女研究所を破壊する」
「そうですね。それが一番だと思います。惜しいとは思いますけど……」
今はまだこの中だけだが、もし爬虫人類が外に出たら? 鬼が外に出現したら? そうなれば日本は……いや地球は今まで以上の危機に陥る。敵が外に逃げ出す前に、この研究所は完全に破壊しなければならない。この研究所の捜索に来ていた武蔵やビアン、そしてゼンガー、エルザムもまたそれを決意した。この研究所は文字通りパンドラの箱……決して開けてはいけない物だったのだ
『エルザム少佐、何か問題ですか?』
「問題と言えば問題だが、今はそれ所ではない。クロガネに搭載しているガーリオン2機で出撃し、その先にあるゲッターロボの廃棄所から状態の良いゲッターロボを回収し、クロガネで即時離脱する準備をしておいてくれ。私達も可能な限り早く戻る」
研究所の中でロックを外すパスワード、もしくは鍵を見つける事が出来なければ引き返す事を決め、クロガネに通信を入れてビアン達は研究室へと足を向ける。通路は血塗れ、死んだ軍人と爬虫人類の死体が折り重なるように倒れている。それから目を背け、素早く研究室の中に駆け込む
「ふう……ここは少し安全みたいですね」
「そのようだな」
今までの部屋や通路とは異なり、そこは倒れた棚や血痕もない。本当に普通の部屋だった……いや普通の部屋と言うのは誤解がある
「ゲッター線指数85%。この高密度のゲッター線が、この部屋を護っていたのだろう。武蔵君達は少し休んでいてくれ、ここからは私の仕事だ」
PCの前に座り、立ち上げていくビアン。確かにここまで来れば、武蔵達に出来ることはなく、ビアンの言葉に甘えて床の上に座り込んで少しでも身体を休めることにする。
「……音がだんだん大きくなってますね」
「ああ。時間はやはり残されていないようだな」
隣の区画から響く音は徐々に、徐々に大きくなっている。隔壁を破り、こちらの区画に近づいて来ているのかもしれない
「クロガネに辿り着くまでに何事も無ければいいが」
「最悪廃棄されたゲッター3を再起動させましょう」
走って逃げる時間がなければ、それしか残された手は無い。もしくは、格納庫の先にあるゲッターロボを起動させるしか、無事にエルザム達がこの地下研究施設を脱出するすべは無いのかもしれない。
「武蔵、休んでいる間に色々と聞きたい事があるがいいか?」
「ええ、全然大丈夫ですよ。ゼンガーさん」
ビアンが調べ物をしている間。武蔵とゼンガー、合流したばかりのゼンガーは武蔵の過去を知らず、旧西暦の人間や、ゲッターロボのパイロットと言う要所的な部分しか知らず、エルザムもよく理解していない部分もあり、そこを武蔵に尋ねながらビアンの分析が終わるのを待つのだった……
早乙女研究所のメインコンピューター……それはビアンの想像を超える宝の山だった。ロストテクノロジーであり、オーバーテクノロジーの山、そのどれか1つでも公表すれば莫大な富を手に出来る特許の数々がビアンの頭の中を浮かんでは消えていく
(……見つけた)
格納庫のパスワード、これであの格納庫を開けることが出来る。今すぐにでも格納庫の奥へ向かうべきだと判っているのだが、研究者としての本能がそれを拒絶した
(……早乙女の乱……鬼の襲来……機械昆虫の襲撃……)
調べれば調べるほど、疑惑が強くなる。このデータベースに眠るのはまるで複数の世界の出来事を1つに纏めたような……そんな整合性のない記録の数々。1つ読み解けば、2つ矛盾点が生まれる。その矛盾をほどけば、更なる矛盾が生まれる。どの記録も年数が余りにもバラバラなのだ
(……駄目だ、今はそんな事をしている場合ではない)
いま自分がやるべきことはこれではない、格納庫のパスワードをメモし、後ろ髪を引かれる思いでPCの電源を落とす。もう二度と見ることが出来ない記録……それは深遠を覗き込んだときの興奮に似ているが、だがそれと同時に深遠もこちらをのぞき込んでいる。飲み込まれるわけには行かないと強い意志の力でそれを跳ね除けたビアンはUSBメモリだけは回収する。
(これだけは貰っておこう)
ゲッター炉心の設計図。アイドネウス島で寝ぼけて書いた図面はある、だが其れでいいのかと言う不安がある以上早乙女研究所の正式なゲッター炉心の図面は何をしても入手したかった。そしてもう1つ、ゲッターロボの図面だ。今の騙し騙しの修理ではない、完全な修理に必要なデータを収めビアンは席を立とうとして気付いた
「なんだこれは!?」
それは何故か起動していた監視カメラの映像。そこには隣の区画のゲッター試験場の壁を殴りつける、異形の姿があった。鬼の顔を胴にし、それに短い手足をつけたような異様な姿。なんども繰り返されている衝撃の正体はこれだとビアンは一瞬で理解した
「これは!? これが鬼なのか!」
「しかし、不味いぞ、障壁が砕かれるッ!」
ビアンの声にモニターを覗き込んだゼンガーとエルザムが叫ぶ、鬼の拳で障壁は砕け、もうこちらの区画に侵入してくるのも時間の問題だった
「……武蔵君」
「判ってます、やるだけやりましょう」
もう大破しているゲッター3の元に戻る時間は無い、このまま4人で格納庫に眠るゲッターを使いあの鬼を退けて脱出するしか手立ては無いのだ。武蔵達は意を決した表情で格納庫へ走る
「やっぱりオイラの知らないゲッター……だけど、こいつは試作機かぁ」
格納庫の扉の先には確かにゲッターロボが眠っていた。だが肝心の頭部……イーグル号に当たる部分が存在しないゲッターロボだ。姿はゲッター1だが頭部がなければと唇を噛む、だが背後から迫る破壊音は着実に近づいて来ていてこれ以上迷っている時間はなかった。
「我々にはこれしかない」
「迷っている時間は無いぞ!」
「ええい! こうなったら出たとこ勝負だ!!」
引き返すことも出来ないのなら前に進むしかない。武蔵は意を決して格納庫に鎮座しているゲッターロボに向かって走り出した
「……大丈夫ですか、ビアンさん」
「大丈夫だ。通常のゲッターロボよりもコックピットが広いからな」
ジャガーにゼンガーとエルザム、そしてベアーに武蔵とビアンで2人ずつ乗り込む。コックピットに腰掛け、操縦桿を握り締め、左手でゲッターを起動させる。
(レイアウトは若干違うが……問題ない、基本的な部分は同じか)
乗り込んだゲッターロボは武蔵の乗るゲッターロボを更に改良したようなデザインだったが、中身も改良されていた。それでも基本的な部分は変わらないことに安堵する。
「早く、早く立ち上がれ……」
起動までの僅か時間、だがその僅かな時間でこの地下研究所に潜む悪魔がゲッターを見つけた
【ギシャアアアアアアッ!!】
「くそ! もうきやがった!!」
まだゲッター炉心は起動しない、長い間安置されたことでゲッターの中身は外見と異なりボロボロだったからだ
「「ぐおっ!」」
鬼の横殴りの拳がジャガー号にめり込み、ゲッターに凄まじい振動が走り、ゲッターロボが背中から倒れこむ
「ぐっ! ビアンさん! 大丈夫ですか!?」
「口の中を切っただけだ、問題な……があっ!?」
「ぐうっ! ま、不味いッ!」
マウントを取られ何度も拳を叩きつけてくる鬼。一撃、一撃に殺意と敵意が込められている。
『ぐっ! このままでは不味いぞ!』
「判ってます! あと少し、あと少しなんです!」
明かりの消えていたモニターに明かりが灯り、外部モニターが回復する。ベアー号のコックピットに爪を突き刺そうとしていた鬼に気付き、膝蹴りを叩きこむ
【ギガア!?】
背後からの衝撃で前のめりに倒れた鬼。その隙に立ち上がり拳を構えるゲッターロボ……だがイーグル号が存在しないので、その出力は一向に上がる気配が無い。
「エルザムさん、ゼンガーさん、ビアンさん、かなり荒っぽく行きますよッ!!」
格納庫の壁に掛けられていたゲッタートマホークを手にし、鬼へと切りかかるゲッターロボ、だが上段から渾身の力を込めた一撃は鬼の右腕によって簡単に防がれ、反撃に繰り出された前蹴りでゲッターロボを蹴り飛ばす
「ぐうううっ!!! ちくしょう! 駄目だ! 出力が全然足りねぇッ!!」
ペダルを踏み込み何とか態勢を立て直したが、どう考えてもあの鬼には勝てない。イーグル号がない、たったそれだけだが、ゲッターロボは3つのゲッター炉心とパイロットによってその力を発揮する。新型ゲッターロボとは言え、パイロットも、イーグル号も無い。それではどう足掻いてもあの鬼を戦うには出力が不足しすぎていた
『クロガネに引き返すとしても、追いかけてくるぞ』
『……なにか打開策はあるか?』
打開策……そんなの自分が知りたいと言いそうになる武蔵だが、あたりを見回して打開策は1つだけあった
「……あの廃棄してあるゲッター3、あれにゲッタービームをぶち込んで、そのままオープンゲットをして、クロガネが開けた穴から脱出……ってのはどうですか?」
下手をすれば巻き込まれて終わりだが、出力不足のゲッターではそれしか手段が無い。大破しているゲッター3の炉心が誘爆するかは不明だが、プロトゲッターの墓場も近く、残っているゲッター線と反応して爆発する可能性は極めて高い。
「判った、クロガネを後退させよう。後はエルザムだが」
『大丈夫です総帥。死んでも意識は飛ばしません』
イチバチ所かイチジュウ……そんな絶望的な勝負。だが悩んでいる時間は無い
【グオオオオッ!!】
壁をぶち破りながら姿を見せた鬼の姿にビアン達は武蔵の提案を受け入れる。生き残るにはそれしかないと決断したのだ。
「おおおおーーーっ!!!」
【シャアア!】
鬼の頭部から放たれた電撃がゲッターを貫きその凄まじい電圧がコックピットにも広がりビアン達の苦悶の声が響く。だがゲッターは健在だった。新型ゲッターロボなのか、別の世界のゲッターロボなのかは不明だが、武蔵のゲッターロボより、遥かに頑丈でそして強力だったからだ
(あと少し……)
鬼と戦いながら少しずつ、少しずつ後退しゲッター3の近くに近寄る。あからさまに近づけば、鬼に警戒される。あくまで自然な動きでゲッター3に近づこうと武蔵はしていた、だが鬼の能力は武蔵の予想を遥かに越えていた。
【シャアッ!!】
「なっ!? ぐおおおッ!?」
鬼の口から伸びた舌が胴体に突き刺さり、ゲッターロボは研究所の壁に背中から叩きつけられる。
「ぐっ……くっ……」
その予想外の衝撃に苦悶の声を上げるが、その変わりに目的地まで吹き飛ばされた事は武蔵にとって幸運だった。そのまま行動不能に陥ったと思わせ、停止しているとトドメと言わんばかりの勢いで舌が射出される。
「ここだッ!!」
大破していたゲッター3を盾にして、舌を貫通させる。そして舌にトマホークを突き刺し、鬼の舌をゲッター3に縫い付ける。
【ガオオオンッ!!!】
苦悶の声をあげ、ゲッター3を引き寄せようとした鬼。そのタイミングに合わせて蹴りを叩き込む、鬼の力とゲッターキックによって吹き飛んだゲッター3が鬼の口の中に飛び込んだ。
「ゲッタービィィィムッ!!!」
出力は弱いが、それでも十分な威力を持ったゲッタービームがゲッター3を貫き爆発する。それを確認すると同時にオープンゲットする
「大丈夫ですか!?」
『ぐ、ぐぐうううう! 大丈夫だ!』
唇を噛み締めゲッターの殺人的な加速に耐えるエルザムとゼンガー、研究所の壁を貫きクロガネが開けた大穴からジャガー号とベアー号が地上へと繋がる地中へと脱出した瞬間。背後から凄まじい爆発音が響く、それも1つや2つではなく何十と言う爆発だ。武蔵の計算通り、プロトゲッターにも誘爆し、その爆発によって鬼を吹き飛ばしたのであろう。だがその爆発は鬼だけではなく、武蔵達にも襲い掛かっていた
「ぐっ、これはそ、想像以上にでかい!」
「……これほどまでとは!?」
『う、うおおおおおおおッ!!!』
爆発に飲み込まれないように最大加速でトンネルを抜けたゲットマシン。上空にステルスシェードを展開し、待っていたクロガネの姿を見つけ、武蔵やビアン達はやっと安堵の溜め息を吐くのだった……
「おおー素晴らしい、素晴らしいねぇ、スティンガー君」
「そ、そうだね、なんて素晴らしいんだ。コーウェン君」
浅間山の地下で爆発したゲッター3とプロトゲッターロボ。その膨大なゲッター線の爆発は、この世界で暗躍するコーウェンとスティンガーにとって、なによりも喜ぶべき物だった。不可視のゲッター線を存分に取り込み、2人の体調は爆発的に回復に向かっていた。
「大破したゲッターGも後で回収すればいいし、それに偽物のGも中々いい能力になっていたね」
「うんうん、まさか武蔵がGを倒すのは計算外だったけど、最終的には僕達の計算通りになったね」
かつて真ドラゴンが眠っていた火口でコーウェンとスティンガーは笑う、武蔵達が脱出する為に行った行動が奇しくも、コーウェンとスティンガーを活性化させることになってしまっていたのだ
「さー準備を続けようか、スティンガー君」
「そ、そうだね! コーウェン君! 今度こそ失敗しないように念入りに準備をしよう!」
燃え盛るマグマの上で2人は笑う、今度こそ自らの宿願を成功させてみせる、黒く濁った瞳で決意を新たにするのだった……
第42話 ゲッターロボ 改造計画
早乙女研究所で入手したのは「新ゲッターロボ」のジャガー、ベアー号。プロトゲッターの残骸でした、ですがこれでも十分に旧ゲッターロボを改造するには十分な素材です、後コーウェンとスティンガーがめっちゃ元気になりました。ゲッター線の悪用礼ですね。次回はゲッターロボの改造と、裏切りの銃口に向けての話を書いていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い