進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第54話 届かぬ声 その1

第54話 届かぬ声 その1

 

武蔵はラドラ、ギリアム、カイの3人と共にラドラが長い間ゲシュペンストの開発をしていた隠しラボに訪れていた。

 

「こんな所にこんな研究所があるなんて知らなかったな」

 

「連邦の基地にも近いですしね」

 

木の葉を隠すのは森の中と言うが、まさか伊豆基地からさほど離れていない山の中にこんなものがあるなんて、ギリアムは勿論カイも想像していなかった。

 

「ゲッターとPTで来ないといけないレベルだったのか?」

 

武蔵がそう尋ねる、山の麓にはゲッターロボと3機のゲシュペンストが停止している。それほど大掛かりな事なのか? とラドラに尋ねる。

 

「ここの品は全部持ち出す、その為にゲッターロボとゲシュペンストで来たのだからな」

 

カードキーを差込み、パスワードを入力するラドラを見つめながら山の中に隠されているアジトを見て武蔵はぼそりと呟く。

 

「恐竜帝国の基地に似てるな」

 

「似てる所か、それそのものだ。お前が浅間山の地下で見たという早乙女研究所と同じだ。この世界には、あの世界の遺物が流れ着いている」

 

「じゃあ、まだどこかに恐竜帝国の遺品があるって事か?」

 

「早乙女研究所と言う線も捨て切れないがな、良し、開いた。ついて来てくれ」

 

徐々に明かりがついていく通路をラドラを先頭にして進む、山の中は機械的になっており、山の姿その物がこの基地を隠している。木自体も本物だから相当昔から、この場所にあった事がよく判る。

 

「最近色々と信じられないことが続いているが、これは別格だな」

 

「慣れろとしか言いようがないな」

 

苦笑いを浮かべるカイにラドラはにやりと笑い、パスワード付きの扉に再びパスコードを入力する。ロックが外されるまでの間当然武蔵達は待つことになるのだが、武蔵の表情は決して良い物ではない

 

「やはり気にしているのか? 武蔵」

 

「ギリアムさん……そうですね、やっぱり気にしますよ。リュウセイ達は大丈夫なのかって」

 

今頃伊豆基地で査問会に出ているであろうリュウセイ達を心配する武蔵。だが忘れてはいけないのは、武蔵自身も危うい所だったと言うことだ

 

「他人を心配するのは良いが、お前も査問会に無理やり出される所だったんだからな」

 

「全く嘆かわしい、今の状況を判っているのか」

 

レイカー達が危惧していたシュトレーゼマン派の軍人によって、武蔵は無理やり査問会に出される所だった。いや、査問会と言う名の拷問と言換えても良い。それほど上層部の一部は武蔵とゲッターロボを危惧しているのだ

 

「俺達と行動する事で査問会を黙らせたんだ。リュウセイ少尉達を心配するなら、リュウセイ少尉達の分も戦ってやれ」

 

カイの励ますような言葉に武蔵はそうですねと力なく笑う。やはり武蔵にとって人間同士の争いと言うのは心を痛めるのだろう……皮肉な話だが、恐竜帝国と戦っていた時代の方が遥かに人間同士の結束は強く、平和になった今人間同士は互いの利権の為に争う。それが武蔵が残した人類の未来だとなると、武蔵も思う所はあるのだろう

 

「ここが格納庫だ。見てくれ、これが俺の開発したゲシュペンストと、その専用の強化パーツだ」

 

ハンガーに固定されている2機のゲシュペンスト……通常のゲシュペンストよりも大型だが、ゲシュペンスト・シグよりはワンサイズ程サイズダウンされていて、通常のゲシュペンストよりも各部分をかなり強化されているのは明白だった。

 

「ほお、これだけの物をよく用意したなラドラ」

 

「ふっ、俺だけでは無理さ。だがここは恐竜帝国の拠点だった場所だ、俺が貰い受けたゲシュペンストを複製する事など容易い」

 

複製品とラドラは言うが、ここまで改造が施されていては既に複製品ではなくワンオフと言っても過言ではないだろう。

 

「右側のハンガーが格闘戦型、左側が射撃戦型だ。持ち出すからギリアムとカイに合わせてOSを調整しておいてくれ」

 

ラドラの言葉に頷き、ギリアムは射撃型、カイは格闘戦型のゲシュペンストに乗り込む、OSの調整と自分用のフィッティングを始める

 

「ラドラもあんな感じだったのか?」

 

武蔵の言いたい事はラドラも判っている、査問会の人間の傲慢さ、そして醜さを

 

「お前達に会う前だったら、メカザウルスを統括して日本を攻撃していたよ。人間は美しくもあるが、それと同時に醜い物なのだな」

 

2人が調整をしている間、ラドラはPCを操作してパーツをコンテナに収納していく。

 

「そうなんだよな、なんでこんなことになるんだろうな」

 

「共通の敵が居ないからだろうな。それとも平和が続いたのが原因か……それは俺にも判らんさ」

 

旧西暦で敵同士と戦った武蔵とラドラ、2人からすれば今の時代のあり方は中々許容できない物であった

 

「平和になれば、また人間同士の争いになるんだろうか」

 

「どうだろうな、そうならない為に俺達は戦っているつもりだがな」

 

どうして、こんなはずじゃなかった事ばかりだと苦笑するラドラはPCの操作を続けていたが――突如その顔色を変える。

 

「どうした? 何かトラブルか?」

 

「……エアロゲイターが出現した」

 

「っ! 大丈夫なのか!?」

 

「今偵察部隊が出たが全滅は間逃れないだろう……ドラゴンが居る。ハガネとヒリュウ改も出撃準備をしているが……恐らく間に合わない」

 

冷静に言うラドラ、指揮権を持つ者として常に冷静であることを心掛けているが、それでもその声には若干の焦りの色が見える

 

「チッ! カイ! ギリアム! 予定変更だッ! フライトパーツに換装するッ! そのまま出撃して貰うぞッ!」

 

ここから出て、カイとギリアムのゲシュペンストに乗り換えている時間が惜しい。そう判断したラドラはPCを操作し、2機のゲシュペンストに飛行パーツの装着をさせると再び強く叫び、発進用のカタパルトの操作を始める。

 

「武蔵! ゲッターで出撃しろッ!!」

 

「判ってる!」

 

ラドラに怒鳴られる前に武蔵は外に向かって走り出していた。だが外に出た武蔵を待ち構えていたのは……

 

「「「「ギャオオオオオオオッ!!!」」」」

 

「マジかよ、くそったれッ!!!」

 

雲を引き裂き、月の光を浴びて急降下してくるメカザウルス達の姿だった。武蔵は舌打ちしながらゲッターロボに乗り込む

 

「ラドラ! 格納庫を開けろ! このままじゃ、カイさん達のゲシュペンストがやべえッ!」

 

『判っている! 今格納庫に収容しているが、そこから侵入されたらまとめてお陀仏だ! 10分……いや、5分で良いッ! 1人で持ちこたえてくれッ!』

 

地響きを立てて着地するゼン1と空中を旋回するバド、数では圧倒的に不利。不幸中の幸いは、街から離れている事だが……開放されている格納庫にメカザウルスが侵入すれば、カイ達がまとめて死ぬ。ゲッタートマホークを装備し、メカザウルスを油断なく睨みながら武蔵はベアー号の中で舌打ちをする。

 

「こいつは厳しいぜ……全く」

 

自分は禄に動く事が出来ないが、敵は自由に攻め込んでくる。その余りにも不利な状況に武蔵は舌打ちし、メカザウルス達はそんなゲッターロボを見て各々雄叫びを上げると、地響きを上げて一斉にゲッターに向かって走り出すのだった……。

 

 

 

 

武蔵がカイ達のゲシュペンストを守る為にメカザウルスと戦い始めた頃、伊豆基地から出撃したヒリュウ改とハガネは川崎地区に到着していたが……キョウスケ達を待ち構えていたのはあろう事か量産型ドラゴンであり――それによってことごとく破壊された偵察機の残骸とそれから漏れでた炎によって地区の至る所から黒煙が上がっていた。

 

「先発の飛行隊は既に全滅か……ッ!」

 

「見てろよ、クスハ……俺はあいつらを倒して、必ずお前を助け出してみせるッ!」

 

まるでハガネとヒリュウ改を待っていたかのようなドラゴンを見て、ブリットの表情が怒りの形相となり――その彼の身体から気炎が漏れ出る。

 

「熱くなるな、ブリット。……賭け時を見誤ったら、取り返しがつかんぞ」

 

冷静になれと投げかけるキョウスケだが、アルトアイゼンのコックピットのキョウスケ自身の顔は焦りに満ちていた。メカザウルス、量産型ドラゴン達との戦いでゲシュペンストはその殆どが出撃不可能。人員は居るが、乗り込める機体が無いと言う事で出撃出来る数に限りがあった。その上、SRXチームと、カイ、ギリアム、ラドラ、武蔵の4人までも離脱している。状況はキョウスケ達が圧倒的に不利だった。

 

「良し……各機、戦闘開始だ。正し、決して無理をするな」

 

量産型ドラゴンが再び戦場にいる。それはナイトに匹敵する程の脅威になる、加えて転移で増援の可能性がある以上決して無理をするなとキョウスケは戦闘指示に付け加えざるを得なかった。

 

「ん? あいつらは……」

 

一方ハガネとヒリュウ改を待ち構えていたようなドラゴンだが、実際にそんな事は無く、余りに歯応えの無い敵を相手に退屈を感じ、コックピットの中でパイロットであるゲーザ・ハガナーが眠っていただけだ。だがコックピットに響いたアラートで目を覚ましたゲーザはハガネの部隊を見て、その顔を歪めた。

 

「うぐっ……あ、頭が……くそ、なんだ! あ、あいつらを見た途端によぉ」

 

その激しい頭痛に顔を歪めながらドラゴンを再起動させるゲーザ。

 

「よくも俺をこんな目に合わせやがって! ゆるさねえ! このゲーザ・ハガナーとドラゴンがてめえらを皆殺しにしてやるぜッ!!!」

 

オープンチャンネルで叫ぶゲーザの姿にタスクはジガンスクードのコックピットで呻き声を上げた。チームを組んでいるレオナが怪訝そうにどうかしたのか? とタスクに尋ねる。

 

「いや、あの指揮官なんだけどさ……どこかで見覚えがあるような気がするんだよ」

 

「ドラゴンだからでしょう? ジュネーブで散々見たからじゃないかしら?」

 

「いや、そう言うのじゃなくて……あいつから感じる気配って言うのかな。それを知ってるような気がするんだよ……ラーダ姉さんは何か感じないっすか?」

 

気配と言う抽象的な物に見覚えがあると感じたタスクは、そういう気配などのエキスパートであるラーダにそう尋ねるがラーダは何も感じないと返事を返した。

 

「そっか……俺の気のせいかな?」

 

「貴方が女性と賭け事以外に興味を持つなんて珍しいわね。明日は空から槍でも降ってくるのかしら?」

 

レオナの余りに辛辣な言葉を耳にしたタスク、、だが彼はジガンスクードのコックピットで笑みを浮かべる。

 

「……賭け事はともかく、レオナ以外の女の子にはあんまり興味が無かったりするんだけどなあ……」

 

「信じられないわね、とにかく戦闘中に余り適当な事を言うのは良くなくてよ」

 

レオナの言葉に判っていると返事を返しながらも、タスクはジガンスクードのコックピットからドラゴンを睨みつける。その視線は自分の直感は間違っていないという確信めいた視線だった

 

「艦長、武蔵達とは連絡がつかないのですか?」

 

アルトアイゼンを先頭にしてエアロゲイターとの戦いが始まるが、圧倒的に敵の数の方が多い。しかも量産型ドラゴンが出撃している事もあり、武蔵達を一刻も早く呼ぶ事を提案するテツヤ。だがそれに対してダイテツの言葉は険しいものだった。

 

「……武蔵達は現在メカザウルスと交戦中だ」

 

「なっ!? し、しかし私達の方にそのような報告は」

 

「最重要機密扱いだ、ワシとレフィーナ中佐の元にしか届いておるまい」

 

全機に通達した場合に発生するパニックなどを想定し、現場の指揮官であるダイテツとレフィーナのみに文章通信で告げられた。

 

「曹長は敵機の戦闘データの収集を開始しろ、データ収集はドラゴンだけで良い」

 

「りょ、了解です!」

 

武蔵達がすぐに合流してくれると考えていただけにハガネのブリッジに僅かな混乱が広がる。だがダイテツの冷静な指示で、その慌しさは徐々にだが沈静化していく

 

「大尉、味方の増援をすぐ求めるのは大尉の悪い癖だ。今ある戦力で戦果を上げる事を考えろ」

 

「は、はい、申し訳ありません」

 

そう謝罪するテツヤだが、それは仕方の無いことなのかもしれない。ゲッターロボの戦力を見ている以上、ゲッターロボが居てくれればと思うのは仕方の無い事だ。

 

「1~12番、スパイダーネットを順次射出、その後チャフグレネードによる敵機の足止めを行う。照準合わせッ!」

 

特機であるグルンガスト、ジガンスクード、そしてサイバスターとヴァルシオーネは出撃している。だがそれ以外の機体はアルトアイゼン、ヴァイスリッター、ヒュッケバインMK-Ⅱ、ヒュッケバイン009、ビルドラプター、ガーリオン、アーマリオン、シュッツバルト等出撃出来る機体に限りがある。だがそれはそれだけ量産型ゲシュペンストの出撃回数が多すぎて、その機体を酷使した結果であった

 

「本艦とヒリュウ改に敵機の注目を集める、エネルギーフィールドを艦首を基点にし、全力展開ッ! 各員、対衝撃、対閃光防御ッ!」

 

本来沈んではいけないハガネとヒリュウ改を囮にし、PT隊で確実に敵の数を減らす。肉を切らせて、骨を絶つ。それがダイテツが考えたこの状況を切り抜ける最善の一手だった。一番最初に沈めれば敵が圧倒的に有利になる、その為に狙われる戦艦自ら囮となる。余りに大胆なその一手にテツヤは言葉も無い、自分では到底思いつかない奇策だと驚愕しながら命令を復唱するのだった……。

 

 

 

 

キョウスケ達がエアロゲイターとの戦いを始めた頃、武蔵はメカザウルスからの多段攻撃に劣勢に追い込まれ始めていた

 

「こなくそッ!!!」

 

「キシャアアッ!!」

 

ゼンが振り下ろした鉤爪をゲッタートマホークで受け止め、がら空きの頭部に拳を叩き込むゲッター1。ゼンはたたらを踏んで後退するがそれでもその闘志は全く衰える事を知らない。

 

「くそっ、このままじゃ不味い! ラドラーーッ! まだなのかッ!?」

 

都市が近くに見えているので着陸している状態ではゲッタービームを使えない、さらに空を飛べばゼンを初めとした陸上型メカザウルスが基地になだれ込む為ここからゲッターは動けない……いかに無敵のスーパーロボットであるゲッターロボだとしても、これだけのハンデを背負えば必然的に劣勢へと追い込まれてしまう。流石の武蔵も苛立ってそう叫んだ時、自身が守っている山の頂部からカタパルトが姿を見せ、そこからやっと3機のゲシュペンストが出撃する。

 

「すまないな、随分と待たせた」

 

「全くだ! オイラじゃなかったらやばかったぜッ!!」

 

地響きを立てて着地するゲシュペンスト・シグとレッドカラーの両腕と背部に強化装甲を持つゲシュペンストを見てそう怒鳴る。

 

「悪いな、中々手間取った。だが待たせた分の働きはするさ、なぁ? ギリアム」

 

「その通りだ、一気に殲滅してハガネとヒリュウ改に合流するぞ」

 

背中のフライトユニットで飛翔するブルーのカラーリングのゲシュペンストが上空から執拗に狙っているバドに急接近し、ビームソードでバドを通り抜け様の一閃で撃墜する

 

「ぬっ、ぐっ! ぬおおおおッ!!!」

 

カイの雄叫びと共に背部のブースターで短距離飛行を行いながら、レッドカラーのゲシュペンストは両腕を帯電させてゼンへと殴りかかる。

 

「ギシャアッ!?」

 

「中々のパワーだ、だがラドラよ。余りにペダルと操縦桿が重いぞ」

 

吹き飛んだメカザウルスを見ながら、ラドラに文句を言うカイ。どうも通常のゲシュペンストよりも遥かに操縦系統に難があるようだ

 

『こっちは操縦桿とペダルが軽すぎる、ふわふわとしていて安定感を感じられない』

 

「ええいっ! 文句ばかり言うなッ! そこら辺の調整は伊豆基地についてからやるつもりだったのだッ!」

 

文句言うギリアムとカイにラドラは怒鳴り返しながらも、背中に背負っているキャノン砲でバドを狙って、正確無比な射撃を放つ。

 

「いや、普通に操縦出来ているじゃないですか」

 

「ガアアアアアーーーッ!!」

 

メカザウルスとゲッター3の力比べの態勢に入りながら武蔵が呆れた様子で呟く、文句を言っているがギリアムとカイは既にメカザウルスとの戦いを始めている。それなのに何故文句を言うのは理解出来なかったのだ。

 

「重心が違うだけでも操縦は困難になる。特に慣れているつもりの機体ともなるとな、僅かな感覚の違いが大きな――差になるッ!!」

 

カイは武蔵にそう言うが、両方の拳でメカザウルスを滅多打ちにしているその姿を見れば全然問題が無いように見える。

 

「ターゲットロック……全武装一斉射撃ッ!!!」

 

両腰から展開されたレールガン、フライトユニットから放たれる弾雨と、展開されたビーム砲の射撃、胸部から展開されたニュートロンビーム、そして両手に持ったM-13ショットガンの弾雨が容赦なくバドを貫き、破壊していく

 

「良い具合だ、後は操縦系の組み換えでもっと良い機体になる」

 

「……文句ばかりを言いおって、善意で提供した物に文句を言われる筋合いは無いッ!」

 

シグの両手首から展開されたエネルギークローが、容赦なくメカザウルスの胸部を貫き心臓部と動力部を同時に抉り出す。それはラドラが対峙しているメカザウルス……ゼンの特徴を完全に把握しているからこその一撃必殺だった

 

「まぁそれはそうだな、最初から俺に渡すつもりならグリーンで塗装されているだろうしなぁッ!!」

 

背中のフライトユニットによる短距離飛行でゼンの懐に飛び込んだカイのゲシュペンスト。一瞬の事で困惑したメカザウルスの顎を下から殴りつけ、その衝撃で倒れたメカザウルスの尾を掴んで背負い投げの要領で上空へと投げ飛ばす

 

「リミッター解除、受けろこれが俺の拳だッ!!!」

 

上空に投げ飛ばしたメカザウルスを追ってゲシュペンストが飛び、帯電している両拳をメカザウルスの胴体に叩き込む

 

「ぬっ!?」

 

断末魔の雄叫びすら上げず、拳が叩き込まれた部分から上半身と下半身が分かれて爆発するメカザウルスにコックピットでカイは呻く、更にフライトユニットのパワーが思ったよりも高く、地表を削りながら何とか姿勢を正し着地する

 

「ラドラ、パワーが高すぎるのだが……」

 

「リミッターを解除するからだ! このたわけッ!! 乗った時の説明を聞かなかったのか!! リミッターを解除するなと何度も言ったはずだッ!!!」

 

ラドラの一喝にすまんと謝るカイを見て、隼人と竜馬を思い出した武蔵は思わず苦笑しながら、自分が相手をしていたメカザウルス・ラドをゲッター3の両腕が締め上げる。今こうしている間もキョウスケ達は戦っている、こんな所で無駄に時間を消費している余裕はないのだ。

 

「大雪山! おろしいいいいーーーッ!!!」

 

「ギシャアアアアーーーッ!?」

 

大雪山おろしで上空へと投げ飛ばされるラド、その落下してくるタイミングを見極めゲッター3の右拳がラドに向かって伸びる。

 

「大雪山おろしパンチッ!!!!」

 

自らの自重、そして落下する勢いに加えて最高速度で伸ばされたゲッター3の右拳が、ラドの胴体を正確に打ち抜きラドは絶命し爆発する

 

「よっし、OKッ! ラドラ! ハガネとヒリュウ改はどこにいるんだ!?」

 

「川崎地区だ、俺が先導する。付いて来いッ!!」

 

メカザウルスとの戦いは終わった、だがまだ戦いは終わっていない。白銀のゲシュペンスト・シグが夜空を飛び、その後を追ってギリアム達も川崎地区に向かって行くのだった……。

 

「これがメカザウルス、貴重なサンプルを回収出来たねえ」

 

そして武蔵達が去った後、赤いナイトがメカザウルスの残骸と血液を回収し、現れた時と同じ様に一瞬で赤いナイトは闇の中へと姿を消すのだった……。

 

 

 

 

 

ハガネとヒリュウ改に敵の注目を引きつけるという奇策によって、エアロゲイター側の無人機の数は確実にその数を減らしていた。

 

「ダブルトマホークッ!! おらぁ! 死ねえやあッ!!!」

 

「ぐっ! ジュネーブのドラゴンよりも、パワーが強いッ!!!」

 

ジガンスクードがドラゴンのダブルトマホークによって、サイズ差で圧倒的に上回っているにも拘らず、大きく弾き飛ばされる

 

「ラトちゃん、合わせてよねッ!」

 

「ターゲットロック、ファイヤッ!」

 

ヴァイスリッターのオクスタンランチャーEモードとビルドラプターのハイパービームライフルが続け様にドラゴンへと叩き込まれる。

 

「利かねえぜッ!! 攻撃するなら殺す気で撃って来やがれッ!!!」

 

手にしていたダブルトマホークを力任せにヴァイスリッターとビルドラプターに向かって投げ付けるドラゴン

 

「このッ!」

 

「ありがとうございますッ!」

 

「ううん、大丈夫。でもちょーっと厄介よね……」

 

ヴァイスリッターの3連ビームキャノンが正確にダブルトマホークの刃を貫く、空気抵抗によってその軌道を逸らしたダブルトマホークはヴァイスリッターとビルドラプターから外れ、ビルへと突き刺さる

 

「ラトちゃん、今の攻撃って命中してたわよね?」

 

「……命中する寸前にエネルギー反応を感知。多分あのドラゴンにはバリア機能が追加されてる」

 

強力なドラゴンに更にバリアが追加されていると聞いたエクセレン達の顔は厳しい物になる

 

「イルムガルト中尉、タスク少尉、ドラゴンを抑えてくれますか」

 

「随分と厳しい事を言うなキョウスケ……だが、今出来るのはグルンガストとジガンスクードくらいか……やれやれ、しょうがねえ引き受けるぜ」

 

「げえ……マジですか」

 

「死ぬよりマシだろうが、行くぜタスクッ!!」

 

グルンガストの拳を受け止めたドラゴン、サイズではグルンガストが僅かに上回っている。しかし出力は完全にドラゴンが上回っていた。

 

「死ねやあッ!!」

 

「お前がなッ!」

 

ドラゴンの額が輝きビームが放たれそうになるが、それよりも早くイルムはグルンガストもダメージを受ける覚悟でファイナルビームを放ち、グルンガストもろとも、ドラゴンに攻撃を仕掛ける

 

「ひゃーははっ!! そんなのは利かねえぜ!」

 

「ちっ、自爆覚悟でこれかよ」

 

グルンガストは関節部から火花を散らしているが、ドラゴンは全体的に煤がついているくらいで大したダメージを受けているようには見えない。

 

「ギガントナックルッ!!」

 

「ちっ、今のは少し不味かったぜ」

 

ジガンスクードの出力と加速による一撃はドラゴンの纏っているバリアを貫き、僅かにダメージを与える。だが致命傷には全然程遠い。

 

「キョウスケ中尉、このままではドラゴン1機に追詰められます」

 

「……判っている。だが無理に突っ込むのは危険すぎる」

 

サイバスターやヴァルシオーネはバグスを相手にしている、飛行できる機体が少ない以上。空中戦を得意とするバグスにサイバスターとヴァルシオーネをぶつけるのは当然だ、だがいかんせん数が多すぎる

 

「ちっ、リューネ。大丈夫か?」

 

「私は大丈夫だよ、でも、ちょっと不味いね」

 

サイフラッシュやサイコブラスターと言う大技で一掃と言う手もある。だが敵の増援が来る可能性がある以上、消耗しすぎる可能性のあるサイフラッシュやサイコブラスターを容易に使う訳には行かない

 

「キョウスケ中尉! 新たな敵機が9時の方向からこの地域へ接近中です!」

 

「ちっ、やはりか……敵の増援が来る。警戒を強めろ」

 

空間転移ではなく、直接移動してきた。それは他の基地を攻撃していた部隊がこっちに回ってきた証拠だ、それかあえて警戒させることに意味があるとは思えない。

 

「大分やるじゃねえか、そろそろ本日のメインイベントを始めるとするかッ!!」

 

「っつ!!」

 

「どうしたの、ブリット!?」

 

「あ、頭の中に火花みたいな物が散って……!」

 

ブリットは突如脳裏に走った火花のような衝撃に顔を歪める。そして敵の増援が来ると言われた方向からグルンガスト弐式とバグス、スパイダー、そしてソルジャーとファットマン。更にポセイドンがライガーが2機ずつ現れる……量産型のライガーとポセイドンに加え、グルンガスト弐式の登場にハガネの部隊に衝撃が走る。

 

「うっ……! あの機体は……」

 

「グ、グルンガスト弐式だニャ……!?」

 

「も、もしかして……乗ってるのはクスハニャの!?」

 

一番最初にグルンガスト弐式に気付いたマサキとシロとクロが驚愕の声を上げる。

 

「……目標確認……敵……破壊します……」

 

抑揚の無いまるで機械のようなクスハの声がオープンチャンネルでハガネの部隊に広がる

 

「お、お前!……やっぱりクスハなのか!?」

 

「ちょ、ちょっと!? 一体どうなってんのよ!?」

 

北京で攫われたクスハが敵として現れた……助けるべき相手が敵として現れた事にハガネの部隊に大きな衝撃が走る。

 

「……私は……帝国観察軍の兵器……」

 

続けてクスハが発した言葉は決してクスハが発するような言葉ではなかった

 

「洗脳……か」

 

「そんなッ!?」

 

キョウスケの言葉に更なる衝撃が走る、拉致したクスハを洗脳して敵として、元の仲間の元へ送り込む。その余りにも非道すぎる戦術にエアロゲイターに対する嫌悪感が高まる一方だった……そうともなれば元は仲間だったイングラム自身も洗脳されている可能性がゼロではない以上、やはりエアロゲイターの戦術がこちら側の兵士を攫い、洗脳することで敵としてぶつける……そうする事で自身らの不足している兵士事情を解決する。多分読み違えなどではないのだろう……彼らエアロゲイターの側の事はそのまま戦術に組み込まれている事は間違いない。

 

(……あれだけの洗脳が出来ると言うことは、イングラム少佐が洗脳されている可能性もゼロではない……)

 

イングラムが元々敵だったのか、それとも洗脳によって操られているのか、それが定かでは無い。それでも厄介な戦術を使い始めてきた事に間違いは無い。

 

「クスハ! 俺だ、ブルックリンだッ!!」

 

「……お前達は……敵だ……敵……敵は破壊する」

 

必死に声を掛けるが、クスハは何の反応も示さない。その余りに痛ましい姿にブリットは思わず唇を噛み締める。

 

「恐らく、あの子は強力な精神支配を受けている。ただ、語りかけているだけじゃ、それを解く事は出来ないッ!」

 

ラーダの指摘にブリットが怒りの声を上げる。

 

「く、くそッ! だったら、どうすりゃいいんだ!?」

 

言葉を掛けるだけでは駄目、じゃあどうすれば良いんだと叫ぶブリット。

 

「落ち着け、ブリット。まずは彼女をエアロゲイターから引き離す、精神支配の解除はその後でも遅くは……む?」

 

ブリットに落ち着くように声を掛けていたキョウスケだが、戦域に突入してくる友軍機の反応に言葉に詰まる

 

「おまたせ! ってグルンガスト弐式!? なんだ、どうなってるんだ!」

 

「厄介な事になってるようだな」

 

ゲッターロボとゲシュペンスト・シグと、2機の見慣れない新しいゲシュペンスト

 

「キョウスケ中尉。状況はどうなっている? あれはクスハ曹長のグルンガスト弐式か?」

 

ゲッターロボ達の登場によってハガネ、ヒリュウ改の戦力は万全となった。だが状況は決して良い物ではない

 

「キョウスケ中尉、どうするつもりだ」

 

「……弐式を戦闘不能にして回収します」

 

カイの言葉に簡潔に返事を返すキョウスケ。だがそれは口にする以上に難しいことは、全員が理解してい。

 

「……キョウスケ、判ってるのか? 自分が何を言ってるのか」

 

「……中尉のおっしゃりたい事は判っています……しかし、クスハ曹長を助けるには……そちらに賭けるしかありません」

 

敵に操られて、こちらを殺しに来る機体をパイロットを傷つける事無く戦闘不能に持って行くことは難しいなんてレベルではない、敵はグルンガストだけではなく、増援で現れたライガーとポセイドンまで加わっているのだから……。

 

「そうだな。その賭けが裏目に出ないことを祈るしかないか」

 

(なるへそ。クスハちゃんを私達に助けさせることそのものが少佐の目的かも……ってことね)

 

話を聞いていたエクセレンはキョウスケとイルム、そしてギリアム達が何を危惧しているのか理解した。味方が敵として現れたのならば、なんとかして救出しようとする。だが救出させる事がエアロゲイターの目的となると厄介な事になるが、キョウスケはそれを理解した上でクスハの救出作戦に踏み切ることを決断したのだ。

 

「アサルト1より各機へ。敵機を撃破しつつ、グルンガスト弐式を行動不能にしろ……その上で速やかにクスハ曹長の救出を行う」

 

キョウスケのその指示に全員の顔に緊張が走る、一歩間違えばクスハを殺し、しかも自分達も殺されるかもしれない。それでも見殺しにすることは出来ない、他の上官ならばクスハを殺す事を命じ兼ねない。だがキョウスケはリスクを承知でクスハを助ける事を選択したのだ。

 

「各機、くれぐれも弐式を撃墜するなよ……! 戦闘開始ッ!!」

 

ドラゴンを先頭に向かってくるエアロゲイター達を睨みながら、キョウスケ達は自分達が圧倒的な不利な状況での戦いに身を投じるのだった……。

 

 

 

第55話 届かぬ声 その2へ続く

 

 




次回は今回よりも更に戦闘メインで書いていこうと思います。後は今回よりも試作型ゲシュペンストMK-Ⅱカスタムの詳しい戦闘描写などを書いていこうと思います。ここからはOGよりもゲッター要素が強くなってくると思われますが、どうか呆れずに広い心でお付き合いしてくださると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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