生きるとは、善くありたいと思うこと   作:ぬがー

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ラプラスメールや死に顔動画の代わりが巫女の神託。


第一の侵略者 ドゥベ②

 二学期が始まって数週間後。

 戦闘訓練の授業中にひなたを始めとした巫女たちに神託が下りたとの連絡があり、一哉たちはアマネとひなたの待つ大社所有の建物の一室までやってきていた。

 

「先ほど複数人の巫女に神託がありました。

 もうじき『セプテントリオン』と呼称される強力な進化体の一体目『ドゥベ』が発生。神樹の結界も越えて乗り込んで来るとのことです。

 あなたたちには私の指揮のもと、ドゥベ撃退のため共に戦ってもらうことになります。

 そのためこれよりドゥベ襲来まで団体行動、睡眠もずらして取り、いつでも戦える態勢を維持してもらいます」

 

 アマネから神託の内容と今後の対応について告げられる。

 しばらくの間これまで通りの生活は出来なくなるが、敵には昼も夜も関係ないのだ。全員寝起きで実力を発揮できないなどといった事態を起こすわけにはいかない。全員指示を了承した。

 

「やることはわかったけどもうちょっと細かい時間教えてくれたらいいのになー。そんな生活何週間も続いたらタマらんぞ?」

 

「神託はあいまいなイメージですが、そこまで長くはならないと思いますよ? 具体的にどれくらいかというとわかりませんけど、体調に問題は出ない程度だと思います。

 それに神樹様は神様ですから。時間の感覚が人とは違うでしょうし、かなり正確に伝えてくださっているかと」

 

 仕方ないのはわかるが実行する労力を考えるときつい、と現場の声を球子が漏らせば、ひなたが情報を補足し神樹へのフォローも行う。

 

「それにしてもセプテントリオン(・・・・・・・・)ですか。名前にも意味はあるんでしょうか?」

 

「確か……北斗七星のことだったかしら? 全部で七体出てくるってこと?」

 

 セプテントリオンと言う名前に、読書好きで知識が豊富な杏とゲームで使われていた言葉をよく覚えている千景が反応する。

 アマネも神妙な表情で二人の疑問に答えた。

 

「意味もなく名を付けることはないと思います。ドゥベも北斗七星の一つの名前ですし、七体現れるというのは間違っていないかと。

 そして倒しきれば何かが起こるでしょう。父……大社の前身である翔門会の教祖は何か知っているようでした。私には伝えてもらえませんでしたし、知る者はもう誰も残っていませんが」

 

 翔門会幹部たちは神樹を構築する際に生贄になって死んだらしい。噂では「彼らは神樹に混ざる形でまだ生きていて、神託で大社を操っている」「勇者が美少女だけなのは彼らがロリコンだったから」など好き放題言われている。

 

「そうですか。

 ……そういえばひなた、神託ではドゥベは特別な個体だが進化体と言っていたんだろう? なら先手を取って進化前に倒すか、それが無理でも削ることはできないのか?」

 

 若葉が神託の内容から対策を考えるが、それは否定された。

 

「それは無理です。神託だと空で発生して降ってくるイメージでしたから。結界から出ても攻撃は届かないと思います」

 

「……確かにそれは無理だな。空中は奴らの土俵だ」

 

「余計な策を用いれば不測の事態で痛手を負いかねません。敵が来てから迎え撃つのが一番でしょう。

 他に質問はありませんか?

 ……ないようなら睡眠時間の調整を行います。まず―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、深夜。

 スマホから耳障りな警報音が流れ始めた。

 

「ようやくお出ましか。本当に何もかも止まってるんですね」

 

「そのようですね」

 

 夜番でアマネと共に控えていたが、外の景色を眺めてみると人どころか虫や落下している葉までその場で静止しているのが見えた。

 スマホを取り出し見てみれば『樹海化警報』の文字が大きく表示されている。

 

 樹海化―――それは天敵たちが結界内に侵入した際に起こる現象だ。結界が張られてから一度も侵入されたことがないので発生は今回が初である。

 高位の悪魔は自分の根城にゲームのダンジョン染みた異界を形成することもあるという。樹海もその一種であり、敵と戦士を隔離して四国を守ってくれるのだとか。

 アラームが鳴り終わると急激に景色が変わっていく。海の向こうから伸びた蔦や根が大地を、街を、人々を覆い隠していく。

 

「お、おおー。すげぇ。少しくらいは不具合出るかと思ってたけど、完璧に覆いつくすのか。

 それに蔦が上まで伸びてて足場にもなりそうです。幹部の人たちここまで考えてたんですか?」

 

「どうでしょう。もしかすると噂されているように、今神樹の中から調整して樹海を作ったのかもしれません」

 

 四国を覆う結界は見た目は塀のようだが、実際はドーム状に四国を包んでいる。故に結界内には天井があり、天井まで届く足場が出来たことで戦闘員を無視して神樹に向かう星屑を掃討するのがとてもやりやすくなった。これも設計通りなら感嘆する他ない。

 

「それよりも、ここまで計画通りにいっています。敵が速攻を仕掛けてくる様子はありますか?」

 

「俺の目には見えません。音も無しです」

 

「なら早く合流しましょう。スマホで確認したところ、全員無事に樹海に入れているようですし」

 

 敵が結界を破った直後、星屑やドゥベがまっすぐに神樹に向かうようなら夜番の者が先行し足止めを行う手筈になっていた。だが敵が来ている様子はない。

 結界は破られても修復するが、直りきるまでに時間がかかる。おそらくその間に戦力を整えてから攻め込んでくるつもりなのだろう。ならこちらも万全の態勢を整えて迎え撃つまで。

 スマホの樹海時専用地図アプリと人を超えた鬼の目と耳で仲間を探しながら、鬼の巨躯にアマネを乗せて樹海を駆けていく。

 




侵略者がやってくるときにどう備えるかの説明回でした。
以降、侵略者が出ると神託を受ける度に同様の対策を取ります。

夜番は
・一哉、球子、杏
・一哉、アマネ
・一哉、若葉、友奈、千景
の3グループに分かれて交代で行ってます。一哉は朝から昼に寝てる。
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