「ふむ……そちらの事情は分かった、だがそのカルデアの者と名乗った人物に関してもう少し教えてくれはしないか」
「それが………我々にもあのお方が人間だという事以外、記憶に霧がかかったようにぼんやりとしか思い出せないのです」
(記憶に干渉する魔術か何かか?どちらにせよカルデアという単語を知る者はカルデア陣営を除けば狩人殿と隻狼以外は居ない筈だが………)
壊滅した村の惨状を目の当たりにし急ぎ最後の村に向かった一同だったが、いざ来てみれば村は平和も平和、野盗に襲われはしたものの突如現れた『カルデアの者』と名乗る人物に助けられたという、誰もが最悪の未来を想定していた中でのこの結果に、一同胸を撫で下ろさずにはいられなかった。
「カルデアの者と名乗った人物か。マスター、心当たりは?」
「いや、ないよ……もしかしたら過去に契約したサーヴァントが助けてくれたのかも知れないけど」
アヴィケブロンの質問によって事は更に謎を増した、クリプターにカルデア、異星の神に異分子達、その勢力図に新たにカルデアの者と名乗る存在が現れたのだ、そして厄介な事に現時点で把握している敵対勢力の異星の神やクリプター以上に目的や人数、そもそも敵なのかどうかさえ不明だった。
「だとすればマスター殿と接触しようとするのが普通だが……」
「話を聞くに、意図的に避けられていると感じるな」
フードで顔を隠したり、村のヤガ達の記憶に手を加えたりと悟られない様に行動する謎の人物に隻狼も狩人も不信感を覚えていた。
しかし何はともあれ、謎の人物もといカルデアの者の活躍により最後の村での物資の補給は想像以上にスムーズとなり、結果として損は被っていないのでこの件は後回しとなった。
『うーん………その人物のことはとても気になるけど、一先ずアタランテからの依頼は完了したんだ、それなら一度こっちに戻ってきてもらえないかな?』
「あぁ、檄文の事で忘れていたがそういえば当初はそれが目的だったな」
「じゃあ早速シャドウボーダーに戻る?」
「いや、少し時間をもらいたい」
マスターの言葉に騎士が手を挙げる。
「騎士殿?」
「時間といっても何の事は無い、せいぜい十分もあれば事足りる」
「何処へ往く?」
「貴殿らも付いてくるがいい、関係のないことはないだろうからな」
「「?」」
騎士の言葉に要領を得ない様子の二人を他所にアヴィケブロンが、
「なら君達の用事が済むまではマスターと僕達はここに居ることにしよう」
「そうだね、はぐれても困るし……なるべく早く帰ってきてね」
「承知した」
マスターからの許可を得るとすぐさまこちらだ、と騎士は足早に何処かへと向かって歩いていく。
「何か分かるか、狩人」
「関係無くはないと言うが……はて」
疑問に思いながらもとりあえず狩人と隻狼もそれについていく、どうやら村の外に出るらしい。
「騎士殿!村から出てどうするつもりだ」
「まあ待て、目的地に着けば分かる事だ」
狩人の疑問を、騎士は軽く受け流す。その様子に狩人も隻狼も少々不安が募るが、そこで騎士の足が止まった。
「此処だ」
「……………何もないではないか」
「俺にもそう見える」
騎士が足を止めたのは周りに何も無い道のど真ん中、もっと言えば村から百メートル程離れただけの場所だった。
「ハハハッ、まあ隻狼はともかく狩人殿なら多少は馴染みがあると思うのだがな」
「………何の事だ」
「…………………」
益々騎士の言葉の意味が良く分からなくなっていき、隻狼はただ困惑しかなかったが、狩人は騎士の言葉に何か引っかかった様子だった。
「………………仕方ない、少し視てみよう」
狩人は一度目を瞑り大きく息を吸い込む、そしてこう呟いた。
「啓蒙的思考を開始、この眼はあらゆる万象を見通す」
『啓蒙眼』
この場合分かりやすさを優先してそう呼称するが、実際に狩人がこの力をそう呼ぶことはない、そもそも狩人はこの力を持っていて当たり前と認識している為、トリガーとして特定の台詞を言う程度となっている。
「……………ッ!」
いつも以上に血走った眼で物理的に赤いラインをなぞりながら狩人はその場を見渡す。
風景は先程と全く同じ、何もない、山々に囲まれただけの寒々とした山道の途中だった。
しかしその瞳には全く違う答えが映る。
「………騎士殿も意地が悪いな」
「気付いたか?」
「ああ、良く視える」
直後、ゴッシャァッッ!!!という轟音と共に狩人がいつのまにか持っていた爆発金槌で虚空を殴り伏せた。
と隻狼が思った瞬間、空間が割れた。
爆発金槌の先端を起点として瞬く間に世界がひび割れた。
そして砕け散った空間の先にあったのは、
「これは……空洞か?」
「それも我々にとっては重要な場所だ」
「……………あれは」
暗い空洞の先に、いち早く隻狼が何かを発見する。
「隻狼よ、何か見つけたのか?」
「………確かに、重要な場所だな」
「一体何があるというのだ……?」
騎士の様子と今の隻狼の反応に疑問が増すばかりの狩人は、ともかく空洞の先に足を踏み入れた。
「……………!」
そして狩人もそれの正体に気付く。
「あれは……」
「ようやっと気付いたか狩人殿……ほら、我々にとっては欠かせないだろう?」
「左様、我々にとって必須であるアレは」
狩人の目の前、空洞の先にあった開いた場所の中央に鎮座するのは。
「そう、かがり火だ」
「大鬼仏だ」
「灯りだ」
「「「……………………ん?」」」
狩人にとっては当たり前の事だったが、忘れているならもう一度。
目に見えるものだけが、真実ではない。
そして半分小説の事を忘れかけてたので今後の展開なんてパーになってる模様