進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第71話 リクセント公国 その3

第71話 リクセント公国 その3

 

メカザウルスとの戦いが終わる間もなく、現れたエアロゲイターの襲撃。メカザウルスはゲッターロボとゲッターVを狙っているが、エアロゲイターはそうではない。真っ直ぐにリクセント公国に進む姿にキョウスケの怒声が響いた。

 

『メカザウルスは武蔵達に任せる、俺達はリクセント公国を護るぞッ! エアロゲイターの機体を街の中に入れるなッ!!』

 

言うが早くソルジャーの顔面にリボルンビステークを叩き込み、頭を吹き飛ばすアルトアイゼンは振り返ると同時に、スクエアクレイモアを放ち、突撃しようとしていたソルジャーの動きを止めると逆に自身がソルジャーの隊列の中へと飛び込みリボルビングステークを振るっている。

 

「こりゃ厳しい戦いになるな、上空の敵に気をつけろ。それと転移による増援にもだッ!」

 

グルンガストの中でぼやいたイルム。だがぼやきたくなるのも当然だ、並みのPTと特機では相手に出来ないメカザウルスの群れ、そして転移で死角から強襲を仕掛けてくるエアロゲイター。そしてリクセント公国の住民はまだ避難が間に合っていない、絶望的な状況ではあるが泣き言を言っている間も無い。

 

「マサキとラトゥーニは私と一緒にバグスを迎撃するわよ。リュウセイ、ライ、ソルジャーとファットマンは任せたわよッ!」

 

「俺達もすぐに周りを片付けて合流するッ!」

 

「気をつけてね、リュウセイ」

 

空を飛べるR-3、サイバスター、ビルドラプターは即座に上空に舞い上がり、リクセント公国の上に降下する前にバグスの撃墜を始める。

 

「リュウセイ、僕は皆のバックアップに入るね」

 

「数が少ないうちに叩くわよッ! リュウセイ、ライッ!!」

 

バグスとソルジャーの両方に対応出来る位置にアーマリオンが浮遊し、フォワードはR-1とヒュッケバイン009とグルンガスト、バックスはアーマリオンとR-2パワード、そしてセンターは伊豆基地での製造分が間に合った量産型ゲシュペンスト・Fが務めるフォーメーションだ。

 

「ジャーダ、無理すんなよ」

 

「大丈夫ですよ中尉。ガーネットの分も頑張りますって」

 

飲酒していたのはエクセレンだけではなく、ガーネットもだ。ダイテツは飲酒する寸前での警報だったので酒は口にしていないのが不幸中の幸いだった。

 

「ちなみに中尉、ヒリュウ改の応援は?」

 

「残念ながら無しだ、日本にもエアロゲイターが出現してるからそっちの対応に回ってる」

 

部隊を2つに分けたレイカーの判断は紛れも無く英断だった。これでヒリュウ改もリクセント公国に来ていれば、日本はエアロゲイターによって甚大な被害を受けていた筈だからだ。

 

「さてとおしゃべりは此処までだ、リュウセイ、リオ続けッ!!」

 

「「了解ッ!」」

 

グルンガストを先頭にして両脇にR-1、ヒュッケバイン009を連れてイルムは無機質にリクセント公国への侵攻を続けるソルジャーに向かってブーストナックルを放つのだった。

 

 

 

 

リクセント公国を包囲するようにエアロゲイターの部隊が展開され、メカザウルスとエアロゲイターの部隊に挟まれるようにしてゲッターロボ達は戦っていた。

 

「ラドラ、メカザウルスの炉心摘出は任せてもいいか?」

 

「了解した、その代り支援を頼むぞ」

 

メカザウルスは数は10体ほどだがその何れも健在だ。勿論ゲッターならば撃破は可能だった、だがメカザウルスが健在なのはリクセント公国の防衛を武蔵達が最優先にしたからだ。

 

「ゼンガー、エルザム。メカザウルスに関してだが、炉心を摘出したい。データを送るから炉心部への攻撃は避けてくれ」

 

接触通信でゼンガーとエルザムにメカザウルスとの戦いで注意して欲しい点を送るラドラ。

 

「ヒャーハハハアアッ! 今度は俺が勝つぜえッ!!」

 

「ちいっ! ビアンさん! メカザウルスはお願いします」

 

「任されたッ!! ディバイン・グレイブッ!!」

 

メカザウルスの群れに混ざって量産型ドラゴンが襲ってきては劣勢に追い込まれると判断し、武蔵はメカザウルスへの対応をビアンとゼンガー達に任せ、ゲーザの駆る量産型ドラゴンと数体のメカザウルス・バド、そしてバグスを相手にする為に空中へと舞い上がる。

 

「さてと、ラドラ君だったかな。随分と面白い話をしていたが……どうすればいいのかな?」

 

グレイブを振るい、メカザウルスを弾き飛ばしたゲッターVがラドラに広域通信を繋げる。ラドラはやれやれと肩を竦めながら、ビアンにもメカザウルスの炉心の摘出方法を伝える。

 

「なるほど、ゲシュペンストが飛んでいるのには驚いたが……メカザウルスの動力を使うとは面白い」

 

研究者としての感性が刺激されたのかゲッターVのコックピットでビアンは獰猛に笑い、頭部が鶏冠状になっているメカザウルスギンに向かってゲッターVを走らせる。

 

「ラドラ、余りビアン総帥を刺激しないでくれ、ゲッター合金とゲッター炉心の解析で徹夜続きなのだから」

 

「そんな物は知らん、メカザウルスの炉心を利用するつもりなのに壊されては叶わんからな」

 

あくまでラドラはビアンの研究意欲を刺激したのではないと告げる。あくまで、メカザウルスの炉心を摘出する選択をしたのは、ゲシュペンスト・リバイブの量産。もしくは新型のPTを開発する為だ、その話を聞いてビアンがヒートアップするかどうかは自分の責任では無いと告げ、シグの両手首から展開したビームクローを油断無く構え、地面を蹴って今にも走り出しそうなザイと対峙する。

 

「仕方あるまい、だが戦力強化にメカザウルスの炉心が必要だというのならば、それを回収することもやむなし。トロンベよ、今が駆け抜ける時ッ!!」

 

ヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプGにはゲッター合金による改造によって、今までの機体では不可能だった新機能が多数搭載されている。例えば、ゲッター線フィールドや、ゲッター合金による強固な防御能力。だがそれとは別に非常に面白い、そしてエルザムの性格を十全に理解したビアンの遊び心が付与されていた。

 

「高機動モード起動、各部変形開始」

 

肩部パーツ、膝、腰部のパーツが展開し、そこから水晶体のようなパーツが姿を見せる。これは本来ゲッター線フィールドを展開する為の物だが、高機動モードとなると話は違う。本来は防御時に放出されるエネルギーの指向性を変え、その加速力と機動力を大幅に強化する。

 

「行くぞッ!!」

 

メカザウルスからすれば突然目の前の機体が消えたようにしか感じなかっただろう、次の瞬間自身の目に走る激痛に苦悶の雄叫びを上げるが、口を空けた瞬間。口の中に熱の塊が飛び込んできてただでさえ混乱しているメカザウルスの電子頭脳はオーバーヒート寸前だった。

 

「キシャアアアアッ!!」

 

「遅いッ!!」

 

黒い影に腕を振るうがそれよりも早く黒い影が回転したと思った瞬間、メカザウルス――メカザウルスゼンⅡの腕は肩から切り飛ばされる

 

「ギッ!?」

 

腕を切り落とされた事に激しい怒りを見せるゼンⅡだが、その怒りに染められた瞳が黒い影……トロンベ・カスタムを捉えることは無かった。何故ならば目の前に広がる光の雨、その雨を認識すると同時にゼンⅡの頭は吹き飛ばされ、地響きを立ててゼンⅡは森の中に倒れこんだからだ……。

 

「かなり反動がきついと聞いていたが、それほどでも無いな」

 

リミット15秒を残しトロンベ・カスタムは高機動モードを解除する。1分以上高機動モードを維持すればオーバーヒートしてしまう、そう説明を受けていたので1分以内にメカザウルスを沈める事が出来るかとエルザムは不安に感じていたが思ったよりも楽に沈める事が出来た。

 

「次だな、今の内にこの機体に慣れておくとしよう」

 

高機動モードはさほど大きな負担ではなかった、では今度は南極で試す事が出来なかった他の武装を試そうとするエルザム。自身ではさほどの負担ではないと考えていた様子だが、そうではない。ゲッターロボ、強いてはジャガー号の加速に慣れてしまっていたエルザムには、常人ならば気絶し、骨折してもおかしくない重力を負担として感じることが出来ないのであった。

 

「むんッ!!」

 

ゼンガーも負けじと改良された斬艦刀を振るう、メカザウルスの炉心を摘出するという事で派手な技を使う事は無いが堅実な動きでメカザウルスの首を刎ね、両足に新しく搭載されたブースターとテスラドライブを併用したバランサーで高速で戦場を駆ける。

 

「……面白くない、ああ、全く持って面白くない」

 

「ラドラ? どうした?」

 

囁くような声だったが、ギリアムにはその声が聞こえていた。だがラドラはその言葉に返事を返す事無く、複合兵装ファブニールを構えさせる。

 

「ラドラ!?」

 

「俺の作ったゲシュペンストが劣っているなどと言う事は認めんッ!!」

 

科学者であり、パイロット、それがラドラである。ゲッターロボに負ける事は判る、だがビアンがゲッター線を分析し、それを応用したグルンガスト零式・改、そしてトロンべ・タイプGに負けるのはラドラのプライドが許さなかった。

 

「リミッター解除、ファブニール最大出力」

 

メカザウルスモードの脚部に変形させ、地面に爪を立てることでファブニールの膨大な出力に耐える。

 

「ゼンガー! エルザム! 離れろッ! ラドラが切れてるッ!」

 

ギリアムの叫びにギョッとした表情をしたゼンガーとエルザムは即座に離脱する。ラドラと言う男の本質は高潔な武人ではある、だがそれと同時に科学者なのだ。自分の開発した物、自分が心血を注いだ物が侮辱される事を極めて嫌う。そして今回はグルンガスト零式・改、そしてヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプGに劣っている事を認めない……正確には1度ゲシュペンストではなく、ヒュッケバインがトライアウトに合格した事にラドラは多大な憤りを感じていた。目の前でエルザムが高機動モードになってメカザウルスを一蹴した事に今まで溜まっていた鬱憤が爆発し、ナイトへの反マグマプラズマジェネレーターと核融合エンジンのダブルエンジンをフルパワーにしたファブニールの一撃を打ち込もうとした。だがその時、ラドラ達は見た、ナイトの肩を竦めるような動作を……

 

「な!? あの動きは」

 

「まさか……!?」

 

他の者ならば挑発しているようにしか思えなかっただろう、だが教導隊ならば話は違う。あの動きは些細な事で揉め事を起こしていたゼンガー達を窘める時のカーウァイ・ラウの動きに酷似していた。

 

「ちいっ!」

 

舌打ちと共に放たれたファブニールの破壊光線は真っ直ぐにナイトへと向かう。タイミングは必中の間合いだった、だがナイトは信じられない動きをした。ファブニールの膨大な光線に自らもビームを放ち、ビーム同士の干渉で生まれた僅かな隙をスライディングの要領で回避した。

 

「エルザム! あの動きは!」

 

「ああッ……間違いない」

 

あの細かい機体の操作の癖、そして今の神業とも言える操縦テクニック……。

 

「説明は後だ、ゼンガー、エルザム」

 

「今回ばかりは私達の最悪の予想が当たってしまったようだ」

 

「……判った、だが、この戦いが終わったら説明して貰うぞ」

 

「おおよその予想は付いているがな」

 

言葉にしなくてもゼンガー、エルザム、ラドラ、そしてギリアム。仮にこの場にカイもいたら気付いていだろう……元々灰色のナイトの動きに教導隊全員が見覚えがあった、だがそれはまだもしかしたらと希望もあった。だが今の動きで理解してしまった――あのナイトに乗っているのは行方不明となっている教導隊隊長「カーウァイ・ラウ」大佐だと……。

 

「ゲシュ……ペン……スト……」

 

ナイトの中でガルインは視点の合わない瞳で懐かしそうに、ゲシュペンストを見つめているのだった……。

 

 

 

 

 

 

南極での戦いではビアンは思うようにゲッターVを操る事が出来なかった。その理由は間違いなくオメガ・グラビトンウェーブで1度機体がオーバーヒートしてしまったのが原因なのは言うまでも無い。

 

「ふむ、良い調子だ」

 

回避するでもない、防御するでもない。ただ立っているだけで敵の攻撃は弾かれ爆発する、湾曲フィールドとゲッター線バリアの複合によって作られる強固なエネルギー障壁はメカザウルスの一撃であっても完全に防ぐ事が可能だった。

 

(しかしこれに頼りすぎるのも問題か)

 

ゲッター炉心によってエネルギーは回復する物の、それに頼りきっていてはエネルギー切れを起こすのは明白。バリアによって攻撃が弾かれ姿勢を崩したメカザウルスの首をディバイン・グレイブを横薙ぎし、一刀の元に断ち切る。

 

(どんなエネルギーなのか楽しみだ)

 

ラドラが言っていたマグマ原子炉、それがどんなエネルギーを持つのか、ゲッター炉心と比べるとどれほどのエネルギーの差異があるのか? ビアンの興味はゲッターVの試運転からマグマ原子炉に変わっていた。それでも、勿論リクセント公国を護る事は忘れていない。

 

「ターゲットマルチロック、ミサイルランチャー射出ッ!」

 

ゲッターVの素体となった新ゲッターロボ自身は旧西暦の機体であり、当然マルチロックシステムなど搭載されていない。更に言えば、長い間地下に保管されていたとは言え、その状態は決して良好な物ではない。そこでビアンはゲッターロボの最大の特徴である分離・合体機構を封印し、上から武装付きの装甲を装備する事で変形できないデメリットを回避する事を考えた。展開されたミサイルポッドから飛び出したミサイルの嵐が武蔵の妨害をしていたバグスやバードを撃墜する。

 

「ぬんッ!!」

 

「ギギャァッ!?」

 

そしてミサイルを乱射しながら手にしているディバイングレイブを火球を放とうとしていたメカザウルスの口目掛けて全力で投擲する。鋭い刃に貫かれ、そのまま山に磔になるメカザウルスは暫くもがいていたがやがて事切れ、その手がだらしなく地面に落ちる。

 

「ハガネのPT隊の諸君、その場を急いで離脱したまえ」

 

広域通信での一方的な通信の後ゲッターVはマントの裾を掴み全身を包み込むように身体に巻きつける。

 

「各員離脱ッ!」

 

そしてその動きはタクラマカン砂漠でも見ていた、マントの下でゲッタービームを乱反射させ、広範囲のゲッタービーム攻撃。4つの複眼からなるカメラアイを光らせ、凄まじい速度で上空を舞うゲッターVのマントの間から飛び出したゲッタービームがバグスとバード、そしてメカザウルスバドを容赦なく撃墜していく。

 

「随分と強引だな、ビアンのおっさんよ」

 

「ふふふ、なに、ゲッターVの試運転だよ。マサキ・アンドー、自分の機体がどんなものか知っておく必要がある。それに……こうすれば他のメンバーの支援も楽だろう?」

 

空中を飛べる機体が必死に応戦していたがバードやバグスの数は多く、そこにメカザウルスも加われば、苦戦は必須だった。だがゲッターVのスパイラルゲッタービームによって1度一掃されたことによりマサキやアヤは地上でソルジャーやファットマンと戦っているリュウセイ達と合流できる。

 

「ビアン博士、空中はお任せして良いと思ってもよろしいですか?」

 

「ああ、それで構わないよ。早く合流したまえ、それに感じている筈だ」

 

「……はい、ありがとうございます。今は共闘出来る事に感謝します」

 

アヤはビアンにそう感謝の言葉を告げ、マサキとラトゥーニと共に地上へ降下していく、その姿を見ながらビアンは視線を上空に向ける。

 

「流石にあのスピードにはついていけん」

 

空中で何度も交差するゲッターロボと量産型ドラゴンの姿を見て、自分では武蔵の支援は出来ないと判断しナイトとメカザウルスと戦っているゼンガー達、そしてソルジャーやファットマンと戦っているハガネのPT隊の両方の支援を行いながら、戦闘記録の保存を行う事にした。

 

(妙な感じだ)

 

さきほどアヤにも言ったが、妙な胸騒ぎ……何か大きな出来事が起きる。何かの前触れをビアンは感じ取っていたのだった……

 

「ちいっ! 前よりも早くなってやがるッ!!」

 

「ヒャーハハハッ! 何時までもお前にてこずるわけねえだろッ!!」

 

量産型ドラゴン、そしてゲッターロボの機体性能はドラゴンがゲッターロボを上回り、そして操縦テクニックは武蔵が上回る。完全に五分の戦いになりつつあったが、悔しい事に僅かに武蔵が押され始めていた。それは機体性能の差でも無い、勿論操縦の腕の違いでもない。

 

「てめえ! オイラを倒したいならオイラだけを狙えッ!!」

 

「馬鹿かッ! 街を狙えば、てめえから当たりに来てくれる。こんな楽な事はねえぜッ!!」

 

ドラゴン……即ちゲーザは機体性能が強化されたはずなのに、それでも武蔵に上を抜かれている事に気付き、あろうことかゲッターロボではなく街を狙い始めたのだ。

 

「ぐっ、くそったれッ!!」

 

ダブルトマホークの質量が街に叩きつけられればどうなるかなんて火を見るよりも明らかだ、更に言えばビームが当たればどうなるかなんて言うまでも無い。必然的に防戦に追い込まれた武蔵にゲーザは好きなように攻撃を繰り出す。

 

「そらそらそらッ!!」

 

「くっ!!」

 

普通に戦っている分にはまだ良い、だが不意打ち的に街を狙われれば対応が遅れる分ゲッターを盾にするしかない、ダメージが徐々に蓄積していく。

 

「なっ!?」

 

「ヒャーハハハッ! てめえの苦労も無駄だったなあ」

 

背後から抱きついて来たライガー、単独転移でゲッターの動きを封じたライガーはそのまま自爆しゲッターはドラゴンから大きく弾き飛ばされる。そしてその隙にドラゴンが急降下し、リクセント公国をビームで焼き払おうとした時――それは現れた。

 

「なっ!?」

 

「……」

 

空間を引き裂くようにして現れたアストラナガン、その手に握られた剣が振るわれドラゴンは上空へと吹き飛ばされる。ゲッターが待ち構える上空にだ……

 

「よお、随分好き勝手してくれたなあ、くたばれッ! ゲッタービィィーームッ!!!」

 

「ひっ!? ガアアアアアアッ! くそくそくそッ!! 覚えてやがれッ!!!」

 

弾き飛ばされたドラゴンはゲッタービームに焼かれながら、転移でその場を離脱する。だが状況は何も変わっていない、新たに現れたアストラナガン……武蔵以外の全員がアストラナガンを敵と定めていた。

 

「……」

 

「ここであったが百年目ッ!! 教官を返して貰うぞッ!!」

 

逃がさないとR-1がアストラナガンに突撃し、拳を蹴りを叩き込むが児戯と言わんばかりにアストラナガンはR-1の攻撃を受け流し、あるいは防ぎ、そしてお前に用は無いと言わんばかりに一瞥し翼を広げてその場で回転する事でR-1を大きく弾き飛ばす

 

「リュウセイッ!」

 

「うっ……ぐぐ……くそッ! 駄目だッ!」

 

虫を振り払うような無造作な一撃、その一撃でR-1の駆動系は破壊されR-1は再び立ち上がることが出来ず、そのカメラアイから光が消えた。

 

「ハイゾルランチャ……ぐっ!? 何が……ぐおっ!?」

 

「嘘ッ!? ブーステッドライフルの直撃なのにッ!?」

 

ハイゾルランチャーを放とうとしたRー2パワードは攻撃を放つ前にガン・ファミリアで吹き飛ばされ、直撃したはずの音速の弾頭もアストラナガンのバリアに阻まれ無効化される。

 

「計都羅喉剣・暗……マジか……ぐおおおおおッ!?!?」

 

「中尉ッ!?」

 

上空から飛び上がったグルンガストの一撃を片手で防ぎ、計都羅喉剣を握りつぶすことで破壊し回し蹴りでグルンガストを海へ叩き込み、ついでだと言わんばかりにへし折った計都羅喉剣をアーマリオンに投げ付ける。アーマリオンはその衝撃に弾き飛ばされた物のすぐに姿勢を立て直した。

 

「リョウト! 中尉のフォローに回れッ!」

 

キョウスケがリョウトにそう指示を飛ばし、最大加速でアストラナガンへとリボルビングステークを突き出すが……。

 

「馬鹿なッ!?」

 

アストラナガンは無造作に腕を伸ばし、アルトアイゼンの肩を抑えるとそれだけで完全にアルトアイゼンの動きを止め、そのまま右腕を肩から引き千切る

 

「ぐうっ……やはりアルトアイゼンでは……ぐうっ!?」

 

引きちぎった腕でアルトアイゼンを殴り飛ばしたアストラナガンはその右腕を無造作に投げ捨て、もう興味は無いと言わんばかりに背を向けて現れた時と同じ様に空中に魔法陣を作り出し、ゆっくりと上空に舞い上がる。

 

「……」

 

消え去る瞬間に置き土産と言わんばかりにハガネ、そしてそのPT隊は勿論エアロゲイター、メカザウルスに向かって翼から漆黒の重力弾を撒き散らし、その全てを破壊し尽くしたアストラナガンは一際大きく翼を広げた。

 

「……助かった。すまなかったな、イングラムさん」

 

『フフフ、貸し1だぞ』

 

イングラムが正気で助けに来たと判っていた武蔵の感謝の呟きにイングラムは極秘通信で連絡を繋ぎ、魔法陣の中に消え去っていくのだった……。

 

 

 

 

 

ブラックエンジェルの強襲によって、リクセント公国での戦いは強引に幕引きとなった。ダイテツは艦長席の背もたれに深く腰掛け、ため息を吐いた。

 

「大尉。被害状況は」

 

「PT隊は損傷軽微から小破です、パイロットに負傷者はいません」

 

その報告を聞いてダイテツは眉を寄せる、以前の戦いにおいてブラックエンジェルはその圧倒的な戦闘力によってハガネとヒリュウ改のPTを殆ど大破させた。それだけの力を持つ機体がハガネにもPT隊にも大きな被害を与えず撤退して行った。

 

(……何がしたい、ブラックエンジェル)

 

戦況を掻き回すだけ掻き回した後は姿を消した。そして無作為に暴れた姿を見れば暴走していると考えれば辻褄は合う――だが暴走しているならば、もっと大きな被害が出ていてもおかしくは無い。

 

「全機に帰還命令を、負傷者には手を貸すようにと伝えてくれ」

 

テツヤが帰還命令を出す姿を見ながらダイテツは考えを進める。敵味方関係なしに暴れたように見えるが、エアロゲイター、メカザウルス側の被害が圧倒的に大きく、こちらの被害は少ない。それがどうしても、ダイテツには気になっていた。

 

(イングラム少佐……か)

 

ブラックエンジェルに取り込まれた事でイングラムが死んだのか、それとも取り込まれた状態なのかは今だ判っていない。だがもしも、もしもだ。取り込まれた事によって自我を取り戻し、何かを成そうとしているのならば――今の戦闘の説明が付く。

 

「助けに来た……か」

 

「何か言いましたか?」

 

馬鹿らしいと思いながらも呟いた言葉にテツヤが顔を上げるのでなんでもないと返事を返す。

 

「ビアン。今回はそのまま去るなんて真似はさせんぞ」

 

『そうしたいのは山々だが、そうも言ってられん。なんせ……マグマ原子炉なんて胸踊る物を前にして去れるか!」

 

ビアンからの返事にダイテツは頭痛を感じながらも、このまま武蔵達がリクセント公国から去らない事に安堵した――次の瞬間までは……。

 

「リクセント公国より、会談の場もしくは休憩をするのならば場所を提供するので、武蔵を逃がさないでくれと通達です」

 

その言葉にダイテツはもう1度深くため息を吐き、エアロゲイターとメカザウルスの出現さえなければ酒を飲んでいたことを思い、そしてリクセント公国と言うよりかは、シャインの要請を思い酷く疲れた気持ちになった。

 

「大尉、クロガネに文書による連絡を、ワシはレイカーに少しの間リクセント公国に留まると連絡をしてくる」

 

「……了解です」

 

ダイテツが感じている気疲れをテツヤも感じているのか渋い顔をしながら、クロガネへリクセント公国への要求を伝える。

 

『おーい! イルムさん、大丈夫かぁ!!』

 

『悪い武蔵ー、早く引っ張り上げてくれ。動力系が逝かれて動けん』

 

『了解でーす、少し揺れますけど我慢してくださいねー』

 

ゲッター3が海中からグルンガストを引き上げる姿を見ながら、城の中で武蔵と出会うのを今か今かと待っているであろうシャインの事を思い、戦い以上にダイテツは頭を悩ませるのだった……。

 

「へ? オイラがお城に? いやいや、無い無い。見てくださいよ、一般人がお城とかないですって」

 

「シャイン王女様が是非、武蔵様に直々にお礼を言いたいと申しております。是非、城へ」

 

「いやいや、お気持ちだけで十分ですって、それにほら……オイラ。デブだから、きっとライとか、エルザムさんみたいな王子様みたいな人がいいですって」

 

「そう仰らず、ささ」

 

「いやいや、本当止めましょって、子供の夢を壊しますって」

 

「大丈夫です、シャイン様は武蔵様が大きくて丸いと知っています、そして武蔵様は大きくて丸い、シャイン様の記憶通りです」

 

「あんたもしかして喧嘩売ってる?」

 

「まさか、私はただシャイン様が命の恩人に会いたいと願っているのでそれに協力したいだけです」

 

「あのさ、もしかしてオイラの事ってすごーく美化されてない?」

 

「大丈夫です、名前も名乗らず去って行った格好良い人です」

 

「止めて! おいらそう言うキャラじゃないから! そう言うのは隼人の仕事だからぁッ!」

 

「ささ、シャイン様がお菓子を用意して待ってますから」

 

「やべえ!? この人親切な顔しながら関節技極めてるッ!?」

 

「ささ、こちらです」

 

「あたたたあッ! 人の良さそうな顔をしてるけどこの人やべえ人だよッ! リュウセイ! 助け! あだだああッ……」

 

あまりに渋る武蔵にジョイスが笑顔のまま関節技を極めて連れて行く姿にハガネのクルーは何も言う事が出来なかった。

 

「ああ、そうそう思い出しました、リュウセイ様もぜひご一緒に。シャイン様のご友人であるラトゥーニ様もこちらへ」

 

「「あ、はい」」

 

これは逆らったら駄目だと判断したリュウセイとラトゥーニは殆ど反射的にそう返事を返し、関節を極められ逃走出来ない武蔵と共にリクセント公国の城へと足を向けるのだった……。

 

 

 

第72話 リクセント公国 その4へ続く

 

 




ルダール卿最強説浮上、シャイン様の為なら何でもやります。次回はシャインと武蔵の出会いとか、マグマ原子炉でヒャッハーしてるビアン博士とかを書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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