第80話 因果の鎖 その2
武蔵達がヴィレッタと合流した時から少し時間は遡る。武蔵達よりも3時間早くホワイトスターに突入したリュウセイ達は苦しみながらも、エアロゲイターに拉致されたDC、そして連合の部隊の迎撃をしていた。
「うっ! うえっ……おえっ……ッ!」
グルンガスト弐式のコックピットの中でクスハのえづく声が響く、それを聞いたブリットは今撃墜されたばかりのリオンをヒュッケバインMK-Ⅱの背中で隠しながらクスハに声を掛ける。
「クスハ! 大丈夫か、無理ならば下がった方が良い」
破壊したリオンのコックピット部……そこにほんの僅かにある空間を見たクスハ、人間が納まるべき部分にある小さな箱。それが拉致された人間だと理解してしまったクスハは込み上げる吐き気を抑えることが出来なかった。
「だ、だいじょ……うっ……」
「クスハ、1回後退しましょう。リョウト君」
「……うん、僕なら大丈夫。リオも下がってくれて大丈夫だよ」
念動力持ちの中でも強力な念を持つクスハは僅かに残されていた人間の部分の死を恐れる念に当てられていた。そしてそれはリオやリョウト、ブリットも同じだったが、男性と女性の差があり。ダイレクトに念を受けてしまったリオとクスハに下がるようにリョウトとブリットは促す。
「レオナちゃんは大丈夫かい?」
「うっ、舐めないでちょうだい。私はこの程度ではへこたれはしないわ」
ジガンスクードのタスクの心配そうな言葉を気丈な言葉で言い返すレオナだが、その声に普段の声の張りは無い。
「レオナ、悪いがクロガネから弾薬を持ってきてくれ、あたしもラッセルも少し弾薬を使いすぎた」
「中尉……」
「上官の命令だぞ」
「……はい、すぐ戻ります」
不服そうだが、上官命令と聞いてレオナのガーリオンは反転し、クロガネへと引き返していく。
「すいません、中尉」
「気にすんな、だがレオナの分も働けよタスク」
「うっすッ!」
ラッセルのゲシュペンストに積み込んでおいた最後のM-13ショットガンのカートリッジを交換し、急降下してきたリオン目掛けて引き金を引くカチーナ。
「ちっ、胸糞わりぃ」
「そうは言ってもしょうがないだろ」
計都羅喉剣を振るうグルンガストがカチーナに通信を繋げながらぼやく、異星人の基地に突入したと思ったら戦っているのは洗脳や、肉体改造を施された同じ星の人間では苛立ちを覚えるのも当然だ。
「……判ってると思うが、激昂するなよ」
「一々言われなくても判ってる」
中尉と言う立場同士、キョウスケを戦闘指揮官にしているが、それでも完全にキョウスケに任せきりではない。激情型のカチーナが思ったよりも冷静だったのを確認し、クスハ、リオとのコンビを解散しているリョウトとブリットに声を掛ける。
「余り弾薬とエネルギーを使うなよ、敵の増援はまだ来るぞ。俺が一撃叩き込む、トドメは任せる」
「了解ッ!」
特機であるグルンガストはPTよりもはるかに燃費は悪い、だがエネルギーを使う武器を最小に押さえれば戦闘時間は格段に増える。一撃叩き込み、敵の出鼻をくじきそこをリョウトとブリットにトドメを刺すように命令し2機を引き連れてランドリオンの部隊に突撃していく中。イルムは戦況を見て小さく舌打ちをしていた。
(まだドラゴン達は出てこないか)
今戦っているのはあくまで地球のPTだ。だがエアロゲイターにはドラゴン、ライガー、ポセイドンと言う規格外の特機の存在がある。それがまだ戦場に出ていない……それは拉致した兵士を使い、こちらの精神と弾薬を削る目的だという事は明らかだ。
(鬱陶しい手を使ってきやがるぜ)
余りにも悪辣なその一手、そして同胞殺しをしなければならない事にイルムの顔はグルンガストのコックピットの中で鬼のような形相をしているのだった……。
4体のバレリオンの胴体にリボルビングバンカーを突き立てて容赦なく地面に叩きつけると同時に引き金を引いたアルトアイゼン・改。ゲッター線コーティングにより、並みのPTを越える耐久度を手に入れたとは言え、パイロットは生身の人間である。限界はもうとっくの昔に超えていた……。
「うっ……ぐ」
込み上げてくる血を飲み込みきれず、嗚咽するするキョウスケの声を聞いて即座にエクセレンがバックアップに入る。
「キョウスケ、無理しすぎよ」
コックピットの中で脂汗を流すキョウスケにエクセレンが声を掛ける。コックピットの中でキョウスケの額には大粒の汗が浮かんでおり、その顔色も決して良くは無い。
「……大丈夫だ。早く殲滅する事で敵の本陣を誘い出したい」
「それは判るわ、でも無茶しすぎよ」
カートリッジを交換しようとして、零れ落ちたリボルビングバンカーのカートリッジをヴァイスリッターが拾い上げる。
「バンさん、ごめんなさい。キョウスケがちょっと不味いの」
「了解した、各員アルトアイゼンとヴァイスリッターの穴埋めに入れ、残りの人員は私に続け」
まだ戦えるというキョウスケだが、目の前が歪んでいるのは明らか。ヴァイスリッターを簡単に振りほどけるだけの出力があるアルトアイゼン・改がヴァイスリッターに引きずられているのでそれは明らかだ。
「まだ敵の本陣は出てこないわ、そんな有様でどうするの? キョウスケ」
「……すまん」
「良いわよ、あなたのフォローをする為に私がいるんだからね。ほら、カートリッジを交換してあげるわ」
エクセレンの言葉に頷きリボルビングバンカーの空薬莢を排出する。そこにヴァイスリッターが替えのカートリッジをセットする。
「少し休んで、息を整えるだけでいいわ」
得意の空中戦を捨て、地表でオクスタンランチャーを構えるヴァイスリッター。その姿を見て、キョウスケはまたすまないとエクセレンに謝罪の言葉を口にして、ほんの少しだけ目を閉じて意識を集中させる。
「ガーリオン・レオカスタムの名は伊達ではない、ソニックブレイカーセットッ!!」
バンの駆るガーリオン・レオカスタム。獅子の名は偽りでもなんでもない、肩部と膝部に形成されたエネルギーフィールドは大口を開けたライオンその物であり、リオンやガーリオンが密集するエリアに飛び込むと同時にそのライオンを連想させるエネルギーフィールドで容赦なく敵の密集地帯を蹂躙する。
「バン大佐に続け、ソニックブレイカーセット!」
「「「「ソニックブレイカーセットッ!!」」」」
そしてバンが切り込んだ後をガーリオン部隊がソニックブレイカーの密集展開を行い、容赦なくリオン達を撃墜していく
「親父! まだかよ!?」
「いつまでももたねえぞッ!」
サイバスターとヴァルシオーネに護衛され、ゲッターVはその全身を翡翠色のゲッター線のエネルギーに包まれていた。
「良し、ターゲットマルチロック。オメガ・プレッシャー発射ッ!!!」
ゲッターVの全身を包んでいたゲッター線の光が弾けると同時にエアロゲイターに拉致されたリオンやガーリオンだけが地面に叩きつけられる。
「指向性の重力波による超広範囲攻撃……」
「それってもしかしてグランゾンって同じって事? ラトゥーニ?」
「ゲッター線が加わっているから、グランゾンより強力かもしれない」
「……はんぱねえな。だけど、今は味方って事がありがたいな」
地面に叩きつけられ圧壊していくリオン、そしてガーリオン。一歩間違えれば自分達も巻き込まれていたが、断続的に増援が送られてくる事を考えるとこうして一掃出来たのはありがたいことだった。
「クロガネ、敵機の反応はどうなっている?」
「あ、は、はいッ! 敵機の全滅を確認!」
ビアンからの広域通信で索敵結果を教えてくれと言われ、エイタが慌てた様子で敵機の反応が無いと言うことを伝える。
「そうか、だがこの程度エアロゲイターからすれば挨拶代わりだろう。本命がそろそろ来るぞ、気をつけたまえ」
ビアンの言う通り最初に地球のAMを送り出してきたのはただの威力偵察。地球側のAMが全滅した今、敵の本命が姿を見せると考えるのは当然の事だ。
「ッ! この感じは……ッ!?」
「アヤ大丈夫かッ!? うっ……俺もかよッ!」
敵の本命の出現を考え、分離形態で戦っていたSRXチーム。だが突如蹲りリュウセイとアヤの苦悶の声が周囲に響いた。
「リュウセイ! 大尉、しっかりして下さいッ!」
ライが即座にR-1とR-3のバックアップに入るが、2人の苦悶の声は一向に収まる気配が無い。
(この波形パターンは……ジュネーブの時のいえ、マイ・コバヤシの物と同じだわ……!)
クロガネの護衛の為にクロガネの周辺で待機していた白のシュッツバルトのコックピットの中でラーダがリュウセイとアヤの異変の正体に気づき、慌てて声を上げる。
「リュウセイ! アヤッ! T-LINKコネクターを40%カットして!」
その言葉に従い、リュウセイとアヤがそれぞれのコックピットで顔を歪めながら、コンソールを操作すると2人を襲っていた頭痛は嘘のように消え去っていた。
「リュウセイッ! 大尉、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。大丈夫だぜライ、心配させちまったな。俺は大丈夫だ、アヤは大丈夫か?」
「え、ええ……私も大丈夫よ」
頭痛が消えたアヤだが、さっきの念動力の中に自分の心の中を見通すような視線を感じ、その念波の持ち主の事に一瞬考えが向いたが、エ
イタからの緊急報告に顔を上げる。
「艦長! 新たな敵機が転移出現します!!」
転移で出現したのは無数のドラゴン、ライガー、ポセイドンの姿。だがそれだけではない、地響きと共に姿を現したそれに全員が絶句した
「「「「グオオオオーーーーッ!!」」」」
「め、メカザウルス! なんでエアロゲイターが……」
「アイドネウス島から離脱した固体を確保したんだろうよ、数が少ないのが救いだが……こりゃ不味いな」
数は4体と決して多くは無い、だがエアロゲイターの技術で更に改造されたであろう生物と言うよりも、ロボットと言う印象の強くなったメカザウルス・ゼンⅡが2体と3つ首に改造されたメカザウルス・ズーが姿を見せる。だが、エアロゲイターの増援はそれだけで終わりではなかった。
「全く、あんた達はどれだけあたしの計算を狂わせれば気が済むんだい?」
「ヒャーハハハッ! 最終ステージだッ! てめえらをぶっ殺してやるぜえッ!!」
そして最後に4つ腕に龍の下半身を持つ異形のドラゴンとライガーの名前通り、4つ這いの獣の姿でありながら、その背中に2つのドリルアームと2つの花弁のようなマニュピレーターアームを持つ異形のライガーが空間を引き裂くように姿を現すのだった……。
アタッド・シャムランはライドルスのコックピットの中で舌打ちをしていた。折角分析したハガネとクロガネのPT隊のトラウマシャドーは発動する事無く霧散し、予定を繰り上げ自らが戦場に出た事に苛立ちを隠せないでいた。
(まぁいいさ)
警戒するべきゲッターロボはいない、ならば今の内にリュウセイ達を洗脳して手駒にしてしまえばいい、4機ずつのドラゴン達とメカザウルスが4機。そしてドラグルとライドルスがあれば負けることはないと考えていた。
「フン……まぁ良いさ。それにしてもあんたらも馬鹿だねえ、ガルインやここにいる連中のように、あたし達に操られてる方が幸せだってのにねえ」
「どういう意味だ!?」
自分の言葉に真っ先に噛み付いてきたサイバスターにアタッドは嘲笑するような笑みを浮かべた。この連中はこんな簡単な事も判っていないのかと、これだから野蛮な猿は困ると笑みを深め、自分達が選りすぐれた種族である事を疑いもしない表情で告げる。
「考えてもごらん? 辛い過去やトラウマなんかに悩まされることなく……ただひたすら、戦いに専念出来るんだよ。あんた達には本望だろ?」
「ふざけんな! 俺達は好きで戦ってんじゃねえ!」
「お前達の尺度で私達を語って欲しくは無いな、エアロゲイター」
マサキとビアンの言葉にアタッドはますます馬鹿にするような声を上げた。
「い~や、好きで戦ってるね。ゲーザのようにさッ! 戦いが好きでもなけりゃ、わざわざこんな所まで来ないよ」
自身の横に滞空する異形のドラゴンの頬を撫でながらアタッドは不愉快な笑い声を上げる。
「そんな戦闘種族だから、ネビーイームとジュデッカはあんた達に目を付けたんだ。この銀河系の中でも突出した闘争本能を持つ地球人にね! そう、ゲーザ・ハガナー……いや、テンザン・ナカジマがそのいい例だよ」
アタッドから告げられたテンザンの名前にもしやと思っていたが、その予想が確信へと変わった瞬間だった。
「さあ、ゲーザ……奴らをあんたの仲間にしてやりな、多少傷物にしても、あんたと同じように身体を作りかえてあげるからね……ウフフ」
地球で死んだテンザンは頭部しか残されていなかったが、それを再生しゲーザへと作り変えたのはアタッドだった。エアロゲイターの技術力さえあれば、死人であったとしても生き返らせる事は不可能ではなかった。
「ヒャハッ! いいんだな!? ブチ殺しちまっても良いんだな!?」
「ああ、いいともさ! その方が扱いやすいからねえ!」
なまじ生きていて、自我が残っていたら扱いやすくて仕方ないよと笑うアタッドにゲーザは狂ったような笑い声を上げた。
「ヒャハハハッ! やってやるッ! やってやるってのッ! どいつもこいつも血祭りに上げてやるぜッ! プチプチ潰してやるぜ!!ッ プチプチプチっとなぁ! ヒャーッハッハッハッハァ!!」
その声、そしてその言動にゲーザがテンザンであることはリュウセイ達の頭の中にもあった。だがそれを実際に目の当たりにすると少なくない衝撃を受けていた。
「テ、テンザン……ッ!」
自分が殺した相手が再び目の前に立ちふさがる。その悪夢のような光景にリュウセイは思わず息を呑んだ。
「リュウセイ……判ってるな? 俺達には時間がない」
一度は殺した、だが洗脳されているのならば、もしかすれば今度は救えるのではないかと言う考えが脳裏を過ぎったリュウセイにキョウスケの冷酷とも取れる警告が告げられる。
「……情けは無用だぞ、どの道救うことは出来ない」
既に人間として死んでいて、そこをエアロゲイターによって生き返らせられたテンザンは最早人間ではない。割り切れとキョウスケに告げられ、リュウセイはR-1の操縦桿を強く握り締めた。
「ああ……俺達の手で終わらせてやるしかねえ……ッ!!」
「何を言ってやがる! 終わるのはてめえらの方だってのッ! ヒャッハッハッハァッ!!」
通信に割り込んできたゲーザの笑い声にリュウセイは顔を顰めると同時に、テンザン……いや、ゲーザを自分が倒すべき敵として睨みつける。
「そうさッ! その後で、あんた達に新しい人生を歩ませてやるよ! あたし達バルマーの忠実な兵器に仕立て上げてねえ! あはは、あーははっ!!」
狂ったように笑うアタッドにリュウセイ達の敵意が向けられるが、アタッドはそれこそがリュウセイ達戦闘種族である証拠だと高笑いを続ける。
「さぁ! 行きな! あいつらをぶっ殺して、お前達の仲間にしてやるんだよッ!」
アタッドのその合図でドラゴン達はPT隊に向かって駆け出す。
「リュウセイ! SRXだッ!」
「合体までの時間はコッチで稼ぐ!」
このような状況を想定して、SRXに合体していなかったのだ。ブリットやイルムが支援に入ってくれる中。SRXチームは合体フォーメーションに入る
「ヴァリアブルフォーメーションッ!!!」
ミサイルやドラゴンが投げつけたダブルトマホークが合体を阻止せんと攻撃を繰り出す。
「リュウセイ達の邪魔はさせない」
「ラッセル! 上行ったぞ!」
「了解!」
「はいはーい、そのくす玉は必要無いのよねえッ!!」
ラトゥーニ達の射撃がミサイルやトマホークを撃ち落し、火炎弾や電撃を吐き出そうとしたメカザウルスの前にはグルンガスト達が立ち塞がる。
「邪魔はさせないぜ」
「全く無粋な奴らだ。スーパーロボットの合体を邪魔するのは許されないと知れ」
ディバイントマホークやブーストナックルの一撃を叩き込まれ、メカザウルスの攻撃も防がれる。そしてホワイトスターの中に鋼鉄の巨神が降臨する。
「よっしゃあッ! 合体完了!」
地響きを立てて着地したSRXはドラゴンやメカザウルスではなく、ゲーザの乗るドラグルにその視線を向ける。
「リュウセイ」
「何だ? 何かトラブルか」
今正に駆け出そうとした瞬間にライからの通信。R-1のコックピットには異常はでていないが、もしかして何か異常が起きたのかと思っているとライは機体トラブルは無いと返事を返したが、その顔は神妙なままだ。
「判っているな? 大尉の事を……」
「ああ。ヤバくなったらR-3を切り離すんだろ?」
SRXはアヤに掛ける負担が大きい、ここからは連戦になる事を想定し最悪の場合の打ち合わせをライはしたかったのだ。
「……お前も頭の回転が速くなったな」
「うるせえ。宇宙空間に出れば脚はただの飾りだ。なくても戦える。それに……最悪の場合、SRXは俺1人で動かしてやる。その代わり、サポートをキチンとしろよ」
「誰に向かってそれを言っている?」
「ヘッ……。アテにしてるぜ、ライ」
「俺もだよ、リュウセイ」
ここが正念場であり、命の賭け所である。リュウセイとライは強い決意の光をその目に宿し、ドラグルに向かってSRXを走らせるのだった。
異形のドラゴンとSRXの激突を合図にホワイトスターの内部での戦いの幕が開いた。
「ヒャーハハハッ!! 死ねええッ!!」
「舐めんなあッ!!」
4つの腕から振るわれるダブルトマホークはその巨躯もあり、一撃でも当たればSRXでも致命傷になりかねない一撃だった。だが極限まで高められた集中力とゲッター合金によって作られたモーターにより、SRXは当初の想定を越える滑らかな動きを実現していた。
「がっ!?」
「おっらああッ!!!」
腕でダブルトマホークの切っ先を防ぎながら間合いに飛び込んだSRXの豪腕が容赦なく、ドラグルの頭部を貫き怯んだ隙にブレードキックの回し蹴りが胴体へと叩き込まれる。
「逃がすか、ガウンジェノサイダーッ!!」
「へっ! そんなの喰らうかよッ!!」
SRXの目から放たれた念動波とドラグルの頭部から放たれたビームがぶつかり爆発を起こす。
「どりゃああッ!!」
「がっつ!? なんで俺の場所が!?」
だが爆煙を突っ切り再びドラグルの間合いに飛び込んだSRXの容赦ない打撃がドラグルに叩き込まれる。
「リュウセイ! 余り調子に乗って突っ込むなッ!」
「判ってる! でもあの4つ腕は厄介だ! 1本だけでも奪うッ!」
近接戦闘においで腕の数と言うのは大きなアドバンテージの差となる。合体したばかりでエネルギーもリュウセイもアヤにも掛かる負担が少ないうちにリュウセイはドラグルの4つの腕の内1本でも粉砕する事を考えていた。
「貰ったああッ!」
「っ! てめえ! 腕をッ!」
振り払おうと無警戒に振るわれたドラグルの手首を掴み、SRXの超パワーで容赦なく肘から折る。リュウセイの目的が4つの腕を破壊することだと気付いたゲーザはSRXを間合いから引き離そうとするがリュウセイはそうはさせまいと距離を詰め、先手先手で攻撃を叩き込んでいく。
「!!!」
「いつまでも自分達が有利だと思うなよッ!」
量産型ドラゴン達は確かに脅威ではあった。だがフライトユニットを装備し、モーターなどを新調したゲシュペンスト・フライトユニットはドラゴンと互角とまでは言わないが、それでも決して一方的に追詰められるような状況ではなくなっていた。
「ちえいッ!!」
「!?」
「ふー……漸く掴んだぞ、この一太刀ッ!」
ブリットの駆るヒュッケバインMK-Ⅱには固定武装を除けば、シシオウブレード一振りしか武器を搭載していなかった。だが極限まで追詰めた事により、ブリットの才覚が覚醒していた。擦れ違い様の一閃、それでライガーの首は飛び地面に墜落する。
「凄い……だけど僕も負けてられない」
ブリットと異なりリョウトは単独でドラゴン達を撃墜するだけの能力は無かった。だからリョウトには自分に出来る戦いを全力でやる事を考えた、それは決して派手な戦いではない。むしろ地味ともいえる戦いだが、それでもリョウトの戦いは戦況に大きく影響を与えていた。
「チャフグレネード、1~4番連続射出、スパイダーネット射出!」
相手が生身ではなく人工知能だからこそ有効な一撃。チャフグレネードとスパイダーネットの乱射によって索敵能力を失ったドラゴンや、機動力をそがれたライガー達はDC戦争、そしてエアロゲイターとの戦いを切り抜けてきたPT隊にはただの的に過ぎなかった。
「ターゲットロック! ブラックホールキャノン発射ッ!」
「……そこッ!」
ヒュッケバイン009からヒュッケバインに乗り換えていたリオの放ったブラックホールキャノンの一撃は前後不左右になっているドラゴンを飲み込み、ラトゥーニの正確無比な一撃はライガーの翼を射抜きその機動力を奪い取る。
「ガーネット! 合わせろ!」
「そっちも外さないでよ!」
「行くぜッ!!」
機動力を失ったドラゴン達にアーマリオンに乗り込んだジャーダとフライトユニットを装備したガーネットとカチーナのゲシュペンストが追撃にでる。
「ソニックブレイカーァァッ!!!」
「「ジェットマグナムッ!!!」」
音速の3連撃が叩き込まれドラゴン達は僅かな時間差を残して爆発する。
「うっし! ミサイルクラスター発射ッ!!」
「ここまで来たんだから出し惜しみ無しで行くわよッ!!」
弾幕の中を潜り抜けるように真紅のゲシュペンストが進み、大口を開けていたメカザウルスの口の中にジェットマグナムを叩き込む。
「へっ全然怖くねえな、そっちはどうだ? レオナ」
「こちらも問題ありません、中尉」
確かにメカザウルスは戦力としては強力だった。そしてハガネやヒリュウ改で戦ったパイロット以外ならば太刀打ちできなかっただろう……だがアタッドは致命的なミスを犯している事に最後まで気付けなかったのだ。
「なんだ? こいつら全然怖くねえ」
「多分だが、AI制御のせいだろうよ」
メカザウルスが脅威たる由縁はその闘争本能にあった。だが制御しやすいようにAIで操作されるメカザウルスに本来のメカザウルスの闘争本能などは無く、強力な武器を持つ特機程度の脅威でしかなかったのだ。
「なんで、なんで!? こんなに簡単にやられてしまうんだいッ!?」
数も戦力も自軍が上のはずなのに追い込まれている。その理解出来ない光景にパニックになったアタッド、だが戦場でパニックになるということは死を意味している。
「それは人の心を理解しないお前には到底理解できないだろうよ」
横殴りの一撃に正気に戻る。だが正気に戻らない方がアタッドは幸せだったのかもしれない。ゲッターV、サイバスター、ヴァルシオーネ、そしてアルトアイゼン・改、ヴァイスリッターの5機に囲まれている事に気付いたアタッドは、即座にライドルスを走らせる。
「直線距離なら追いつけん道理は無いッ!!」
「なっ!?」
ただ機体性能だけで選んで乗り込んだアタッドにライドルスを操る技能は無く、直線に逃げるだけのライドルスに追いついたアルトアイゼン・改のリボルビングバンカーが突き刺さる。
「ぎっ!」
「リューネ」
「判ってるよ、親父ッ!!」
ライドルスは巨大化し、異形になった為に本来のライガーの飛行能力を持ち合わせていなかった。僅かに浮遊し、高速で移動するという特性上背部に喰らったリボルビングバンカーの一撃に高度が僅かに落ちた。そしてそこを狙い済ませたようにゲッターVとヴァルシオーネがその手に宿った螺旋状の光を向ける。
「はいはーい、親子攻撃に混ざるのはちょっと思うところがあるけど、私も混ざるわよ」
「ふふ、構わんよ。行くぞ! リューネッ!!」
「ああ、判ってるッ!」
「「クロスマッシャーッ!!!!」」
ゲッターVとヴァルシオーネのクロスマッシャーが交じり合い、巨大な一条の光になる。ゲッター線の光も混じったその光に恐怖したアタッドは背中の4本のマニュピレーターアームを全てドリルアームへと変形させる。
「じょ、冗談じゃない、あんなの喰らう訳にはッ!?」
地中に逃げようとしたアタッドだが、狙い済ましたヴァイスリッターの一撃がライドルスの顔面を貫く。それはダメージなどは殆どなかったが、一瞬硬直させるには十分な威力があった。
「ぐ、ぐああああああッ! くそ! ふざけるんじゃないよッ! あ、あたしがこんな所でぇッ!! ゲーザァッ!」
クロスマッシャーの光に飲み込まれながらも、ライドルスの機動力で直撃を回避したアタッドがゲーザの名を呼んだが、アタッドの耳に届いたのはリュウセイの裂帛の気合に満ちた雄叫びだった。
「天上天下念動無敵剣ッ!!!」
「うぐっ……かっ…!?」
「う、嘘だろッ!?」
SRXの手に握られた天上天下無敵剣の一撃でコックピットブロックは僅かに外しているが、唐竹割りに両断され爆発する一歩手前のドラグルの姿にアタッドは信じられないと言わんばかりに目を大きく見開いた。だがそれは夢でも、幻でも無く現実だった。
「今度こそ終わりだ、テンザン!!」
「かっ……かか……ッ!。そ、そそそうだ……あ、あああ、ああッ! 明日は……ははは……ッ! 明日ははは………バーニングググPTの……けけ決勝大会じゃねえええか……」
爆発するドラグルの中でゲーザではなく、テンザンの記憶が蘇ったゲーザの壊れた声が周囲に響き渡る。
「い、いいい家に帰って、マママシンの設定しなきゃなななな……そ、それでででで……どいつもこここいつもブチ倒しててて、やる……ッ! どいつもこいつももも…ななッ!! ヒャ、ヒャハハ……ヒヒヒハハハ……! ヒャハハハハハ…ッ!!! ヒャーッハッハッハッハァァァ!!」
狂ったように笑いながらゲーザ……いや、テンザンは最後まで笑いながらドラグルの凄まじい爆発の中に消えていくのだった……。
「嘘だろ、こんなの、こんなあっさりやられる訳が無い!」
自慢の戦力が簡単に撃破され、自分をも追詰められている事に動揺を隠し切れないでいた、だがそれでも冷静になろうと務めていた。自分はバルマー人だ、こんな所で死ぬ訳がない。パニックになっているアタッド、味方はいないかと探すが殆ど撃墜されこの場に生き残っているのは自分1人だと気付いたその時。獣のような雄叫びが周囲に響き渡った
「グオオオオッ!!!」
「ひっ! や、止めろ! やだ!? こ、こんなの、嫌だ、嫌だああアアアアーーーーッ!!!」
アストラナガンがライドルスの頭を踏みつけ、そして容赦なく放った漆黒の光がライドルスの全身を飲み込み、その場に残ったのは蜘蛛の巣状のクレーターと僅かに残ったライドルスの残骸だった。
「暴走しているのか……」
「これ凄くやばい状況なんじゃ」
ライドルスの残骸を何度も踏みつけ、完全に破壊したアストラナガンの真紅の瞳がゆっくりとリュウセイ達に向けられた。
「グルルゥ……グオオオオオオオオッ!!!」
次の瞬間凄まじい雄叫びが周囲に響いた。それは新しい獲物を見つけたと言わんばかりの飢えた獣の咆哮なのだった……。
第81話 因果の鎖 その3
今までは前哨戦。ついにボスユニットとしてのアストラナガン(暴走)が降臨しました。ゲーザ、アタッド戦がさっぱりしていたのはメインがアストラナガン戦だからですね。次回は武蔵達も合流し、アストラナガン戦。イングラムがどうなるのか、そこを楽しみにしていてください。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い