進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第69話 リクセント公国 その1

第69話 リクセント公国 その1

 

連邦軍に与えられたコード「ブラック・エンジェル」……いや、アストラナガンの襲撃以来ハガネ、そしてヒリュウ改は伊豆基地にずっと留まっていた。アストラナガンの襲撃での被害が余りに甚大であり、当初の計画である囮で地球圏の軍事施設への被害を最小にする事が実行不可能となった事が大きい。

 

「コーツランド基地でクロガネ、ゲッターロボ、グランゾン……そしてシロガネがエアロゲイターと交戦し、シロガネとコーツランド基地は大破したようだ。ダイテツ」

 

レイカーからの言葉にダイテツはそうかと小さく溜め息と共に呟いた。

 

「EOTI審議委員会は……全滅だろうな」

 

「ああ、死体が確認されている」

 

「地球を売ろうとした罰……とは言いがたいな」

 

手段は異なるが地球を守ろうとしたことに変わりは無い、勿論賛同出来るかどうかは別の問題になるが……。

 

「エアロゲイターが伊豆基地を襲撃しないのは、クロガネ、ゲッターロボの方が脅威と判断しているからか?」

 

「その可能性は高いな、現に人がいない空域での戦闘記録などが多数報告されている」

 

「ビアン達には頭が下がるな」

 

本来はハガネとヒリュウ改が務めるはずだった囮。それが奇しくもクロガネによって為さられている……その事にダイテツもレイカーも己の無力感を感じていた。

 

「だが今はそれに感謝するしかない、それと武蔵君にもな」

 

武蔵の名前がこの場で何を意味するか、ダイテツは十分に理解していた。

 

「グラスマンか……」

 

「ああ。量産型ゲシュペンストMK-Ⅱの製造ラインを買い取って、私達の元へ送り届けてくれている」

 

伊豆基地だけではなく、連邦軍の基地のあちこちで量産型ゲシュペンストMK-Ⅱの納入が始まり、フライトユニットの開発も進んでいる。

 

「ベテランにはリオンやガーリオンよりは適正があるからな」

 

「若手を出すには今回の戦場は厳しすぎる」

 

当初は若いパイロットにリオンやガーリオンの適正訓練を行わせる事を考えていた、それはベテランと呼ばれるパイロットがゲシュペンストの操縦に慣れすぎて、慣熟訓練を行っている時間が無かったからだ。しかし、地球と月で量産型ゲシュペンストMK-Ⅱの製造が再び始まれば、オペレーションSRWで乗る機体が無く戦艦のスタッフになるしかなかった軍人も戦力として数える事が出来る。

 

「武蔵君をここまで英雄視するのはどうかとも思うのだがな……」

 

グラスマンの家に伝わると言う旧西暦の歴史書。そしてそれに記されていたゲッターロボと武蔵の存在、それによって地球は勝てる。ゲッターロボによって救われると公言するグラスマン、先日の議員会議でもシャイン皇女と共に熱弁を奮っていたのは記憶に新しい。

 

「そういえば、ケネスが失脚したそうだな」

 

「ああ。賄賂や連邦の情報の売り渡しをしていた証拠があったとか」

 

ケネス・ギャレット少将が内通者として拘束されたという話は連邦の上層部にしか伝わっていないが、それでも相当な人数が拘束されている。

 

「これもグラスマンの考えか」

 

「よほど軽蔑されたくないらしいな」

 

武蔵を英雄視しているからこそ、武蔵が嫌悪感を抱くような軍人を切っているグラスマン。オペレーションSRWを妨害するような軍人は必要ないが、それが後の軋轢になるのではと言う不安がレイカーとダイテツにはあった。

 

「それでクスハ・ミズハ曹長が持ち帰ったUSBメモリの中身はどうだった」

 

「SRXの改良案、そしてホワイトスターの防衛網の薄い箇所、そして敵の能力についてのレポートだった」

 

救出されたクスハがテツヤに提出したUSBメモリ。それにはSRXの改良に必要な物、そしてオペレーションSRWに必要な情報が全て記されていた。そしてクスハの証言ではあるが、頭を抑え、苦悶の表情をしながらハガネとヒリュウ改に必要な物だと言ってイングラムに託されたのだ。

 

「イングラム少佐もまた犠牲者だったのだな」

 

「過去形にするには早い、リュウセイ曹長達はイングラム少佐を取り戻すと言っている。まだ取り戻すチャンスは残っている筈だ」

 

イングラム・プリスケンは裏切り者ではない、エアロゲイターによって洗脳されながらも自分達の手助けをしてくれた……それがハガネとヒリュウ改のクルーの共通の認識なのであった。

 

「しかし良かったのか? ハガネとヒリュウ改のクルーに休暇を与えて」

 

「息抜きも大事だ。ダイテツ、お前も少しばかり身体を休めて来い」

 

ヒリュウ改とハガネ、そしてクロガネがオペレーションSRWの戦力になる。そう判断したからこそ、レイカーはダイテツ含むハガネとヒリュウ改のクルーに2日の休暇を与えたのだ。

 

「戦の前に英気を養ってくれ」

 

「判った、それも命令と言うのだな」

 

「ああ、命令だよ。ダイテツ」

 

そう笑うレイカーに背を向け、ダイテツは司令室を後にするのだった……。

 

 

 

 

ダイテツとレイカーが最近起きた出来事の話し合いをしている頃、SRX計画のラボでは……ジョナサン達が話し合いを続けていた。

 

「ゲッター合金とゲッター線によって問題は何とか解決できそうか?」

 

「理論上は可能です、ですが私達にはゲッター合金とゲッター線を扱うノウハウがない」

 

マリオンとリシュウがビアンから託されたのは試作の粋は出ないがビアンが生成したゲッター合金だった。

 

「Rシリーズの変形機構は複雑だからな、今思えばよくあんな設計をしたものだ」

 

「作った本人にそんな涼しい顔で言われてもなぁ、これだけ集まっているのだからゲッター合金の加工方法くらい思いつかないのか」

 

「無理でしょう? ゲッター合金は生成だけではありません、加工も難しいのですから」

 

ジョナサン、ロブ、カーク、そしてコウキの4人はううーむと頭を抱え込む。SRXよりも複雑な変形を繰り返すゲッターロボ、その変形を支えているのはゲッター合金。ゲッター合金の加工さえ出来れば、SRXの合体における問題が全て解決する。

 

「装甲はともかくとして、関節にゲッター合金を使うのはどうでしょうか?」

 

「それが一番手っ取り早いか、問題は加工技術だ。柔軟性と強度に秀でたゲッター合金をどうやって加工するか……」

 

ゲッター合金で関節を作れば、SRX、そしてRシリーズは今までの機動兵器で類を見ない柔軟性と装甲を得るだろう。だがジョナサン達にはそれを加工するだけの技術、そして少量しかないゲッター合金で実験をするということに踏ん切りがつかないでいた。

 

「ロボット工学の天才達がそろいもそろって情けない話ですわね」

 

「これだから学者と言うのは頭でっかちで困るのだ」

 

SRX計画の地下ラボに本来ありえない2人組み……マリオンとラドラの2人が訪れた事にジョナサン達は驚いた。

 

「マリオン、ゲシュペンストのフライトユニットの方はいいのか?」

 

「ハガネとヒリュウ改に運び込まれたゲシュペンストの分は既に製造が終了しましたから、様子見に来たのです。それにしても何時まで答えの出ない討論を続けているのですか」

 

マリオンのきつい視線と言葉にジョナサン達は返す言葉もない。

 

「ゲッター合金は確かに稀少だ、そして加工も難しい。だが既にある程度の答えは出ているのだろう? コウキ」

 

「……まぁ、ある程度は」

 

「ならばそれを実行に移せば良い。机上の空論では何も変わらない、まず実行する事だ。そしてお前達は思い違いをしている」

 

思い違いと言うラドラの言葉に全員が苛立ちを隠せないでいた、未知の合金に自分達はベストを尽くしてきたと言う自負があったからだ。だがラドラはそんな様子のジョナサン達を見て更に鼻を鳴らす。

 

「1から生成しようとするのがまず間違いだ。ゲッター合金を溶解して、コーティングするだけでも相当な成果が出るのではないか?」

 

それはシンプルな助言だった。1から生成するのではない、少量のゲッター合金を融解し、それをパーツにコートするだけでも新西暦ではありえない柔軟性と強度を得ることは実験で判っていたからだ。

 

「どうせそんな事だろうと思い、今日、ここへ来たのはあなた方に新型サーボ・モーターをお渡しするためですわ」

 

「新型の……? それは君がゲシュペンストMK-Ⅲ用に開発していた物ではないか?」

 

マリオンが自主的に開発するのはゲシュペンストMKーⅢ以外ありえない、つまりマリオンの研究の成果であるそれを渡す。それはSRX計画と量産型ヒュッケバイン計画によって、追詰められているゲシュペンスト派のマリオンらしからぬ行動だ。

 

「ええ。私がゲシュペンストMk-III用に作っておいたものでしてよ。幸い、予備が複数ありますので、あなた方に差し上げますわ。あれを使えば、SRXの関節耐久度を上げることが出来ますわよ」

 

地下に搬入されてきた4つのコンテナ、その中にマリオンが開発したサーボ・モーターが収められている。それが判ったロブは思わず椅子から立ち上がり、マリオンに歩み寄った。

 

「で、では……SRXの合体可能回数も増えると?」

 

「それは貴方達次第です、大サービスで規格の方はすでに私の方で合わせておきましたが、ゲッター合金によるコーティングで更に合体回数を増やすのか、そのまま運用するのかはお任せします」

 

お任せしますと言っておきながら、その挑発するような視線にゲッター合金を使うのだろう? 使わないのならば持って帰ると言っているのが全員に判った。

 

「た、助かります! コウキ直ぐに準備をッ!」

 

「判っている、ゲッター合金の融解温度は極めて高い、それ相応の準備が必要だ。ジョナサン博士」

 

「言われなくても準備の為の打ち合わせは出来ている。スペースノア級の装甲を作る設備がある伊豆基地だぞ? 今は使われていないが特殊溶鉱炉がある」

 

今まで話が進まなかったゲッター合金の使用法が判ると同時に一気に地下ラボは慌しくなった。オペレーションSRWまで時間が無いのだ、その短時間でSRXをより強化できるとなれば戦力は爆発的に増大する。

 

「礼を言わせてもらう、マリオン、そしてラドラ博士」

 

自分達ではそこまで辿り着けなかったと頭を下げるカークにマリオンはそっぽを向きながら言葉を放つ。

 

「それには及びません。敵にスパイスを送ったまでですわ」

 

「それを言うなら塩だ、塩。それに俺とマリオン博士が手助けするのにも理由がある」

 

本来ならば協力するつもりは無かった、だがマリオンとラドラの気分を高揚させる事があったのだ。

 

「理由……なんですか? それは?」

 

「レイカー司令とノーマン少将によって再トライアウトが決まった」

 

「つまり、量産型ヒュッケバインの件は1度白紙に戻ったのですわ」

 

その言葉にはカークとジョナサンも目を丸くした、1度決まったトライアウトが白紙になるなんて事は今まで無かったからだ。思い当たる節は1つしかない、それに辿り着いたカークが声を上げた。

 

「ゲシュペンスト用のフライトユニットかッ!」

 

思い当たるのは1つしかなかった、ラドラ、ギリアム、カイの元教導隊3人が主導になって開発を進めたフライトユニット。その汎用性が軍上層部に認められたのだとジョナサンは思ったのだが、それだけではなかった。

 

「それとゲシュペンスト・リバイブですわ」

 

ゲシュペンストの優れた汎用性と拡張性、それがゲシュペンスト・リバイブとフライトユニットによって見直されたのだ。そしてそれによって2次まで終わっていたトライアウトがまたやり直しとなったのだ。ヒュッケバインはゲシュペンストよりも優れているのか? その点が疑問視された結果だった。

 

「あなたを助けるためではありませんわ、ハミル博士。SRX計画に集中していて、ヒュッケバインプロジェクトに集中できなかった。そんな言い訳を言わせない為の物です」

 

「判っている、だが次も私が勝つだけだ」

 

「いいえ、今度は私と、ゲシュペンストMK-Ⅲが勝ちます。オブザーバーにラドラ博士が付いてくれましたからね」

 

「あのリボルビングステーク、アレは良い。とても気に入った、だが威力が足りん」

 

……駄目な人とヤバイ人を組み合わせてしまった。それを悟ったジョナサン達は今度のトライアウトも駄目じゃないか? と思ったのだが、空気を読んでその事を口にすることは無いのだった……。

 

 

 

 

 

レイカーの命令によって休暇となっていたハガネとヒリュウ改のクルーは、オペレーションSRWの前の最後の休息と親睦会を兼ねてパーティを行っていた。

 

「YEAHッ! サンキュー、エブリバディッ!!」

 

食堂で歌っていたジャーダにパーティの参加者から拍手と賞賛の声が飛ぶ。

 

「良い声だったぜ、ジャーダッ!」

 

「パーティの余興程度に思っていたが、思ったより良かったぞッ!」

 

「「アンコールッ! アンコールッ!!!」」

 

ハガネとヒリュウ改のクルーだけではなく、半舷休暇や、休みの基地職員等も集まっていたからあちこちからアンコールの声が飛ぶ。

 

「へへ、どうもどうも。だけどアンコールは作戦成功後って事で!」

 

歌いたくて仕方ないと言う様子のジャーダだったが、次の出し物が迫っているので舞台の上からギターを抱えて降りる。

 

「ふ~ん、ジャーダって歌が上手いんだね」

 

パーティ会場で料理を摘んでいたリューネが近くに居たラトゥーニにそう声を掛ける。人見知りが改善されつつあるラトゥーニは少し驚いた素振りを見せたが、リューネの言葉に返事をしていた。

 

「……連邦軍に入る前はデビュー寸前まで行ってたって」

 

「納得。プロでも食べていけるよ、きっと」

 

素人の演奏ではなく、プロデビュー寸前だったと聞けばジャーダの歌声の良さも判る。今は軍人だが、それでもデビューする事を諦めず、まだ演奏をしているのだとリューネは今の演奏を聞いて感じていた。

 

「レディース・アンド・ジェントルメンッ! 今からこの箱に入って、あわれ串刺しとなる運命の美女は……」

 

食堂の明かりが1度消え、派手な服装をしたタスクがライトアップされながら食堂の入り口に手を向ける。その動きに合わせライトが動き、全員の視線がそちらに引き寄せられる。

 

「ガーネット・サンデイ少尉とエクセレン・ブロウニング少尉です! さあ、拍手拍手!!」

 

「ハーイ!」

 

「よろしくぅ!」

 

薄暗い通路から姿を見せたガーネットとエクセレン。それ自体は良かったのだが……その服装が問題だった。

 

「な、何だ、あの格好!?」

 

「バニーガールだな、知らないのか?」

 

「いや、そりゃ見れば判るけどよ……なんでキョウスケ少尉はそんなに冷静なんだッ!?」

 

「事前に聞いていたからな」

 

慌てるリュウセイとどこかズレているキョウスケ。しかし、それに対して食堂の中のボルテージは異常に上がっていた。絶世の美女2人がバニーガール姿で現れたのだ、それに盛り上がらない訳が無い。

 

「いよっ、ご両人! 待ってたぜ!」

 

イルムの声がきっかけであちこちから、バニーガールの姿をしているエクセレンとガーネットに賞賛の声が上がる。

 

「しょ、少尉! そんな格好で恥ずかしくないんですかッ!?」

 

舞台に立つまでに手を振りながら歩くエクセレンとガーネットに真面目なブリットが恥ずかしくないんですかと言う。だがそれはガーネットとエクセレンの加虐心を煽る事になってしまった。

 

「とか何とか言っちゃって……どこ見てんの、ブリット君?」

 

「あらあら、坊やにはちょっと目の毒だったかしら?」

 

余裕綽々という感じで胸元を強調するエクセレンとガーネットにブリットは目を白黒させながら目を背ける。

 

「か、かかか、からかわないで下さいっ!」

 

「目の毒っていうより、気の毒だな」

 

苛められているブリットを見て、マサキがそう呟きながら2人から目を逸らす。

 

「おーラトゥーニ、これうめえなあ」

 

「……ガーネットが作った奴」

 

「そうなのか、うん。美味い美味い」

 

バニーガール姿の2人に目もくれず、料理を食べているリュウセイにほっとした表情のラトゥーニと目があったマサキはまた目を逸らす。上手く言えないが、凄く気まずい気分になってしまったからだ。

 

「おーい、マサキも食べなよ。美味しいよ」

 

「お、おう。今行く」

 

リューネの自分を呼ぶ声にこれ幸いとその場を後にするマサキだが、そこでもそこでリューネと2人と言う事で周りの視線が鋭くて、妙に気まずい感じになってしまっていた。

 

「ブリット君、大丈夫? 鼻血が出てるけど…」

 

「う……。そ、それより、キョウスケ中尉! いいんですか!?」

 

クスハにティッシュを差し出され、それを受け取った物の……意中の少女を前に別の女性を見て鼻血を出した事にブリットは顔を蒼白にさせながら、エクセレンのストッパーであるキョウスケに良いんですかと詰め寄った。だが、キョウスケは我関せずという感じで料理を口に運んでいた。

 

「……止めてどうなるものでもない。好きにやらせておけ」

 

諦めの色が強いキョウスケの言葉にブリットは何も言う事が出来ず、ガーネットに色目を向けられている事を我慢していたジャーダの怒声が飛んだ。

 

「タスク! いいから先進めろ、先!」

 

このまま自分の恋人を飢えた男に見せるつもりは無いと言わんばかりのジャーダの怒声にタスクは自らの特技であるマジックを進めていく。

 

「さあ、みなさん。料理はまだ沢山ありますから、どんどん食べて下さいね!」

 

「……美味しい。一流シェフ顔負けだよ、リオ」

 

「ああ、大したものだな」

 

タスクのマジックを見ながらハガネとヒリュウ改の女性陣の料理を口にしていたリョウトとライはその味に舌鼓を打つ。

 

「ライ少尉にそう言ってもらえると自信が持てます。これもどうぞ」

 

「私とユンで作った特製トドクカリーよ。お試しあれ」

 

インドのカレーを勧められ、断るのもなんだとライはその皿を受け取った。

 

「では、頂きます…………うッ!?」

 

カレーを口に運んで停止したライにリョウトが慌てた様子で駆け寄る。

 

「ど、どうしたんですか、ライ少尉!?」

 

「……す、すまない、水を……」

 

水をくれと言うライの言葉にリョウトが水を差し出す前に、アヤがジュースを差し出す。

 

「水よりもフルーツジュースの方がマシよ?」

 

「あ、ありがとうございます。大尉」

 

フルーツジュースで一息ついたライ、そんなライを見てラーダはくすくすと笑う。

 

「あら……? やっぱり、普通の人には辛すぎたかしら?」

 

「普通って……。人を実験台にすんなよな、ラッセルもちゃんと止めとけ」

 

「い、いえ、中尉。確かに料理は手伝いましたが、女性陣のほうには行ってませんよ」

 

普通は逆だろというやり取りをするカチーナとラッセル。料理が出来るクルーの募集で何故かラッセルが来て、女性陣は驚いていたが、カチーナの命令でと聞いて、ああっとどこか納得した表情をしていたのは内緒だ。

 

「インドと韓国のコラボレーションじゃ、辛いのは当たり前だよね……」

 

ラーダとユン、インド人と韓国人の作ったカレーならば辛いのは当たり前だと思い、リョウトは手にしていたカレーをそっと元の机の上に戻した。

 

「ちょ、ちょっと、タスク! 串が刺さってる、刺さってるって!」

 

「あれ? おかしいな……少尉、太ったんじゃないスか?」

 

女性陣を敵に回す一言を何気なく口にしたタスク、回りにいる女性陣に睨まれているのに気づかず、おかしいなあと首を傾げる。

 

「ねえ、タスク。刺す串を間違ってるんじゃない?」

 

「あ、ホントだ。これ、仕掛けがない方だった……」

 

リューネの一言で仕掛けが無い串を刺していた事に気付いたタスクに周りからは呆れムードが広がっていく。

 

「やれやれ、とんだオチだぜ」

 

「んもう、しょうがないわねぇ。せっかく、こんな格好までしたのに………じゃ、ガーネット。第二ステージに行っとく? 後、タスク後で殴るからね、乙女に太ってるとか覚悟しておきなさいよ」

 

「オッケー! そっちが本命だもんね!」

 

指された場所を摩りながら食堂を出て行くエクセレンとガーネット。だがタスクは出て行く前にエクセレンに言われた言葉に顔を青くさせ、手を合わせて拝むように何度も頭を下げていた。

 

「はぁ……失敗した。所で誰かレオナがどこにいるか知らねえか?」

 

パーティが始まってから1度も姿を見せないレオナの事を尋ねるタスク、だが男性陣は勿論。回りも見ていないと返事をする。そんな中、アヤがジュースのグラスを手にしながらレオナの場所をタスクに教える。

 

「あの子、調理場にいるわよ。ずっと1人で料理を作ってるみたい」

 

「ニャんか、怪しげニャ匂いがしてたけど……大丈夫かニャ?」

 

「そうねえ、クスハの例もあるし。でも、レオナなら……」

 

なんでもそつなくこなすレオナなら料理も大丈夫だろうという雰囲気の中、顔を顰めたレオナが食堂に入ってきた。

 

「お、来た来た。俺、レオナの料理を楽しみにしてたんだぜ。んじゃ、頂きまーす!」

 

レオナの制止の声を無視し料理を口に運んだタスクは目を白黒させ、顔を青くさせながらその場に倒れこんだ。

 

「……ご、ごめんなさい……実は私、料理が全然駄目で……」

 

「そ、そうだったの……ごめんなさい、無理に誘ってしまって」

 

「い、いえ。私も最初に言うべきでした」

 

なんでもそつなくこなすレオナの弱点が発覚する等、騒がしくも明るい中伊豆基地ではパーティが進む、それはオペレーションSRWを前にした不安を払拭しようとしているように思えるほどの明るさと騒ぎようだった。

 

「リュウセイ、どうしたの? 考え事?」

 

「あ、ああ……武蔵、今頃何をしてるかなあって思ってさ」

 

「武蔵なら元気でやってると思うけど……」

 

「俺もそう思うけどさ、やっぱり心配になるよな」

 

「う、うん。そうだね」

 

「オペレーションSRWが終わったら、今度は武蔵も入れてぱーっとパーティしたいな」

 

リュウセイとラトゥーニはそんな話をしながら並んで座って食事を進める、勿論リュウセイとラトゥーニも気付く事はなかったが、パーティ会場に居る全員はそんな2人の様子を微笑ましそうに見ていたのだった……

 

 

 

 

一方、その頃クロガネと行動を共にする武蔵はある国へと向かっていた。

 

「リクセント公国ですか?」

 

「そうだ。ジュネーブ近くの国と言うこともあり、エアロゲイターの攻撃で被害を受けているだろうから、1度様子を見に行きたい」

 

ビアンの決定に武蔵を含め、全員が反対する事は無かったが、何故? と言う考えが全員の頭を過ぎったのは言うまでも無い。

 

「リクセント公国はEOTI機関時代に色々と便宜を図ってもらった事もある、それにだ。武蔵君の無罪を主張し、国際会議で発言したシャイン皇女に一度くらい会っておくべきだろう?」

 

「あれ? お姫様オイラの事覚えていたんですね」

 

覚えてないと思ってましたと笑う武蔵だが、あれだけ衝撃的な体験をしたのだ。如何に幼いと言っても……いや、むしろ幼いからこそその記憶は鮮烈にシャインの脳裏に焼きついていたのだろう。

 

「シャイン皇女に武蔵君の無罪の証明の感謝を告げに行くのですね」

 

「ああ、それもあるが……リクセント公国に気をつけろとシラカワ博士が言っていたのでな」

 

本当ならビアンはリクセント公国に向かう予定は無かった、蜂ロボの自爆で南極の海に落ちたゲッターGを回収するのを見届けるつもりだった。だがシュウがリクセント公国に向かうべきでしょう、大変な事になる前にねと告げて姿を消した。それを聞いて、ビアン達は南極を後にしてリクセント公国に急行する事を決めたのだ。

 

「何かあると見て間違いないですね」

 

「ああ。エアロゲイターが襲うには旨みが無い国だ。だからこそ、私はリクセント公国に向かう事にした」

 

金山で発展している国だが、言い換えればそれ以上の旨みは無い。異星人であるエアロゲイターが襲うには、余りにも条件が弱い。

 

「考えられるのは……恐竜帝国か」

 

「生き残りがいるのは間違いないからな」

 

最近噂になっているUMA。だがそれはまず間違いなく、恐竜帝国の生き残りだろう。アイドネウス島で大半が全滅したが、生き残りが居てもおかしくは無いのだ。

 

「エルザム少佐とゼンガー少佐で先行してくれ、近くにクロガネを着陸させる」

 

まずは様子見で少数が上陸、その後に武蔵とビアンがシャインへの謁見を求めるという流れで話は進んでいた……だが物事とは思いとおりになる事は少ない、そして今回もビアンの思い通りにはならなかった。

 

「どうした!? 何事だ」

 

突然クロガネのブリッジに鳴り響いた警報、だがそれは通常の警報ではない。ゲッター線レーダーに反応したそれは……「通常」の存在ではない。

 

「熱源が多数リクセント公国に向かっていますッ! 識別照合……アンノウンですッ! 生体反応もあることからメカザウルスと推測ッ!」

 

リリーの報告を聞いて、武蔵が弾かれたようにブリッジを飛び出す。

 

「武蔵君!「先に行きますッ! ビアンさん達は後で合流してくださいッ!!」

 

ビアンが静止の言葉を口にする前に武蔵はそう叫び格納庫へと駆けて行く。メカザウルスが出たと聞いて、武蔵が止まっていられる訳が無い。しかもそれが自分の無罪を証明する為に尽力してくれたシャインの危機となれば武蔵が止まっていられる訳が無かった。

 

『ビアン総帥! 武蔵が出撃しようと――どうすれば良いんですか!』

 

「出撃許可は出している! その後ゲッターV、零式・改、トロンベ・カスタムも出る! 出撃準備を急げッ! クロガネ機関全速ッ! リクセント公国に向かうぞッ!」

 

クロガネはリクセント公国へと向かう、そこに待ち構えているのがメカザウルスだけではないと言う事を知らずに……。

 

 

 

 

第70話 リクセント公国 その2へ続く

 

 




マリオネットソルジャーは恐竜帝国も加え、リクセント公国でベリーハードでお送りします。もしかするとアストラナガンも出るよ?
シャイン皇女の王子様が武蔵で固定される。そんな素敵なイベントにしたいですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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