進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第68話 偽りの箱舟 その2

第68話 偽りの箱舟 その2

 

地響きを立てて着地するゲッター3、そしてその隣に降り立つグルンガスト零式・改。

 

「どうですか? ゼンガーさん、違和感とかあったりします?」

 

『いや、今の所は今まで以上に調子がいい』

 

グルンガストシリーズはTGCジョイント、重力制御を応用した関節を利用する事でその重量を緩和し、肘や膝関節に掛かる負担を軽減していた。だが今はゲッター合金に交換する事で今まで以上に柔軟な動きを取る事が出来る筈である……。

 

『それにこの新型零式斬艦刀の試し切りには丁度いい相手だ』

 

そしてゲッター合金を使用されたのはグルンガスト本体だけではない、その武器である「零式斬艦刀」もまたゲッター合金でコーティングされ、その切れ味を今まで以上に強化されている。

 

『ゆっくり話をしておきたいが、今は無理だな。武蔵君、ゼンガー。相手を見てどう思う?』

 

漆黒に染まったヒュッケバインMK-Ⅱ。ヒリュウ改のブリットの駆るヒュッケバインMK-Ⅱの同型機だが、勿論これもゲッター合金を応用した武装を追加で装備し、関節部や装甲にゲッター合金を使用された。ヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプGと言うべき機体に仕上がっており。装甲を初めとした外見的特徴こそヒュッケバイン系列だが、その中身は既に完全な別物と言うレベルまで改造を施され完全なエルザム専用機としてロールアウトしていた。

 

「判っています、量産型ドラゴンとかがいませんよね」

 

『今までアレだけ投入しておいて、出撃しないと言うのはおかしい話だな』

 

今コーツランド基地を包囲しているのはソルジャー、ファットマン、そして数体のエゼキエルと敵の中に量産型ドラゴン達の姿は無い。

 

『恐らく本隊として温存しているのでしょう。どうしましょうか? エルザム少佐、グラビトロンカノンで一掃してみましょうか?』

 

シロガネを巻き込むことになりますがねと言うシュウにエルザムはストップを掛けた。

 

『可能ならばシロガネの回収を目的にしている、シラカワ博士。今は範囲攻撃は避けてもらいたい』

 

『了解です、では1機ずつ確実に処分するとしましょうか』

 

虚空から異形の剣……グランワームソードを召喚し、真っ先に切り込んでくグランゾン。

 

「「「「!!!」」」」

 

エアロゲイターの機体からの集中砲火が放たれるが、それはグランゾンが常時展開している歪曲フィールドによって弾かれる。

 

『武蔵君、エルザム少佐。敵は確実に戦力を温存している。私は敵の本陣が出るまでは出撃しない、敵の出方と量産型ドラゴンの動きに注意してくれ』

 

『了解です、武蔵君。ゼンガー、今聞こえた通りだ。敵戦力の増援に気をつけてくれ』

 

「行くぜッ!! ゲッタァミサイルッ!!!」

 

ゲッター3の頭部から放たれたミサイルを合図にグルンガスト零式・改とヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプGも戦場にその身を走らせるのだった……

 

 

 

 

軽い、グルンガスト零式・改を操るゼンガーが感じたのはまず軽いだった。零式の名前の通り、グルンガスト零式はプロトタイプであり、操縦者がいないと言う事でテスラ研でお蔵入りになっていた零式をラングレーにゼンガーが配属されると言う事で急遽メンテナンスを施されテスラ研を出たという経歴がある。完成形のグルンガストと比べれば、その操縦桿と操縦ペダルは格段に重く操縦性に難が合った。だがゲッター合金に換装され、リシュウとビアンの2人に新しいOSを組み込まれた零式の動きは格段によくなっていた。

 

「打ち砕けッ! ブーストナックルッ!!」

 

ゲッター合金で拳をコーティングされたブーストナックルの威力は今までのそれを完全に上回り、強固な装甲を持つハバククを一撃で粉砕する。

 

『やるな、ゼンガー』

 

「俺ではない、ビアン総帥とリシュウ先生のおかげだ」

 

プロトタイプである零式でここまで戦えるのは嘘偽りでもなくメカニックの腕が良いからだ。そしてそれが新西暦最高の研究者といわれるビアンが改造したのだ、ゼンガーでなくてもこのくらいの活躍は出来るとゼンガーは考えていた。

 

『ふ、相変わらずだな。それよりもだ、友よ。ナイトを狙えるか?』

 

西洋鎧のような機動兵器、今のこの陣営での指揮官機だと思われるそれを狙えるか? とエルザムは尋ねる。

 

「問題は無い、だがソルジャーとファットマンへの対応が遅れるぞ」

 

『それは私と武蔵君で何とかする。指揮官機を潰す事で敵の本命を引きずり出す』

 

「了解した、では背後は任せる」

 

零式斬艦刀を構えエゼキエルに向かう零式改。自らの指揮官に近づけさせまいとするゼカリアだったが、その動きは余りに遅かった。ゼカリアが動いた時、目の前に広がっていたのは銃弾であり、それに何の反応も出来ずゼカリアは頭部打ちぬかれ、氷原に沈んだ。

 

『っつう、中々の反動だ。だが悪くない、武蔵君。トドメは頼んだッ!』

 

『了解ッ! ゲッタァーーーパンチッ!!!』

 

グルンガスト零式以上の派手な強化を施されている、ヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプGも並のパイロットでは操縦できないような、ピーキーな仕上がりになっている、まずは空気抵抗を計算され鋭利なフォルムになったことによる加速力、そして試作型ではあるがゲッター線バリア機能。次に関節部などや足回りの装甲のゲッター合金への交換、外見上はヒュッケバインシリーズの面影を残してはいるが、中身はPTサイズまでサイズダウンした特機と言っても過言ではないレベルの機体改造を施されていた。そして搭載している武装もまたかなりの改造を施され、ゲッター合金弾頭とゲッター線コーティング弾頭の2種類を打ち分ける事が出来るアサルトカノンを主武装に、ゲッター合金製のブレードやブーメランなどが搭載されている。エルザムを痺れさせたのはゲッター合金弾頭の射出時の反動だが、一撃でゼカリアを沈める事が出来るPTサイズの武器となれば文句をつける点は何処にもなかった。

 

「我はゼンガー・ゾンボルト! 悪を断つ剣なりッ!! 受けろ! 新たなる斬艦刀の一撃をッ!!!」

 

ゼカリアとハバククの包囲網を抜けたゼンガーの名乗りが南極に響き渡る。エゼキエルがグルンガスト零式・改を近づけさせまいとするが、それは最早遅すぎた。

 

「零式斬艦刀ッ!! 疾風迅雷ッ!!! ぬおおおおおおおーーーーーッ!!!」

 

ゲッター合金によって製造された新設のバックパックから齎される莫大な推進力、そしてヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプGにも搭載されたゲッター線フィールドによる防御。エゼキエルの攻撃は全てフィールドによって弾かれ、一瞬たりとも零式・改の足を止める事が出来ない。

 

「チェストオオオオオーーーーーーッ!!!」

 

氷塊を砕き、エゼキエルの妨害を物ともせず突き進む零式・改。それはAIにさえも、恐怖と言うものを与えた。AIがそれを理解したかは定かではないが、零式・改から逃げなればならないと自らのプログラムを歪めさせるほどの威圧感を与えていた。

 

「我が斬艦刀に断てぬ物無しッ!!!」

 

擦れ違い様の一閃、その一閃でエゼキエルの上半身と胴体は切り裂かれ、視界が右にずれる中エゼキエルのAIはその機能を停止させ、エゼキエルの視界は漆黒の中へと消えた。

 

『すげえッ! ゼンガーさんやるなあッ!』

 

「素晴らしい切れ味だ、新たな斬艦刀を用意してくれたビアン総帥には感謝の言葉しかないな」

 

武蔵の賞賛の声を聞きながらゼンガーは新たな斬艦刀を見る、刃こぼれ1つ無いその姿は製造されたばかりを連想させる。

 

『ゼンガー、斬艦刀に酔いしれるのは良いが、ほどほどにしてくれよ?』

 

「ふっ、そうだな。これさえあれば俺は誰にも負けんッ! 覚悟しろッ! エアロゲイターよッ!!!」

 

ドラゴン達ではない、旧式のバルマーの兵器ではゲッター線によって改造されたグルンガスト零式・改、ヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプG、そしてゲッター3、グランゾンを止める事は叶わず、その数は瞬く間に減らされていくのだった……。

 

「ふん、あいつらのおかげでシロガネも量産型ドラゴン達も大丈夫そうだな、レンジ、ニブハル今の内にシロガネを出航させろ」

 

クロガネとゲッターロボ達に攻撃が集まっている内にシュトレーゼマンはシロガネを出航させようとした。だが、その判断がシュトレーゼマン達に悲劇を齎そうとしていた。

 

「ま、待ってください! 議長! 空間転移反応あ……うわあああああッ!?」

 

「ぐ、ぐああああああッ!? なんだ!? 何が起きた!」

 

「あ、あれは……ドラゴン!? ドラゴンなのかッ!?」

 

シロガネのエネルギーフィールドを突き破り高速で飛来した4つの巨大なトマホーク、シロガネの頭上には下半身が蛇のような形状の純白のドラゴンの姿があった。だがその姿は禍々しいというべき姿をしており、4つの腕には1つずつ両刃のトマホークを持ち、背中からはエネルギー状の翼を羽ばたかせていた。

 

「ええい! ゲッターロボだ! ゲッターロボGを出せッ!! 量産型ドラゴン達も全てあのドラゴンに向けろッ!!!」

 

このままではシロガネが轟沈する、そう判断しゲッターロボGの出撃命令を出したシュトレーゼマンだがそれが更なる火種を生む事となるのだった……。

 

 

 

 

 

シロガネにトマホークを叩き付けたドラグクルの視界をネビーイームの中で見ているレビはその口角を上げて、獰猛とも取れる笑みを浮かべた。

 

「見つけた……ゲッターロボG」

 

シロガネから出撃したゲッターロボGを見て、レビはその興奮を抑え切れなかった。バルマー本国が求めて止まないゲッター炉心……ゲッターロボからゲッター炉心を奪うのは至難の業だが、AI制御でしかも半壊しているドラゴンからゲッター炉心を奪うのは簡単な仕事だ。

 

「ヴィレッタ、横槍を入れるなよ。あれは私が倒す」

 

『了解しましたレビ様、ですが、最悪の場合は助太刀いたします』

 

「ああ、頼むぞ。さてと……見せて貰おうかッ! 戦闘型ゲッターロボの実力をッ!!」

 

ドラグクルの背後から飛び出したビットがゲッターロボGに向かって突撃していく、攻撃には反応しているようだが、その動きは鈍く挨拶代わりのビット攻撃にもまともに反応出来ていない様子だった。

 

(ちっ、出来損ないか)

 

その様子に高揚していた気分が一気に下がるのを感じたが、最優先はゲッターロボGの確保だ。空中から反転して、ゲッターロボGを捕えようとその4つの腕を伸ばそうとした瞬間。レビは急遽反転させ、その腕を突き出した。

 

「ほう、中々やるな」

 

『よう化け物、オイラが相手をしてやるよ』

 

高速で飛来したゲッタートマホーク、それはドラグクルの強固な装甲を引き裂いていた。

 

「ふふふ、ああ、あんな出来損ないよりお前と遊ぶ方が楽しそうだ。だが、目的も同時に果たさせて貰おうか」

 

背中から射出したビットが量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンの胸部を貫く。一瞬びくりとその身体を痙攣させたドラゴン達だが、次の瞬間その黄色のカメラアイは真紅に染まりゲッターロボGへと襲い掛かる。

 

『しまった! これが奴の狙いかッ! ゼンガーッ!!』

 

『承知ッ!!』

 

レビ達の目的がゲッターロボG……いや、ゲッター炉心の奪取と判り特機とPTがゲッターロボGの支援に回る。

 

『ワームスマッシャーッ!』

 

「っと、なるほど、お前を忘れていたよ。グランゾン」

 

地球で警戒するべき特機「グランゾン」の胸部から放たれた光線がワームホールで飛ばされ、上下左右からドラグルに叩き込まれる。勿論念動フィールドを貫かれてはいないが、その振動にドラグルの視界が一瞬ぶれる。

 

『なるほど、中々に堅いようですね。私と武蔵君では些か分が悪い様子』

 

『ならば私も助太刀しよう、ゲッタービームッ!!!』

 

背後からの強襲、今度こそドラグルの姿は氷塊に頭から突っ込んだ。だが念動力によって遠隔操作をしているレビにはダメージなど入るわけも無い、むしろゲッターロボVの登場に笑みを浮かべていた。

 

「ふふふ、ゲッター炉心搭載機が3機か……私はついている」

 

どれか1つでも持ち帰ればゲッター炉心の量産は可能だ。そうなれば本国も喜ぶだろう、だが今のままでは戦力が足りない。

 

「さあ、おいで……私の操り人形達よ」

 

レビが指を鳴らすとコーツランド周辺に空間転移反応が連続で起こり、そこから量産型ドラゴン達が次々と姿を見せる。

 

「お前の力を見せてみろ、ゲッターロボッ!!!」

 

頭部から放たれた高出力のビームがゲッター1に向けられるが、命中する寸前にゲットマシンへと分離する。

 

『少しばかり私と遊んで貰いましょうか?』

 

「ふふ、良いさ。遊んでやるよ、地球人」

 

グランゾンのグランワームソードを2本の腕のゲッタートマホークで受け止め、背後で再びゲッター1へ合体したゲッターロボにビットを飛ばす。ドラグクルはドラゴンの上半身とヴァイクルの下半身を組み合わせた試作機でありその両方の良い所を組み合わされた機体だ。遠隔操作ビットに高出力のビームセイバー、そして背中にマウントしている2門のオプティカルカノン。そしてドラゴンの頭部ビームとダブルトマホークと遠近に高い能力を持ち合わせている。だが、操縦者であるレビは生粋のパイロットではなかった。そしてそれに対してムサシはゲッターロボのエキスパートだった。

 

『掛かったッ! ゲッターアアッ! ビィィィムッ!!!』

 

マントを身体に巻きつけ、自らビットに突撃したゲッター1。マントの隙間から乱反射したゲッタービームがビットを貫き破壊する、その想像外の攻撃に一瞬だけレビは動きを止めた。

 

『クロスマッシャー……発射ぁッ!!』

 

「舐めるなッ!!」

 

追撃にと放たれたゲッターロボVのクロスマッシャーは回避した。報告に聞いていた攻撃とは言え、実際に目の当たりとすると違うとレビは感じていた。

 

(さて、どうするか)

 

ゲッターロボGを回収して離脱する計画だったが、そこに2体のゲッターロボが現れたことで、少し欲が生まれた。そのせいでゲッターロボGも2機のゲッターロボも回収するのが難しくなってしまった……。

 

「試作機だからな、仕方あるまい」

 

外見はドラゴンでも性能はドラゴンとは程遠い、敵の戦力差は想像以上にあった。まさか出撃している機体全てにゲッター線が含まれているとは想定外だったとレビは苦笑する。ゲッターロボGだけでも回収しようとした時、レビの悪運が武蔵達を上回った。

 

『ギギィッ!!!』

 

上空から飛来した蜂型の機動兵器の尻から放たれたミサイルと回転する頭部から放たれたビーム。それがレビを取り囲んでいた機体を引き離し、体勢を立て直す時間をレビに与えたのだった。蜂型ロボットによる奇襲によって、武蔵達へと傾きかけていた戦場の流れは再びどちらに転ぶかわからない状況へと流を変え始めていたのだった……。

 

 

 

 

 

蜂型の乱入により、戦場の流れは一気に混迷を極めていた。異形のドラゴンに操られた量産型ドラゴン達、そしてエアロゲイターによって召喚された量産型ドラゴン、そしてその戦場の中で己の力を弁えず、異形のドラゴンに向かうゲッターロボG。

 

「ゼンガー! ゲッターロボGの足を切り落とせ、動きを止めるんだッ!」

 

「判っている! だがこうも邪魔が多くてはッ!!」

 

量産型ドラゴンとゲッターロボGの違いはゲッター炉心の有無だ。それ以外は全くの瓜二つで同じ機体が無数にいるこの状況ではゼンガーとエルザムでさえもゲッターロボGの姿を見失っていた。

 

「なるほど、私とグランゾンを止めにきましたか……些か厄介ですね」

 

ライガーは突撃と同時に自爆を繰り返し、グランゾンの足を止める。湾曲フィールドで防いでいるが、そうなれば湾曲フィールドを解除する必要のあるワームスマッシャーや攻撃を繰り出す隙が無い。しかも自爆前提で身体に火薬を仕込んでいるライガーの存在に流石のシュウも顔を歪めていた、そしてシロガネもまた轟沈寸前に追い込まれていた

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「ぐわっ! くそっ! 基地の防衛隊はどうなっている!」

 

「す、既に全滅しています! 議長! この場から脱出をッ!!」

 

コントロールの奪われたポセイドンの執拗なストロングミサイルの攻撃で修復されたコーツランド基地は崩壊し、シロガネもエネルギーフ

ィールドの維持が難しくなり、オペレーターからの避難勧告が出る。

 

「ちいっ! クロガネをシロガネ上空に移動させろっ! エネルギーフィールドの全力展開だッ!」

 

シュトレーゼマンはどうなっても良いが、シロガネを轟沈させるわけには行かないとクロガネが防御に入り、陣形が再び崩される。

 

「ぐっ! 完全体はこんなに早いのか!」

 

「武蔵君ッ! 「ゲッターロボに注意を向けている場合か?」 ぐふっ!? くっ、厄介な」

 

この場の最大戦力であるはずのゲッター1とゲッターVは蜂型の機動兵器と異形のドラゴンによってその動きを完全に封じ込められていた。

 

「なろぉッ! 舐めんなッ! オープンゲットッ!!!」

 

蜂型の目の前でオープンゲットし、蜂を無視して異形のドラゴンに突き進むゲットマシン。それを見た蜂型がゲットマシンを追いかけようとするが、その背中にクロスマッシャーが直撃する。

 

「!!!」

 

「私を忘れて貰っては困るな」

 

武蔵が何をしようとしているのか理解したビアンは邪魔はさせまいと蜂型に攻撃を連続して繰り出す、その機動力の前にゲッターの操縦に慣れていないビアンの攻撃は当たらない――だが蜂型を誘き寄せる方法はビアンは十分に理解していた。

 

「ゲッター炉心の出力UP。そら、お前の嫌いなゲッター線がここにあるぞ」

 

「!!」

 

あの蜂型はゲッター線に強い反応を示す、仮に攻撃が当たらなくともゲッター線の強いゲッターVに引き寄せられる。あの蜂型は、そのようにプログラミングされていた。

 

「うおおおおおーーーッ!! チェンジッ! ゲッタァアアーーーツゥッ!!!」

 

マシンガンの連打からゲッター2にチェンジし異形のドラゴンに突き進む、遠隔操作の機体であるからこそ反応が遅れゲッター2のドリルがバリアを突き破り、ドラゴンの腹部に突き刺さり火花を散らす。

 

「ふふふ、この程度で止まると思っているか?」

 

ドラグクルの4つ腕がゲッター2を捕らえようと伸びるがそれよりも速くゲッター2が爆ぜ、再びゲットマシンへと分離する。

 

「チェンジッ! ゲッター1ッ!! ゲッターッ! トマホークッ!!!」

 

「速い……なるほど、ゲッターの強さとはこれか」

 

ゲッター1が縦横無尽に投げ付けてくるゲッタートマホークの嵐、それを弾きながらレビは冷静にゲッターを観察する。相手の戦闘力、そしてその弱点を見出そうとしていたのだ。だが、そんなレビの目の前に予想外の光景が広がった」

 

「ゲッタァアアーービィィムッ!!!」

 

投げ付けた無数のトマホークに向かって放たれたゲッタービームがトマホークの刃に当たり、乱反射を繰り返す。そしてそれは上空から無数の光の雨となってコーツランド基地周辺に降り注いだ。

 

「!?」

 

「!!!!」

 

事前に武蔵から連絡を受けていたゼンガーとエルザムはゲッタートマホークの投擲と同時に離脱しており、その光の雨の範囲から逃れていた。

 

「これで思うように動けます。グラビトロンカノン発射ッ!!!」

 

そして光の雨によって屍兵の動きが止まった一瞬で超重力の雨が降り注ぎ、ライガーやポセイドン、そしてドラゴンは氷原に叩きつけられそのカメラアイから光を消した。

 

「ふふふ、どうやら今回はここまでのようだな」

 

レビもまたゲッタービームによって弾き飛ばされ、自身を追い抜いていくゲットマシンを見て笑みを浮かべる。だが、それはレビにとって計算通りだった。

 

「チェンジッ! ゲッタァアアースリィィーーーーッ! 大ッ! 雪ッ!! な、なんだとッ!?!?」

 

ドラグクルをゲッターアームで捕え、大雪山おろしを繰り出そうとした瞬間。ドラグクルの下半身が脱皮するかのように抜け、完全なドラゴンとなったドラグクルが機能停止寸前のゲッターロボGへと突進する。

 

「いかんッ! ゼンガーッ!」

 

「承知ッ!」

 

エアロゲイターの目的がゲッター炉心の奪取だと判り、零式・改、そしてタイプGの攻撃がドラゴンに襲い掛かるが遠隔操作で無人機と大差の無いドラゴンはGを抱え込み、転移しようとエネルギーを高めた。

 

「何ッ!?」

 

「……ジジジ」

 

だがそれはレビにとって不幸を呼び寄せる結果となった。ゲッターロボGのゲッター線とドラゴンが転移の為にエネルギーを高めた事により、ゲッターVの総エネルギーを越えてしまったのだ。

 

「……シャインスパーク……発動感知……自爆シマス」

 

「なっ!? 離せッ!」

 

背部から出した6つの腕がドラゴンとGを抱え込み、ドラゴンが拘束を振りほどこうと拳を振るうが蜂型はそれに一切怯む事無くエネルギーを高め続け……蜂型とドラゴン、そしてゲッターGの姿は眩い閃光の中に消えた。

 

「おお、これで助かった……!」

 

「貴重なGは失ったが……後はホワイトスターで彼らとの交渉をするのみだ……至急周辺の連邦に通達、クロガネを補足したとな」

 

クロガネやビアン達に助けられたが、即座にビアン達を売る選択をしたシュトレーゼマン、だがその命令が連邦基地に届く事は無かった。

 

「いかん、シロガネが……!」

 

突如シロガネの前に転移してきた紫のエゼキエルがその手に持ったライフルをブリッジに向けていた。

 

「さあ、覚悟なさい……ッ!」

 

「こ、これはどういうことだ!? ニブハル・ムブハル!!……ッ!?ぎ、議長! あの男の姿が見当たりませんぞ!」

 

「な、何……!? は、謀りおったか、ニブハル……ッ!!」

 

自分がいればエアロゲイターに襲われることは無いと言っていたニブハルの言葉を信じていたシュトレーゼマン達は、エゼキエルの攻撃行動に驚愕し、そしてついさっきまでブリッジにいたニブハルの姿が無い事に悲鳴を上げた。

 

「な、何故だ!? 何故ぇぇぇっ!?」

 

「お、おのれ、ニブハル! この私を……!!」

 

そしてシュトレーゼマンを含めたEOT特別審議員のメンバーは全て、エゼキエルの放った光の中へと消えた。

 

「……所詮は、権力にすがるしかない老人だったわね……これでお膳立ては終わったわ」

 

エゼキエルのコックピットの中でヴィレッタは笑い、蜂型の自爆を耐えたドラゴンへと合流する。

 

「大丈夫ですか? レビ様」

 

「……ああ、念動フィールドで耐えたがまさか自爆するとは予想外だ。だが、成果はあった」

 

炉心は流石に手にすることは出来なかったが、ドラゴンの手の中にはゲッターロボGの頭部が握られていた。

 

「これを分析すれば、判る事もあるだろう。ヴィレッタ、撤退だ」

 

「は、転移システムを起動します」

 

「……やれやれ、前回の南極会談の時といい……どうも芝居が過ぎたようですね」

 

崩壊したコーツランド基地、そして氷海に浮かぶシロガネを見つめながらニブハルは肩を竦めた。妨害がある事は考えていたが、ここまで力づくの行動に出るとはニブハルにとっても予想外だったのだ。

 

「それに……まさか、彼らがあのような手段に出るとは。おかげで今までの苦労が水の泡です――仕方ありません。本国には結果のみを報告するとして……しばらくの間、この星の監視は……哀れな放浪者達に任せるとしましょうか……」

告するとして……しばらくの間、この星の監視は……哀れな放浪者達に任せるとしましょうか……」

 

ここまできてしまっては自分には出来る事が無い、ニブハルはそう呟きシロガネの消火活動をしているクロガネを一瞥し、溶ける様にその場を後にするのだった……

 

「バン大佐、シロガネはどうだった?」

 

「敵機はピンポイント攻撃で第一艦橋のみを破壊したようです、他ブロックに損傷はほとんどありませんが……第一艦橋にいたシュトレーゼマン、イスルギ社長、そしてEOT特別審議会のメンバーは全員死亡しました」

 

コーツランド基地からの救難要請を受けたクロガネは支援物資の投下とSOS信号を発信し、南極を後にした。第一艦橋のみの修復ならばシロガネはオペレーションSRWには間に合うだろう。

 

「仕方あるまい、近いうちに伊豆基地に連絡を取る。バン大佐、私達は少し休む、基地に到着したら教えてくれ」

 

「了解です、ゆっくり休んでください、ビアン総帥」

 

コーツランド基地は放棄されているとは言え、連邦の基地だ。留まる事は危険だと判断し、残りの調査は連邦に任せクロガネは南極を後にした……だがそれが武蔵達にとって不幸を呼ぶ事になった。

 

「ふふふふ……ドラゴンが帰ってきたねえ」

 

「そ、そうだね、こ、コーウェン君ッ!」

 

コーウェンとスティンガーによって惨殺された連邦の兵士の肉塊の中で2人は笑う。巨大なクレーンによって吊るされた頭部と左腕、そして右足の無いゲッターロボGだが、修理すれば良い。ゲッター炉心を取り戻しただけで2人にとっては意味があり、ゲッターGが崩壊していようが関係ないのだ。

 

「同胞よ、安らかに眠れ」

 

2人に連れられて来たブライは蜂型の頭部に手をあわせ、2人に歩み寄る。

 

「ゲッターGを修理する予算と人員を回してやる。だからお前達も約束を守れ」

 

「勿論だよ! ブライ議員。オペレーションSRWが終わるまで僕達は動かないよ」

 

「や、約束だからね! 僕達は約束は守るんだ」

 

「ふん、どうだかな。まぁ良い、連邦の巡回が来るまでにこの場を去るぞ」

 

崩壊したゲッターG、そしてコーウェンとスティンガーとブライはその場を後にし、巡回の兵士は惨殺された兵士と再び奪取されたゲッターGの事を隠蔽する為、ゲッターGの残骸は存在せず自爆によって跡形もなく消し飛んだと報告するのだった……。

 

 

第69話 リクセント公国 その1へ続く

 

 




暗躍大好きーズがばっちり暗躍しております、そして+αも合流。しかし、OG1ではまだ表舞台に出てこないのであしからず。次回はマリオネットソルジャーの前編のパーティの件とオリジナルシナリオを加えてやっていくつもりです、ゲーザとガルインが動くか、生き残りの恐竜帝国か、そこらを出してシャインと武蔵をあわせたいなと思っております。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い

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