ヤガ達を率いて雷帝に反旗を翻す汎人類史のサーヴァント、アタランテ。
数時間前に奇妙な二人組を捕縛して一段落かと思えば、ある一人のヤガが叛逆軍の軍門に下りたいと申し出てきた、アタランテとしては慢性的な人員不足に悩む叛逆軍に加わってくれるのは好ましい限りであったが、そんな浮かれた感情はすぐにでも吹き飛ばされた。
「手土産として魔術師とサーヴァント?って奴らを連れてきた、戦力にはなるだろうからアイツらも仲間に入れてくれ」
それを聞いた瞬間アタランテは部下にそのヤガを捕らえさせた、遂に雷帝が攻めてきたとも思ったが、わざわざヤガに案内を頼んでもらう必要性はない上に、仲間になりにきたと申し出ていると言うことはあの二人組と同じ外側から来た者達かもしれない、そう思いアタランテはまず部下のヤガ達にその者達を攻撃するように命じた、本当に仲間になりに来たのであれば恐らく一人も殺さずに無力化しているだろうと、アタランテは遠巻きから万が一に備えて部下達の戦闘を見守ることにした。
数十分後。
「待て!」
あちらのサーヴァントが生み出したであろうゴーレムに矢を放ちながらアタランテは姿を晒した。
「やぁ、君が叛逆軍のリーダーかな?」
案の定アタランテの考えは当たっていた、気を失ってはいるが、攻撃を命じた部下達は誰一人として息絶えてはいなかった。
見るにサーヴァントは二人、一人は巨大な盾を、もう一人はゴーレムを生み出す事が出来るようだ。
「そうだ、汝らの力はよく分かった。叛逆軍に加わりたいのだな?」
「加わっても大丈夫?」
緊迫した空間に、戦場には似つかわしくない声でアタランテに応じるのはかつて人理焼却から世界を救った者、そして今は異星の神による人理再編に立ち向かう者。
カルデアのマスターそのものであった。
「あぁ……歓迎しよう、汝らが人で無いのであればな」
「……え?」
「人の姿を持つ者はこの世界には二種類しかいない」
カルデアのマスターは、アタランテが何を言いたいのか、直感的に察する事が出来た。
だからといって何か出来るわけではなかったが。
「即ち、魔術師とサーヴァント。それは我らの敵である」
「そっそんな」
先程そのどちらにも当てはまらない異分子がいたがな、と心の内で思うアタランテ。
しかしそこで違和感を覚えた。
(……む?待てよ………)
異分子、もとい奇妙な二人組についてアタランテはあることを思い出した。
「汝ら、もしや奇妙な二人組を知っていたりはしないだろうな?」
「奇妙な二人組?」
「一人は騎士の様な格好を、もう一人は趣味の悪い帽子と武器を持ったコートの男だ」
「…………?」
反応は芳しくない、アタランテは二人組が探しているという外から来た者達は彼らの事だと思っていたが、今の反応では判断がつかなかった。
(奴らが一方的にこの者達を認識しているだけか……?だとしたら蛇足だったな…)
そこでカルデア側にも動きがあった。
(先輩、もしかすると他のはぐれサーヴァントの人達かもしれません、もう少し話を聞いてみましょう)
(分かった、でもこのままじゃ戦闘は避けられないよ)
何やら二人組の事で話し合っているようだが、何も知らないのであればもうそれに関して聞くことはない。
「ともかく、汝らが雷帝の手の者か、それは強者でありながら慈悲なき行いをするかどうか……」
そこでアタランテは一度背後に意識を向ける、どうやら部下のヤガ達が回復したようだった。
「故に、今から理不尽な言葉を吐かせてもらう、我らを殺さず戦え、ただし我らは殺す」
「なっ!?」
「なるほど、確かに理不尽だ」
「汝らが我々よりも強いのであれば、そもそもスパイとして接近する必要性がない、そのまま滅ぼしてしまえばいいのだからな、だがそこで我らを生き存えさせるのであれば、それは慈愛であり、人が持つ優しさだ、我らはそれを理不尽に期待する」
カルデア側としては、あまりにも無謀な申し出だった。
戦力はアタランテ達の方が圧倒的に多い、対してカルデア側はサーヴァントと言えどたった二人、そんな絶望的な状況で手心を加えろなどと。
しかし、そこで退かないのが彼らだ。
「どうするマスター?僕は君の意見に従うとしよう」
「勿論、彼女の言う通りに戦って、勝って、殺さない」
「よし、了解だ」
双方共に覚悟は決まった。
あとは火蓋が切られるのを待つのみ。
「ならば、峰打ちで抑えまする」
「え?」
その筈だった。
「………なっ!?」
その声はアタランテの背後からだった、当のアタランテは何故この至近距離になるまで感知できなかったのか、不思議でならなかった。
しかしそれ以上に、彼女の背後には信じられない光景があった。
「お前達、大丈夫か!?」
「殺してはおらぬ」
背後に控えていた筈のヤガ達は、またも一人残らず地に伏していた。
隠れていたサーヴァントがいたのか、アタランテはそう疑ったが、どうやらカルデア側にとっても想定外のようで、声の主に対して最大限の警戒をしていた。
「カルデアのマスター、助太刀致す」
その声は静かでいて、芯のある声だった。
「御子の忍びの名にかけて」
声の主は、左手が義手の男だった。
「いざ、参る」
その男は、忍びであった。
またも一人の異分子が、異聞の地に足を踏み入れた。
GWも明けるので投稿ペース落ちるかも