進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

85 / 400
第83話 邪悪なる十字架 その2

第83話 邪悪なる十字架 その2

 

応急処置を済ませ、最後の鎮痛剤の点滴を打っている武蔵はイングラムの隣のベッドで横になっていた。

 

「……イングラムさん、あんた起きてるだろ?」

 

「……起きてるじゃない、今起きたんだ」

 

カーテンが開きイングラムが姿を見せるが、その格好はパイロットスーツのままでベッド横になっている。だが、その腕には武蔵同様点滴の針が刺されていた。

 

「なんであんたまで点滴してるんだ?」

 

「レーションで食事を済ませていたからな、栄養失調一歩手前だ」

 

「飯食えよ、飯。なにやってんだよ、あんた……」

 

武蔵の飯を食えと言う言葉に苦笑するイングラムだったが、ベッドから身体を起こして乱暴に点滴の針を引き抜いた。

 

「時間が無い、バルマーの最も優秀で愚かな兵器が起動してしまう」

 

「……そんなにやばいものなのか?」

 

「地球を滅ぼす最終機構だ」

 

「なんでそんなもんを……サンプルじゃないのか?」

 

「自分に牙を剥く者はいらないと言うことだ。それで、お前はどうする?」

 

パイロットスーツに再び袖を通し、机の横に置かれていた経口食糧のパックを咥えるイングラムの問いかけに武蔵は自分の腕に刺さっている点滴の針を抜いて、ベッドの横の机のヘルメットに手を伸ばす。

 

「勿論決まってる。オイラも行く」

 

「ふ、そう言うと思っていた」

 

ドクターがいない隙に2人は医務室を飛び出し、クロガネの格納庫へと走る。

 

「それで最終機構とやらを起動させないにはどうすればいい?」

 

「ネビーイームの中枢が破壊された段階で起動することは確定している。厳しいのは判っているが、ジュデッカを速攻で撃墜して、アイドネウス島に向かう」

 

アイドネウス島の言葉に武蔵はまさかと言う顔をし、イングラムは勘が良いなと笑った。

 

「まさかあの……隕石?」

 

「そうだ。あれがバルマーの最も優秀で最も愚かな兵器、セプタギンだ。ビアン・ゾルダークはそれに気付いて、封印していたが、あれは

そんな物で封じれるものではない。完全に起動すれば15分ほどで地球は結晶に包まれ滅ぶ」

 

たった15分で地球が滅ぶと聞いて武蔵の顔も引き攣る。

 

「バルマー? それともエアロゲイターって言うのは馬鹿なのか?」

 

「ふっ、馬鹿に決まっているだろう」

 

そんな話をしているうちに2人の姿はクロガネの格納庫に到着していた。周りに人間がいない事を確認し、武蔵はベアー号に、イングラムはアストラナガンのコックピットに身体を滑り込ませる。

 

「待て! まだ補給も修理も万全ではない!」

 

2人の姿に気付いたビアンがロブやマリオンと共に姿を見せる。だが2人は既にコックピットの扉を閉め、出撃準備を始めていた。

 

「ビアンさん! ゲッターで出ます! 状況が悪いんでしょう!?」

 

「そう言う訳だ。心配するな、俺はバルマーに組する事はない」

 

アストラナガンのカメラアイに光が灯り、格納庫の手動開閉レバーの前に向かう。その姿を見てはビアン達も格納庫にいるわけには行かず、安全区域へと駆け込み格納庫のマイクで2人に声を掛ける。

 

『その黒い機体は修理と補給はすんでいないが』

 

「問題ない、再生能力と無限動力を搭載している。1時間も休めば再び戦闘可能だ。武蔵、俺は先に出る」

 

格納庫を手動で開放し、アストラナガンが黒い翼を広げ勢いよくクロガネから出撃していく。それに続くようにゲットマシンからも火柱が上がる。

 

『武蔵君、ゲッターロボは応急処置程度しか済んでいない。無茶は利かん、それと無事に戻ってくるんだ。良いな……?』

 

「了解です、修理ありがとうございます。よっしゃあ! 行くぜぇッ!!」

 

自動操縦のイーグル号、ジャガー号が出撃し、その後に続くようにベアー号もクロガネの格納庫から飛び出していくのだった……。

 

 

 

 

 

 

ホワイトスター攻略戦から、爆発炎上するホワイトスターからの決死の脱出、そしてそこに大量の量産型ドラゴンの襲撃。それらは確実に機体へのダメージとして蓄積していた。

 

「ちいっ! このアーマリオンとやらは操縦しにくくてかなわんッ!」

 

「我慢しろラドラ! 俺だって今更ノーマルのゲシュペンストの操縦は厳しいぞッ!」

 

それぞれの機体が大破しているラドラとカイは他の艦隊に搭載されていた量産型アーマリオンと量産型ゲシュペンストMK-Ⅱ・F型装備で出撃している。だがそれぞれの本来の機体とは比べるまでも無く弱い機体に2人は四苦八苦していた。

 

「ふふふ、どうした? ジュデッカを倒すのではなかったのか?」

 

リュウセイ達の機体と異なり万全のジュデッカ。その体表には一切の傷は無く、今放たれたGインパクトキャノンもオクスタンランチャーの一撃もジュデッカが常時展開しているバリアに阻まれてしまう。

 

「ちいっ、こりゃ正直不味いな。おい、タスク。お前のほうはどうだ?」

 

「……騙し騙しっすよ、中尉の方はどうなんすか」

 

ジュデッカのバリアを突破出来る可能性のあるジガンスクードとグルンガスト。だがその機体にもダメージが蓄積しており、第一装甲版の全損、そして第二装甲版も中ほどまで粉砕されており本来の特機の戦闘力は期待できない状況にあった。

 

「……あの機体のバリアはR-1やSRXの物と似た周波数をしてる。でもその強度は桁違い……」

 

「突破するには一点集中か、それとも大火力の一撃かって事ね。ラトゥーニ、弱い部分の分析は出来てる?」

 

「……今やってる。でも……見つかるかどうか……」

 

火力の足りないビルドラプターのコックピットの中でラトゥーニは分析を続けるが、それらしい成果は得れない。

 

「ラトゥーニ。こっちに分析データを回してくれるかしら?」

 

「私にもお願いね」

 

「……お願いします、私だけでは無理でした」

 

ラーダとヴィレッタが近くに来た事で、自分が分析したデータを接触通信で渡し、3人で必死にジュデッカのバリアのウィークポイントを探す。

 

「テンザン、アタッド、ガルイン……皆、そのジュデッカに操られていた……お前もそうなんじゃねえのかッ!?」

 

ジュデッカの4つ腕から振るわれる一撃をかわしながらリュウセイがレビに向かって言葉を投げかける。だがレビの返答は嘲笑だった。

 

「愚かな事を……私はレビ・トーラー……バルマーのサイコドライバーにしてジュデッカの生体コア。そしてネビーイームの支配者だッ!」

 

4つの腕の内、3つの人型の腕から放たれる念動波と鋏を思わせる腕から飛ばされる念動刃を交しながらR-1はジュデッカに肉薄する。

 

「だったら……そのジュデッカをブッ壊して、ホワイトスターを止めるだけだッ!!」

 

「吼えたな? ならばやってみせるがいい、サイコドライバーとしての力を十分に引き出せぬ、そのポンコツでな」

 

確かにSRXは使えない、それにR-1だって機体にガタが来ている。それでもリュウセイの脳裏には疲弊しきった顔でやれるだけの事はやったと、自分達を送り出してくれたロブの姿が過ぎる。

 

「うるせえッ! これは皆が命懸けで用意してくれたんだ! それを馬鹿にすることはゆるさねえッ!!!」

 

両拳に念動力の証である緑の光を宿し、R-1の両拳がジュデッカに向かって振るわれる。

 

「ふ、そんな貧相な……な!?」

 

「お、おおおおおおおーーーーーッ!! 破ぁッ!!!」

 

嘲笑ったレビだが、R-1の両拳の念動力に中和され、ジュデッカを覆っていた念動フィールドに一時的に穴が空いた。だがそれだけではすまない、既にサイコドライバーとして覚醒したリュウセイとレビの念が交差した。

 

「っッ! お前ッ! そんな暗い所で1人でいるのかよッ! こっちに来いッ!!」

 

「う、五月蝿いッ! 私の心の中に入ってくるなあッ!!!」

 

リュウセイは闇の中で1人でいるレビを見た。そしてレビは自分の中に入ってきたリュウセイに顔を顰め、出鱈目に念を放つ。

 

「くそッ! 動きを止めるしかねえッ! ライッ!」

 

「言われるまでもないッ!!!」

 

反撃に振るわれたジュデッカの尾に弾き飛ばされながらもリュウセイはライの名を叫ぶ。だがそれよりも早くライはポジショニングに動いていた。

 

「ハイゾルランチャー……シュートッ!!」

 

「つっう……念動力も持たない人間の分際でッ!!」

 

ジュデッカのバリアが再展開される僅かな隙を突いてハイゾルランチャーの集中火線がジュデッカに胴を穿つ。

 

「そうだ、俺はただの人間だ。だがただの人間のその力を舐めないで貰おうかッ!」

 

ジュデッカの振るった腕にそうようにホワイトスターから出撃してきたバグスがその口からリング状の光線を放ちながら、Rー2・パワードを追い回す。だがライはR-2・パワードを己の手足のように動かし、上下左右から襲ってくるリング状の光線を回避し、的確に反撃を叩き込んでいく。

 

「俺は死に場所を求めて流離っていた」

 

「ほう、それならば丁度良いではないか、ここで死ねば良いだろう?」

 

「違うな。俺には守るべき場所があり、守るべき人々がいる。それを全て失わない限り、俺は死なん……ッ!」

 

急反転し、ハイゾルランチャーの掃射で突っ込んできたバグスを全て破壊するのと同時に、パワードパーツがオーバーヒートをするのを覚悟で連続発射の態勢に入るR-2パワード。

 

「そして、俺の死に場所は、ここではないッ!!」

 

裂帛の気合と共に放たれたハイゾルランチャーの一点射撃に再び音を立てて、ジュデッカのバリアが砕け散る。

 

「ブリットォッ!!!!」

 

「はいッ!!」

 

ジュデッカの念動フィールドが展開されるまでの僅かな隙を突いてアルトアイゼン・改とヒュッケバインMK-Ⅱがジュデッカの間合いに機体を滑り込ませる。

 

「イングラムが見込んだサンプルと出来損ないか……お前等などにこのジュデッカに傷は付けられないよ」

 

念動フィールドの内部に潜り込んだアルトアイゼン・改とヒュッケバインMK-Ⅱ。それは相手の懐に飛び込んだというのと同時に、自力での脱出が出来ないと言う事を示していた。それでもキョウスケとブリットの顔に恐怖は無い、退路は味方が作ってくれる。その信頼の元に突撃したのだ。だから2人の胸の中に恐怖は無い、仲間を信じて突き進むだけだ。

 

「この勝負に引き分けはない……! ジョーカーを切らせて貰おうッ……これが最後の一枚だッ!」

 

「見せてもらおう、その札とやらを……! 貴様ッ!」

 

「二の太刀があると思うなよ、レビ・トーラー!!」

 

振るわれた鋏の一撃をブリットが決死の突撃でシシオウブレードを持って弾く、そしてその隙にアルトアイゼン・改がジュデッカの胸部の前を取った。

 

「後悔しない事だ。賭け金の払い戻しはない……ッ!」

 

最高加速と共に突き出されたリボルビング・バンカーの一撃がジュデッカの胸部に深い傷跡をつけ、更に追撃に打ち込まれたスクウエ・クレイモアの弾雨がジュデッカとアルトアイゼン・改の装甲を容赦なく削る。

 

「……貴様、正気かッ!」

 

「言っただろう、切り札だとッ! ブリットッ!」

 

「はいっ!」

 

入れ代わりでシシオウブレードを携えたヒュッケバインMK-Ⅱがその切っ先をジュデッカに向ける。

 

「そんな中途半端な念で私とこのジュデッカに傷を付けれるとでも思っているのか?」

 

「そんな力など必要ないッ! 打と意地を以て、必ずお前を倒してみせるッ!!」

 

ただの剣とレビはシシオウブレードを見縊った、それが間違いであると言うことはジュデッカに走った衝撃で気付いたが、それは余りにも遅かった。

 

「なっ!? 何故ジュデッカに傷が……」

 

極限まで研ぎ澄まされたブリットの集中力と念動力、シシオウブレードの切っ先から命中する僅かな瞬間に念動力の刃が飛び出し、その胸部に深い傷跡を残していた。

 

「貴様ら!」

 

激昂したジュデッカの4つ腕を念動フィールドの中で必死にかわすアルトアイゼンとヒュッケバインMK-Ⅱ。

 

「エクセレンッ!!」

 

「はいはーい今行くわよ! キョウスケ、ブリット君!」

 

飛び交うバグスを交しながらヴァイスリッターとR-3パワードがジュデッカへと迫る。

 

「うっ……この女……! 私の念と同調を……ッ!?」

 

「……ッ間違いない…! やっぱり、貴女は……ッ!!」

 

ジュデッカに迫るR-3・パワードにレビは不快そうに顔を歪め、アルトアイゼン達に向けられていた4つ腕全てをR-3パワードへと向けた。

 

「この念……気に障るッ! 私の前から消え失せろッ!」

 

「止めなさい! 貴女は大きな過ちを犯しているのよッ!」

 

ギリアム達の危惧した通りジュデッカに近づいたアヤはレビが自分の姉妹であるマイと言う事に気付いてしまっていた。

 

「くどいッ! そんな非力な念で、私を倒せるとでも思っているのかッ! ただの出来損ないの分際でッ!」

 

「非力……? そうよ……私の念は、所詮……! リュウや貴女には届かない! だけど、貴女を止めるのに、念の力は必要ない! 引き金を引く力さえあれば充分よ……ッ!」

 

ジュデッカに向けられたストライクレーザーキャノン。だがその銃口はジュデッカの機体そのものではなく、その身体を覆っている念動フィールドに突き刺さった。

 

「貴様!?」

 

「……私には私にしか出来ないことがあるのよ。エクセレン」

 

「はいはーいっ! ありがとねん!!」

 

ストライクレーザーキャノンにこめられた念動力によって僅かに緩んだフィールドに隙間にオクスタンランチャーの一撃が叩き込まれ、フィールドが解除される。その僅かな隙にキョウスケ達は念動フィールドの内部から離脱していた。

 

「……お前は……そうか、アタッドが言っていた女か、強かな奴だ」

 

「やだ褒められちゃった。……ま、でもどのみち相容れないわけだし、勝負は決するしかないわけだし、ね」

 

直接攻撃するのではない、離脱する隙を作り出す為の攻撃とはレビを持っても想定しておらず。そして、Rー3・パワードに意識を向けてい間にジガンスクードや、グルンガスト、そしてグルンガスト弐式と言った特機にジュデッカは包囲されていた。

 

「ふふふ、全くその程度で私とジュデッカを倒せると思っているのか?」

 

囲まれた事で逆に冷静になったレビ。些細なことで激情していたとレビは己を戒めるように首を振り、そしてジュデッカの4つ腕に力を込める。

 

「お前達の命、このジュデッカに捧げよ。第2地獄アンティノラッ!!!」

 

4つの腕の中央か現れた光の輪から氷の散弾がリュウセイ達に向かって打ち出される。それは一切の回避も防御も許さないタイミングだったが、そこに割り込む2つの影があった。

 

「……捉えた。重力散弾アトラクターシャワーッ!!!」

 

「ゲッタァアアビィィイイームッ!!!」

 

黒い重力の雨と降り注ぐ翡翠色ではなく、紅いゲッタービームの輝き、それらが打ち出された氷塊を全て打ち砕き、ジュデッカとアルトアイゼンの間にゲッター1とアストラナガンが舞い降りるのだった……。

 

 

 

 

 

アストラナガンとゲッター1の登場はレビだけではない、リュウセイ達にも驚愕を与えていた。

 

「い、イングラム教官! それに武蔵、大丈夫なのか!?」

 

一番怪我が深かった2人の登場にリュウセイの心配の声が飛ぶ。だがイングラムも武蔵も心配無用だと言わんばかりに笑った。

 

「お前に心配されるほど、俺は耄碌していないぞ。リュウセイ」

 

「なーに心配ないさ、動けないなら俺もイングラムさんも来てないぜ」

 

だから心配はないんだと返事を返すイングラムと武蔵だが、互いにそのコックピットの中では額に脂汗が浮かんでいた。鎮痛剤の点滴も半分ほどで出てきたのだ。機動兵器の操縦に掛かるGや振動は2人に少なくないダメージを与えていた。

 

「やっと出てきたか、バルシェム」

 

「俺をバルシェムと呼ぶな、レビ・トーラー」

 

「ふっ、作られた人形の分際で何を言う? アストラナガンを手に入れて慢心したか?」

 

レビの見下すような言葉にイングラムは声を押し殺した笑い声を上げる。

 

「ふふふ、お前達は何も理解していない。この世界が何なのか、そして何故アストラナガンが俺の元に現れたのかをな」

 

「ほう? まるで何もかも知っていると言う口調だな」

 

「事実知っているからな、バルマーもゾヴォークもな。俺は俺の使命を思い出した、ならば俺は最早バルシェムではない。イングラム・プリスケンと言う1人の人間だ」

 

自分達に理解出来ない話をしているイングラムとレビ。だがイングラムが味方であると言うことが判り、アストラナガンの驚異的な力を知るリュウセイ達はジュデッカ相手に勝機が見出せたことに笑みを浮かべる。だが、その中で武蔵は身体に走る痛みとは別の焦りを感じていた。

 

(……炉心の出力が……あの時と同じまで高まってる)

 

思い出すのはメカザウルスを巻き込んで自爆した時のアメリカの戦い。今はまだ身体を火傷するような熱は放っていないが、それも時間の問題のように思えた。そしてそれと同時に誰にも言っていないが、終わりの時が近いのだと武蔵は本能的に感じていた。

 

(あと少し、最後まで頼むぜ。兄弟)

 

出来る事ならばこのまま居たいという気持ちがない訳ではない、だが武蔵は自分の肩に死神が肩を置いているような感覚を感じていた。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、でかい相手だからぶちのめしがいがあるっておもってなあ!」

 

ラドラの言葉に誤魔化すように声を上げ、武蔵はゲッター1をジュデッカに向かって走らせる。

 

「ふふふ、お前が相手をしてくれるのかい?」

 

「地球は破壊なんてさせねえよッ!」

 

ジュデッカの伸びた腕をゲッタートマホークで弾き、そのままジュデッカに向かって投げつける。それは簡単にジュデッカの念動フィールドを貫き、その肩に突き刺さる。

 

「素晴らしい力だ。流石ゲッターロボ、その力をなんとしてもバルマーの物にしなくてはな」

 

「へっ、オイラもゲッターもお前等なんかの好きにはならないぜっ!!」

 

積極的に先手先手を攻撃を繰り出すゲッターロボにリュウセイ達はついて来れない。その動きについてこれる機体はこの中には1機しか存在しなかった。

 

「余り焦るな、ジュデッカに捉えられるぞ」

 

イングラムとアストラナガンが割り込み、死角から伸びて来たジュデッカの尾を弾き、そのままガンファミリアによる面射撃を始める。間断なく降り注ぐ弾雨にジュデッカの念動フィールドの破壊される回数が徐々に増え始めていた。

 

「俺の予測した未来へ進むか……それとも、別の未来へ行くか。ここが分岐点のようだな」

 

破壊された念動フィールド、この好機をギリアムは逃すつもりは無く。ブースターを全開にして、一気にジュデッカへと切り込む。

 

「この感覚、その力……目覚めつつあるのか、それとも……意図的に隠していたな?」

 

自身が接近した事でレビが何かを感じ取ったのか、ギリアムに言葉を投げかける。だがギリアムはその言葉を鼻で笑い、メガバスターキャノンの銃口をジュデッカに向ける。

 

「……さあな。だが、そんな力等無くても、お前の未来は見えている。この戦いに参加している全員の目にな……ッ!」

 

必ず勝利するという強い決意と共に放たれたメガバスターキャノンの一撃は、ゲッタートマホークとZ・O・ソードで破壊されたフィールドを潜り抜け、ジュデッカの4本の腕の内の1本の根元を打ち貫いた。

 

「くっ……馬鹿な、ジュデッカが押されているなどありえん……ッ!」

 

自己再生機能を持つジュデッカだが、ゲッターロボとアストラナガンの参加で念動フィールドをこうも簡単に破壊されてしまっては、ダメージが蓄積し始めている。

 

「アカシック……バスタアアアアーーーーッ!!!」

 

「ぐっぐうう……魔装機神……サイバスター。それも我々が危惧する突出しすぎた力……だが、手に入れれば我らの強力な兵器となるッ!!」

 

背後からの一撃はレビからの余裕を徐々に奪い取っていく。だが、サイバスターはゲッターロボ同様危険ではあるが、何よりも回収したいサンプルであった。だからこそ、動きの鈍い2本目の右腕を除く、3本の腕をサイバスターに向かって伸ばす。だがその腕は横から飛んできた桃色の光によって弾かれた。

 

「己を具現化した機体か……。兵器に人間らしさを求めるとは、面白い」

 

サイバスターとジュデッカの間に割り込んだ機体。ヴァルシオーネを見てレビは笑う、機動兵器でありながら生身の少女を思わせるその姿に面白いと感じたのだ。兵器は強く強力であれば良い、それなのにあそこまで女体を再現する必要があったのかとレビは思った。

 

「それだけじゃないよ! あたしのヴァルシオーネには……親父の想いや願いも込められてるッ! だからあたしとヴァルシオーネはお前には負けないッ!」

 

「具体的な力を発揮せぬ人の念など、意味はない。そんな物はただの貴様の思い過しだ、兵器に必要なのは強力な力だ」

 

ヴァルシオーネの存在を笑ったレビにリューネの怒声が響き、強さだけを求めるレビにマサキの哀れみさえ伴った声が投げかけられる。

 

「力……強力な兵器か、そんなのに溺れた奴の末路は決まってるッ! 自分の意志じゃなく、ただ誰かに利用されてる奴なら、なおさらな!」

 

「笑止……私はレビ・トーラー。ネビーイームの支配者だぞ? 私が誰かに利用されているなどありえん」

 

「だったら、てめえのどこに自分の意志があるってんだッ!? そのマシンに振り回されてるだけじゃねえのかッ!?」

 

サイバスターの奏者であるマサキには見えていたその機体を覆う邪悪な意志が、そこにレビの想いや意志は無いと判りジュデッカに操られているだけだろうと叫ぶ。

 

「な、何……ッ!? お前は何を見ているッ!?」

 

そしてマサキの叫びにレビの中に僅かな迷いが生まれた。そしてそれはマサキに言われた事が図星であると言う証だった。

 

「図星か! だったら……そいつに封じ込められた邪悪な意志を……俺が断ち切ってやるっ!!」

 

「それに見せてあげるよ、人の想いがどれだけの力を生み出すか……どんな物かをねえッ!!」

 

1度付いた勢いと言うものはそう簡単には止まらない、念動フィールドの展開速度を上げ防御に集中しているが、それでも限界は訪れる。だがレビはジュデッカの中で笑みを浮かべていた、ジュデッカで出たのも、ホワイトスターを動かしたのもサンプルの危機感をあおり、その力を引き出すため。ゲッターロボとアストラナガンも引きずり出したので、これ以上戦艦を生かしていく旨みはない。

 

「ふふふ……私とジュデッカに魅入られたら終わりだよ」

 

全身から念動力を放ち、自身を取り囲んでいた機体を吹き飛ばすと同時に今まであえて使わなかった強襲形態に変形し、クロガネへと一直線に突き進む。

 

「狙いはクロガネか!」

 

「とめろッ!!」

 

「くそったれ、これが狙いかッ!!」

 

あえて攻撃をひき付けることでクロガネとヒリュウ改の護衛機を引き離した。ここからではアストラナガンと言えどジュデッカに追いつくことは出来ない。念動フィールドを全開にしたまま、全長70mを越える巨体でクロガネへと体当たりを仕掛けようとした瞬間。クロガネとジュデッカの間に赤い影が割り込んだ。

 

「クロガネはやらせねえッ!! ぐおっ!?」

 

割り込んだ影はゲッター1だった。ジュデッカの中でレビはほくそ笑んだ。ゲッターロボも回収するべきサンプルだがその強さは桁違いだ。ここで確実にゲッターロボを戦闘不能にすることで回収を容易にしようと考えたのだ。

 

「がっ!? ぐっ! うおっ!?」

 

「ふふふふ……見るがいい、お前が堕ちる最終地獄を」

 

何度も体当たりを繰り返し、ゲッターロボの回りを何度も周回しながら近づくたびに体当たりを叩き込み、ゲッターロボの抵抗する力をゆっくりと、しかし確実にそぎ落としていく。

 

「武蔵の援護に入れ!」

 

「動きを止めるんだ!」

 

追いついてきた機体がジュデッカに攻撃を仕掛けるが、最大出力で展開した念動フィールドと高速で動き回る質量自身が盾になり、ジュデッカの攻撃を止める事が出来ず。旋回しゲッターロボの胴体を咥えたジュデッカは念動力で出来た渦の中に飛び込む。

 

「カイーナ」

 

「がっ!? ぐっ……てめえッ! 好き勝手……」

 

上下左右も判らない感覚の中、ジュデッカに咥えれたままの状態でも武蔵は必死に反撃に拳を振るう。

 

「アンティノラッ!」

 

「ぐっぐううっ……な、何がぁ……げぼおっ!?」

 

氷塊に叩きつけられたのか気温が急激に下がり、自身の手足の感覚が無くなって来ている事に武蔵は困惑する。強力な念動力で作られた幻はそれその物が攻撃となり、武蔵の精神へと強い過負荷を与えていた。この手足の麻痺もレビの強力な念動力によって与えられたイメージだが、それを現実と思ってしまった瞬間。武蔵は強い凍傷を全身に負ったのと同じ状態に陥っていた。

 

「トロメアッ!!!」

 

全身が凍傷したと思い込み、動くことが出来ない武蔵に向かって偶像であるバグスの群れの体当たりが襲い掛かる、これも幻影なのだが、それを現実と思っている武蔵には激突の振動でベアー号のコックピットの中で何度も強い衝撃を受け、切っていた頭の傷口までも開き、その顔を鮮血で染め上げていく。

 

「これでトドメ。最終地獄ジュデッカッ!!!」

 

念動力の渦の中から姿を見せたジュデッカはその口にゲッターロボを咥えたまま、ホワイトスターに向かって急降下し、ゲッターロボをホワイトスターへと叩き付けた。

 

「ぐっぐあああああああああーーーーーーッ!!!」

 

「はははッ! ははッ!! はーっはははははははッ!!!!」

 

武蔵の苦悶の叫び声と狂ったように笑うレビ。そしてホワイトスターに叩きつけられたゲッターロボはその蜘蛛の巣状のクレーターから、現れた黒い竜のような影に襲われ、武蔵の苦悶の叫びと細かい爆発が何度も繰り返される。そして永遠にも思える数秒の後カメラアイの光が消えたゲッターロボはその全身に細かい亀裂を走らせ、鋭い牙の生えた黒い竜に手足を持ち上げられ、まるで十字架に囚われた死体のような姿でホワイトスター上空にその姿を拘束されていた。

 

「武蔵! おい! 武蔵!!」

 

「武蔵君! 武蔵君!」

 

「そ、そんな……」

 

リュウセイやエルザムが通信を繋げるのをきっかけに、出撃している機体全てがゲッターロボに通信を繋げる。だが武蔵からの返答は無いのだった……。

 

 

 

 

第84話 邪悪なる十字架 その3へ続く

 

 




スパロボ定番イベント、援護防御でHP10残しとかの状態になった。ゲッターロボ、武蔵の安否は如何に、次回ジュデッカ戦決着までを書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。