進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第67話 偽りの箱舟 その1

第67話 偽りの箱舟 その1

 

クロガネはコーツランドのレーダーに引っかからない様に流氷を砕きながら低速でマザーベースへと向かっていた。

 

「全く、ビアン総帥には困った物だ」

 

「そうですね、バン大佐」

 

当初の予定では武蔵とエルザムかゼンガーがマザーベースに向かう予定だったのだ。それをゲッターロボVの試運転だと言い張り、無理に出撃したビアンにはエルザムもバンも苦笑を隠せない。

 

「自ら動く事で兵士の士気を上げると言うのは判るんだがな……」

 

「そこまで考えていませんよきっとね……」

 

アードラーが率いていたDCが倒れ、そしてビアンは重い肩の荷が下りたと言わんばかりに弾けて……ああ、弾けているのは前からだったと苦笑するエルザム。

 

「マザーベースを目視で確認しました」

 

オペレーター席に座っているリリーの言葉にエルザムとバンもモニターに視線を向ける。

 

「あれか……遺跡だと聞いているが、何故あんな遺跡にゲッターロボの壁画があるんだろうな」

 

「判りませんね、ゲッターロボは私達の想像を超えている存在なのかもしれません」

 

LTR機構、そしてリ・テク……そのどちらも旧西暦の歴史を調べる組織だ。その調べる対象の中に含まれているゲッターロボ、ただの機動兵器ではない。ゲッターロボには何か人知を超える秘密が隠されているようにエルザムは感じていた。

 

「少佐、テスラ研からメールが来ています」

 

「差出人は? カザハラ博士か?」

 

「いえ、フィリオ博士です」

 

その言葉にエルザムは笑みを浮かべたが、今はマザーベースにいる武蔵とビアンとの合流が優先だと判断した。

 

「後で私の部屋のPCにメールを送信しておいてくれ、ユーリア」

 

了解ですと返事を返し、コンソールを操作するユーリア。今クロガネはLB隊の生き残りとトロイエ隊の生き残りで運用されていた、メインオペレーターはリリー、サブオペレーターにユーリア、そして艦長代行のエルザムと副艦長のバン。DCとコロニー統合軍の生き残りではない、ビアンとマイヤーの思想に共感し、地球を守るという大儀の下に集まった。本当のDCとコロニー統合軍の姿がそこにあった。

 

「それよりもだ、少佐。ゲッターロボのシミュレーターの調子はどうだ?」

 

「……少なくとも気絶はしません」

 

「それは何よりだ。かと言う俺も気絶と打撲の繰り返しだがな」

 

今この場にいないゼンガーはシミュレータールームでゲッターロボの操縦訓練に明け暮れている。勿論、エルザムやバンも少しでもゲッターロボの操縦を自分の物にするため艦橋に詰めていない時はシミュレータールームの住人だ。

 

「あのパイロットスーツのお陰で大分マシになったんだがな」

 

「だからフィリオに連絡したんですよ。プロジェクトTD……恒星間航行機開発計画の主任にね」

 

「テレストリアル・ドリームか……こんな状況で無ければな……」

 

アイドネウス島での恐竜帝国との戦いの前にキラーホエールで脱出した研究チームの1つである。残念な事に連邦軍に鹵獲され、研究チームだったと言うこと、そしてイスルギ重工がDCに拉致された研究者だと言う事を言い張り、監視状態であるが主任の「フィリオ・プレスティ」そしてチーフの「ツグミ・タカハラ」を初めとした研究者が4人、そしてテストパイロットでありフィリオの妹である「スレイ・プレスティ」そして戦争間近に外宇宙を飛ぶという夢を叶える為にDCに来た「アイビス・ダグラス」の全員が無事だ。

 

「テスラ研が身元を引き受けてくれているそうですから大丈夫でしょう」

 

「テスラ研は心配していない、俺はあのミツコ・イスルギが好かん。あれは戦争屋だ」

 

元は民族解放戦線のリーダーを務めていたバンだ。外交や、指揮、作戦立案まで行っていた。その中で顔を見たミツコに強い嫌悪感を示していた、あれは地球がどうなっても良い。自分の商売さえ上手く行けば良いと言うバンが最も嫌うタイプの人種だった。

 

「極秘通信ですからミツコ・イスルギに知られる事はないでしょう。フィリオはテスラドライブの権威ですし、パイロットスーツの改良案を出してくれる事でしょう」

 

ビアンの作成したパイロットスーツが劣っていると言うわけではない、だが餅は餅屋。大気圏の重力を突っ切って外宇宙へと飛び出そうと計画しているプロジェクトTDのパイロットスーツはGへの防御機構においては群を抜いているのだ。

 

「ユーリアもそう思うだろう?」

 

「は、テストタイプでしたが、あれの加速力には驚かされました。そしてスーツのG防御も群を抜いておりました」

 

元々フィリオはコロニーの出身だ。軍部の研究者のフィリオとフィリオの開発した機動兵器のパイロットになると言って軍属になったスレイ。少々ブラコンの気が強すぎるがユーリアが直々にトロイエ隊にスカウトするほどにその操縦技術は高い、話はそれたが。元々コロニーで研究が進められていたプロジェクトTD。トロイエ隊も一時的にプロジェクトTDの機体に触れていて、そしてプロジェクトTDのタイプαのテストパイロットをしたこともあり、その特殊な重力防御の機能が組み込まれたパイロットスーツにも袖を通している。

 

「しかしあれは旧西暦の宇宙服そのものでゲッターの操縦には向かないと思いますが……」

 

「ああ、それは私も思っている。輝く笑顔で金魚鉢を被っていたフィリオには驚いた物だ」

 

フィリオは確かに優秀な科学者ではあった。だがその独特のセンスにはゼンガーに続いて親友と呼ぶエルザムも理解に苦しんでいたりする。

 

「マザーベースから熱源確認。機体照合……! グランゾンです」

 

グランゾンの名にエルザムもバンもその顔に驚愕の色が浮かんだ。ホワイトスター出現から消息を絶っていたグランゾンが何故とその顔が物語っていたのだ。

 

『お久しぶりですね、エルザム少佐、バン大佐。格納庫はこちらです、ビアン博士と武蔵君が待っていますよ』

 

格納庫へと誘導するグランゾン……だがクロガネのブリッジには重い沈黙が広がっていた。

 

「エルザム様……もしやあの戦闘の熱源は」

 

「ああ。何かあったのかもしれない、クロガネのエンジンを停止、補助動力でマザーベースへと進路を取れ」

 

2時間ほど前に確認された戦闘の振動と熱源、その反応を感知し微速でマザーベースに向かっていたが――グランゾンが必要となるほどの戦い。恐竜帝国……もしくは浅間山の地下で見た異形の鬼。それに順ずる何かが、マザーベースに現れたのかもしれない。それを悟ったエルザム達の表情は険しく歪められているのだった……。

 

 

 

 

ネビーイームの玉座で幼い少女……レビの前に膝を突くヴィレッタ。ヴィレッタを見下ろす、レビの表情は酷く冷たい。

 

「ヴィレッタよ。ではイングラムの事はお前は何も知らないと言うのだな?」

 

「レビ様、確かに私はイングラムの半身ではありますが、私とイングラムは別の存在です。何もかも知っているわけではありません」

 

イングラムが消息を絶ち、バルマー帝国でプロトタイプが建造されただけのアストラナガンに酷似した機動兵器の存在。イングラムのバルシェムであるヴィレッタならば何か知っているのではないか? と言うアタッドの言葉。レビ自身も何を馬鹿なと思いはしたが、一応話を聞いてみることにしたのだが……やはりヴィレッタは何も知らない様子だった。

 

「これで話は終わりだ、すまなかったな。時間の無駄だった」

 

「いいえ、大丈夫です。レビ様、アタッドでしょう?」

 

「ああ、ゲッターロボ、そしてアストラナガンらしき存在からアタッドが独断で何かをしているのは知っていたが……あいつはもう駄目かもしれないな」

 

手柄を求め、他人の足を引っ張るようでは駄目だなとレビは呟き、玉座から立ち上がる。

 

「ヴィレッタ、付いて来い」

 

玉座の肘掛を操作し、隠し通路を開いたレビに命じられヴィレッタは薄暗い通路の中に消えたレビの後を追って歩き出した。

 

「ゲッターロボ、アストラナガンは破壊対象でもあるが、それと同時に鹵獲対象でもある」

 

「はい、バルマーを壊滅の危機に追い込んだゲッターロボは忌むべき敵でもありますが、それと同時にバルマーに繁栄を齎します」

 

「そうだ、ゲッター線を手に入れることが出来ればバルマーはより強大な国となる。そのためにはゲッターロボの鹵獲、そしてアストラナガンの回収が必要になる」

 

通路を抜けた瞬間眩い光が広がり、一瞬ヴィレッタの視界が白一色に染まった。

 

「ここは……製造プラントですか?」

 

「そうだ。アタッドに余計な事をされるわけにはいかないからな」

 

ライン作業で建造されていく量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンの製造プラント。だが、やはりと言うべきかその製造速度はハバククやゼカリアと比べると格段に遅い。

 

「確かにドラゴンやライガーは強力な機体ではある。だがあれは出来損ないだ」

 

「……炉心ですね」

 

「そうだ。ゲッター炉心がなければ、あれは出来損ないに過ぎない」

 

ゲッターロボが強大な力を持つのはゲッター炉心があるから、それがないドラゴンやライガーはただの出来損ないに過ぎない。

 

「ゲッターロボ、もしくはゲッターロボGからゲッター炉心を奪い取る。その為の機体は出来ている、これはアタッドには関わらせては無い。ジュデッカが作り上げた最強のドラゴンだ」

 

製造ラインの奥に隠されていた格納庫、その中には異形のドラゴンの姿があった。

 

「これは……ヴァイクル?」

 

「そうだ。ヴァイクルの素体をベースにドラゴンの姿を流用した、ドラグクルだ」

 

下半身と背部はヴァイクル、上半身は4つ腕のドラゴン。まるでインド神話に出てくるヴァースキのような姿をした異形のドラゴンがライトアップされていた。

 

「操縦は念動力による遠隔操作。私は南極にこれを向かわせる、ヴィレッタ。お前には伴を命じる」

 

「畏まりました。レビ様」

 

ヴィレッタはその命令を断る事が出来ない、レビから下された命令を拳を強く握り締め了承するのだった……。

 

 

 

 

かつてコーツランドで沈んだシロガネはその白亜の姿をコーツランド基地上空に再び浮かび上がらせていた。そしてそのブリッジにはジュネーブから命からがら脱出したシュトレーゼマン達の姿があった。

 

「シロガネの調子はどうだ? レンジ社長」

 

「問題はありません、議長。修理作業はパーフェクト……この艦は予定通りの時刻に出航出来ます」

 

シュトレーゼマンの隣でグレーのスーツに身を包んだ、白髪の中年男性……イスルギ重工社長「レンジ・イスルギ」は自信満々の表情でそう告げた。だが、シュトレーゼマンはそんなレンジを見て嘲笑するような表情を浮かべた。

 

「フン……流石はDCのリオンシリーズを量産したイスルギ重工と言った所か、その技術だけは認めてやる」

 

大破したシロガネを短時間でここまで修理出来たのはイスルギ重工の存在が大きい、だが連邦を裏切っていたイスルギ重工にシュトレーゼマンは思う所があった

 

「だがお前達の信用は地に落ちていると知れ」

 

「と、申されますが、私達がいなければシロガネは再び飛ぶ事は出来ませんでした」

 

シュトレーゼマンの嫌味にレンジは顔色1つ変えず、純然たる事実を告げる。ゲッターロボGの修理に携わった部下全員を失い、今や国家反逆罪で追われているシュトレーゼマンが頼れるのは同じく、DC戦争でビアン達に協力した事で社長の地位を追われ、謹慎中のレンジ派のイスルギ重工しか存在しなかった。

 

「EOTI機関時代からビアン・ゾルダークに接近し……DCの兵器製造を一手に引き受けて莫大な利益を得た。しかし、ビアンが死んだと知れば手の平を返し、私の下へやって来た。そんな男を信用できると思うか? ビアンが生きている今お前が私達の情報を流していないとも言い切れない」

 

「確かに私はビアン・ゾルダークに協力しました。しかし利益を追求するのは企業として当然の事、つまらぬ理想を掲げ、客を選ぶマオ・インダストリーと一緒にしてもらっては困りますね。兵器はただの兵器、作り上げた後どう使われるなどと私達には関係のない話であります」

 

 

あくまで依頼を受けたから作り上げた、そして製造ラインを提供しただけと言い張るレンジにシュトレーゼマンは忌まわしげに鼻を鳴らした。

 

「まあ良い、シロガネとこの基地を修復し、ドラゴン達を少ないとは言え量産したお前の功績は認めよう」

 

「旧西暦の骨董品ですが、その能力は素晴らしいですからな。それで、議長……例のお話ですが……」

 

レンジがドロ舟とわかっているシュトレーゼマンの派閥に接触したのは理由がある、それは勿論エアロゲイターの事だ。このまま地球にいては死んでしまう、だからこそ地球離脱の為にシロガネを修理しろと言うシュトレーゼマンの命令に従ったのだ。

 

「判っておる。お前達のシロガネへの乗艦を認める」

 

シュトレーゼマンの言葉にレンジはその言葉を待っていたと言わんばかりに笑みを浮かべた。

 

「この目でホワイトスターを見ておきたいと思っていたのでご配慮感謝します、それに異星人とは言えビジネスパートナーになるかもしれないのですから友好的な出会いをしたいですからな、それで私達の案内人のニブハル・ムブハルは何処に?」

 

「あの男が怪しいか?」

 

シュトレーゼマンの言葉にレンジは小さく頷いた。自分達をエアロゲイターの指導者に会わせると約束したニブハル、だが出航前になっても姿を見せないニブハルを怪しいというレンジ。

 

「左様で。あの男……本当に我々をホワイトスターへ導くつもりなのですか?」

 

もし本当に案内するつもりならば、いつまで経っても姿を見せないニブハルにレンジは不信感を抱いていた。

 

「もはやエアロゲイターと正面きっての交渉は絶望的だ……地球圏の安泰を図るには、ニブハルを介して、直接彼らの統治者と話し合うしかない」

 

ハガネ、ヒリュウ改がエアロゲイターと交戦した事で最早交渉の段階ではないとシュトレーゼマンは考えていた。

 

「それにブライアンの愚か者め、ゲッターロボを手土産にすればもっと早く話は進んだと言うのに……」

 

「ああ、ムサシ・トモエとゲッターロボ。ブライアン大統領とリクセント公国が動いたせいで徴収できなかったのですね」

 

エアロゲイターが何よりも求めているゲッターロボとその操縦者、それがいればもっと良い待遇でエアロゲイターへの交渉に臨む事が出来たとシュトレーゼマンは舌打ちをする。

 

(あの小娘め)

 

連邦にも強い発言力を持つリクセント公国のシャイン・ハウゼンが、国営放送を使い流したジュネーブでのゲッターロボの活躍とそのパイロットによって救出された映像、そしてそれに続き北京でのゲッターロボによる民間人の救助活動。それによってムサシを犯罪者として追おうとしたのは上層部の保身であると言う話が広がり、シュトレーゼマンは南極まで逃げ延びることになった。この状況を作り出したムサシとシャイン、そしてブライアンの3人に逆恨みに等しい思いをシュトレーゼマンは抱いていた。

 

「あの男と行動を共にすれば、エアロゲイターに攻撃されずに済むという話はわかりますが……信用するのは危険かと」

 

そんなシュトレーゼマンの心境も知らずにレンジがニブハルを信用していいのかと語っているとシロガネのブリッジに突然第三者の声が響いた

 

「……これはまた、随分と失礼なおっしゃりようですな」

 

「……! これはニブハル大統領補佐官。随分と遅かったですな」」

 

「私も忙しい身ですので、しかし私はあなた方に先見の明があると判断し、国賓待遇でお迎えしようというのですぞ? 疑われるのは心外ですな」

 

肩を竦めるニブハル、だがニブハルにもニブハルで疑いはある。それはシュトレーゼマンにコーウェンとスティンガーを紹介したのは他でもないニブハルだからだ。

 

「口先だけでは何とでも言えるものだ、ニブハル」

 

「フフ……あなたも同様にね」

 

下らない口論を始めたニブハルとレンジにシュトレーゼマンは怒りの表情を浮かべ、何故自分がこんな事をしなければならないのだという表情で2人の仲裁に入った。

 

「今はつまらぬ言い争いをしている場合ではない。一刻も早くシロガネで……」

 

地球を脱出するべきだというシュトレーゼマンの言葉はシロガネの中に響いた警報にかき消された。

 

「議長! 氷原下に高熱原体の反応があります!」

 

「なに!? 識別信号は何だッ!?」

 

南極の大地の下からの熱源反応報告にシュトレーゼマンの詳しい報告を上げろという声が響く、そしてシロガネのオペレーターが識別信号の照合を行っている間にコーツランド基地を覆う氷が砕け散り漆黒の戦艦が姿を現した。

 

「そ、そんな馬鹿なッ!? 大陸氷を突き破って来たッ!?」

 

信じられないと言うオペレーターの声が響く中、シュトレーゼマン達もその顔を驚愕に染めた。

 

「な、何と言う無茶をッ! 貴重なスペースノア級を壊すつもりかッ!?」

 

南極の大地を突き破り姿を現したのは地球圏に3隻しか存在しないスペースノア級、その参番艦クロガネの姿であり、そしてクロガネからの通信でその顔を更に驚愕に染め上げた。

 

『クロガネ艦長、ビアン・ゾルダークだ。シュトレーゼマン議長、レンジ・イスルギ、お前らは何をするつもりだった……?』

 

激しい怒りの表情を浮かべたビアンの姿に小心者のシュトレーゼマンとレンジは顔を青くさせ、口をぱくぱくと開く事しか出来ず、そんな2人を見たニブハルは肩を竦めながらモニターに映ったビアンに視線を向けるのだった……。

 

 

 

 

シロガネとの通信を強引に開き、ビアンはシュトレーゼマンたちを一瞥する。

 

『まだ生き長らえていたか、ビアン・ゾルダーク』

 

「お前もな、権力に執着する狸が」

 

挑発するような言葉を投げかけられたシュトレーゼマンの額に青筋が浮かぶ。

 

「シロガネでどこへ行くつもりだ? まさかエアロゲイターとの交渉なんて戯けた事を言いはしないだろうな?」

 

『戯けた事だと? 地球圏に戦争を撒き散らしたお前が言う言葉ではないッ!』

 

「そうだな。それは認めよう、だが今の世論を知っているか?」

 

ビアンの問いかけにシュトレーゼマンは何も言い返せない、無償で人を救ったゲッターロボとムサシ。そんな好青年をでっちあげの罪で犯罪者に仕立て上げたシュトレーゼマン。そしてビアンの起こした事は確かに大罪だが、地球圏を救おうとしたと言う功績で世論は完全にビアン、そして武蔵の味方だ。

 

『貴様らが世論を操作したのだろう! いや、そうに決まっているッ!!』

 

「何を愚かな、自ら行動する者としない者、どちらが民衆に良く映るかなんて言うまでも無いだろう」

 

武蔵の献身的な行動、そしてシャイン達の声が世論を動かしたのだ。

 

「それで貴様らは母星の危機に立向かおうとする者達をも見捨て、自分達だけで逃げるつもりか?」

 

『我々は人類の種の保存の為、エアロゲイターと直接交渉を行うのだッ! 邪魔をするなッ! ビアンッ!』

 

「それが地球に新しい火種を撒くと判っていてか?」

 

『私は戦う事しか出来ぬ野蛮人とは違う、地球を代表する政治家として……人類の未来を確保する為にホワイトスターへ赴くのだ』

 

シュトレーゼマンの言葉をビアンは鼻で笑った。既に犯罪者として指名手配をされているシュトレーゼマンは決して地球の代表なのではない。

 

「自分が地球を救うと信じる事で自我を保つか……愚かな事だ」

 

『愚かだとッ! 私がエアロゲイターと交渉して地球を護ろうとしている事の何処が愚かだというのだッ!』

 

地球を守ろうという意志は感じられる、だがシュトレーゼマンが得る地球の未来はエアロゲイターに支配された植民地としての地球だ――そんな物をビアンは地球と認めるつもりはなかった。

 

『軍事力に頼り、地球を支配しようとしたお前にはわかるまいッ!』

 

「生憎だが、地球を売ろうとする人間の気持ちなど私は知りたくも無い。シロガネから降りろ、そうすれば命までは取らん、これは最後通告だ」

 

地球を護ると言う名目で地球を売ろうとするシュトレーゼマン達にそう警告するビアン。

 

『シロガネを沈めるか? 貴重なスペースノアを沈める勇気がお前にあるか?』

 

こうして直接ビアンが訪れたのは貴重なスペースノアのシロガネを徴収する為にあった。シロガネに乗っていれば安全が確保され、攻撃される事は無いと高を括っていた。ビアンもシロガネに篭城する可能性は考えていたが、やはりその通りになったかと顔を歪めた。

 

「重力震反応を感知! エアロゲイターの機動兵器が転移出現します!」

 

だがその直後コーツランド基地、シロガネ、クロガネの全てに警報が鳴り響き、コーツランド基地はエアロゲイターの機動兵器に囲まれていた。

 

「え、エアロゲイター!? 何故奴らがここにッ!? 話がついているのではないのかッ!?」

 

レンジがパニックになりニブハルに詰め寄るが、ニブハルは涼しい顔を崩さない。

 

「先ほど言いましたが、我々も決して一枚岩ではありませんので……」

 

「う、うぬぬ……ここまで来て死んでなる物かッ!! 議長ッ!」

 

「判っている。量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンを出撃させろッ!!」

 

シュトレーゼマンの合図でコーツランド基地、そしてシロガネの格納庫から量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンが2機ずつ出撃する。

 

「やはり隠していたか……武蔵君、エルザム少佐、ゼンガー少佐、シラカワ博士。想定通りになった、出撃準備を。私も直ぐに出る。バン大佐、リリー中佐、クロガネの指揮は任せる」

 

バンとリリーにクロガネの指揮を任せ、ビアンも格納庫へ走る。そして量産型ドラゴン達の出撃から遅れて数分後。クロガネからゲッターロボ達が出撃した、だがゲッターロボがこの地に降り立った事で更なる混乱の種が撒かれた事をビアン達は知るよしもないのだった……。

 

 

 

 

第68話 偽りの箱舟 その2へ続く

 

 




今回は丁度いい所で話を切らせてもらいます。ビアンとシュトレーゼマンは絶対仲が悪い(確信)。新型ヴァイクルや、前々回の4体の蜂型の最後のいったいとか、スパロボの伝統形式で次回もお送りしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

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