進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第53話 対決

第53話 対決

 

伊豆基地の柔道場……正しくは訓練場なのだが、そこは普段の倍以上の人間が集まっていた。その理由は勿論、武蔵とカイの柔道対決にあった。カイに柔道でしごかれるのは新兵の最初の仕事とも言える、PTのスペシャリストでありながら柔道の達人であるカイと武蔵の対決と聞いて盛り上がらない訳がなかった。

 

「はいはーい、カイ少佐と武蔵の柔道対決だ。どっちに賭ける! さぁ張った張ったッ!!!」

 

タスクが意気揚々とカイと武蔵の対決を賭けにしている。それを見てカイは小さく溜め息を吐くが、今は半舷休憩そこまで目くじらを立てるものではないかと納得はしていないが、自分に言い聞かせるようにそう呟き念入りの柔軟を始める。

 

(……強いな)

 

自分と同じ様に柔軟を行っている武蔵だが、腰周りと腕周りを重点的にやっているのを見て間違いなく武蔵の柔道のスタイルは投げ技をメインとした物だろう。その身体から繰り出される力技は軍務経験を積んで過ごした日々の果てに衰えを実感している今――受け流すには些か辛いが、柔よく剛を制す。自分の流に持っていければ大丈夫だろうと考えていた。

 

「武蔵だ」

 

「おー相変わらず大穴ですね。負けたら大変ですよ~」

 

「構わない、俺は武蔵が勝つと踏んだだけだ」

 

「じゃ、俺も武蔵ッ!」

 

賭けの比率はやはりカイのほうが人気だ。カイの柔道の強さを知っているだけに、いかに柔道を修めていたとは言え学生。武蔵が勝てるわけが無いと思うのは当然の事であった。柔軟を終えて立ち上がった所でラドラがカイの背後に立つ。

 

「武蔵の事だ、まずは挨拶代わりに仕掛けてくるぞ。そのまま負けるような無様な真似は見せるなよ」

 

「言ってくれるな、まだまだ若い者には負けんさ」

 

その自信が驕りにならなければ良いがなと笑い、コートの外に出るラドラ。タスクが胴元の賭けの受付も終わり、カイと武蔵が向かい合って立つ

 

「――始めッ!!」

 

審判を務めているラドラの合図と同時に武蔵が弾丸のような勢いで突っ込む

 

「ぬんっ!!」

 

「むっ! とっ!」

 

見ていたキョウスケ達は一瞬何が起こったのか理解出来なかったが、武蔵はカイの懐に飛び込み。そのままの勢いで背負い投げを放ったのだ

 

「……わざとか」

 

「へへッ! ま、オイラの力量を見せるって事ですよ」

 

今のタイミングならば背負い投げで一本を決めることが出来た。だがそれを武蔵はしなかった、カイに自分の力を見せる為の攻撃

 

「これは久しぶりに良い勝負が出来そうだ」

 

「よろしくお願いしますよ。カイさん」

 

にやりと獰猛な笑みを浮かべるカイに武蔵は腰を深く落とし構えを取る事で自分の準備は万全だと伝える。

 

「行くぞッ!!」

 

「行きますッ!」

 

殆ど同時に飛び出しかがみ合わせのように奥襟を掴もうとする武蔵とカイ。だが互いに互いが奥襟を掴ませない様に弾き、目まぐるしく2人の立ち位置が変わる

 

「っと!」

 

「今のを避けるか、やるな」

 

「いえいえ、正直必死ですよっとッ!!!」

 

突っ込む勢いでの大外刈りを交わした武蔵はカイの姿勢が不安定なうちに、胸が密着する前に大外刈り返しを放つ

 

「悪いな、その程度の駆け引きは慣れてるんだッ!!」

 

大外返しを払い腰で返しに出るカイ。返し技を返し技で返されるとは思ってもいなかった武蔵はそのまま投げ飛ばされかけるが、畳に手を付いて腕力だけで姿勢を立て直し、そのままカイから距離を取って襟を正す。

 

「やるな、良い反射神経をしてる」

 

「カイさんも強いですねえ、オイラの学校にカイさんみたいな先生がいたら、全国優勝も夢じゃなかったと思いますよ」

 

「ふふふ、お前のような教えがいのある生徒が多いのならば、教師もまた1つの道だったかも知れんなッ!!」

 

再びぶつかり合う武蔵とカイ。その姿は真剣その物でおちゃらけた空気はなく、真剣勝負の凄まじい緊迫感が訓練場を満たし始めているのだった……。

 

 

 

並みの相手では審判を務めることが出来ないと判断し、ラドラが審判を買って出た。だが今ラドラは軽い頭痛を覚えていた

 

「お前ら、いつから異種格闘技を始めた?」

 

「「黙ってろッ!!!」」

 

格闘技を修める者同士で、そう簡単に勝てない相手と言う事でヒートアップしたカイと武蔵の対決はいつの間にか、空手VS柔道と言う異種格闘技戦に変わっていた

 

「せいっ!」

 

「とっ! そりゃあッ!!」

 

「甘いわッ!!!」

 

「どっちがッ!!」

 

正拳突きを払い、そのまま投げに入ろうとした武蔵。だがカイの甘いの叫び通り懐に入り込んでの肘打ち、だが武蔵はそれを筋肉で受け止めカイの奥襟を掴む

 

「どりゃあああーーッ!!!」

 

「ぬっぐっ! まだまだぁッ!!」

 

叩きつけられる前に背負い投げから脱出して、最初の柔道の構えはどこへやら完全に空手の構えを取るカイ

 

「すげえ……めちゃくちゃすごいんだけど……」

 

「これ柔道対決じゃないな」

 

ジリジリと距離をつめるカイと武蔵、そこに既に柔道対決の面影は微塵もなく完全に空手家VS柔道家の戦いへとシフトしていた。

 

「はっ!!」

 

「むんっ!!」

 

拳を弾く武蔵と、弾かれる事を承知で拳を繰り出すカイ。手数は圧倒的に武蔵が少なく、見ている者はカイが優勢だと考えていたが、途中から道場に来たギリアムとコウキは武蔵よりもカイが追詰められている事を理解していた

 

(急所は完全にガードして、殴れるポイントは防御の上。あれではダメージも糞もない)

 

(体力では完全に武蔵が上……か)

 

ヒートアップしたカイも武蔵も悪いが、状況的に完全にカイが不利になっていると2人は分析していた。武蔵にとって空手とは一番対処しやすい武術である、それは竜馬との組み手で喧嘩空手……いや、殺人空手になれていたと言うこともある。確かにカイは強い、だがガードの上から拳をねじ込んで殴り飛ばしたり、心臓打ち、鎧通しなどの空手以外の技も使う竜馬と比べればカイの攻撃は十分に対処出来る。

 

「必殺ッ!!」

 

「むっ!? ぬ、うおっ!?」

 

奥襟を掴んだ武蔵はそのままジャイアントスイングの要領でカイの身体を持ち上げ、回転を始める。その姿は生身とゲッターロボの差こそあるが大雪山おろしを連想させた……ここでリュウセイ達は勘違いしていたが、ゲッター3に元々大雪山おろしと言う技は存在しないのだ。頭部のミサイル、伸縮自在の両腕それと重厚なパワーと装甲。それがゲッター3の武器として早乙女博士はゲッター3を開発した。それ故にゲッター1、ゲッター2と比べて決め手がない。それが本来のゲッター3の特徴であったが、武蔵が乗り込んだことでその問題は解決した、自身の柔道での得意技である大雪山おろし。それを武蔵はゲッター3に使わせることに成功していたのだ。

 

「大雪山ンッツ! おろしいいいいッーーー!!!」

 

遠心力が付いたままカイを上空に投げ飛ばす武蔵。回転によって三半規管を狂わされたカイは受身も取れず地面に叩きつけられる所でラドラが割り込んでカイを受け止める

 

「見誤ったな、カイ」

 

「そのようだ……良い勝負だった。ありがとう」

 

「いえいえ、本当に良い勝負でした。ありがとうございます」

 

互いに感謝の言葉を告げる2人だが、見ていた者達はアレは柔道じゃねえと心の中で感じていた。だが、空気を呼んで、その言葉を口にすることは誰一人として無いのだった……。

 

 

 

 

 

カイと武蔵が訓練場で対決をしている頃。伊豆基地の司令部ではある問題が浮上していた。

 

「SRXチームの出撃停止命令ですか、ノーマン少将。状況は理解していますか?」

 

『判っている、そう嫌味を言わないでくれ。私以外の上層部が動いている』

 

この期に及んで人間同士の利権争いを起こしている、そのことにダイテツを含め、レイカーもノーマンも顔を顰める

 

「SRXチームを護れなかったのは武蔵の件ですな?」

 

『ああ、ゲッターロボの接収と武蔵の投獄を主張する者がいる。軍でゲッターロボを運用するべきだとな』

 

「愚かとしか言えんな。新西暦の人間にゲッターロボは操れないというのに」

 

ダイテツが顔を顰めて呟く、確かにゲッターロボは強力な特機であることは間違いない。だがその反面操れる人間が極端に限られる、仮にゲッターロボを接収したとしてもゲッターロボを効率的に運用する事等出来ず。エアロゲイターに回収されて、敵に回って終わりだろう

 

『査問会は極力早く終わるようにこちらも動く、お前達の報告を聞く限りではSRXチームが裏切り等は考えられないからな』

 

「出来るだけ早く終わらせていただきたい、今は戦力を無駄に削ぐ余裕などはありません。それに部隊の者にもいらない不信感を抱かせることになりますからな」

 

エアロゲイター側の新型ナイトの戦闘力の高さ、そして無尽蔵に出現する虫型機動兵器。正直ハガネとヒリュウ改の部隊以外は敗戦を続けているので、恐らくイングラムが怪しいと言うよりも、伊豆基地ばかりが戦果を上げるのを面白くないと考えているどこぞの基地司令や上層部が今回の査問会を強引に押し切ったのだろう

 

「それよりもノーマン少将。エアロゲイター陣営にドラゴンとライガーが出現しました」

 

『……そうか、その件だがこちら側の不手際を認めずにはいられないな』

 

ゲッターロボGを戦力として再活用する為に修理を認めたのはノーマンだ。だが実際は修理が完了する前にエアロゲイターに奪取され、あろう事かエアロゲイターの技術で量産されている。それは戦力差がますます開いていると同意義だ

 

『それとこれは未確認情報だが、メカザウルスらしきものの鳴き声も確認されている』

 

「生き残りか……さらに厳しくなるな」

 

アイドネウス島で全滅した恐竜帝国。だが、無作為に出撃していたメカザウルスの生き残りは、表舞台に出ていないだけで人類への反撃のチャンスを虎視眈々と狙っている

 

「頭の痛い問題ばかりだな……」

 

『迷惑を掛ける、だがこちら側から出来るのは物資の補給と人員の追加くらいだ、しかし人員は正直必要ないだろう』

 

「そうですな、いまここで輪を乱す人物が来ても意味はありませんから」

 

どこの派閥から増員が来るかは判らない、今のこの状況で輪を乱す人物は必要ないとレイカーは断言した

 

『ならば資材の搬入を行う。苦労をかけるがよろしく頼む』

 

そう言ってノーマンとの通信は途絶えたが、伊豆基地の司令部には重い沈黙が満ちる

 

「結局伝える事は出来なかったな」

 

「仕方あるまい……余計な気苦労をさせるわけには行かない」

 

ノーマンほどの豪傑が目の下に隈を作り、頬を痩せさせている。伊豆基地にハガネとヒリュウ改を配置し、さらに民間協力者とは言え、ビアンと繋がりを持つ武蔵を配置させる事に軍上層部がもめているのはレイカーとダイテツからしても想像に容易い

 

「大尉と艦長がいないのは幸いでしたな」

 

黙って話を聞いていたショーンが苦笑しながら告げる。もしこの場にテツヤとレフィーナがいれば査問会の開催に異論を唱えていただろう……リュウセイやアヤ、そしてライの疲弊具合をその目で直に見ているからこそ、査問会を開催する事を決定した軍上層部に不信感を抱かずにいられない結果となっていただろう。

 

「しかし正直に言いますとSRXチームの離脱は厳しいですな」

 

「ゲシュペンストが使えなくなって来ているだけにな」

 

メカザウルス、そして量産型ドラゴン達との戦いでゲシュペンストを初めとしたPTはボロボロだ。元より特機と戦うように建造されて居ないのだ。修理や改造で騙し騙し使ってきたが、それも限界が近い

 

「ガーリオンなどのAMを使うのはどうでしょうか?」

 

「駄目だ、ガーリオンは相当な稼動経験が必要だ。与えた所ですぐに扱えるとは思えない」

 

元よりエースパイロット用として開発されたガーリオンだ。部隊に配置した所ですぐ使えるとはダイテツもレイカーも考えていなかった。勿論、提案したショーン自身も使えるとは思っては居ない。

 

「ビアン博士達が何かを用意してくれている事を祈ることになるかもしれませんな」

 

「……表立って協力をして貰えないのが辛いところだな」

 

異星人との戦争になる事を見越していたビアンは様々な発明を開発をしていた。ビアンが決起した時に用意されていたゲシュペンストの強化案なども廃棄された事が余りにも惜しい……。

 

「ラドラ元少佐が独自にゲシュペンストを開発しており、強化パーツや武装が用意してあるとの事です。それを回収し、運用することはどうでしょうか? 本人も伊豆基地で運用する事を望んでいますし」

 

「ゲシュペンスト・シグか、確かにあのレベルの改造機があるのならば心強い」

 

強化パーツを装備することで可変式になるゲシュペンスト。通常のゲシュペンストよりも大型だが、連邦のエースパイロットはゲシュペンストに慣れている。それをAMに転向させるよりかは、ゲシュペンストを改造する方向の方が良いだろうと話し合いの方向は進む。

 

「問題は上層部とマオ社か」

 

「ヒュッケバインプロジェクトか、あれは殆ど上層部の暴走と言っても良いからな」

 

これも耳の痛い話になるが、利権絡みの話になる。正直に言うと、ヒュッケバインに転向させ、熟練機動をさせるよりもエースパイロットにはゲシュペンストの改造機を与えるのが最善だとダイテツもレイカーも考えていた。

 

「マリオン博士の暴走が痛いな」

 

「アルトアイゼンとヴァイスリッターの事ですな」

 

あれをトライアルに出すつもりのマリオン博士、正直あんな色物をゲシュペンストMK-Ⅲとしてトライアルに出せば誰がどう考えてもヒュッケバインに軍配が上がるだろう。

 

「考えは間違っていないんだがな……」

 

「少々行きすぎな所がありますからな」

 

全ての人間が扱える機体ではなく、完全なエースパイロット仕様。しかもアルトアイゼンとヴァイスリッターは2機運用を前提にしている、これではトライアルに合格する訳もない

 

「ギリアム少佐とラドラ少佐からゲシュペンストの強化プランについての報告書が上がっていますが……」

 

「……伊豆基地で内密に話を進める。ゲシュペンストをこのまま終わらせるわけには行かない」

 

仮にヒュッケバインが量産されたとしても、今までのエースパイロットがヒュッケバインに即座に対応出来るとは思えない。軍の総意に刃向かう形になってもゲシュペンストをこのまま埋もれさせるつもりはレイカーには無かった。

 

「我が艦で建造したアーマリオンはどうする、あれも量産することは決して不可能ではないぞ」

 

「……ゲッター3が鹵獲したリオンか」

 

操縦系統は脱出時に破壊されているので、そのまま運用することは出来ない。だが、リオンを素体にして作るアーマリオンの事を考えれば伊豆基地に大量に保管されているリオンの残骸にも利用価値が出てくる

 

「アーマリオンについてはカーク博士に、ゲシュペンストに関してマリオン博士に一任する。残された時間は少ない、可能な限りで良い、戦力の強化を進める」

 

具体的な強化案、そして強化されたゲシュペンスト・シグが存在する事でレイカーはゲシュペンストの強化へと踏み切った、そして恐竜帝国との戦いで、活躍したアーマリオンの実戦データもあり、ノーマンから渡される大量の資材もある。少しずつ、武蔵が現れた事で生まれた波紋は大きな波紋となり、この世界を大きく変えようとしているのだった……。

 

 

 

 

 

伊豆基地……連邦全体が動き始めた頃、クロガネは大西洋の海溝に身を隠し、エアロゲイターとの戦いに備えていた

 

「そうか、モンテニャッコとは連絡が取れないか……無理も無いが」

 

ロレンツォ・ディ・モンテニャッコ、元コロニー統合軍で、マイヤーの薦めもあってDC入隊した男だ。だがその本質は連邦の転覆を狙うテロリストとしての側面が強い

 

「仕方ないことかもしれないですね。元よりロレンツォ中佐は連邦の転覆と、スペースノイドの地位の向上を願っていましたから」

 

「だとしてもだ。スカルヘッドの情報は欲しいところだ」

 

EOTI審議会が異星人に譲渡する予定で、イスルギ重工と共同して開発した宇宙プラント。それを確保して置きたい所だったが……その性質上どこにあるかは判明していない。

 

「もしやもう異星人の手に落ちているのかも知れぬ」

 

「その可能性は十分に考えられる、やはり今手に入る物で対策を練るのが良かろう」

 

スカルヘッドを提案したのはエルザムとバンの2人だ。モンテニャッコが捜索に当たっていたので、モンテニャッコと連絡がつけばと考えていたのだが、連絡が付かないのならば無理に捜索するだけの余力は今のビアン達にはない

 

「コロニー統合軍の生き残りの方はどうなっている?」

 

「は、私とリリー中佐で私達の思想に共感した者を集めております。ただし機体の余裕はやはりありませんが……」

 

これからの戦いにアードラー達の様な人間は必要ない――本当に地球を守りたいと願う兵士だけで、誰からも感謝されることは無いが……それでもと連邦の反攻作戦オペレーションSRWに参加する事を決めていた。

 

「そうか……機体に関してはコロニー74のプラントを使う」

 

「74コロニーですか? あれは廃棄コロニーでは?」

 

「マイヤーの遺産だ。私もマイヤーも自分達が敗れた後の事を考えていた」

 

地球にビアンが隠したのと同じ様に、マイヤーもまた宇宙に遺産を隠していたのだ。異星人と戦う為に……2人の考えの深さにエルザム達は驚く事しか出来ない。

 

「エルザム、信用出来るコロニー統合軍に74の製造プラントに向かうように命じてくれ、ただし最悪の場合を想定して欲しいとも付け加てだ」

 

「……既に異星人に確保されている可能性ですね?」

 

「そうだ、スペースデブリの中に隠しているが……それ故に危険だ。エアロゲイターがどうやって量産型ドラゴンを量産しているのか、それだけの製造拠点がホワイトスターだけとは思えない」

 

どこかの地球側の製造プラントを確保している可能性がある。ビアンはその危険性を考えていたのだ

 

「量産型Gシリーズか……連邦がもっとしっかりしていればそんなことにはならなかったのですがね」

 

「しかたあるまい、連邦とて1枚岩ではない」

 

連邦に回収されたゲッターロボGと量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンの3体。それがどういうルートでエアロゲイターに渡ったかは不明だが、そのことに対する責任を追及しても何も変わらない。

 

「有事に備えて出撃する事を考えておいてくれ、嫌な流れだ」

 

連邦の通信を傍受していて、査問会が行われる事を知り……エアロゲイターに攫われた人間の事もある。最悪の場合、ゼンガーとエルザムに出撃を頼むと伝え、ビアンは格納庫へと向かう。

 

「……結局、テスラ研に届けることが出来なかったな」

 

ゲッターロボの暴走事件、それに伴いビアンはテスラ研に送る予定だった新ゲッターロボをクロガネで運用する事を決めた。テスラ研にはゲッター炉心の設計図とプロトゲッターの残骸を送る事となったが、それでもテスラ研の研究者ならば何か有効な術を見つけ出す事を確信していた

 

「お前もまだ、スクラップにはなりたくあるまい」

 

ハンガーに固定されている新ゲッターロボ。イーグル号はないが、それでもその力強さは全く損なわれていない。

 

「すぐに戦えるようにしてやる、そう焦らせないでくれ」

 

プロトゲッターの残骸の中で新ゲッターロボと適合するイーグル号だけを残した。イーグル号からゲッター線のエネルギーが放たれるのを見てビアンは苦笑する、まだ自分は戦えるとイーグル号が、新ゲッターロボが訴えかけてくるようにビアンは感じていた

 

「まずは炉心だ、ジャガーとベアーの炉心を組み替える。再設計が必要だな」

 

武蔵のゲッターロボから取り出した半壊しているジャガー号の炉心とベアーの炉心。それを新ゲッターのサイズに合わせて再建造する、そしてイーグル号はまるで狙い澄ましたかのようにコックピットだけが存在していない

 

「ヴァルシオンよ、再び私に力を貸してくれ」

 

イーグル号にヴァルシオンのコックピットブロックとゲッター炉心を組み込む。ヴァルシオンのコックピットに搭載されている重力装備、それがあれば新西暦の人間でもゲッターロボを操縦することは出来る。正し、重力装備を量産するのは難しいのでイーグル号だけ……つまりヴァルシオンのパイロットのビアンしか操縦できないが、新ゲッターロボをオペレーションSRWに参加させる事が出来る。クロガネの設備によって再建造されるイーグル号を見つめながらビアンはPCの操作を続ける、新ゲッターの再構築だけではない。人類の守護者となるべきの「ダブルG」の建造、そしてゲッターロボに耐える事の出来る新しいパイロットスーツの設計。表舞台に立つ戦いではないが、ビアン達もまた戦いを続けているのだった……。

 

 

 

 

ネビーイームで急ピッチで建造されている量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンの3体を見てイングラムは言葉に出来ない胸にこみ上げる何かを感じていた……激しい焦燥感と懐古から来る懐かしさを感じていた。

 

「壊れた人形には相応しいか……」

 

記憶が安定せず、自分が何をすれば良いのかさえも判らなくなっている。そんな自分を見てイングラムは自嘲するように笑い、格納庫を抜ける。

 

「お前の役目は、選ばれたサンプルを血祭りに上げること……」

 

「……血祭り……」

 

「そう……あたしの言うことを聞けば、楽しいゲームで遊ばせてやるさね」

 

「ゲーム……」

 

「さあ、もうお眠り。もうすぐ外に出してやるからねえ」

 

アタッドによるマインドコントロールを見て、イングラムは笑う。それが先ほどの笑みと違う、邪悪な笑みであることを自覚しますます自分が壊れている事をイングラムは実感する。

 

「イングラム……戻って来たのかい?」

 

マインドコントロールを終えた赤毛の女……アタッド・シャムランがイングラムを見て、馬鹿にするように言葉を投げかける。

 

「ああ。地球での仕込みが終わったのでな……所で……サンプルの調子はどうだ?」

 

「今の所問題はないよ。この子を含めて全員ね」

 

お前とは違うと言葉に混ぜ、イングラムを挑発するアタッド。だがイングラムはそんなことに興味はないと言わんばかりに冷めた表情を浮かべ、それがアタッドを苛立たせる。

 

「量産型ドラゴン達の他にまた新しいサンプルを持って帰って来たんだろう? あたしが調整してやるよ」

 

「いや……クスハ・ミズハは残してきたサンプル達の最後の仕上げに必要だ。俺の手で調整する、お前はせいぜい量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンに合うサンプルの用意でもするんだな」

 

今までのサンプルでは量産型ドラゴン達を有効的な戦力としては使えない。それの調整でもするんだなと言ってイングラムは背を向ける。

 

「フン、木偶人形風情が……調子に乗るんじゃないよ」

 

その背中にアタッドが言葉を投げかける、イングラムはお互いになとアタッドには聞えないような小声で呟き。光のない瞳で椅子に腰掛けるクスハの待つ部屋へと向かう

 

「クスハ・ミズハ……これをお前に託しておく、必ずやこれをリュウセイに渡せ」

 

「……了解しました、しかし何故ですか?」

 

「判らない、俺も判らないんだ。だがこうするべきだと俺の心が訴えている、頼んだぞ。クスハ……」

 

イングラムが渡したUSBメモリを大事そうに懐にしまうクスハ、それを見てイングラムは満足そうに頷き、襲ってきた頭痛に歯を食いしばり、頭を押さえてよろめき――壁によりかかりながら部屋を出る。

 

「テトラクテュス・グラマトン……がっ……ぐっぐぐうっ!!……天使……黒い……天使……がッ!……俺を……呼んでいる……」

 

ホワイトスターの闇の中、イングラムは漆黒の機動兵器が己を呼ぶ姿を幻視し、吸い寄せられるように闇の中へ足を向ける。

 

「イングラム? どうしたの?」

 

後一歩で黒い天使に触れるという段階でヴィレッタから声を掛けられ、その足を止めた。それと同時に黒い天使の姿は消え、イングラムを襲っていた頭痛もまた消え去った。

 

「ヴィレッタ……か、すまない。俺には残された時間はさほど多くない、最悪の場合。後は頼むぞ」

 

「……! え、ええ……判ったわ。イングラム、任せて頂戴」

 

ヴィレッタの言葉にイングラムは満足そうに頷き、かつてハガネ……いや、リュウセイ達に向けていた笑みを浮かべてよろめきながら闇の中へと消えていく。

 

「イングラム……大丈夫、全部任せて頂戴。貴方の意思は私が受け継ぐから……」

 

ヴィレッタは理解していた、次に会う時。もう自分の知るイングラムではないと、イングラムではないイングラムが自分の名を呼ぶことを理解し、その目に涙を浮かべながら闇の中に消えていくイングラムを見つめ続けるのだった――。

 

 

第54話 届かぬ声へ続く

 

 




ビアン博士新ゲッターロボの修理を進め、ゲッター線に本格的に魅入られる。イングラムはアストラナガンの呼び声に引かれ始め、色々なイベントが盛り沢山でお送りしております。ちなみに私はヒュッケバインよりもゲシュペンスト派ですので、OG1の段階でハロウィンプロジェクトの試作型くらいは出したいなとか思います、だってね、出るからね、敵ゲッターロボにメカザウルス。戦力強化はがんがん行きます、OG2は難易度ルナを目指しますからね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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