進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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OG編 最終話 さらば武蔵 ゲッターロボ最後の戦い

OG編 最終話 さらば武蔵 ゲッターロボ最後の戦い

 

 

 

アイドネウス島に現れた巨大な建造物の反応――それを感知し、地球へと降下するヒリュウ改、クロガネだが満身創痍である事は明白で、それでも地球を護ると言う意思の元不屈の闘志で僅かでも戦えるようにと整備班が必死で修理を施している中。クロガネの緊急治療室でもまた戦いが繰り広げられていた……。

 

「両者とも心拍数低下! 血圧、脈拍共に危険です!」

 

「状態を逐一報告! 2人とも意地でも死なせないッ! 絶対に救うぞッ!!」

 

ジュデッカとの戦いで大破したゲッターロボと、同じくボロボロの状態で出撃したアストラナガン。そのパイロットである武蔵、イングラムは両者とも意識不明の重傷でクロガネ改の緊急治療室で懸命な救命処置が施されていた。

 

「武蔵の腹の傷と頭の傷を同時に縫合する! 幸い骨折した部分が内臓を傷付けていない!」

 

ピッピッピっと小刻みになる心電図の音……それらが痛いほどの沈黙を保つクロガネ改の通路に響く……。だが治療室の前で待つ者はいない、仮に意識があれば何をしていると、地球を護れと言うに決まっている武蔵とイングラムの意志を全員が感じていた。だからこそ全員が出撃待機室で最後の戦いに備えて、少しでも身体を休めていた。

 

「イングラム少佐の脈拍更に低下!」

 

「電気ショックだ! 武蔵には輸血を続けろ、出血死する!」

 

整備班、そして出撃班以上に懸命な治療を続ける中。武蔵の意識は眩いまでのゲッター線の光の中を漂っていた……。

 

夢を見ていた――

 

リュウセイがいて……

 

キョウスケさんがいて……

 

エルザムさんがいて……

 

ゼンガーさんがいて……

 

ダイテツさんがいて……

 

おいらを友達と呼んでくれた皆がいて……

 

ビアンさんがいなくて……

 

バンさんがいなくて……

 

ユーリアさんがいなくて……

 

リリーさんもいなくて……

 

そしてなによりオイラがいなかった……

 

色んな人が死んで、悲しい戦いが続いて……でもそのきっかけはビアンさんで……憎まれて、敵として最後まで戦って死んで……イングラムさんもリュウセイに殺されて、リュウセイ達は嘆いていた……

 

 

 

 

「……ああ……そっか、うん。そうなんだ……」

 

目を覚ました時。唐突に武蔵はすべてを理解した、きっとこの世界にはこの世界の歴史があったんだ。だけど、それを巴武蔵と言う存在が狂わせた。死ぬべき者を生かした、この世界にいてはいけないものを武蔵はこの世界に連れ込んでしまった。

 

「……ああ、そうなんだよな。全部……判ったよ。おいらはここにいちゃいけなかったんだな……」

 

あの時アメリカで死ぬべきだった。

 

リョウや隼人早乙女博士に全て託して、逝くべきだった。

 

でも未練があった、まだ生きていたいと思った。

 

もっと笑いあいたい。

 

もっと皆と同じ時を生きたい。

 

死にたくない……そう思ってしまったんだ。

 

「なんて情けないんだ」

 

覚悟を決めたつもりだったのに、最後の最後で死にたくないと思ってしまった。きっとそれが原因で自分はこの時間に来てしまったのだと……そして本来の歴史と異なる事をしてしまったのだ。今まで見ていた夢で武蔵はそれを理解した……そして自分が今傷を負ってる理由も良くない頭で考えて考えて答えを出していた。

 

「対価……だよなあ」

 

自分のせいで変わってしまった世界、それがきっと変わってしまった歴史、世界を元に戻す為の力として動いている。武蔵はそんな馬鹿げた事を事実だと思っていた。

 

だって見てしまったから、自分がいない世界を、そして自分が何を変えたのか、何をしてしまったのかを理解したから……。

 

「……うっ……ぐ……」

 

口に当てられていた酸素マスクを外し、身体中に繋がれているコードを引きちぎりながら寝かされていたベッドから立ち上がる。ただそれだけで額から大粒の汗が流れる、そのままベッドに倒れこんでしまいたいと武蔵は思ったが震える足を殴りつけて無理やり立ち上がる。

 

「……誰でもない、オイラが……やらないとな……」

 

着ていた病人服は鮮血に染まっている、腹に巻かれている包帯も真紅に染まり血液が医務室を汚している。その事に申し訳無いと思いながら、ベッドサイドに置かれていた剣道着の胴を身につけ、ヘルメットを被り首元にマントを巻いた。

 

「すまねえ……な、今のオイラにゃあ、お前は重すぎるんだ」

 

ずっと背負ってきた日本刀、そして敷島博士の作ったリボルバーをベッドサイドの机の上に残し、武蔵は血痕をクロガネの通路に残しながら格納庫へと足を向ける。だが格納庫に辿り着く前に鬼の形相のビアンが武蔵の前に立ち塞がった。

 

「……何をしている。早く、医務室に戻るんだ」

 

「……ビアンさん。駄目なんです、オイラが行かないと駄目なんだ」

 

「戻るんだッ! 早くッ! 自分の今の状況を理解しているのか!」

 

「……げほっ、ごほっ……自分の……事は……自分が一番判ってますよ……もう、オイラは長くない」

 

全身に走る寒気、そしてこれだけ酷い怪我なのに痛みが殆ど無い。その事に武蔵は自分の命の終わりが近い事を感じていた。咳き込み、咄嗟にてで口を押さえたが、その手が鮮血に染まっているのを見て、武蔵は己の死期が近い事を悟ってしまった。

 

「そんな事は無い、早く戻るんだ。本当に死んでしまうぞッ!」

 

「……本当、オイラはビアンさんに会えて良かった」

 

心配してくれる人がいる……血縁のある者もいない、自分を知るものもいない。そんなこの時代でビアンに会えた事に武蔵は感謝していた。

 

「……すいません、医務室に戻ります……肩を貸してくれませんか……」

 

「ああ。良いとも、さ、医務室に……ぐっ……な……なに……を」

 

武蔵に肩を貸そうとしたビアンの腹に固く握り締められた武蔵の握り拳がめり込んでいた。大きく目を見開いたビアンに武蔵はすいませんと謝った。だがここで立ち止まってしまえば、もう歩けない。もう進めないと判っていたから、武蔵は自分を心から気遣うビアンを殴りつけた。自分は弱いから、その声を聞いていたらまた迷ってしまうと判っていたからだ。崩れ落ちるビアンの身体をクロガネの通路に横にし、武蔵は再び咳き込みながら格納庫へと足を向ける。

 

「……自分……の引き際は……判ってます……後は……任せて……ください」

 

壁にべったりと血の跡を残して進んでいく武蔵。ビアンがその手を伸ばしても、声を掛けても武蔵には届かない。

 

「……だ……めだ。武蔵君……行っては……」

 

「ありがとうございます。後はお願いします……あれは……オイラがちゃんと……連れて逝きますから」

 

薄れいく視界の中ビアンは駄目だと繰り返し武蔵の名を呼び続けていた。

 

「……ふう……うっ……げほ……ごほっ……」

 

ベアー号のコックピットに乗り込むと同時に口を押さえて咳き込む武蔵、乱暴に口元を拭った武蔵の視界には鮮血に濡れる己の手が見えた。

 

「……よう……すまねえな……兄弟……もうひと……働き……頼むぜ……今度は迷ったりしねえからよ……最後まで頼むぜ……」

 

ゲットマシン形態で収容されていた事。そして運が良いのか悪いのか整備兵もいない格納庫で武蔵は悠々とベアー号に乗り込むことが出来ていた、滲む視界、震える手でベアー号の操縦桿を握ろうとした時ジャガー号から通信が入った。

 

『遅いぞ武蔵。何時まで待たせるつもりだった』

 

「……イングラム……さん? なんで」

 

『フッ、俺もお前と同じだ。この世界に居続けると世界を乱す。なら、俺達がやることは1つだろう?』

 

イングラムの言葉に驚愕に顔を歪める武蔵。通信機のボタンを押してジャガー号に音声だけではなく映像も繋げる。そこには武蔵同様包帯を真紅に染めたイングラムがジャガー号の背もたれにもたれ掛かるようにして座っていた。

 

「……あの黒い……のは?」

 

『……無理をしすぎてな……壊れた、仕方ないから……亜空間に戻した』

 

何を言っているのか武蔵は理解出来なかったが、アストラナガンが使えないからジャガー号で待っていたと言うことだけは判った。

 

『……お前も見たんだろう? 正しい歴史を……』

 

「……そうですね、見た……んでしょうね」

 

寝ている間に見た自分がいない世界。あれが正しい歴史だと言うのなら、自分はどれだけ世界を乱してしまったのかと武蔵は苦笑した。

 

「イングラムさん……どうなるか、判るでしょう? 降りた方がいい……」

 

『ふっ、自分のやるべきことは判っているつもりだ。それに……今のお前に……1人でゲッターを動かせるのか?』

 

その言葉に武蔵は返答に詰まった。イーグル、ジャガー共に大破寸前でまともに飛ばすことも出来ないだろう。合体して漸く飛行出来るレベルと言うことは明らかで、そして再びクロガネに戻ってくることは出来ないと武蔵には判っていた。

 

「アヤさんはどう……するんですか……あの人は」

 

『判っている。判っているさ……だが俺にはアヤの気持ちを受け入れることは出来ない。俺にはやらねばならぬ使命がある』

 

その強い意思の込められた言葉に武蔵は一瞬言葉につまり、アヤやリュウセイの顔を思い浮かべ申し訳無いと思いながら再びイングラムに尋ねた。

 

「……降りる気は……ないんですね?」

 

ゲットマシンのエンジンが点火していることに気付き、警報と整備兵が駆け込んで慌しくなる格納庫を見ながら武蔵は尋ねた……いや、確認した。このままゲットマシンに乗り続けて死んでも良いのかと、そしてイングラムは血の気の引いた青い顔に笑みを浮かべた。

 

『1人で地獄に逝くには辛かろう、俺も付き合ってやる』

 

「……酔狂……だなあ。あんたも……だけど……ありがとう……ございます」

 

『礼はいらん。それよりすまないな、きっとお前がこの時代に来たのは俺も関係している』

 

「……良いですよ……おかげで……面白い……経験が出来ましたから。それじゃあ……逝きますか」

 

『ああ、竜馬や隼人ほどではないが、単独操縦よりはましだろう。逝こうか』

 

互いに覚悟は既に済ましている。自分達がやるべきこと、成し遂げなくてはならないことをなす為にイングラムと武蔵はゲットマシンの操縦桿を握り締める。その目には誰にも消す事が出来ない、燃え盛る業火のような強い意志の光が宿っているのだった……。

 

 

 

 

 

もう無理だと全員が感じていた。蓄積したダメージ、極度の緊張感で削られた集中力、満足に補給も出来ずエネルギーも弾薬も足りず、修理も施されていない。満身創痍……そんな言葉では生温いほどにクロガネ、ヒリュウ改、そしてリュウセイ達は思いハンデを背負っていた。それでも地球を守ると言う意思で最後の審判者を名乗る巨大な石塊「セプタギン」との戦いに挑もうとしていた。だが、リュウセイ達はセプタギンとの戦いの舞台にすら立てないでいた。

 

「くそ……わらわらっと」

 

「畜生ッ!」

 

連邦のメッサー、ゲシュペンスト等のアイドネウス島の警備を行っていた機体。

 

そしてDCのリオンやガーリオンと言ったアーマードモジュール。

 

更には無尽蔵に出現するバグスやバードと言ったエアロゲイターの機体。

 

それら全てがセプタギンから出現し続けている。セプタギンに近づく事も出来ず、そして人海戦術で襲ってくる無人機にダメージが溜まっている機体ではまともな戦闘になりはしなかった。

 

「きゃああッ!?」

 

「エクセレンッ!」

 

バグスの特攻で右腕を吹き飛ばされたヴァイスリッターが落下してくるのを見て、即座にアルトアイゼンがバックアップに入る。

 

「大丈夫……な、訳はないか」

 

「ふふ。流石にね……厳しいってもんじゃないわよ」

 

「万全な状態でもまともに戦えるかどうか判らない大軍勢。それらを蹴りらし、セプタギンを破壊する……口で言うのは簡単だが、2重、3重にセプタギンを覆っている無人機の壁は想像以上に固い」

 

「T-LI……くそっ! R-1! まだだ! まだ動いてくれッ!」

 

「……弾薬、エネルギー共にレッドゾーン。最早、ここまでか……」

 

「パワードパーツパージ! まだ、諦めないわよッ!!」

 

R-1の拳は光り輝く事無くカメラアイが点滅を初め、R-2の中でライは絶望を感じ、アヤはプラスパーツをパージする事で、不屈を叫ぶが、通常よりも小型のR-3に出来る事は殆ど無いも同然だった。それでも決して諦めないと吼える。

 

「まだまだぁッ!!」

 

「おおおおーーーッ!!!」

 

片腕を互いに失ったグルンガストとグルンガスト零式・改。互いの死角を補うように背中合わせで無尽蔵に沸いて出るアーマードモジュールに拳を叩きつけ、蹴りを叩き込む。

 

「ゼンガー少佐よ、そろそろ不味いんじゃないか?」

 

「……だとしてもここで引くことは出来んッ!」

 

レッドアラートが鳴り響き、エネルギーの枯渇が近かろうがそれでも諦めはしない。イルムの口調に諦めにも似た色が混じっているが、それはうわべだけでその目はまだ爛々と輝いている。

 

「こりゃあ、死に花1つくらいはド派手に咲かせてやらないとなぁ」

 

「ああ……死んでも、死に切れんッ!」

 

まだ敵は残っている、一矢報いる事すら難しいとしても、それでも決して諦めない。なんとしてもセプタギンを破壊するという強い意志で戦い続けるリュウセイ達だが、絶望はまだ終わらない。

 

『複製完了、量産型G軍団出撃開始』

 

機械合成音と共にセプタギンから出現したのは何百と言う数の量産型ドラゴン、ライガー、ポセイドンの姿。AMやPTと戦うだけでも劣勢に陥っているのに、そこに特機であるドラゴン達が加わった……その絶望感は計り知れない。

 

「万事休すか……」

 

「……まだだ! まだ諦めんぞッ!!」

 

限界をとっくに超えている機体、そして己の身体に心が折れかける者、もう無理だと思っても不屈を訴える者。だが全員が理解していた……自分達にはもうあれらを倒す力が残されていないことを……

 

「……中佐、大尉! クルー全員を避難艇に向かわせろ! こうなればクロガネを……な、なんだッ!?」

 

最終手段としてクロガネを自爆させることを考えたダイテツだが、突如鳴り響いた警報と振動に驚愕の声を上げる。攻撃を受けたのだと思ったダイテツの耳に届いたのは整備兵の嗚咽交じりの叫び声。

 

『む、武蔵君とイングラム少佐がゲットマシンで出撃、くそ! 退避! 退避だぁ! 外に吸い出されるぞ!!』

 

最も怪我の酷い武蔵とイングラムが医務室を脱走し、ゲットマシンに乗り込んだという叫びと警報の音。

 

「馬鹿な……死ぬつもりか! 武蔵ッ!」

 

殆ど自力で飛行できないイーグル号とジャガー号をベアー号で無理やり押し出し、墜落するようにクロガネから飛び出したゲットマシンを見てダイテツはそう叫ばずにはいられなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロガネが突如爆発し、思わず振り返った全員が見たのはクロガネの格納庫から飛び出す……いや、墜落するイーグル号とジャガー号、そしてその2機を追いかけるようにして機首を真っ逆さまにして先に落下したゲットマシンに追いつこうとするベアー号の姿だった。

 

「チェンジ……ゲッタァアアアアアーーーッ!!!」

 

血を吐くような武蔵の叫びと共にクロガネから飛び出したゲットマシンがゲッター1へと合体する。地響きを立てて着地したゲッター1の姿はボロボロだった。全身に亀裂が走り、その特徴的な2本角も根元から折れ火花を散らす。

 

『うっぐ……ごあああ……』

 

『ぐっ、中々の衝撃だな。武蔵よ』

 

スピーカーから聞こえて来たのは何かが滴り落ちる音と苦悶に満ちた武蔵とイングラムの声。それが何を意味するか判らない者はこの場にはいなかった。

 

「武蔵君! 何で出撃した! 戻るんだ! 死んでしまうぞッ!」

 

肋骨の骨折、腹には20針を越える縫合……満身創痍なんて言葉すら生温い怪我を負っている武蔵の登場に普段冷静なエルザムでさえ声を荒げ、クロガネに戻るように叫ぶ。だが武蔵の返答は明確な拒絶すら見せるゲッタービームによる横薙ぎの一撃だった。

 

「何をッ!?」

 

「何をするんだ武蔵ぃッ!」

 

それはPT隊を直撃することは無かった、だがその余波でもボロボロのPT隊を沈黙させるには十分な一撃だった。

 

「これは……オイラが……やる事だ……オイラが……新西暦に来たのは……きっとこの為だったんだ」

 

「お前達では最早、セプタギンには勝てん。後は俺と武蔵に任せて貰おう」

 

自分達よりも遥かにボロボロの武蔵とイングラム。ゲッターロボを止めようにも、今の一撃で機体の大半は動けなくなってしまった。

 

「止めろッ! 死ぬつもりか武蔵ッ!」

 

「そんな有様でゲッターロボの反動に耐えれると思っているのかッ!」

 

オープンチャンネルで叫ぶギリアムとラドラ。滴り落ち続ける音が何かなんて態々言うまでもない、開いた傷から滴り落ちる武蔵の血液だ。そんなボロボロの状態で何が出来ると叫ぶが、武蔵の声はその怪我からは信じられないほどに穏やかな物だった。

 

「誰かがやらなきゃ行けないんだ。アヤさんやリュウセイには悪いけど……イングラムさんは道連れにしちまう。ごめんな……でも、もうオイラ1人じゃあ……ゲッターは動かせないんだ。ごめん……ごめんなぁ……だけど、あの石ころだけは連れて逝くよ……だから後は頼むよ」

 

「もう俺は必要ではない、後はお前達で道を切り開け、そのための障害は……俺達が排除して逝く」

 

悲痛さを伴った武蔵の謝罪の言葉と突き放すようなイングラムの言葉……。そして道連れと言う言葉に武蔵が何をしようとしているのか全員が理解した、いや……理解してしまった。

 

「道連れではない、俺がいれば世界が乱れる。それが俺と言う存在だ、お前が謝る必要はない」

 

「……それを言えば……オイラもだろ……オイラは……旧西暦で死ぬべきだった……それが……こんな所まで来た……来ちまった。それが……きっと……すべての狂いの始まりなんだよ……きっとオイラが……いる事が……罪だったんだ」

 

2人が何を言っているのか理解出来ている者は1人しかいなかった。同じく世界を渡り歩いたギリアムだけが、2人の真意を理解していた。

 

「違う! そんな事は無い! 生きている事が罪なはずがないだろッ! 武蔵! イングラムッ!」

 

「止めろ、止めてくれッ! 武蔵! 教官!! 行くなッ! 行かないでくれッ!!!」

 

「武蔵貴様ッ!! また逝くつもりか! ふざけるなッ! 戻れッ!」

 

ギリアムとリュウセイだけではない、全員が止める様に叫ぶ。だが動かない機体では、ゲッターロボを力付くで止める事も出来ない。嗚咽交じり叫ぶしか武蔵とイングラムを止める術は無く、そして言葉だけでその決意を揺るがせる事が出来るほど2人の決意は覆る物ではなかった。

 

「ゲッタァアアウィングッ!!!」

 

音を立ててボロボロのマントがゲッターの背中を覆い、ゲッターロボの姿は一瞬で上空へと舞い上がる。

 

「行くぜええええッ!!!」

 

ゲッタートマホークを片手に壁のように立ち塞がる無人機へと突き進むゲッターロボ。

 

『ゲッター線感知、捕獲対象「ゲッターロボ」を直ちに捕獲せよ』

 

PT隊に向かっていた無人機達全てがゲッターロボへと向かう。上下左右からゲッターロボに襲いかかるPTやAM、そして量産型ドラゴン達。

 

「「おおおおおおおおーーーッ!!!」」

 

武蔵とイングラムの雄叫びが重なり、ゲッターに群がる無人機が次々と破壊され墜落していく。だがそれよりもゲッターロボの損傷は激しく、ただでさえボロボロのその姿が見る見る間に砕けていく。

 

「ちくしょうッ! 動けッ! 動けえッ!!」

 

「くそっ! くそッ! なんで、なんで動かないんだ! サイバスターッ!!」

 

たった1機、しかも2人とも命に関わる大怪我をしているのだ。早く応援に向かわなければならない、それが判っているのに動き出せる者はいなかった。動きたくとも、己の分身とも言える機体は動いてくれない。

 

「「「「「!!!」」」」

 

「ぐっ!? がっあッ!?」

 

バレリオン、リオン達のレールガンの雨がゲッターロボに襲いかかり、そのボロボロの装甲を更に抉り破壊する。

 

「ぐっ!? 武蔵ぃいッ!!」

 

ジャガー号に被弾し、イングラムの苦悶の声が響くが、即座に武蔵の名を叫んだ。それは自分の怪我よりも武蔵の怪我が重傷であり、そして今の衝撃で意識をとばしている事に気付いたからだった。

 

「ッ! ゲッタァアアーーーッ! ビームッ!!!!」

 

急降下し掛けたゲッターロボが体勢を立て直し、ゲッタービームをバレリオン達に向けて放つ。最大出力のゲッタービームにバレリオン達が耐え切れる訳も無く、連鎖的に爆発していき、ゲッターロボの視界を覆いつくした。それは本来の武蔵とイングラムならば何の問題も無く対応出来る稚拙な煙幕だった。だが今の武蔵達にはその煙幕に対応するだけの余力が無かった……。

 

「ああ……駄目ええええッ!!」

 

「そんなッ!?」

 

「がっはあッ!?」

 

そして全員が見ている目の前でドリルを翳したライガーがゲッターロボを背後から刺し貫き、そのまま地面へと叩きつける。

 

「うっごおお……ぐっ……おおおおおおーーーーッ!!!」

 

「!?」

 

ライガーの頭部を握り潰すゲッター1。だが上空から降り注いだダブルトマホークの嵐が右腕を根元から切り落とす。

 

「なめるなあっ!!!」

 

だが武蔵もただではやられない、ダブルトマホークを拾い上げ、降り注ぐダブルトマホークの迎撃を始める。

 

「そんな……あれは……あの姿は……」

 

エルザムだけが知っている。それはアイドネウス島に初めて現れた時のゲッターロボ……腹に風穴が開き、右腕が肩から存在しないボロボロの姿は間違いなくあの時の姿と瓜二つだった。

 

「ぐっ! 武蔵! 気絶するな!」

 

「……判って……るうッ!!」

 

連邦の、DCの、エアロゲイターのありとあらゆる陣営の機体がゲッターロボを抑えに掛かった時――それは起きた……。

 

「「「「!?!?」」」」

 

ゲッターに近づいた機体の装甲がドロドロに溶け始めたのだ。そしてその熱はゲッター自身をも融解させ始めていた。

 

「メルトダウンだッ!」

 

ゲッターロボは放射線で稼動している。そのメルトダウンが今まさにリュウセイ達の目の前で起き始めていたのだ。

 

「武蔵! 武蔵ィッ! 教官ッ!!」

 

「止めろリュウセイ……もう、無理だ」

 

「ライッ! てめ……」

 

ゲッターがメルトダウンを始める。それと同時に何故か今まで動かなかった機体は動き始めた、もう手遅れだと早く逃げろと言わんばかりに……

 

「……もう……無理なんだ。武蔵も……教官もッ! 俺達は逃げるしかないんだッ!」

 

涙を流し、逃げるんだと言うライにリュウセイは何も言えず、R-2に引きずられるように離脱していく。

 

『ゲッター線指数……計測不能……!? 自爆……!? ありえないありえない……理解不能、理解不能ッ!?』

 

メルトダウンによって放射された熱によって無人機が次々と溶けて爆発していく、そしてその熱はゲッターロボすらも蝕んでいた。

 

「知らねえなら教えてやるッ! この血も涙もねえ冷血野郎の石ころもどきがッ!! 今更驚いたって無駄だ。オイラは1度決めて実行している……そして――敵が現れたのなら何度だってそれを選ぶ! お前達にこの美しい地球は絶対に渡さないッ!! そして仲間は殺させねえッ!!」

 

「バルマーよ。お前達は見誤ったのだ。人の想いを、そして人の強さをなッ!!!」

 

ゲッターロボの真紅の装甲が眩いまでの翡翠色に輝き、ゲッターウィングを既に失っているのにその身体は上空に舞い上がっていた。

 

「……ま、前の時よりも、ゲッター線の値が遥かに跳ね上がってる――流石に今度こそは……助からないだろうが……どうせ死ぬ命だ。ここで全て燃やし尽くしてやるぜえええええッ!!!」

 

「……ああ、そうだな。残った命の灯火を全て燃やし尽くすのも……ああ、悪くはないなッ!!」

 

命の雫を最後の一滴まで燃やし尽くす。そう叫ぶ武蔵とイングラム、そしてその叫びに呼応するようにゲッターの輝きが増していく。まるで太陽のように、全てを照らし出すかのように……彼らの命を燃やし尽くすかのように……。

 

「てめえらが欲しがったゲッター炉心をくれてやるッ! あの世にでも持って行きやがれぇーー!!!」

 

光り輝いたゲッター1がその身体を溶かしながら、セプタギンへと突っ込んで行き……金属が次々に拉げて引き裂かれるような耳を劈き精神を掻き乱すような音がアイドネウス島上空に響き渡る……それはゲッターロボがセプタギンに追突し、その装甲が拉げていく音だった。……そして次の瞬間全員の視界を奪う眩いまでの翡翠の輝きが周囲を照らしだした。

 

「……キ……ケン………ブ…ン……メ……イ……チ…ツジョ…ヲ………ミ…ダス……キケン……キケ…ン……ホ……ウ……コク………フ……カノ……ウ……ワ…レ……ハ……サ…イゴ……ノ……」

 

ノイズ混じりのセプタギンの声。全員の視界が戻ったときセプタギンの身体は球状に抉り取られ、爆発を繰り返しながらアイドネウス島の沖へと沈んでいった……。

 

「武蔵は……教官は……」

 

残骸すら残っていない、セプタギンの残骸は振ってくるのに、ゲッターロボの残骸は何処にもない……ギリギリで離脱できたのか、そんな淡い期待が全員の胸に過ぎった時。上空から何が落ちてきた、墓標のようにアイドネウス島の中心に突き立ったのはドロドロに融解し、そして僅かにゲッタートマホークの面影を残す金属片……。

 

「ああ……そんな……」

 

「どうして……イングラム……少佐……ううっ……」

 

「あああ……教官……武蔵……うう……うわああああーーーー武蔵ぃぃぃいいいいいーーーーッ!!!!」

 

夕暮れの光に照らされ煌くゲッタートマホークだった物、それが何を意味するのかを理解し、慟哭の叫びがアイドネウス島に木霊した……。

 

地球圏を脅かした脅威は去った、武蔵とイングラムと言う余りに大きな犠牲を払い、全員の胸に深い傷跡を残しながら……

 

OG1編 エピローグへ続く

 

 

 




武蔵とイングラム死亡したかは今の段階では不明と言う事でお願いします。本日21時にエピローグを入れて第一部は完結し、6月より新章に入ります。
最後のゲッターが輝いたのは「シャインスパーク」をイメージしています。ゲッター線を全て放出するならゲッター1でも理論的には可能なはず。正し、装甲などが耐え切れず融解し、完全な自爆技になると思いますけどね。と言う訳で、セプタギン戦はシャインスパークで終わりとさせてもらいました。OG2に入る前にまだ別の新章が入りますが、どこが舞台になるかを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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