進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第65話 もう1体のゲッターロボ その3

第65話 もう1体のゲッターロボ その3

 

マザーベースの中に響く警報にその中で働く職員は血相を変えて、シェルターへと走る。確かにリ・テクは他の研究施設と比べてもその利用価値は決して高いとは言いがたい、それでもその中には失われた歴史に関係する物もあり国家反逆者に知らない内に仕立て上げられる事もそう珍しくは無い。ある意味なれていると言う俊敏な動きで職員達はシェルターへと駆け込んでいく。

 

「大丈夫か、クリス」

 

「だ、大丈夫だよ。お兄ちゃん」

 

だがジョッシュとクリスの2人には初めての事で、その振動に四苦八苦しながら2人で必死にシェルターに走る。

 

「ジョッシュ! クリスこっちだ!! 早くッ!! フェリオ博士は何をしているッ!?」

 

先にシェルターの中に駆け込んでいた顔色の悪い白衣の男が2人を必死に呼ぶが、その時に一際強い振動がマザーベースを襲い、崩れた天井がジョッシュとクリスの頭上に落下する。

 

「クリスッ!!」

 

咄嗟にジョッシュは義妹であるクリスを庇ったが、その直後に緊急電源に切り替わった薄暗い通路に雄叫びが響いた。

 

「どりゃあああああッ!!!」

 

鋭い金属音と共にジョッシュとクリスの頭上に落ちかけていた天井は両断され、2人の目の前には武蔵の背中が広がっていた。

 

「あ、武蔵……さん」

 

「間に合って良かったぜ、それよりよく妹を守ろうとしたな。偉いぞジョッシュッ!! フェリオさん! ジョッシュ達がいましたッ! もう逃げ遅れている人はいませんよッ!!!」

 

「良かったッ! 武蔵君すまないッ!!!」

 

白衣を鮮血に染めながら走ってきたフェリオ、その姿に放送室で避難を促した後逃げ遅れがいないか必死に探していたのは明らかだった。

 

「ああ、ジョッシュ、クリス、リアナ……無事で良かった」

 

「親父……」

 

「お父さん……」

 

自分の方がよっぽど酷い有様なのに自分達が無事だった事に安堵し、抱きしめてくるフェリオにジョッシュもクリスもフェリオの背中に手を回す。

 

「フェリオさん、ジョッシュたちとシェルターへ、後はオイラとビアンさんに任せてください」

 

「……武蔵君、頼んだ」

 

力強く返事を返した武蔵はそのまま格納庫へと走っていく、残されたフェリオ達はシェルターに足を向けようとするが……。

 

「ぐっ……」

 

「大丈夫かッ!? 親父ッ!」

 

「学者が無茶をしたからな、こりゃ、明日は筋肉痛だな。すまん、ジョッシュ、クリス肩を貸してくれ」

 

ここまで走ってきたフェリオの体力は怪我の事もあり、限界を超えていて、ジョッシュとクリスの2人に肩を借りて、やっとシェルターへと避難する事に成功し、隔壁がシェルターの姿を覆い隠す。

 

「大丈夫? お父さん」

 

「ああ、心配ないよクリス。リアナにも言ってくれ、私は無事だ。少し切ったのと、瓦礫が足に当たっただけだ。問題ない」

 

問題ないと言うフェリオだが、座り込んでいるシェルターの床は徐々にフェリオの身体から流れる血に紅く染め上げられていた。

 

「ちょっと待ってろ親父ッ! 今医者を呼んでくるッ!! クリスは親父が意識を失わないように声を掛け続けていてくれッ!」

 

シェルターの中とは言え、緊急電源では暖房も十分に効果を発揮しない。徐々にその顔が青白くなっているフェリオに背を向け、避難している研究員の中から医者を探しに走るジョッシュとフェリオの手を握り、声を掛け続けるクリス。

 

本来の歴史では擦れ違ったままとなっていたジョッシュ達、だが奇しくも謎の襲撃者によってその擦れ違っていた家族が再び1つになろうとしていたのは何と言う皮肉なのだろうか……。だが、これがジョッシュ達の運命を分けることになろうとは今は誰も想像もしないのだった……。

 

 

 

 

 

格納庫から出撃したゲッターロボとゲッターロボV。操縦席のモニターに映る敵を見て武蔵もビアンも困惑した。

 

「ビアンさん、あれ……エアロゲイターですかね?」

 

『判らない、エアロゲイターの機体にしては随分と古臭い姿をしているが……』

 

3体の蜂のようなロボットが中空を旋回しながらゲッターロボとゲッターロボVを威嚇している。

 

『半壊しているな……武蔵君、もしかするともしかするぞ』

 

「オイラみたいな時間漂流者って事ですか……どう見ても友好的じゃないですけどね」

 

ゲッターロボ達を見てその目を真紅に光らせている姿を見ればどう見ても友好的ではない、それにその身体は半壊している者が多い。それを見て武蔵とビアンの考えは固まった。

 

「『侵略者だな』」

 

武蔵とビアンの声が重なった。マザーベースの地下にある壁画でゲッターロボは惑星間で戦争をしていた、つまりあの蜂は負けて墜落してきたのをゲッターロボのゲッター線に反応して再起動したのだろう。

 

『行くぞ武蔵君ッ!』

 

「了解ッ!」

 

同時にマントを展開するゲッターロボとゲッターロボVだが、ゲッターロボVのマントはボロボロで穴の空いている部分もある。※ビアンの趣味が100%反映された姿である。

 

「行くぜっ! ゲッタートマホークッ!!」

 

『ディバイントマホークッ!!』

 

ゲッターロボのトマホークとVのトマホークの違いはディバインアームの技術を応用した三日月状の刃を2つ持つ長い柄の斧と言うことだ

。遠心力を生かし、長いリーチで相手を粉砕すると言う目的で建造されており、その形状上トマホークブーメランとして扱う事は出来ないが、その長いリーチも、柄の中ほどの部分から伸縮する機能が搭載されている為外見以上の長いリーチを持っていると言う品だ。

 

「トマホークブー……ぐおッ!?」

 

『武蔵君ッ! ぐっ!? は、速いッ!?』

 

先制攻撃と言わんばかりに斧を投げ付けようとした武蔵だが、それよりも先に蜂の頭部から放たれたビームに弾き飛ばされ、流氷に背中からぶつかり、もやの中に消える。その事に驚いたビアンの一瞬の隙を突いた蜂が尾から刃を出してVに突撃し、Vもまた氷海の中に消えた。

 

「なろおッ!! ゲッタービィィィムッ!!!」

 

だがマザーベースを守る為に即座にゲッターは体勢を立て直しゲッタービームを放つ。だが蜂……両腕がシールドになっている個体が展開したエネルギーフィールドに弾かれ、ゲッタービームは霧散した。

 

「やべえ、ゲッタービームを無効化する奴なんて初めてみた……」

 

『対ゲッターロボと言うことか……しかも速さも攻撃力も上だ』

 

短い邂逅だがその戦力を肌で感じた武蔵とビアンは驚愕した。相手はたった3体だが、その性能はゲッターロボを遥かに越えていた。もしも、あの壁画の通りならばゲッターロボ、ゲッターロボGよりも更に後継機のゲッターロボが相手をしていた敵となる。操縦桿を握り締める武蔵とビアンの手にも力が入る……だが蜂(盾)は2機の半壊している蜂に視線を向け、紅いカメラアイを何度も光らせる。すると、片腕が大破している蜂はゲッターロボ達に背を向け、南極の空に消えて行った。

 

「待てッ!」

 

『待つんだ武蔵君ッ! 今は私達の事を考えるべきだ』

 

ビアンの制止の声に追いかけようとした武蔵の動きは止められる事になった。確かに相手は強力だ、だがゲッターロボが南極に現れるまで何の反応も見せなかった――そこがビアンには気になっていたのだ。

 

『行方不明のゲッターロボGの元へ向かったのかもしれない、もしくはあの2機で十分と判断したのかもしれない……それは判らないが、今は敵が減った事を喜ぶべきだ』

 

ゲッター線に反応するのならば、高確率でゲッターロボGの元へ向かっているだろう。行方不明のゲッターロボGを発見するのにも役立つ、ビアンの考えではシュトレーゼマンの一派が回収していると考えていた為、南極のどこかに潜伏しているシュトレーゼマンのシロガネを発見する為にあの機体は泳がしておく方が良いと判断したのだ。

 

「判りました……後はあの機体を撃墜する事だけですね」

 

『ああ、だが細心の注意を払うべきだな』

 

両腕が鎌のようになっていたのだろうが、それが中ほど折れている個体と盾の個体。先ほど姿を消した個体と比べると損傷は軽微だが、それでもあちこちがへこんでいる事を見ると万全ではないのは明らかだ。

 

『向こうもペアだ、武蔵君。突っ込み過ぎないように注意してくれ』

 

「了解です、それで作戦は?」

 

武蔵の問いかけにビアンの返答は決まっていた、軽く分析しただけで見誤っている可能性はある。だが盾つきはゲッタービームを弾くほどの防御力を有していた、だがその反面攻撃力に乏しいのではないか? と言うのがビアンの考えだった。

 

『相手の出方を見る、まずは鎌の固体を狙う。盾の個体に武器があるのか知りたいからな』

 

相手は未知の存在だ、だからこそ情報を集める事を決めたのだ。敵の数が3体と言う中途半端な数……まだ他の個体がいる可能性があることを考え、少しでも敵の情報を集める事を最優先にした。

 

『向こうがゲッターを追ってくるのならば、マザーベースから離れクロガネと合流する。決して先行しすぎず、敵の情報を集めるぞ』

 

「了解です、ビアンさんも無茶をしないでくださいね」

 

ゲッターロボの飛行訓練がまさかの戦闘、しかもゲッターロボよりも遥かに強い敵。武蔵はビアンに無理をしないように告げ、両手にゲッタートマホークを持ち、鎌の個体に向かってゲッターロボを走らせるのだった……。

 

 

 

 

マザーベースの周辺から戦いの舞台は周りに建造物の無い氷上に移行していた。マザーベースを巻き込む心配もなく敵と戦う事が出来るとなれば膨大なエネルギーを持つゲッターロボとゲッターロボVが有利となる……筈だった。敵も2体、ビアンと武蔵も2体……条件は同じだが、余りにも敵とゲッターロボの性能の差には大きな開きがあった。

 

『ちいッ! 硬いし速いッ!』

 

「!!!」

 

『オープンゲットッ!!』

 

カメラアイから放たれた光線をオープンゲットでかわしたゲッターロボは空中でゲッター2にチェンジし、両腕が鎌の個体に突撃する。

 

「!」

 

『ビアンさんッ!』

 

「ミサイルランチャーッ!!!」

 

ゲッター2の突撃をかわした鎌の個体にゲッターロボVのミサイルランチャーの一斉射撃が放たれる。だが命中する寸前に盾の個体が間に割り込んで、ミサイルの嵐をエネルギーシールドで完全に防いだ。

 

『……結構厄介ですね』

 

「ああ、鎌の個体はさほど素早くないが……盾の個体が厄介だな」

 

鎌の個体の素早さの低さは半壊している事が原因だろうが、外見がへこんでいるだけで万全な状態の盾の個体の素早さが余りにも高く、近接攻撃もエネルギー攻撃も駄目と武蔵とビアンは攻撃する手段のその大半を盾の個体1体に封じ込められてしまっていた。

 

『その変わり、攻撃力はさほどと言うか……殆どないみたいですね』

 

盾の個体は強固な防御能力を持つが、その半面攻撃は頭部から放たれる威力の弱いビームだけだった。それに対して鎌の個体はゲッターロボの装甲を溶解させるほどの威力のビームと直接攻撃とエネルギー刃を飛ばすの3種類でどれも攻撃力が高い。

 

「何とかして盾の個体を潰す、武蔵君。何かいいアイデアはあるか?」

 

『気合を入れて殴るしか思いつきません』

 

武蔵の返答にビアンは苦笑しかけたが、それはあながち間違いではないかもしれないと感じた。盾の個体の攻撃力が低いというのはビアンの分析ミスで、基本的な攻撃力は鎌の個体と差が無いのかもしれない。それでも防衛機としてのプログラムを優先し、鎌の個体を守ることを再優先にしている可能性は十分にある。

 

(試してみるか……)

 

互いに決め手は無い、いや、決め手はあるが……それを発動させるには些か時間が掛かる。だが武蔵1人に囮を頼んでいいものかとビアンが逡巡したその時、上空から光の矢が蜂に向かって降り注いだ。

 

「これはッ!?」

 

『見たことあるぞッ!? まさかッ!?』

 

ゲッターロボとゲッターロボVが顔を上げる、そこには2人の脳裏を過ぎった特機の姿があった……。

 

『ククク……お久しぶりですね、ビアン博士、そして武蔵君。随分と面白いことをしているじゃないですか……私も混ぜていただけませんか?』

 

「ギギ……ギギィ……」

 

最初にこの空域を離脱した蜂がボロボロになって氷上に叩きつけられる――そしてそれを行った機体、重力の魔神「グランゾン」がゲッターロボとゲッターロボVの上空に静止する。

 

『シュウさんも元気そうですね』

 

『ええ、武蔵君も元気そうで何よりです』

 

「シラカワ博士、何故ここに……」

 

武蔵はアイドネウス島から姿を見せなかったシュウの事を案じていたが、ビアンは何故急にグランゾンとシュウが現れたかの方が気になっていた。

 

『なに、あの奇妙な生き物が襲ってきたのでね。その生物の反応を辿ってきたらここに辿り着いたと言う事です』

 

まさかビアン博士達に会うとは思っても見ませんでしたがねと笑うシュウ。

 

『それで手助けは必要ですか?』

 

「頼めるかね?」

 

『勿論、では武蔵君。私とコンビと言う事でよろしいですね?』

 

『勿論です! よろしくお願いします』

 

グランゾンとゲッターロボがコンビを組めば、向こうもそちらに集中しなければならない筈だ。グランゾンの多角的攻撃と、ゲッターロボの超火力。それを前にして、他の機体に気を割いている時間は無い。

 

「3分だ、3分間の間足止めを頼む」

 

『ククク、足止めと言わず倒してしまっても良いのでしょう?』

 

「私にも見せ場を残しておいてくれと頼んでいるのだよ」

 

ビアンの言葉にシュウは更に楽しそうに笑い、了解しましたと返事を返し虚空からグランワームソードを召喚し、ドリルを構えるゲッター2と共に蜂に向かって行く。

 

「良し、今の内だ」

 

ゲッターロボVには重力装備・そしてゲッター炉心……新西暦と旧西暦の技術の粋を集めた、言うならば旧西暦と新西暦のハイブリットとも言える機体だ。それゆえに重力装備とゲッター炉心の兼ね合いによって生まれた新しい機能も搭載されている。

 

「重力エンジンの出力を80%に固定、ゲッター炉心の第1、第2リミッターの解除の後出力を120%に固定」

 

ゲッターロボVがビアンにしか操縦できない理由はヴァルシオンの高度な重力制御を出来るのがビアンのみというのが非常に大きい、その機能をOFFにすればエルザムやゼンガーでも操縦は可能だが、重力エンジンを停止させればVの出力は格段に落ちる。それゆえに重力機能を操作できるビアンの実質専用機となっているのだ。

 

「オメガ・グラビトンウェーブ充填開始ッ!」

 

重力エンジンによって生み出される重力をゲッター線によって増幅させ、ヴァルシオンのメガグラビトンウェーブを上回る高出力・そして広範囲に及ぶ重力攻撃の充填が始まり、ゲッターロボVの姿は眩いまでのゲッター線の輝きに包まれるのだった。

 

 

 

 

 

盾の個体が厄介だと判断したシュウはワームスマッシャーによる全方位攻撃を仕掛けた……のだが。

 

「ふむ、中々厄介な機体のようですね」

 

煙の中から姿を見せた盾の個体は信じられない事に無傷だった。盾は外見上正面にしか展開されないのだが、どうやら全方位に発動する機能を持っていたようだ。

 

『ドリルアームッ!!!』

 

「!!!」

 

鎌の個体と武蔵はグランゾンが盾の個体と戦っている事もあり、1対1になっていたがやはりそちらも決め手不足に陥っていた。

 

『チッ! ゲッタービジョンッ!』

 

「!!」

 

残像を残しながら氷上を駆けているゲッター2、センサーにも反応を残すほどの高性能な分身だ。だが鎌の個体は正確にゲッター2本体だけを追いかけている――やはりビアンの推測通り対ゲッター用に作成された機体なのだろう。

 

「さて、ビアン博士にも見せ場を残す必要がありますし……やり過ぎないように注意をしますか」

 

グランワームソードを振りかざし、ワームホールに突入したグランゾンは盾の個体の背後に瞬間移動し、グランワームソードを上段から振り下ろす。だが、グランワームソードの一撃は不可視のシールドに弾かれた。

 

「!」

 

「おっと危ない」

 

盾の個体の首が回転するのを確認すると同時に再びグランゾンはワームホールの中に姿を隠し、完全な死角から突きを放つのだが……。

 

「ふむこれも反応しますか……」

 

「!!!」

 

反応速度が相当速いのか、その一撃も僅かに切っ先が刺さっただけで防がれてしまった。

 

「さて、これほどの機体となると壊すのは惜しくなってきますね」

 

倒すだけならばグランゾンの戦力を持ってすれば簡単な話だ。相手のエネルギーが切れるまでワームスマッシャーを続ける、ブラックホールクラスターを使う等の破壊する手段は幾らでもある。現にグランゾンは既に半壊した個体とは言え、破壊しているのだ。例え健在だったとしても、グランゾンならば破壊することは容易い。だが破壊してしまえば、あの蜂の機体の能力を解析出来ない可能性を考えれば破壊することは得策ではない。

 

『ドリルハリケーンッ!!』

 

「!!!」

 

ゲッター2のドリルから放たれた竜巻が鎌の個体に向けられる。だが鎌の個体はその竜巻に自ら突っ込み竜巻を突破してゲッター2にエネルギー刃を振るおうとする。

 

『オープンゲットッ!!』

 

命中する寸前にゲッター2はゲットマシンに分離し、鎌の個体の頭上でゲッター3にチェンジし、ジャガー号による押し潰し攻撃を仕掛ける。

 

「!!!!」

 

『なろおおおーーーッ!! 大人しく潰されろッ!!!』

 

鎌の個体は鎌を収納し、両手を出現させるとゲッター3のキャタピラ部を掴んで押し潰されるのを必死に防ごうとする。

 

「!」

 

「おっと貴方の相手は私ですよ、ワームスマッシャー……発射ッ!!」

 

僚機の危機を感じ取り、グランゾンに背を向ける盾の個体だが、それは完全に悪手であった。背を向けた瞬間放たれたワームスマッシャーの弾幕にシールド事盾の個体は氷上にめり込む。

 

「ふむ、中々の強度ですね。ここまで頑強な相手は初めてですよ」

 

ワームスマッシャーの弾雨から逃れる為に自ら片腕を捨てて、ワームスマッシャーから逃れた盾の個体。片腕を失っているが、まだ健在と言う呆れた耐久力にシュウは苦笑いを浮かべた。

 

『どっせーいいいッ!!!』

 

だがその後に響いた武蔵の声に苦笑いではなく、今度は本当に笑ってしまっていた。確かに鎌の個体の方がゲッターロボよりも高性能であった、だが完全にイニシアチブを取られてしまえば半壊しているその姿ではゲッターに再び優位を取るのは難しかったのか、ゲッターアームに胴体を縛り上げられた鎌の個体はやっとの思いでワームスマッシャーから離脱してきた盾の個体に向かって投げ飛ばされた。

 

「「!?!?」」

 

凄まじい衝突音と爆発音、更に其処に追撃にと叩き込まれたゲッターミサイルによって2体の姿は完全に煙の中に消える。

 

「武蔵君、やりすぎではないですか?」

 

『いや、大丈夫ですよ。効いてません……』

 

煙の中から姿を見せるのはエネルギーシールドで盾と鎌の個体は互いがぶつかり合った事によるダメージは受けている様子だったが、ゲッターミサイルのダメージは全く受けていない様子だった。だが、ゲッターミサイルによる足止め――それが盾と鎌の個体の命運を分けていた。

 

『武蔵君、シラカワ博士、そこから離脱しろッ!』

 

ビアンからの通信にゲッター3は氷上を砕きながら盾と鎌の個体から離脱し、グランゾンはワームホールの中に消えた。

 

『オメガ・グラビトンウェーブ発射ッ!!!』

 

黒と翡翠の輝きが混じりあった光線が盾と鎌の個体の上空を通過し、その次の瞬間盾と鎌の個体は氷塊に叩きつけられる。

 

「「!!!!」」

 

もがきながら浮き上がろうとするが盾と鎌の個体は2度と浮かび上がる事はなく、分厚い氷塊の中でその真紅のカメラアイから光が消えた。

 

『ふう、何とか威力のコントロールが出来たみたいで何よりだ。しかし、駄目だな。オーバーヒートしている、再起動は難しそうだ』

 

『まだ試運転の段階でしたからねえ』

 

ゲッターロボVはオメガ・グラビトンウェーブを発射した態勢でオーバーヒートを起こし、そのカメラアイからも光が消えていた。

 

「なるほど、試作機でしたか……では後ほど調整を手伝いますよ」

 

『すまないな、シラカワ博士。それとすまないついで悪いが、あの蜂の機体の頭部を切り落としておいてくれ、再起動しないようにな』

 

南極の大地から現れた謎の機体との邂逅戦は無事ビアン達の勝利と言う結果に終わったが、新たな謎がビアン達の元に残されたのだった……。

 

 

 

 

 

南極の上空に佇む漆黒の機体……アストラナガンの中でイングラムは小さく溜め息を吐いた。南極の大地から現れた謎の機体……その機体の反応はアストラナガンが察知し、偵察の為に南極の近くまで来ていたのだ。

 

「……見覚えの無い機体だ。虚憶に関係しているのか……?」

 

南極には決して目覚めさせてはいけない遺産が眠っている――南極の周辺に現れた未知の反応に察知し、まさかと思ったのだが……実際は違っていた。

 

「……時が早いのか、それともユーゼスもまた虚憶に囚われているか……何にせよ、もう少し様子見が必要だな」

 

バルマーはアストラナガンの反応を察知している、生憎「この世界」では完成する事無く、プロト・アストラナガンが建造されただけに留まっているが、それは当然だ。「アストラナガン」は「イングラム」がいなければ生まれる事はない、そしてイングラムがまだネビーイームにいるときにバルマーで開発しようとしても暴走と言う結果で終わるのは当然の事だ。

 

「さて、それでお前は俺が作ったアストラナガンか? それとも暴走してこの世界の時空の狭間に消えたアストラナガンか?」

 

イングラムの問いかけにアストラナガンは答えない、だが一際大きく動力を稼動させる事を返事とした。

 

「態々聞くなと言うことか。判った、ならば聞かない。そのかわり俺と共に戦って貰うぞ」

 

今度の振動は優しく、任せろと言わんばかりの優しい振動がコックピットに響き渡る。

 

「ゲッターロボGを抱え込んでいるあの狸がそろそろ動くな、出来る事ならば武蔵に託したい所だが……嫌な予感がする」

 

ハガネとヒリュウ改が回収したドラゴン、ライガー、ポセイドンはネビーイームに送り届けた。だがゲッターロボGはシュトレーゼマンの息の掛かった軍人によって既に運び出され、そして消息を絶っている。

 

「愚かな事だ」

 

ゲッターロボは新西暦の人間では操れない、それこそ特別な装備が必要だ。それなのに、ドラゴンを持ち出し隠したシュトレーゼマンに愚かしいとイングラムは嘲笑を浮かべる。

 

「……だがゾヴォークやゼ・バルマリィに渡すわけにも行かない」

 

ゲッターロボはこの世界が生まれる前の世界で様々な戦いを切り抜けた。ゲッターロボは善でもあり、悪でもある。その恐ろしい戦闘力は地球以外の外宇宙のありとあらゆる場所に伝承として伝わっている。だがそれと同時にゲッターロボの存在を誰もが求めているのだ。その凄まじい力を、僅かな量で膨大なエネルギーを生み出すゲッター線を求めているのだ。

 

「ゲッター線め、1度消えたのに、再びこの世界に手を伸ばすとは……お前は何を考えている」

 

武蔵をこの世界に送り込み、早乙女研究所をこの世界に次々と生み出したゲッター線は再びだんまりを決めているが、間違いなくゲッター線……いや、究極のゲッター「ゲッターエンペラー」は地球を、いや、このフラスコの世界を見つめている。

 

「……出来る事を1つずつ潰していくしかあるまい」

 

まずはゲッターロボGを発見する事、そしてシュトレーゼマンをゾヴォーク接触させない事……そして最も重要な事がある。

 

「リュウセイ達を鍛え上げる事」

 

これからの戦いは激化する。この世界はその定めの中にある、その中の中心となるリュウセイ達を鍛え上げる事が最も重要な事だとイングラムは考えていた。

 

「時間はさほど残されていないが……出来る限りの事はやらせてもらう」

 

アストラナガンは翼を大きく広げ、再びその姿を消す。再びアストラナガンが現れた時……それが大きくこの世界の命運を変える瞬間である、その時まではまだアストラナガンもイングラムもまた表舞台に出ることは出来ないのだから……。

 

 

第66話 もう1体のゲッターロボ その4へ続く

 

 




漫画では偉いあっさり撃破されてしまったのでふわっとした感じになりましたが、多分旧ゲッターでは勝てない強敵なので重力で封じ込めて、エネルギーが底を突くまで拘束するという形で決着となりました。次回は氷の国の箱舟に入る前のインターミッション、そして氷の国の箱舟は「ゲッターロボ」「ゲッターロボV」「グランゾン」「クロガネ」「ガーリオン・トロンベ」「グルンガスト零式」の6体の味方でお送りしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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