第82話 邪悪なる十字架 その1
アストラナガンを含めた機体を全て回収したクロガネは爆発を繰り返すホワイトスターから決死の脱出を行っていた。
「回収した機体は一時的に拘束ロープで固定!パイロットはコックピットで待機だ!」
機体を固定しなければ死人が出るから整備班が必死で回収した機体を格納庫に固定する。だがその間も爆発の衝撃はクロガネを襲い続けている。
「ロブさん! ゲッターロボとブラックエンジェルは対応するハンガーがありません!」
だが特機の中でも特殊なゲッターロボと回収したアストラナガンを固定する術がないと叫ぶ整備班にロブはどうするか考える。重力制御されていてもこれだけ上下左右に激しく揺れていては機体も動き回る。
「最終手段だ! アンカーで格納庫の床に固定! 作業が終了した者は全員格納庫から退避してくれッ!」
整備班に指示を出す中、現場主任であるロブだけは最後まで格納庫に残る。全ての作業終了を確認するまで責任者としてその場を離れる事は出来ないからだ。
「マリオン博士も早く!」
「ぎゃーぎゃーとうるさいですわ。重力制御されているので心配ありません」
「ですが!」
「オオミヤ博士。戦いはまだ終わりではないと判っていますか? 私はゲシュペンストMK-Ⅲを万全にする義務がある」
その言葉にロブは黙り込むしかなかった。確かにホワイトスターは破壊した、だがエアロゲイターの首魁であるレビ・トーラーは今だ健在である。それは格納庫に広がる雰囲気で感じ取っていた。
「……判りました。なら俺も作業をします」
「ええ。それがよろしいかと……まだ戦いは終わってはおりません」
大破しているゲシュペンスト・リバイブ(K)とゲシュペンスト・シグを再び戦場に出すことは難しいし、他の機体も磨耗している。だが戦いはまだ終わりではない、少しでも良い万全とは程遠いが今出来る最善を……それだけを考えてマリオンとロバートは動き出す。2人は研究者であり、けっして戦闘者ではない。だが、それでも爆発の中に混じる凄まじい憎悪と殺意は感じ取っていた。それはまだホワイトスター攻略戦が終わっていない事を如実に現しているのだった……。
ホワイトスターを囲うように展開されているヒリュウ改を初めとした連邦艦隊。突入したクロガネが無事に帰還することを祈っていた艦隊全機の艦橋に緊急警報が鳴り響いた。
「ホワイトスター内部より高エネルギー反応!!」
「何が起きたのですッ!? クロガネより通達はありませんか!?」
突如鳴り響いた警報に最悪のケース。それはクロガネ轟沈による、自動連絡がなかったかとユンに尋ねるレフィーナ。最悪の場合はヒリュウ改、そして連邦艦隊すべてに搭載されているMAPWを発射する予定になっているが、クロガネが無事に戻ると信じているレフィーナは発射命令を下したくないと思っていた。勿論それはレフィーナだけではなく、他の戦艦の指揮を取っている艦長全員の思いでもあった。
「ふ、不明です! ど、どうしますか! MAPWの発射準備を行いますか!?」
「もしや……ッ!? 敵機の確認をしてください!」
MAPWの発射許可を求めるユンにショーンが何かを感じ取ったようで、索敵を行うように命令する。
「あっ……ッ! 艦長、敵機が……敵機動兵器が活動を停止しました!!」
バグスやバードを初めとした無人機が活動を止めた。それはクロガネがホワイトスターの中枢部を破壊したことを示していた。
「クロガネは……!? クロガネはどうなったの!?」
だがそれなのに作戦成功の連絡も無い、レフィーナの脳裏に先ほどの高エネルギー反応がクロガネが自爆したのではと言う考えが過ぎり、クロガネの姿を必死に探す。
「おお、クロガネ……ッ! 艦長! クロガネですぞッ!」
「ダイテツ艦長……皆……無事だったのですね……!」
艦首大型回転衝角を半壊させながらも無事に姿を見せたクロガネに連邦艦隊からの歓声が上がる。そしてそれに遅れて広域通信でダイテツの姿がモニターに映し出された。
『こちらはクロガネ艦長、ダイテツ・ミナセだ。 本艦とPT部隊はホワイトスター中枢部の破壊に成功した』
その報告を待ち望んでいたレフィーナ達は再び歓声を上げようとしたが、クロガネの後を追ってホワイトスターから出現した無数の無人機に息を呑んだ。
「か、艦長ッ!? りょ、量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンを確認! 数……5……10……15!? そんな、まだ増えていますッ!!!」
「何ですって!? きゃああっ!!」
ユンの報告と同時にヒリュウ改を初めとした戦艦全てが被弾し、あちこちから火柱や爆発が上がる。それは出現したドラゴン達が一斉に投げつけたダブルトマホークによるダメージだった。
「うあああっ!!」
「じょ、状況を報告しろ!!」
そしてそれはクロガネにも襲い掛かっていた。今正に爆発するホワイトスターから離脱してきたばかりのクロガネにはその攻撃を避けるだけの余力が無く、その衝撃でオペレーター席から転がり落ちたエイタに変り、ユーリアが被害状況の報告を始める。
「ざ、残存艦隊に全てにダブルトマホークが直撃!! カタパルト破損艦が10隻中4! 本艦右舷部、第三艦橋、大破!!」
奇襲そしてドラゴン達の一斉攻撃で少なくない被害を受けた。その報告を聞いてダイテツは顔を歪める、着艦したばかりのPT隊、そして特機はエネルギーは勿論弾薬の補充すらままならない。
『レフィーナ艦長! 本艦の機体は全機エネルギー及び、弾薬、さらには装甲版の破損ですぐ出撃出来る状況ではない!』
今の今までホワイトスターで戦っていたのだ。クロガネからの通信を聞くまでも無く、レフィーナ達は今クロガネもクロガネの搭載機も戦闘できる状況ではないと言うことは嫌でも判っていた。
『だから命じる! クロガネのPT隊を万全にするための時間を命を賭けて稼げッ!』
それは冷酷な死ねと言う命令だった。軍人である以上死ねという命令を受けるという事はレフィーナは勿論。ヒリュウ改のクルーは理解していた、そしてオペレーションSRWに参加する際に全員が遺書を地球に残している。この場にいる全員が死を覚悟して……いや、死ぬ事を前提にしてホワイトスター攻略戦に参加していた。
「了解です! ユン! MAPWの発射準備! それと連邦艦隊で出撃可能な機体の順次出撃を!」
今の最大戦力はクロガネだ。だが連戦で消耗している上に燃料も弾薬もなければ出撃できる訳が無い。それにパイロットの疲弊もある、わずかでも身体を休ませなければ出撃しても撃墜されるリスクが高まるだけだ。
『各機出撃ッ!』
『クロガネのPT隊の再出撃の準備が整うまで死ぬ気で戦線を維持しろッ!』
『各員ここが命の張り所である! だが私はお前達にだけに死ねとは言わん! 死ぬのならば私も共に逝こう! 地球の命運は我らにか懸かっている! 各員奮起せよッ!』
それでもカタパルトを失っている戦艦、今の攻撃で乗組員の大半を失った艦もある。それらの艦隊が時間を稼ぐ方法は1つしか残されていなかった。
「か、艦長! スター5! コバルト7がホワイトスターに突貫を始めました!」
「それに続くようにスター2、4も艦隊を組んでホワイトスターにッ!」
それらは奇しくもカタパルトを失った艦隊だった。何をしようとしているかなんて態々言われるまで無い、止めさせようと通信を繋げようとした時スター2から通信が入った。
『私達は地球を守る為に集まった、それがこの大事な場面で……ザザザア……たた……えん……のは……ザザアア……ま……ならない』
『歌えッ! 我らの死は決して無駄じゃない! ザザザアア……そうだ……無駄じゃないッ!』
『軍人の底力を見せてやれ!』
『行くぞぉ! 怯むな!』
『ははっはあッ!!! ははははーーーーッ!!! 後は頼んだぞ!! ダイテツ! レフィーナ中佐ッ! はははッ!!! はーははっ!!!』
ノイズが走ったスター2、コバルト7はドラゴン達を巻き込んで自爆し、それに続くようにスター4・スター5。そして乗組員の大半を失った戦艦達後を追いかけていってはドラゴン達の攻撃を受け爆発を繰り返しながらも、ホワイトスターへと突貫し自爆していく。
「ああ……そ、そんな……」
「くっ……」
『嘆くな! 涙を流すなとは言わぬが哀れむな! 彼らは自らの使命を全うしたのだ』
『PT出撃完了! MAPWも全弾使用しました! これより本艦も突貫します!』
『待て待て! 単独で行っても死ぬだけだ! 我らも行くぞ!』
『おうともよ! 続け続けええッ!!』
笑いながら死んでいく友軍達の姿にダイテツは唇と拳を強く握り締める。死ねと命令したのはダイテツだ、だが無駄死にはさせない。与えられた1分1秒を決して無駄にするなと声を張り上げる。
「整備員各員に告げるッ! 友軍の思いを無駄にするな! 与えられた時間を無駄にするんじゃない! パイロットは少しでもいい身体を休め出撃に備えろ! これが最後の戦いであるッ!」
ダイテツの血を吐くような叫びと、クロガネを揺らす巨大な爆発。それが何を意味するのか知っているクルーは唇を噛み締め、目に涙を浮かべながらも自分に出来る事を、そして自らの使命を果たす為に動き出すのだった……。
クロガネの医務室にイングラムと武蔵の姿はあった。イングラムは過度の疲労と衰弱でアストラナガンから降りると同時にその場に崩れ落ち、武蔵はパイロットへの防衛機能を一切持たないゲッターロボで何度もホワイトスターに叩きつけられた事で全身打撲と頭からの流血……両者とも言うまでも無くドクターストップである。
「頭の血だけ止めてくれれば良い! オイラはまだ行けるッ!」
「ひえっ! お、落ち着いてください!」
「オイラは落ち着いている!!」
ドクターに怒鳴りつける武蔵の姿はどう見ても冷静ではない、艦内放送を聞いて黙って治療を受けれるほど武蔵は冷酷な人間ではない。ゲッターロボで出撃すれば僅かでも人死にを減らせる――それが判っているから少しでも早く出撃したかったのだ。
「武蔵君。無理をするな、ここは私達に任せるんだ」
「エルザムさん……でも」
アストラナガンとの戦いで大破したのはリバイブ(K)とシグだけではない、ゲッターロボも細かい機器を破壊され、すぐに出撃出来る状態ではない。
「でもではない、今のまま出撃して的になるつもりか?」
「……ッ」
エルザムの強い口調に武蔵は拳を握り締め、唇を噛み締めた。全く持ってその通りだった、ゲッターのパイロットだからこそ判る。今のまま出撃してもゲッターに出来る事が殆ど無いと言う事は誰でも無い武蔵本人が一番理解していた。
「総帥が最悪の場合ゲッターVを使用するように言っていた。今は治療に専念するんだ」
「エルザム、出撃準備が出来たそうだ」
「判った。ゼンガー、私もすぐに行く」
頭に包帯を巻いて、頬にガーゼを張ったゼンガーが小さく頷き駆けて行く。その姿を武蔵は悔しそうに見つめていた。
「ドクター。武蔵君の治療が終わったら彼の好きにさせてやってくれ」
「……エルザム少佐。はい、しかし医者として引けない所もあります。だから……時間を頂きます」
「ああ、大丈夫だ。私達は負けないよ」
そう笑いエルザムも武蔵から背を向けて駆けて行く、残されたのは武蔵とイングラム、そしてイングラムをここまで運んできたリュウセイ達SRXチームだった。
「武蔵、俺達も行くぜ」
「大丈夫なのか……SRXはもう使えないんだろ?」
武蔵の言葉にリュウセイは苦笑する。イングラムを操っていた赤い影を両断した念動次元斬はSRXに過度な負担をかけ、再合体の出来ない状態になっていると医務室に運ばれている間に聞いていた。だからこそ大丈夫かと尋ねたのだ。
「心配ない、SRXだけが俺達の武器じゃない。仲間が居る」
「ライ……ああッ! 心配ねえよ武蔵! 仲間が居るから俺達は負けないッ!」
「……だから行って来るわね」
リュウセイ達も武蔵に背を向けて医務室を出て行く、その姿を見つめていると武蔵はその肩をドクターに叩かれた。
「早く座って、少しでも早く出撃したいなら」
「……はい、よろしくお願いします」
いま自分がやることは仲間を信じて、そして仲間の為に万全な状態で戦えるだけの準備をする。それが武蔵が今出来る最善の戦いなのであった……。
ホワイトスターから出現した無数の量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンはその数は恐ろしいほどに多く全て20機ずつ出現していた。それは補給を終えたギリアム達に絶望感を与えた、だがそれは最初の数分間だけだった。
「!!!?」
「!?!?」
時間差でドラゴンとライガーは爆発し、宇宙空間にその残骸を撒き散らす。ドラゴンを両断したサイバスターはその手にしているディスカッターを信じられない様子に見つめ、ライガーを背後から貫いたオクスタンランチャーのBモードの再確認をするヴァイスリッター。
「弱くなってる?」
「……そうとは言い切れないと思うわよ。あれたぶん……ガワだけよ」
ホワイトスターから定期的にドラゴン達が出撃してきているが、装甲版が足りていない物や片腕のない物が徐々に混じり始めている。
「この場に私達を留めるためのデコイか」
「留めて何をしようって言うんだ? エアロゲイターはよ」
ドラゴン達は確かに弱体化している。だがそれでもこの宙域から逃がさないと言わんばかりにその数を増やしている。
「決まっているでしょう? 私達を回収する為によ」
「ま、それしかねえわな」
居住区は破壊したが、エアロゲイターの目的が成長しきった自分達を回収することであると言う事は全員が理解していた。この執拗な足止めは時間稼ぎであることは明らかであった。
「相手の目的が何であれ、立ち塞がるのならば全て撃ち貫くのみッ!」
「考える事は無い、我らの前に立つのならば全て打ち砕くのみ!」
「はいはい、それは良いけど、ちょーっと嫌な感じよ。キョウスケにボス」
エクセレンが普段被っているお調子者の仮面がはずれ、その下に隠された冷静な面が顔を出す。雰囲気が変わっている事に勘のいいものは気付き始め、そして次の瞬間にはホワイトスターから降り注いだ光の雨にクロガネとヒリュウ改を初めとした連邦艦隊の全ての戦艦が被弾していた。
「今のはなんだ!?」
「でたらめに撃った割には正確すぎる……あれは戦艦だけを狙った攻撃だッ!」
しかし敵の攻撃はそれだけでは留まらない、最初に気付いたのはクロガネの格納庫で必死に機体の整備を行っているビアンだった。
「熱源が移動している? ユーリア! ホワイトスターの位置を確認しろ! いそげッ!」
格納庫からブリッジに向けて叫ぶビアン、そしてその声を聞いたユーリアとエイタは同時にホワイトスターの位置を確認し、その顔を驚愕に歪めた。
「ホワイトスターが地球にむけて移動を開始ッ!」
「あの要塞はまだ生きてるのか! 全「待て! ダイテツ中佐! 要塞内部から巨大な熱源を確認した!」
ホワイトスターへの攻撃命令を下そうとしたダイテツにユーリアの静止の声が響き、ホワイトスターの外骨格が内部から吹き飛びそこからまるで雛が孵るように巨大な機動兵器の拳が姿を現したのだが……それは1つではなかった。
「……何がでてくるって言うんだよ」
「やばい物って言うのは確実ですね、これは」
PTの胴体よりも遥かに大きい4つの拳がホワイトスターの外を掴み、そこから異様なシルエットの特機が姿を見せた。上半身は人型だが、下半身は蛇のような細長い姿をしており、胴体から伸びる4つ腕と合わせて機動兵器でありながら、生き物のような印象を受ける。その機体の姿を一番最初に確認したリュウセイの驚愕の声が上がる。
「な、何だ!? あのデカいロボットはッ!?」
自分達の知っている特機と比べても余りにも巨大すぎるその姿に驚いていたリュウセイだが、次の瞬間にはその顔を苦痛に歪めていた。
「つッ!!」
「!」
「く!?」
「な……!」
「うっ!」
「今のは……何ッ!?」
「こ、この念は……ッ! まさか……そんなッ……」
それはリュウセイだけではなく、念動力を持つリョウトやリオ、そしてクスハやブリットと言った全員に激しい頭痛と共に自身の念動力が強制的に引き出されているような違和感を覚えさせていた。
「我が名はレビ……。レビ・トーラー……」
異様な気配を放つ巨大な特機から穏やかとも取れる少女の声が周囲に響き渡る。それはホワイトスター出現と共に地球全土に届けられた降伏勧告を行った者と同じ声だった。
「あれが……レビ……」
「……エアロゲイターの統率者か……」
やっと姿を見せたエアロゲイターの支配者。だがギリアムとラーダはそれぞれの機体の中でその顔を歪めていた。
(私とギリアム少佐の予測が正しければ……あの子も他のエアロゲイターと同じく……)
(精神制御を受けた地球人だと言うことになる。そして、その正体は……マイ・コバヤシ)
レビを名乗る少女もまたゲーザや、ガルイン……いや、テンザンやカーウァイ大佐と同じく操られていたイングラムによってホワイトスターに運ばれた地球人だ。その事は全員が知っているが、レビがアヤの姉妹である可能性は口にしていないが、その類稀なる念動力で本能的にアヤはそれを感じ取っていた。
「選ばれしサンプル達よ……これ以上の抵抗は無駄だ。このジュデッカを破壊せぬ限り……ネビーイームを止めることは出来ん。大人しく我らの軍門に降るが良い」
それは最後通告ともいえる降伏勧告だった。その言葉を受け入れる者は誰もいなかったが、その中でレビの念と真っ向からぶつかっていたリュウセイが怒鳴り声を上げた。
「それで、てめえらの兵器となって戦えってのかッ!? あのテンザン・ナカジマやカーウァイ・ラウ大佐みたいにッ!」
「そうだ。その為に我々はネビーイームより先に地球へメテオ3を送り込み……地球人類へEOTを与えて兵器としての進化を促し、その
過程を見守ってきた。その中にもお前のような人間は含まれているぞ、サイコドライバー リュウセイ・ダテ。ふふふ、あえて嬉しいよ、私の同類にね」
「サイコ……ドライバーッ!? それになんでお前が俺の名前を……それにサイコドライバーって何だよ……お前は俺の何を知っているって言うんだッ!」
自分の名前を知っている事。そしてサイコドライバーと言う謎の言葉と共に自分の同類と言われた意味が判らず怒鳴り声を上げる。
「ふふふ。そんなに知りたければ、我らの軍門に下るがいい。我々が与えて来た幾多の試練を乗り越え……最終的にサンプルとして選び出された者が、お前達なのだ。誇るがいい、お前達は我らバルマーに選ばれたのだ」
レビは上機嫌に言葉を続ける。エアロゲイターと呼んでいたレビ達がバルマーと言う星の侵略者であり、そして何らかの目的の為に地球に訪れた。レビ達の言葉を借りると戦力として優秀な人類を探していたと言う事は判る。だがそれが何故地球人だったのか理解できないでいた。
「技術レベルはお前達の方が高いにも関わらず、ワシらを戦力として必要とする理由は何だ?」
「数年に渡る調査の結果、地球人は他星の人種に比べ、強い闘争心と高い戦闘能力……そして、他星の技術を短時間で吸収する、柔軟かつ優秀な知性を持つ人種であると判った。さらに、魔装機神と呼ばれる兵器のように……地球には独自の技術力で超高性能な兵器を造り出す文明も存在している。地球人は……この銀河系の中でも、類い希なる力を持った優性戦闘種族であると同時に、ゲッター線に見初められた存在であるのだよ」
「……優性戦闘種族……なるほどな。言い得て妙かも知れん」
争いを好む者は決して多くは無い。だが大事な者を守る為に力を付け、そしてエアロゲイターに匹敵する力を手に入れた地球人は確かに、優性戦闘種族と言っても過言ではないかもしれない。それを本人達が望んだ物では無いとしても、それは純然たる事実であった。
「地球人が何ゆえにそのような進化を遂げたか……その理由は紛れも無くゲッター線がお前達の進化を促したのだ。かつて宇宙の全てと戦いそのすべてに勝利したゲッターロボにな」
「ゲッターロボが宇宙を支配した!? なに訳の判らない事を言ってやがる!」
「………武蔵がそんな事をしたとは思えないわよね」
「それにゲッター線が人類の進化を促したとか、そんな馬鹿げた話を信じる訳には行かないわ」
ゲッター線はどこまで言ってもエネルギーだ。それが宇宙を支配したや人類の進化を促した等と言われてもそれを受け入れる事など出来るわけがなかった。だが黙って話を聞いていたキョウスケはレビの目的を理解した。
「……読めた。お前達の目的は……ゲッター線に選ばれた地球人という兵器を大量に『生産』することか」
「大量生産だと……!? どういう意味だ、キョウスケ?」
レビの言葉の中には隠しきれないゲッターロボに対する恐怖が見え隠れしていた。しかし、それでいてゲッターロボを回収しようとしたり、こうして量産型ドラゴンを自軍の戦力として使っている理由をキョウスケはキョウスケなりに推理していた。
「レビの言う通り、俺達はあくまでもサンプルに過ぎない……だが、だからこそ、奴らは俺達の様々なデータを基に……大勢の地球人を捕らえ、兵器として調整する。そして優秀な成績を残したサンプル同士を掛け合わせ、更に優秀な兵士を作り出す。それがレビ・トーラー、お前の目的であり、ホワイトスターはそのプラント……生産工場だ」
最初に突入した居住区や、中枢部を破壊する時に見たと言う医療施設。それらの情報から導き出した答えをキョウスケは口にした。それは荒唐無稽と言い切るには説得力があり、そして現実味が合った。何故ならば全員がそれらの光景を実際に目の当たりにしていたからだ。
「初期段階に、その実験台とされたのがカーウァイ大佐……」
アンドロイドに改造され実験データや分析に利用された「カーウァイ大佐」が最初の被害者であり、実験台であった。
「最近ではテンザン……」
生身のまま別の人物の人格を植えつけられ、兵器として利用された「テンザン・ナカジマ」
「手っ取り早く精神コントロールで……ってのが、クスハちゃんね」
その2人の実験を経て得たデータでもっと効率よく、地球人を兵器とする方法のテストケースにされた「クスハ」。それらは徐々に時間を掛けない調整方法としてバルマーが実験を行った結果だった。
「概ね正解だ。だが我らが最も重要視しているのはゲッターロボのパイロットである武蔵とサイコドライバーであるリュウセイ・ダテだがな。あの2人のデータを持つ子供ならばさぞ優秀な兵士となることだろう」
そしてレビはキョウスケ達の推理を事実として認めた。そして大量生産の意味もサンプルとして回収した優秀な男女を交配させる為だと口にしたのだ。
「レビ・トーラー……お前は我々を収集した後、どこへ運び去るつもりだ?」
「それに答える必要はない。お前達はただ……バルマーの兵器となれば良いのだ。バルマーの傘下で永遠に幸せに暮らすことが出来る、これほど幸福なことはないぞ? これが最後だ。降伏しろ、今ならば優しく調整してやろうじゃないか」
「悪いが、その誘いは断らせていただこう! 我らはお前の思いとおりには何一つなりはしない!」
レビの最後通告だという降伏勧告をエルザムがきっぱりと断る。だがレビにとっては予想通りだったのか、嘲笑するような笑い声を上げる。
「ふふふ……自ら生きる道を閉ざすつもりか?」
「……押し開く。お前の結界ごとな……ッ! 俺達の道はこの手で切り開く」
リボルビングバンカーの切っ先がジュデッカへと向けられ、それに続くように出撃している機体全ての武器がジュデッカへと向けられた。
「ならば来るがいい。我らに抵抗する気力が無くなるまで、叩きのめしてやろう。噛み付く犬の躾をするのも主人としての勤めだからな」
嘲笑うかのように動き出すジュデッカの目が怪しく光り輝き、それを合図にして最終決戦の幕が開くのだった……。
第83話 邪悪なる十字架 その2へ続く
邪悪な十字架と言うことでジュデッカ戦はその3くらいまで書いて行こうと思います。最後の審判者は1話くらいでエピローグを加え、全87話でOG1は完結にしたいと思います。このジュデッカ戦はアニメの要素を少し付け加えることが出来たらなと思います、結構好きなんですよね。あの機体、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い