第73話 最後の休息 その1
伊豆基地では最後のメンテナンス及び、機体改造で伊豆基地所属の整備班だけではなく、助っ人で呼ばれたテスラ研、マオ社、そして各基地のベテランと呼ばれる整備班の不眠不休の整備が行われていた。
「アルトアイゼンの腕を繋げるぞー! 指、関節の稼動チェックを忘れるなッ!」
「了解です」
アストラナガンに引きちぎられたアルトアイゼンの右腕の修理がその中でも急ピッチで行われていた。リクセント公国に出撃したPT・特機の中でもアルトアイゼンの損傷が著しく、現場の指揮官と言うこともあり最優先で修理が行われていた。
「キョウスケ少尉。随分とやられたようですわね」
「ラドム博士……そうですね。アルトアイゼンの動きを片手で止められては流石にどうしようもありませんでした」
ブラックエンジェルの戦闘力の高さは十分承知しているキョウスケだったが、完全な死角、最高速度での突撃にも関わらず片手で止められてしまえば敗北を認めざるを得なかった。
「ゲシュペンストMK-Ⅲですわ。私は自分の持ちうる技術を全てMK-Ⅲにつぎ込んだつもりでした。最高の機体を仕上げたという自負もありました。ですが結果は完全敗北ですわ」
「すみません、俺の操縦技術不足です」
自分の設計が甘かったとマリオンが言っていると思い、キョウスケは自分の責任だと口にしたのだが……。
「全く持ってその通りですわ、武蔵がMK-Ⅲのシミュレーターに乗った時は3分ほどで機能を停止しました。つまり、理論上はあれだけの動きが出来ると言う事ですわ」
励ますつもりの言葉が肯定され、キョウスケが思わず停止してしまう。だがマリオンは小さく鼻を鳴らし、整備班によって再び繋ぎ直されているアルトアイゼンの右腕を見つめる。
「正直にお答えなさい、今のMK-Ⅲでブラックエンジェル……もしくはキメイラに勝てると思っていますか?」
南極でクロガネが遭遇したと言う異形のドラゴン、それはAGX-16 キメイラと命名された。4つ腕のドラゴン、下半身は獣で背部にはエネルギービットを射出する翼。完全なる異形の姿からキメイラと呼称された。2体のゲッターロボ、そして改良されたグルンガスト零式・改、そしてヒュッケバイン、グランゾンでさえもトドメを刺せず、謎の蜂型のロボットの自爆に巻き込まれて破壊された。だが、ホワイトスターに攻撃を仕掛ければ、再び出現してくる可能性は十分に高い。
「……今のままでは勝てないでしょう」
「でしょうね。これで勝てるとか言ったら、貴方をMK-Ⅲのパイロットから降ろすつもりでしたわ」
マリオンはそう言うとアルトアイゼンから背を向けて歩き出す。勿論、着いて来なさいという言葉は無かった。だがキョウスケは直感でマリオンの後を着いて行くことにした。そうするべきだと、己の直感が告げていたから。
「ラドラ博士のフライトユニット、そしてゲシュペンスト・リバイブは私にとって非常に興味深い物でしたが、キョウスケ少尉はどうでしたか?」
「俺としても、面白いと思いました」
ゲシュペンストの拡張性、そして汎用性の高さを見せ付けられた。そう感じたのはキョウスケだけではない、軍上層部やトライアウトに参加していていた軍仕官までもがこのままヒュッケバインでトライアウトを進めていいものかと疑問を抱き、再トライアウトとなった。そうなったのは紛れも無く、フライトユニット、そしてリバイブの性能の高さからだろう。
「そこで私は考えました。MK-Ⅲは確かに性能はヒュッケバインには劣りません。ですが、これは量産には向いていないと。勿論私の考えたMK-Ⅲは至高です。ですが、至高の物が全ての者に受け入れられるわけではありませんわ」
完全な時代逆行機ではある、だがその性能は紛れも無く優秀なアルトアイゼン。トライアウトに落ちたのは紛れも無くその余りにも時代逆行しすぎた開発コンセプトのせいだろう。
「そこで私は基本的なゲシュペンストMK-Ⅲの素体を作り、そしてそこに低コストの外付けの装甲、アーマーによっての拡張性の強化を考えました」
「フライトユニットの発展と言う事ですね?」
フライトユニットの利点はその低コストと、前期の量産型ゲシュペンストMK-Ⅱでも、後期の量産型ゲシュペンストMK-Ⅱにも装備出来るその汎用性にある。それはどの型番のゲシュペンストでも使用出来る……一種の究極の汎用性の形であった。
「ステーク、クレイモアを排除し、基本性能を高めたMK-Ⅲでトライアウトに出します。そしてそこから本当のMK-Ⅲへと換装するパーツをつけることで格闘戦、射撃戦、援護、防衛と様々な形式に対応出来る。究極の汎用性、それが軍の求めるMKーⅢですわ」
「ですが、それはラドム博士の望む物ではないのでしょう?」
「ええ、そのとおりです。ですが、MK-Ⅲを何時までも古い鉄等と呼ばせない為にもある程度の妥協は必要です」
妥協が必要と言っておきながら、凄まじい顰め面をしているマリオンにその妥協が彼女にとって許容できない物であると言うことは明らかだった。
「話の脱線はここまで、フライトユニットをベースに私が開発した……強襲用のアサルトパックです」
「……これは……ふっ、面白いですね」
キョウスケの言葉にマリオンは自信満々と言う様子で笑う。それだけこのアサルトパックに自信を持っているのは明らかだ。
「胸部及びコックピット部分の強化、クレイモアの姿勢制御のバーニアと接続する形の大出力バーニアが2門、左腕のマシンキャノンの上から装着する可変式ガトリングカノン、これはシールドの機能も有しておりますわ。右腕は既存のリボルビングステークを内部に収納する事で使用可能になる試作型リボルビング・バンカー。これを修理が終わったMK-Ⅲに装着するか、否かを「お願いします」……良いのですね? これは試作型で取り外す事は出来ません」
「構いません。ラドム博士、シミュレーターは勿論用意してあるでしょう?」
「ええ、用意しております。ですが2日で乗りこなせるかどうかは……いえ、愚問ですわね。判りましたわ、修理が終わり次第装着しておきますわ」
「お願いします。俺はシミュレータールームで待機していますので」
乗りこなせるかどうかではない、乗りこなせなければ量産型ドラゴン達を主力にするエアロゲイターには勝てない。キョウスケはそれが判っていたからこそ、この2日と言う猶予で乗りこなして見せると強く決意を抱きその場を後にするのだった……。
ビアンの姿は伊豆基地の最高機密であるSRX計画のラボの中にあった。ビアンは確かにDC戦争を起こした犯罪者ではある。だがこうして異星人の強襲が事実になった今、ビアンの訴えた事その全てが事実であり、そしてシュトレーゼマンが単独でシロガネで地球圏脱出を図った事もあり、ビアンをDC戦争の責任者として処罰するよりもその英知を借りる方が良いとノーマン、そしてミッドクリッド大統領の決断でオペレーションSRWに参加し、そして無事に帰還すれば監視こそ付くがそれでも特例措置が下されることになっている。そして今、そんなビアンが何をしているかと言うと……
「だからさ、今のロボットアニメで男1女4とかいうパイロット編成は駄目だと思うんだよ。俺」
「同意しよう。そしてそこにラブコメが入る必要は無い、ラブコメをしたいのならば学園で日常生活でもしていろと言いたくなるな」
「そうそう、後さ、やたらスタイリッシュなロボはどうかと思う」
「造詣だけに拘るのは論題だな。やはりね、スーパーロボットと言うのはでかい・強い・大きいの三拍子が重要なのだよ」
「やっぱりビアン博士は話が判るな!!」
「ははは、私も久しぶりに話が合う人間に会えて嬉しいものだよ」
リュウセイと熱くロボットアニメについて語っていた……無論やることはやってからの話だが、それでもあのビアン・ゾルダークがリュウセイと同類と言うのはSRXのラボにいた全員に衝撃を与えていた。
「スーパーロボットは、やはり登場の演出が大事なのだよ」
「判る、ピンチとかにでて来てこそだよな」
「絶対に勝てる状況で出て来れられてもうーんっとなるしな」
「そうそう、やっぱり燃える展開じゃないと駄目なんだよ。1号ロボのピンチに2号ロボが来るとかな」
「それこそロボットアニメの最も重要なファクターだ」
どんどんヒートアップしている2人にライとアヤが一応のストッパーであろう武蔵とエルザムにそれぞれ視線を向けるが……。
「無理無理、ああなったら暫く止まらないよ」
「ほっておくしかあるまい」
ストッパーがストッパーになっていないことに、ライとアヤは深く溜め息を吐くのだった。
「エルザム兄さんはもうゲッターロボには乗らないのか?」
「ゲッターロボは確かに一騎当千のスーパーロボットだが、やはり単独では出来る事と出来ないことがある。それならば、私は改良したヒュッケバインMK-Ⅱに乗ることにしたのだよ」
「あの残像が出来るほどの超加速か……」
「ああ、あれは本来はバリアに使うゲッター線フィールドで更に加速している。恐らく常人では乗りこなせないだろう」
リクセント公国での残像を見せるほどの加速、それは通常のヒュッケバインでは不可能な速度だった。その加速の源がゲッター線と聞いてライもアヤも驚いた表情を浮かべる。
「ビアン博士は既にゲッター炉心をPTに載せられるほどに理解を深めているのですか?」
「流石のビアン総帥もPTに載せられるほどにダウンサイジングした炉心は開発出来ていない。私も詳しい所は判っていないよ、ただカートリッジシステムで使い捨て同然とだけしかきいていない」
ただ使えるから使う、それだけだとエルザムは告げ、ゲッター線コーティングされた関節に交換しているRー2パワードに視線を向ける。
「ライディースこそ大丈夫か? トロニウムの扱いは難しいだろう?」
「ええ、ですが必要な力です。エアロゲイターを倒すにも、少佐を取り戻すにもです」
「そう……か、無理をするなよ。最も、お前の敵に1度は回った私が言うべき言葉ではないがな」
「エルザム兄さん……」
生真面目なエルザムとライの間に奇妙な空気が広がった時、パンパンっと手を叩く音がした。
「兄弟なんだろう、壁なんぞ作ってないで腹割って話してきなよ。言葉をかわせねえって言うならキャッチボールでもして来な。ほら、行った行った」
武蔵!? 武蔵君!? と動揺しているライとエルザムの背中を押して、無理やりエレベーターに載せて上に送り出した武蔵。
「強引な事をするのね」
「はは、すいませんねえ。兄弟なんだから話せば判りますって、それか殴りあいでもすれば解決しますよ。オイラとリョウと隼人なんてしょっちゅうそれですよ。殴りあいするか、キャッチボールをするかですって」
はははっと豪快に笑った武蔵は辺りを確認する、リュウセイとビアンはスーパーロボットの話で熱弁を奮っている。そして格納庫にも人はいない。
「アヤさん、凄く大事な話があるんですけど……いいですか?」
「……何かしら?」
「イングラムさんの事です」
武蔵の口からイングラムの名前が出て、アヤの顔は真剣な物に変わる。
「リクセント公国で何かあったの?」
「……声、イングラムさんの声が聞こえました。多分……いや、絶対イングラムさんは生きてますよ」
本当は正気だと、助ける為に動いていると伝えたかった武蔵だがそれは許されない。だからぼやかして伝えるとアヤは目を細める、その目が自分の心を見透かしているようで武蔵は肩を竦める。
「とりあえず、そう言うことにしておいてあげるわ」
「……すんません」
「武蔵が悪いんじゃないから良いわ、生きているって教えてくれたのは嬉しいしね。でも思いっきりビンタするのは変わらないけどね」
(すまねえイングラムさん、オイラなんか間違えたみたい)
にっこりと笑うアヤが武蔵に自分が言葉の選択を間違えたと言う事を教えていて、心の中でイングラムへと謝罪するのだった。
伊豆基地のデータ室にゼンガー、そしてギリアムとラドラの姿があった。エルザムはSRX計画のラボに行く前に確認しているが、リクセント公国に現れた灰色のナイト。その分析結果と2人の考察を聞きにゼンガーはデータ室を訪れていた。
「……この癖。この足さばき……やはり間違いないのだな」
「ああ、カーウァイ・ラウ大佐に間違いないだろうな」
ゲシュペンストのモーションデータ、そしてナイトのモーションデータ。その適合率は94.2%……残り6%弱は誤差の範囲に過ぎない、ここまで合致していればナイトのパイロットは行方不明のラウ大佐であると判明したような物だ。
「生体反応は極微弱……言いにくいが、人間としてのラウ大佐は既に死んでいると見て間違いないだろう」
「……そう……か、僅かに期待したのだがな」
イングラムのように洗脳されているだけではないのか? ラウ大佐を取り戻せるのではないかと言う期待はラドラの一言で消え去った。
「……考えられるのは「……すまない、今は聞きたくない」……そうだな、胸糞悪い話だ。俺も、ギリアムもしたい話ではない」
生体反応の微弱さから考えられるのは脳や神経などの一部をサイボーグに移植し、そのサイボーグがナイトを操縦しているのだろう。
「……ゼンガー、お前1人で背負い込むな、これは教導隊全員で行う」
「ああ、俺達で止めるんだ」
「……ありがとう、ラドラ、ギリアム、俺は良き友を持った」
その言葉を最後にデータ室を出て行くゼンガー、その背中から溢れ出る怒気を見ればゼンガーがどこに向かおうとしているのかは明らかだ。
「許せんな、エアロゲイターは……」
「そうだな。だが、冷静でならねばならない」
仮にも人の上に立つ立場だ、怒りで我を見失うなんてことは許されない。
「しかし、そのお陰でエアロゲイターのことも判った」
「人員不足だな」
態々こちらの人間を攫う、そしてサンプルと言う呼称――もしやと思っていたが、ホワイトスターの役割は戦力を回収し、本星へと連れて返ることだろう。
「南極の遺跡の情報を開示してくれたが……」
「巨大なゲッターロボか」
壁画に残されていたゲッターロボの記録。そしてそのゲッターロボは宇宙を戦場にしていた、その衝撃的な記録にはラドラとギリアムも驚かされたが、そのお陰で得た情報もある。
「ゲッターロボはもっと過去に現れていたのだな」
「新西暦初頭位か……だが謎は深まるばかりだ」
この世界に眠るゲッターロボの記録、連邦がひた隠しにする失われた歴史……その全てはゲッターロボにある。
「もう少し情報を集める必要があるな」
「そうだな、少なくとも俺と武蔵が死んだ後もゲッターの戦いは続いていた。俺達は知らないことが多すぎる」
確かにラドラはゲッターロボを知っている、だがそれは初期のゲッターロボだ。まだ自分達の知らないことが多く存在する、それはドラゴンやライガーの存在で明らかになっている。
「失われた歴史、ゲッターロボ……そして私達のような迷い人……この世界は混迷を極めていくだろう」
「そうだな、だがそれだからこそ俺達が出来る事もある」
ゲッターの存在を知っている、世界は1つではないと知っている者がいる……だからこそ出来る事がある、誰にも話すことは出来ないが――だからこそ出来る事がある。
「コウキやアゲハ、そして武蔵の力も借りよう」
「ああ、そうだな。武蔵にも教えてやりたいしな」
ギリアムやラドラだけではない、他にもお前の友を知る者がいる。それを伝えてやりたい、だが今はそんな余裕が無いのも事実。今はただ
……オペレーションSRWを成功させることだけを考えさせるべきだと思いラドラとギリアムは他の迷い人の事を伝えなかった。だが、それが間違った判断であると2人が気付いた時は全てが手遅れになった後なのだった……。
オペレーションSRWを控え、伊豆基地は慌しく動き回っていた。オペレーションSRWの参加する兵士の気力や体力を充実させる為の食事や、マッサージ師を招きいれ、さらには各基地の整備兵も呼び寄せ万全の状態で出撃出来るようにとバックアップに勤めていた。
「くそ、まだまだ」
「時間はある、焦るんじゃねえ!」
オペレーションSRWへの不安を振り切るように、シミュレーションルームでアーマリオンやフライトユニット装備のゲシュペンストの訓練に明け暮れる者。
「これが最後の晩餐にならないといいんだけどね」
「俺達は勝つ、何の不安を抱く必要も無い」
「そう言ってくれると、少しでも安心出来るわね」
豪華な食事を食べながらも、どうしても不安を隠せない者、そしてそれを励ます者。
「もう一本お願いします!」
「良くぞ言ったッ! 来いッ!」
「押忍ッ!!」
身体を動かし続け、気力と体力を充実させる者。
「ライディース、力加減がへたくそだな」
「うっ……こんな事やったことがないんです」
「それも私も同じだ、もう少し力加減を考えればいい」
「難しいものですね」
「そうだな、だが……悪くない」
「ええ、そうですね。悪くないですね」
武蔵に言われた通りにキャッチボールをしているブランシュタイン兄弟の姿が見られた。
「ユーリア隊長お久しぶりです」
「ああ、レオナ。元気そうで良かった」
「さ、レオナもこちらへ久しぶりに話をしましょう」
元コロニー統合軍のレオナは久しぶりに上官であるユーリアとリリーと話を出来る事を頬を緩ませていた。
そんな中、ビアンとの熱いロボットアニメ談義を終えたリュウセイは酒保で頭を抱えていた。
「どうしたの? リュウセイ」
「あ、あーラトゥーニか、いやさ。アヤにさっき聞いたんだけど……お袋がな、伊豆基地内の病院にいるから、お見舞いに行くと良いって
言ってくれたんだ。だけど……手ぶらもなんだからって思ったんだけどさ……判らないんだよ」
「……私も選ぶの手伝おうか?」
「え、良いのか? 頼むよ、俺どうすればいいのか判らなくてさ」
そしてシャインの助言であるもっと積極的に動くべきと言う言葉に従いリュウセイのお見舞いに同行することにし、2人でお見舞いの品を選んだ。リュウセイは久しぶりに会える母親だが、軍属であると言う事を伝えていなかった事を思い悩み、そしてラトゥーニは勢いでお見舞いについて行くといったものの、リュウセイの母親に会うということに気づき、その顔を赤くさせていた。
エアロゲイターとの戦いが迫る中、それでもいつもどおりの日常を過ごすハガネ、ヒリュウ改のクルー。だが、決戦はもうすぐ側まで迫っているのだった……。
グラスの中で氷が音を立てる。レイカーの私室にビアン、そしてレイカー、ダイテツの3人の姿があった。
「オペレーションSRWに連邦の残っている宇宙艦隊の8割を使用する。そこで聞きたい、どれほど生き残ると思う?」
「……2割……いや、1割を切るだろう」
「戦力が余りにも足りない」
ビアン、そしてダイテツの意見は宇宙艦隊は殆ど役に立たないと言う物だった。
「出来る限りの準備はした……だがやはり戦力は充実したとは言い切れんか」
「ハガネ、クロガネ、そしてヒリュウ改が突出戦力過ぎる。それにシロガネの修理は済んだが、艦長は見つかっているのか?」
「……いや、今の段階ではオートクルーズで運用する。ゲシュペンストや量産型アーマリオンの運搬や補給、そして最悪の場合の離脱艦として想定している」
「育ちきれなんだが……」
「スペースノア級は特別な戦艦だ。並みの艦長では指揮をとれない。有望な者もいるが……この短期間では無理だ」
シロガネを戦力にするには艦長がいない。そうなれば貴重なスペースノア級をただの運搬や補給艦にするしかないというのが現実だった。
「ビアン、お前がクロガネに施した改造はハガネやヒリュウ改には出来ないのか?」
「出来なくは無いが……恐らく間に合わない、出来てコーティングだな」
アイドネウス島を脱出し、そこから準備を続けていたからこそクロガネはゲッター炉心を搭載し、ゲッター合金で改造された。だが今からでは到底間に合うものではないとビアンは告げた。
「それでも構わない、生存率を少しでも高める為に頼む」
「判った。明日すぐに準備をしよう。それとレイカー、申し訳無いのだがある装備を引き取って欲しい」
「それは構わないが……何をだ?」
「ゲッター合金で作成したスペースノア級に装備させるレールカノンだ」
「そんなものがあるのならばシロガネに装備させたらどうだ? テツヤ大尉はワシの後継だ。ここで指揮を取らせて運用するのも良かろう。その場合はリリー中佐か、バン大佐にフォローを頼みたい所だが……」
「いや、アレはまだ未完成だ。設計図と共に預ける、完成までは間に合わなかった」
「襲撃のせいか……」
クロガネは何度も襲撃を受けている。それさえなければ、レールカノンも間に合っていただろうとビアンは顔を歪めた。
「しかし、無い物強請りをしてもどうしようもありますまい」
「ショーン。遅いぞ」
「はは、すいませんね。レフィーナ艦長が随分と不安に思っているようで、話をしていて遅れました」
3人の話し合いに遅れて合流したショーンは机の上を見て眉を顰める。
「いけませんなあ、スコッチこそ至高と言うものを」
「何? 聞き捨てならんな、日本酒こそだ」
「違うな。酒はウィスキーのロック。これに限る」
「流石レイカー司令、話が判りますな」
「待て待て、人のワインをあれだけ飲んで何を言っている」
スコッチ派のショーン、レイカー、日本酒のダイテツ、ワインのビアン。4人の酒飲みが揃った事で話の流れはいつの間にか作戦の事から、酒の事に変わっていた。だがそれも当然の事だった。圧倒的な不利な作戦に挑むのだ。幾ら考えても不安にしかならないのならば、考えを変えたほうがよっぽど有意義だった。
「ならば、この話し合いは全てが終わった後にまたやろう」
「そうですな、これほど緊張していては酒の味も判りませんしな」
「全くだな」
そして4人はグラスを小さくぶつけ合う。言葉にすることは無い、だが必ずや生きて戻る。そんな強い意思が込められた視線をお互いに交わし、グラスの中の酒を一気に呷るのだった……。
第74話 最後の休息 その2へ続く
この話で書きたかったのは最初のリーゼ(仮)の装備とリュウセイとビアンの話、それと不穏なフラグとラトちゃんとリュウセイママンの話の準備です。次回はリュウラト風味とオペレーションSRWの発動の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い