「諸君。今年もあのバカ騒ぎがやってきた。去年の卒業生の枠の人員を補充できたので紹介する」
風紀委員会室の中、2人の生徒が立ち上がる。その生徒達には共通して2年生、3年生にあるはずのものが存在しなかった。
「何とか去年の卒業生の抜けた人員を補充することが出来た。先に言っておくが、こいつらは二科生だ。だが両者とも使える人材だ、それは私が保証する」
「確かに、片方は服部を倒した会長の義弟君ですしね」
「もう片方もあの学年首席の兄貴と来た。あまり言いたくないがこの二人、本当に
「各々疑問はあると思うが、まずは自己紹介だ」
そして、俺と達也が立ち上がる。
「1-E、七草ナルト。よろしくお願いするってば…します」
「1-E、司波達也です」
「さて、それでは見回りに入る。達也君とナルトはここに残れ」
「渡辺先輩?なんで俺だけ呼び捨てなんだってば…なんですか?」
「まあ、真由美の呼び方を真似てるだけだが…嫌か?」
あなた彼氏がいるんでしょ?そのうち誤解されるってばよ?という言葉は呑み込んだ。
「さて本題に入るが達也君には腕章とレコーダーを渡しておく。それとCADだが、ナルトは身体の方、というかお前の固有魔法は極力使わないでくれ」
一瞬だが、達也が摩利の質問に疑問を抱く。
「どういう事です?ナルトの
「お前の戦いで見せた術の事じゃない。ナルト、アレを見せてやれ」
「まあ、達也ならこれがどんなにヤバい魔法か分かるはずだってばよ」
ナルトは想子を最大限に活性化させ、掌に青い球体・螺旋丸を作り出す。
(超高濃度の想子を乱回転させて、それを球体に圧縮、ナルトの想子は球体のまま乱回転を続けてるところを見ると殺傷ランクはAかそれ以上だな)
「分かった、ナルト。術を解いていいぞ」
ナルトは螺旋丸を消すとまたも摩利が疑問の声を上げた。
「服部の時とは違う…?」
摩利先輩が鋭すぎるってばよ…。もう面倒だから先に言っておこう。
「服部先輩の時のアレは風遁・螺旋丸と言って本来の螺旋丸の姿です。とは言っても、服部先輩の時の螺旋丸自体、未完成の術なんすけど…」
俺は何の変哲もない紙を取り出す。
「じゃあ、見てて下さい。これが渡辺先輩の疑問の正体です」
俺はその紙に自分の想子を流し込む。同時に金属をすり合わせたような不快な音が響き、それを真っ二つに切り裂いた。流石の達也もこれに関しては目を見開いていた。
「詳しくは言えませんが、ざっくり言えばコレを螺旋丸の想子に代用したのが答えです。これでいいですか?」
「あ、ああ。ではナルトは先に見回りに…」
「その前にちょっとやることがあるってばよ」
風紀委員会室前の床に1枚の札を貼り付ける。
「では、見回りに行ってきます」
「待てナルト。俺も一緒に行動しよう」
一瞬何で?と思ったらそう言えば俺らは一年の、しかも二科生の風紀委員だ。十中八九非難の的になるのが目に見えている。要は、悪目立ちする者同士で違反者を摘発しようと言うことだ。達也は委員会の埃をかぶったCADを2つほど借りると(ちなみにエキスパート仕様の高級品らしい)俺の隣に立つ。
「よし、では見回りに行ってまいります」
こんな時まで敬語は慣れないので俺は軽く会釈した後風紀委員会室を後にした。
ふと摩利が二人の背中を見送った時、ほんの一瞬だが彼らの想子同士が繋がったように見えた。まるで、お互いの欠けている部分を補いあっているかの様に。
そう言えば
(この二人は何者なんだ?)
摩利は何も知らずに二人の背中を見届けた。
補足
・ナルトは模擬戦の後に達也に多重影分身の詳細を教えている。後、NARUTO原作で言うところのチャクラの性質変化は存在する。
・ナルト以外で螺旋丸を使える人物はいない予定。厳密にはプロセスを見ていた達也が使えるかもしれないが何らかのアシストが必要。
・原作ナルトの切り札であるあの術は入学編の終盤に出す予定。
・オリジナル対抗魔法も名前を伏せて入学編終盤に出す予定。
次回、黄色い閃光と黒の夜叉