進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第76話 亡霊と亡霊 その2

第76話 亡霊と亡霊 その2

 

 

月面で向かい合う2体のゲッターロボ。だがもう1体のゲッターロボは機械ではなく、まるで生物がゲッターロボの外骨格を纏っているような不気味な姿をしていた。

 

(兄弟、お前はこれを警戒していたのか?)

 

月面に降り立つと同時にメーターを振り切ったゲッター線。メカザウルスの出現、そして恐竜帝国との決戦、そして黒い天使が出現した時もその全ての時ゲッター線のメーターは振り切っていた。ゲッターロボが警戒していたと思うのは当然の事だった。

 

「コハアア……」

 

猫背で呼吸を繰り返すゲッターロボもどき、生物としか思えないその挙動に武蔵は嫌悪感を抱いていた。メカザウルスも生物だから、そんな挙動をしていたのは見た事がある。だが、今目の前にいる存在の動きは生き物を真似しているように見えた。だからこそ武蔵は嫌悪感を抱いたのだ。全身に浮かび上がる黄色の瞳には何の感情の色も無く余計に不気味さと嫌悪感を煽る。

 

「!」

 

「ッ! 早いッ!! ぐうっ!?」

 

姿形は人間とは程遠いが、それでも人型をしている。だからその動きは人間の動きを模していると武蔵は考えていた――だが、凄まじい勢いで伸びて来た右拳に気付き咄嗟に飛び退いたが、空中を進む右腕はゲッターが避けると同時に空中をUターンする。ゲッターもどきの右拳が背中にめり込みゲッター1はたたらを踏んだ。

 

「シャアアッ!」

 

「へっ……これはやべえなあ」

 

鞭のような動きで元の姿に戻る右拳を見ながら武蔵は口元の血を拭った。予想外の角度、そしてその衝撃に口の中を切っていた。

 

「……見た目通りの化けもんじゃねえか、畜生が……ッ」

 

ゲッター1の姿が黒い繭の姿になったと同時にベアー号の部分が黄色の目玉で埋め尽くされた異形のゲッター2の姿へと変態した。その姿を見て武蔵はベアー号のコックピットで舌打ちを打った。基本的な能力はゲッターロボと互角、だがそこにあの異形の能力が付与されている。

 

(……楽には勝てないな)

 

ベアー号の操縦桿を握り締めて武蔵はそう判断した。今まではゲッターロボの圧倒的な性能でごり押ししてきた……だがゲッターと互角な同じ能力を持つ相手。しかも相手はメカザウルスを越える化け物となれば単独操縦のゲッターロボではジリ貧になると判断した。

 

「だけど、負けるつもりはねえな」

 

駄目だと言われていたが遠隔操作でジャガー号のリミッターを解除し、再び異形のゲッターと向かい合う。

 

「ドラアッ!!」

 

「!!!!」

 

異形のゲッター2が消えたと同時に左拳を振るう。その拳の先に確かな手応えが返ってくるが、その感触と音は鉄同士がぶつかった物ではなく、ゴムか何かを殴ったような鈍い音が響いた。

 

「打撃は今一ってか」

 

ジャガー号のリミッターを解除しているので出力は上がっている。だがダメージが通っているようには見えず、呼吸も全く乱れていない。

 

「ゲッタートマホークッ!!」

 

「シャアアッ!!」

 

肩から飛び出たゲッタートマホークを構えると異形のゲッター2もドリルアームを突き出して構える。

 

「らあッ!!」

 

「シャアアッ!!」

 

姿勢を低くし獣のような勢いで突っ込んできたゲッター2のドリルとトマホークで受け止め、そのまま胴体目掛けて振るう。

 

「っと!! あぶねえな」

 

「コハアア……ッ!」

 

ゲッタートマホークが命中する寸前に胴体から無数のスパイクが飛び出し、トマホークを振りかけたゲッター1は慌ててそれを止めて大きく後ずさる。

 

「リュウセイ達はいなくて良かったな」

 

最初のゲッタービームで弾き飛ばされた時はリュウセイ達から引き離された事に焦りを感じていた。だが今はそれで良かったと武蔵は考えていた、あの生物には鋭い牙と飢えているのか唾液がずっとたれ続けている。今こうして襲ってきているのは飢えを満たそうとしているのかもしれない、そう思えばこそ単独であの化け物と戦う事になったことを武蔵は幸運だと考えていた。

 

「シャアアッ!」

 

「へっ、ゲッター3か、オイラにゲッター3で勝てると思ってるのかッ! オープンゲットッ!!」

 

相手がゲッター3に変化したのを見て武蔵もまたゲッター3へと再合体を果たし、月面で2体のゲッター3の掴み合いになる激しい音が月面に響き渡る。

 

武蔵は知る良しも無い、自分が戦っている異形がゲッター線に寄生して生きている「インベーダー」と言う存在であると言う事、そして寄生しているゲッターロボは平行世界で月面10年戦争を駆け抜けた武蔵のゲッターロボよりも性能の高いゲッターロボであると言うこと……そしてインベーダーと融合した事でメタルビースト・ゲッターロボと言うべき存在へと変貌しており、その強さがゲッターロボを遥かに越えていると言う事を……。

 

「おっらああああッ!!! ゲッタァミサイルッ!!!」

 

「キシャアアア!?」

 

殴り飛ばされたメタルビースト・ゲッター3にゲッターミサイルが叩き込まれ、闇に満ちた宇宙に鮮やかな緋色が広がる。

 

「うっく……ここは……どこだ?」

 

蒼い人型がゲッターミサイルの炎に照らし出され、その振動と衝撃で人型のパイロットが目を覚ましているのだった……。

 

 

 

 

武蔵がメタルビースト・ゲッターロボと奮闘している頃、ゼンガー達もまた劣勢に追い込まれていた。

 

「ぬっぐう……」

 

「カイッ! ギリアム! エルザム! 支援に入れッ!! ゼンガーッ!!」

 

「言われるまでも無いッ!」

 

殴り飛ばされたゲシュペンスト・リバイブにゲシュペンスト・タイプSの追撃が叩き込まれる前に支援に入れと叫び、ゲシュペンスト・シグとグルンガスト零式・改がその豪腕を振るった。

 

「……遅……い」

 

零式・改に一瞬だけ視線を向け、シグの腕を掴んで背負い投げの要領で零式・改へと叩きつける。

 

「ぐおっ!」

 

「くっ! ぬおおおおーーーッ!?」

 

零式・改とシグに向かってスプリットミサイルを放ち、距離を取るゲシュペンスト・タイプS。腰にマウントしていた特殊な形状のビームライフルを両手に構える姿を見てゼンガー達は顔を顰める。

 

「……どう……した……掛かって……来い」

 

ライフルの先から現れたビームエッジを零式・改達に向け挑発するゲシュペンスト・タイプS。姿形はゲシュペンストである、だがその攻撃力を初め、防御力、機動力は完全にゲシュペンストとは別物だった。

 

「皆判っていると思うが、あれは外見はゲシュペンストだが、中身は違う。恐らく全てがエアロゲイター製のパーツに置き換わっているだろう、ゲシュペンストと侮ればやられるのは私達だ」

 

「判っている、それにあの構えを見て慢心出来るほど私達は愚かではない」

 

「銃撃と斬撃を組み合わせたカーウァイ大佐の得意な構えだ」

 

銃と短剣――本来ならば組み合わせる訳の無い武器同士、だが教導隊隊長であるカーウァイ大佐はその2つを好んで使っていた。今でこそゼンガー達も使いこなしているマニュアル制御による細部にまで至る細かい動作。それの原点はカーウァイ大佐であり、近接戦闘・中間距離・遠距離その全てに対応する独自の操縦技術を確立し、それを相性のいい物だけを選びゼンガー達に教授した。今でこそゲシュペンストには乗っていないが、その操縦技術は元を正せば全てカーウァイ大佐の物、どれほど意を突いたつもりでもそれは完全に見切られていた。

 

「胸部のブラスターキャノンに気をつけろ。アレを搭載していない訳が無い」

 

「判っている、先陣は俺が切ろう」

 

この中で一番装甲と攻撃力の高いグルンガスト零式・改に乗るゼンガーが先陣を切ろうと口にしたが、それはエルザムとギリアムによって止められた。

 

「ゼンガー、零式ではあのゲシュペンストのスピードには付いていけない」

 

「ここは私達が何としてもあの動きを削ぐ、お前にはトドメの一撃を任せたい」

 

「しかし……」

 

「ゼンガー、お前の気持ちも判る。だがここはまだ正念場ではない」

 

ラドラの言葉にゼンガーが言葉に詰まった。オペレーションSRWは既に発令している、ここはまだ命を賭けるべき戦場ではないのだ。

 

「……承知」

 

「ああ、だが俺達を許してくれゼンガー。お前に一番辛い役目を押し付けるのだからな」

 

カイが沈鬱そうに呟いた。ゲシュペンスト・タイプSを撃破するにはリバイブやトロンベ・タイプG、そしてシグでは火力が足りない。呪われたカーウァイ大佐を救えるのはゼンガーしかいない。敬愛する隊長を殺す役目を押し付ける、救うと言ってもそれしか方法が無いのだ。ゼンガーにその事を押し付けることを謝罪し、カイ達はゲシュペンスト・タイプSに向かっていく。その姿を見ながらゼンガーは零式・改のコックピットで掌から血が出るほどに拳を握り締め、そして口から血が流れるほどに歯を噛み締めた。零式斬艦刀を構え、エルザム達がゲシュペンスト・タイプSを相手に苦戦を強いられる姿を見て、助けに向かいたいと思うのを必死に堪え、ゼンガーは太刀を振るうその一瞬を待つのだった……。

 

 

 

 

ゲッターロボ、そして教導隊と分断されたハガネ、ヒリュウ改、そしてクロガネは月面に現れていたエアロゲイターを一掃していた。

 

「艦長、武蔵とギリアム少佐達が戻っていません。依然戦闘中だと思われます」

 

テツヤの報告を聞いてダイテツは判断に迫られていた、オペレーションSRWは既に発令されており連邦艦隊はL5宙域へと向かっている。ゲッターロボ、そしてゲシュペンスト・リバイブを初めとした戦力がこの大事な時に抜けてしまうのは痛い。だがこのまま戦闘が終わるのを待てば、連邦艦隊だけがホワイトスターに進軍する事になる。

 

「PTの回収後、本艦はL5宙域へ向かう。ギリアム少佐達と武蔵は後で合流してくれるはずだ」

 

今最も優先しなければならないのはホワイトスター攻略だ。ここで時間を浪費する訳には行かない、それがダイテツの下した決断だった。

 

「……了解です、各機に帰還命令を出します」

 

「そうしてくれ、ワシの命令だと強調するように」

 

了解と返事を返したテツヤ、心情的にはテツヤも納得していない、それは勿論ダイテツも同じだ。レフィーナや、ビアンだって自分の下した決断に納得はしないだろう。だがそれでも決断しなければならない立場にダイテツはあった、非情だ、冷酷だと言われてもそれでも決断を下さなければならなかった。

 

「艦長、クロガネより入電があります」

 

「繋いでくれ」

 

モニターにすぐ映し出されるビアンの姿。その顔は険しく、ダイテツは武蔵、そしてゼンガー達を月に残す選択をした己への叱責の言葉であると覚悟をしていた。だがビアンの言葉はそうではなかった……。

 

『ダイテツ・ミナセ。何を思いつめた表情をしている、早くL1宙域へ向かうぞ』

 

「……あ、ああ。判っている」

 

『私が責めるとでも思っていたか? ここでお前が残ると言ったらそれこそ私は怒鳴っていたぞ。今私達がするべき事はホワイトスターの攻略だ、私情を挟まず大局を見据えた。それでこそだ』

 

『ダイテツ中佐、早く向かいましょう。武蔵君や、ゼンガー少佐達ならば無事に合流してくれるはずです』

 

ビアン、そしてレフィーナもダイテツを責める事は無かった。責める筈はなかったのだ、自分達は地球を護る為に宇宙へ出た。そして今もオペレーションSRWの為に連邦艦隊は必死の戦いを続けている――酷な言い方だが、ここで足踏みをしている時間は無いのだ。

 

「信号弾を撃てッ! これより本艦はオーバーブーストでL1宙域へ向かう!」

 

武蔵達を残すが、それは見捨てたのではない。必ず武蔵達ならば追いついてくる……その信頼の元、ハガネ、ヒリュウ改、クロガネは月を後にする。

 

『へっ! そうだ、行け! 行ってくれ! オイラもすぐに倒して追いつくからさッ!』

 

『すぐに追いつく、先に行っていてくれ、地球を守るんだッ!』

 

『ふっ、その通りだ』

 

『俺達を舐めるなよ、すぐに追いつくさ』

 

『俺達の敵を残しておけよッ!』

 

『振り返るな、眼前の敵を打ち砕く事だけを考えろッ!!』

 

信号弾、そして飛び立つハガネ達を見て武蔵達から音声のみの一方通行の通信が次々と入る。武蔵達の思いも同じなのだ、決死の覚悟でこの作戦に参加している。自分達を待って、全てを無駄にする訳には行かないのだ。それでも罪悪感を持たない訳が無い、それが判っているから音声のみの激励の言葉を送る。自分達がどれほど苦しい戦いに追い込まれていても、それを感じさせない為に地球を守れという意志を託したのだ。

 

「急げ、第一フェイズまで時間が無い!」

 

「機関最大戦速ッ! 連邦艦隊と合流を最優先」

 

「Eフィールド、ゲッター線フィールド最大出力! ハガネ、ヒリュウ改はクロガネの後ろにつけ戦場を強行突破する!」

 

ゲッター線フィールドを展開し、ハガネ、ヒリュウ改を伴ってクロガネは月を後にする、必ず武蔵達は合流する――その言葉を信じてダイテツ達は次の戦場へと向かうのだった……。

 

 

 

 

月面に何度も何度も金属がぶつかり合う激しい音が響き渡る。5対1と言う絶望的な戦力差でありながら、ゲシュペンスト・タイプSは互角……いや、完全にエルザム達を圧倒していた。

 

「強い……それに反応速度が徐々に上がっている」

 

「いや、これは上がっていると言うよりも……」

 

「元に戻っていると見るべきか」

 

機体性能は確実にエルザム達の機体が上回っている、だがそこにパイロットの腕の差が大きく響いていた。当初は零式・改を温存する予定だったが、そうも言ってられずゼンガーも戦いに参戦していたが、それでもゲシュペンスト・タイプSは今だ健在だった。

 

「俺達との戦いがカーウァイ大佐に影響を与えたのだろう」

 

「……元に戻せるのではないか?」

 

教導隊の元部下との戦いでエアロゲイターの洗脳を受けているカーウァイ大佐を元に戻せるのではないか? ゼンガーが思わずそう口にしたが、それはギリアムとラドラによって不可能だと断言された。

 

「ゼンガー、気持ちは判るが不可能だ」

 

「……俺の機体に生命反応の感知装置がついているが、タイプSからの生命反応は殆ど無い。それが答えだ」

 

戦いの中で既に人間では無くなったカーウァイ大佐の記憶が刺激され、生前の動きを取り戻していたとしてもそれは既にカーウァイ・ラウではないのだ。

 

「……ギギギ……ッ! 躊……躇う……なッ! 何を……している……ッ! ガガガガ……ギギギイイ……使……命を……果たせッ!!!」

 

広域通信で投げかけられた言葉。苦しみ、悶えながらも戦えと躊躇うなと叱咤叱責するその姿は紛れも無く5人の記憶の中のカーウァイ大佐その物だった。

 

「……すみません大佐、俺は貴方と戦う事を内心で拒んでいました。何か別の方法があるのではないか、貴方を助ける方法があるのではと思っておりました。しかしそれは貴方を苦しめるだけでした、すみません。いつまでも貴方に迷惑を掛ける部下で……本当に申し訳ありません、ですが……貴方を救う為に……俺は貴方を……殺すッ!!!」

 

ゲシュペンスト・リバイブのリミッターが解除され、獣のような唸り声が月面に響き渡る。コックピットの中ではカイの涙が粒となり浮かんでいた……だがそれはカイだけではない、ゼンガーやエルザムとて同じだった。

 

「……大佐、今呪われた命から開放して差し上げます、後もう暫くお待ちください」

 

音を立ててヒュッケバインMK-Ⅱ・トロンベ・タイプGの装甲が展開され、高機動モードへと変形する。

 

「大佐、俺は貴方に恩があった。その恩を返す事が……貴方を殺す事になって俺は悲しい、だが俺は……俺達はそれを成さねばならないッ! その目で見て欲しかった、よくやったと言って欲しかった。俺の成果をこのような形で見せたくは無かったですよ……大佐」

 

覚悟を決めたつもりだった、それでもラドラにはまだ迷いがあったのだと今この時初めてラドラは自覚していた。突然別人のようになった……事実別人だが、ラドラの肉体の親はラドラを子供とは認めなかった。家に帰る事を許されず、そしてその身体能力から配属先となる部隊も決まらない中、唯一ラドラの引き取り先となった教導隊とカーウァイ大佐はラドラにとっては第二の父と言っても良い存在だった。だからこそ口では冷静でもその心情は穏やかではなかった……だがカーウァイ大佐の言葉でラドラも覚悟を決めた。

 

「いつまでも心配をかける駄目な部下で申し訳ありません、貴方の抱いた理想、願い、それら全て私達が引き継ぎます。どうか……安らかに眠ってください」

 

ギリアムのリバイブもリミッターを解除し、飽和状態になったエネルギーが全身を包み込みその蒼い輝きをより眩しい物へと変える。

 

「黄泉路への案内……このゼンガー・ゾンボルトが案内仕るッ!!!」

 

ゼンガーの雄叫びにあわせるように零式・改の顔も鬼のような表情になる。零式・改のコックピットの中でゼンガーは唇を噛み締め、叫びだしたいのを必死に堪えゲシュペンスト・タイプSを睨みつける。

 

「……そう……だッ! わた……しを……ッ!! 越え……ろッ!!!」

 

腕も足も無い、胴体と頭部だけをゲシュペンストのコックピットに組み込まれたガルイン・メハベルとなったカーウァイ大佐も叫び、ゲシュペンスト・タイプSも獣のような唸り声じみた動力音を月面に響き渡らせる。今ここにかつての隊長と部下の過酷な戦いの幕が上がるのだった……。

 

 

 

 

 

「なろお……見た目通りの化けもんかよ、畜生め」

 

武蔵はベアー号のコックピットから広がる我が目を疑いたくなる光景に舌打ちをしていた。だがこの光景を見ていたら全員が全員同じ事をしていただろう――何故ならば武蔵が対峙していたメタルビースト・ゲッターロボ、その姿はボロボロで今にも爆発しそうではあった。だが……

 

「「「シャアアアア」」」

 

「増えるとか止めろよ、メカザウルスでも増えねえよッ!!」

 

切り裂いた腕が地面と融合し、ゴムのような身体の化け物に変わる。

 

殴り飛ばした衝撃でぶちまけられた血液と大破したエアロゲイターの機体と融合して化け物になる。

 

そして自らが戦っていた化け物がゲッターの外骨格を完全に取り込んで、生身のゲッターと言うべき姿になる。

 

(3対1……ちっ、こいつは予想外にも程があるぜ)

 

ゲッター3の動きでは対応出来ないと変態している間にゲッター1にチェンジしていた自分の判断が正しかったと確信していた。

 

「「シャアアッ!!」」

 

「くそったれッ!」

 

突き出すように伸びた鉤爪と口から吐き出された光線を上空に舞い上がる事でかわすが、足に巻きついたゲッターもどきの両腕に飛び上がることは出来ず、そのまま月面に叩きつけられ、その凄まじい衝撃に武蔵であっても息が詰まった。

 

「コハアアーーーッ!!」

 

「ゲッタァパンチッ!!!」

 

牙を剥き出しにしてゲッターロボを喰らおうとした化け物に拳を叩き込み、続けて襲ってきた岩と融合した化け物には蹴りを叩き込み、その勢いで跳ね起きゲッタートマホークを構えさせる武蔵。

 

「くう……今のは効いた」

 

頭を振り明暗を繰り返す視界を必死に整え、化け物とゲッターロボを向かい合わせる。

 

(やべえな、どうすれば良いんだ)

 

両断し、引き裂いて戦いのペースは間違いなく自分が掴んでいたと思っていた。だが相手は増えて、しかも確実にゲッターを追詰めている。

 

(どうすればいいのかわからねえ)

 

メカザウルスとの戦いには慣れているので化け物との戦いに武蔵は押されはしない。だが相手の能力が未知数であり、しかも倒したと思ったら数が増えていた。そのことに武蔵はどうすればいいのか判らなかった。倒したと思っても数が増えるのならば長期戦になる。

 

(ゲッタービームは温存するべきだよな)

 

決まり手がないのにゲッタービームを乱用しエネルギー切れになる訳には行かない、戦いはここで終わりではない。ホワイトスターに先に向かったハガネやリュウセイ達と合流しなければならない……だからゲッタービームを温存し、トマホークや拳で戦いながら相手の弱点を見出すしかないと武蔵は考えていた。

 

「シャアアッ!」

 

「来いやあッ!」

 

正体不明の化け物との戦い。気持ちで負けたら勝てる物も勝てなくなる、武蔵は自らを鼓舞するかのように叫び、そしてトマホークを手に飛びかかってきた化け物と戦おうとしたその瞬間

 

「え?」

 

青い光がゲッター1の顔の横を通って牙を剥き出しにしていた化け物の頭部を吹き飛ばしていた。

 

「……なんだ、ありゃあ」

 

振り返ったゲッター1の視線の先には右腕の無く、髭のような意匠を持つ頭部パーツを持つ蒼い特機の姿があった。

 

「何をしている、武蔵。あいつらにはゲッター線が有効だと言ったのはお前だろうが」

 

「なんでオイラの名前を……つうか、あいつらにはゲッタービームが効くのか? あんたは誰なんだ?」

 

ボロボロでありながらも助太刀してくれる蒼い機体に武蔵は感謝したが、それと同時に蒼い機体のパイロットが自分に伝えてきた事に困惑した。

 

「ふ、そうか、そういうことか……とりあえず今は味方と言う訳だ。これがな」

 

「そっか、よっしゃあ! じゃあ頼りにしてもいいんだよな!」

 

「半壊しているがな、あの化け物には負けんぞ」

 

半壊している機体でありながらも微塵も不安を感じさせない歩みに武蔵は笑い、蒼い機体――ソウルゲインと共に再びインベーダーと向かい合う。

 

(ふっ、しかしこれはまた奇妙な経験だ)

 

ソウルゲインのコックピットで赤髪の男――アクセル・アルマーは苦笑する。つい先ほどまで自分と武蔵は同じ強大な相手と戦っていた……戦友と言うわけではない、それでも奇妙な友情を感じていた事は認める。

 

(べーオウルフのせいか、それともアギュイエウスのせいか……過去へ遡ったのか、それとも世界を超えたのかは判らんが……俺のやる事は変わらない)

 

己の事を武蔵が知らない事はアクセルにとっても予想外だった、だが今思えば、武蔵は現れた時からソウルゲインを知っていた。つまりこれは必然、「向こう側」からやってくる前の武蔵と自分は出会っていて、そしてそれが今なのだとアクセルは結論付けた。

 

「行くぞ! 武蔵ッ!」

 

「おうよッ!!」

 

月面に眩いまでの紅と蒼が駆け抜ける、何れ戦う定めと判っていても同じ敵に立ち向かう以上――今は味方なのだから……。

 

第77話 それぞれの戦い その1へ続く

 

 




次回は3つの視点でお送りしたいと思います、ここからはオリジナルルートです、メインは武蔵、教導隊、リュウセイ達はサブと言う感じでインセクトケージで合流する予定です、そして最後に続編フラグなどを立てつつ、今回の更新はここまでとさせていただきます

それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。




視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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