「これは……村長の勘が当たってしまったようだな」
「酷い………」
最初の村を出て急いで次の村に向かった一行だったが、そこで目にしたのはある種見慣れた風景だった。
「マスターよ、この有様だ。次の村に向かった方がいいと思うが」
「えっ……でも」
狩人の冷徹な言葉に、マスターは一瞬戸惑ってしまう。
「マスター殿、ここは狩人の意見が正しいかと」
「隻狼さん、もしかしたら生存者がいるかもしれません!」
その場にいる大半が狩人とほぼ同じ考えだった、マスターとマシュ。その二人だけが目の前の残骸の山に僅かな希望を抱いていた。
するとそんな様子を見ていたパツシィが、どこか気まづそうな顔をしながら口を開いた。
「なぁ、あんまりこんな言い方は好きじゃねぇんだけどさ」
「パツシィ?」
はぁ、と一つ溜息をついたパツシィが、
「この村はもう駄目だ、ここに居てもなんの意味もない、徒労だ、早いとこ次の村に向かった方がいい」
「………ッ」
「……それでも、生存者を探した方が…」
「居ねぇって、これは」
そう言いながらパツシィは残骸の山となった村の跡地を一瞥する。
この村の人々は相当に抵抗したのか、明らかに物資の強奪目的にしては徹底的にあらゆるものが破壊されている、ヤガの特性上恒久的に食料が得られないというのは死を意味する、殺す側も、守る側も、どちらも決死の攻防だったからこそ、ここまでの惨劇が起きてしまった。
そんな背景をうっすらと予想した騎士は、目の前で辛い現実を突き付けられているマスターに助け舟を出すが如くこう言い放った。
「シャドウボーダー側の諸君、そちらで生体探査は出来るか?」
「その事だが」
突如通信が開き、仮想モニターに一人の人物が映し出される。
「ゴルドルフ殿、ホームズやダ・ヴィンチはどうした」
「今まさに生体探査の調整を行っている、パツシィの情報を参考にしてヤガの生命反応を探知できるようにしているが、時間がかかるようだ、呼び掛けたほうが早いとの事だ」
「だそうだが、どうするマスターよ?」
「誰かいませんかーー!!!」
答えを聞くまでも無く、マスターは当然のように大声で周囲に呼びかけていた。
「誰か、生きていたら返事をして下さい!」
その姿を見てマシュも慣れぬ大声を上げる。
「ちっ、仕方ねぇ……次の村に行くのは生存者を探してからか」
「そのようだなパツシィ、我々もそうだが、もう少し希望ある行動に努めよう」
諦めたような声色で、声は出さないものの周囲瓦礫の中に生き残りがいないか探し始めるパツシィと騎士、その姿を見て狩人も手伝おうとした矢先。
「…………ん?」
狩人が何かに気付く、ここから少し奥の方にある瓦礫をじっと見つめる。
「………………」
無言で、ただ一人崩壊した村の中を進み、違和感を感じた瓦礫の目の前に立つ。
「………一々退かすのも面倒だ」
そう言いながら右手にあるものを呼び出す。
ゴドンッと鈍い音が響く、狩人の得物が地面に着いた音だ。
爆発金槌、古き狩人が使用した仕掛け武器の一つであるそれは、金槌が何かに触れた瞬間大爆発を起こす武器である。
「さて、ちょいと頭を働かせようか」
狩人が金槌の撃鉄を起こし溜めの動作に入るが、そこで後方から慌てた様子の騎士の声が飛んでくる。
「狩人殿、それでは火力が高過ぎる!」
「分かっている」
「ならば何故……!」
そこまで言って、狩人は腰の入ったスイングで金槌を目の前の瓦礫に叩きつけた。
大爆発、まさに文字通りの火力だった。
狩人の目の前にはもはや瓦礫は無く、崩れて外から見えなかった内部がさらけ出されていた。
「そら、完璧だ」
瓦礫が吹き飛び、崩れた家屋の中から出てきたのは、恐らく狩人が起こした大爆発以外で受けた傷によって虫の息になっていた血だらけのヤガだった。
さて、瓦礫を大爆発で吹き飛ばしつつ中にいる負傷者に破片を一切当てないようにするには如何程の智慧が必要だろうか。
でも出張延長するなら先に言ってよね。