異聞に逆らう者達   作:宮条

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戦闘描写は疲れます。


対極

「聞こえたか騎士殿?」

「あぁ、既に始まっているようだ!」

 

極寒の寒空の下、走る者達がいた。

 

「かなり派手にやっているようだ、人理の守り手が無事であればいいが」

「希望的観測をしていてもどうにもならん、ともかく走るぞ」

 

騎士と狩人、叛逆軍のヤガ達の話を盗み聞いてカルデアのマスター達の動向を掴んだ二人であったが、想定以上に状況が悪い。

 

銃声に爆発音、既に戦いが始まっているのだ。

カルデアにもサーヴァントが何体かはいるのですぐに命を落とすようなことはないと思うが、それでも騎士と狩人はその性質からか、最悪の未来を頭の片隅に思い浮かべていた。

 

「音が近い、すぐそこだ!」

「急ぐぞ、狩人殿!」

 

荒れ狂う吹雪を掻き分けて、音の発生源であろう場所に着いた二人が見たのは。

 

「……新手か」

「なっ!?貴様達何故ここに!?」

 

ヤガでも、アタランテと名乗る女狩人でも無い。

たった一人の、義手を付けた男だった。

 

空気が変わる。

 

「………アタランテ殿、私達を殺さず捕縛程度で済ませてもらった恩だ、『その男から下がって私達に任せろ』」

「何を言い……!?」

 

アタランテが一瞬騎士達に意識を向けた瞬間、いつの間にか義手の男は掻き消えていた。

 

「何処に…」

「伏せろ!」

 

次の瞬間、金属と金属がぶつかり合う不快な音が響いた。

 

「…………」

「……不意打ちとは、なかなかどうして気が合うじゃあないか」

 

騎士が咄嗟にアタランテを抱え込んで地面に身を投げ出し、突如上空から現れた義手の男の刀を狩人がすんでのところでノコギリ鉈を展開させ受け止めた。

 

「……ッ!」

 

義手の男が刀を振り抜き、後ろへと下がって間合いをとる。

 

「甘いぞ!」

 

しかし相手は狩人、義手の男のバックステップを見逃さず、隙だらけになったその身に突きを放つ。

 

しかし、『相手も忍び』だ。

 

「甘いのはそちらだ…」

 

ダァンッ!!!と何かが地面に叩きつけられる。

突きを放っていたはずの狩人のノコギリ鉈が、義手の男の踏み込みによって地面に縫い止められたのだ。

 

「なっ」

「容易く見切れる…」

 

狩人が何かを発する前に、義手の男は刀を構え、狩人の喉元に突き立てる。

 

「…………ッ!」

「む!?」

 

しかしその刹那、義手の男はノコギリ鉈を封じていた足を退け、首を真横に振った。

次の瞬間、大きな銃声と共に義手の男の頭があった位置に銀色の弾丸が通過する。

 

獣狩りの短銃、敵の隙を誘うためにあえて狩人の業によって実体化させていなかったが、まさかこんなにも早く出番が来るとは狩人も想定外だった。

 

「そう易々と狩られてはやらんよ」

「…………」

 

お互いに距離をとり、万全の体勢を整える。

 

「……………」

「……………」

 

膠着状態が続くと、恐らくアタランテを説得して撤退させたであろう騎士が近寄ってくる。

しかし騎士にしては珍しく余裕のない声色だった。

 

「狩人殿」

「分かっている」

 

あれはまずい、そう騎士と狩人の本能が叫んでいた。義手の男に対してではない、正確にはその背中にある大太刀。

 

「あれは不死殺しの類だ。私も似たような武器は知っているが純度が桁違いだ、我々の様な『生命の循環から外れた存在』が貫かれれば魂諸共断たれるぞ」

「全ては夢だった、では済まされんか…」

「隙あり」

 

決して警戒は怠っていなかった筈だ。

しかしいつの間にか、義手の男が騎士の懐にまで迫っていた。

 

「そちらがな」

「っぬ!」

 

突如として、騎士の懐にまで潜っていた義手の男の足元が炸裂する。

 

「時限爆発瓶、扱いづらいが刺さると痛いぞ」

 

不意を突かれ、一瞬動きの鈍くなった義手の男を見逃す程騎士は甘くない。

 

「こちらも同じ土俵で戦おうではないか」

 

その一言と共に鋭い斬撃が義手の男の足を捉える。刃が見えた瞬間、義手の男は身を捩り間一髪避けることに成功したが、その得物を見て目を見開く。

 

「……刀?」

「そちらのと同じ種類のものであろう、こいつは打刀と言ったか」

 

敢えての同系、まさか遠い異国の者が自分と同じ得物を所持しているとは思わず、義手の男は顔には出さないが少し驚愕する。

 

その僅かな邪念が、命を落とす。

 

「っぬん!」

「ちぃ!!!」

 

騎士が注意を引いている隙に、音もなく義手の男の背後から忍び寄っていた狩人の一撃は、当たり前の様に弾かれる。

そしてまたも見慣れた得物が目に入るが、造形が少し自分の物とは違う事に気付く。

「刀か?」

「落葉と呼ぶらしい、ある古狩人が愛用していてな」

 

そして、と狩人は付け加える。

 

「こういう事が出来る」

「……ほう」

 

ガァイン!という音と共に狩人の落葉が二つに分離した。

落葉、それは高い技術を要求するが故の名刀だが、その真価は分離後の二刀流にある。

 

「さぁ、真剣勝負とやらでいこうか」

「二刀流か……」

 

構える狩人だったが、義手の男はその姿を見てある事を思いつく。

 

「ならば…」

 

そう言い義手の左手をおもむろに振るった。

 

「………貴様、その義手ただの義手ではないな?」

「明かせぬ」

 

そう白々しい返答と共に、義手の男も構える。

ただの義手、そう思われていた左腕には、何処に隠していたのか小太刀が展開していた。

 

『敢えての同系』、先程の意趣返しとも取れる行動に狩人は内心焦燥していた。

 

(僅かな打ち合いだったが、明らかに技量で奴に勝ることは出来ん、それに加えてあの義手………まだ何か仕込んでいるな)

 

しかしそんな狩人の心情など知ったことではない義手の男は、ゆっくりと狩人との距離を詰めていく。

 

「来ないのであれば」

「………」

 

狼は。

 

「行くぞ」

「ッ!」

 

隻狼は。

着実に狩人の命を奪いにかかる。

 

 




二日連続は頭がもちませんね
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