夢の向こうで見る夢を   作:大樹 紗夜

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また遅れてしまいました…。
戦闘回ぜんぜん書けなかったんです。すみません!
切実に文才が欲しい。

あと、誤字報告ありがとうございました!


第9夜 消灯

ティーカップが高い音を立てて割れる。

中に残っていた紅茶が地面に飛び散った。

 

「…っ」

 

ドクン、ドクンと自分の意思とは無関係に脈打つ身体。震える手で胸元を握り締める。

突然送り込まれた“力”に器が対応しきれていない。頬に汗が伝い、荒い息を繰り返す。

 

「ふぅ…やっぱり、()に任せて正解だったね」

 

ある程度呼吸が落ち着いたところで汗を拭う。

彼の光はあらゆる者を引き寄せる性質を持っている。例え、世界が違っていても(・・・・・・・・・)その光は導く力を失わないのだ。

そして彼は“力”というものに対して貪欲なまでに固執している。自身の力を振るうためなら、敵も味方も(・・・)欺くことを躊躇わない。

幻界(自分)の力を貸す相手として彼は最適だった。

 

しかし、今回はやりすぎた(・・・・・)

今は昼頃だというのに辺りは夜のように暗い。はるか遠くに灯台の光がぼんやりと見えるだけだ。

これは彼の世界。本来あちら側でしか見ることの出来ない彼だけの世界。

こちらとあちらが完全に混ざっていない今、二つの世界にとってかなりの負担になってしまう。

 

「彼には悪いけど…今日はここまでだね。さて、彼に伝言を頼めるかい?」

 

彼は自分の傍らにいる少女に話し掛ける。少女は長めのスカートをふわりと揺らし、その場を後にした。

主である茶髪の少年とたくさんのキノコに埋まった(ヴィラン)を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い街並みの中に力強く燃え上がる灯台。頂上には激しくもどこか惹かれる炎。

先程までのUSJは見る影もなく、まるで別世界に来たような感覚を抱く。死柄木たちはいつの間にか消えていた。

生徒たちは通常ではあり得ない光景に言葉をなくし、駆け付けた雄英の教師陣も戸惑いを隠しきれていない。

 

「な、なんなのこれ?」

「これも個性なのか…!」

「発ッ発ッ発ッ発ッ、ようこそ俺の世界へ」

 

鎧を身に纏った大男、エルクレスがその様子を愉快そうに見ながら両手を広げる。

彼こそがこの世界の中心であり、元凶。

 

その姿を目にし、プロヒーローたちは一斉に身構えた。

 

「…君もただ暴れたいだけの(ヴィラン)か」

「おいおい、俺をトムラと一緒だと思うなよ。敵連合(あっち)と俺たちはただ同盟を組んでいるだけだ。

それに俺にはあいつと違ってちゃんとした(目的)があるんだぜ?」

 

エルクレスの斧に吹き飛ばされたオールマイトが痛む腹を押さえながら問う。

ニヤニヤとヒーローたちを馬鹿にする笑みを一旦しまい、エルクレスは語り出した。

 

今の(・・)人間は個性という特殊能力がある。

その分(可能性)が広がった。

だが、その力を自由に使えるのはヒーローだけだと?」

 

そこには死柄木という(ヴィラン)とは違い、しっかりとした意思を感じられる。

 

「暴ッ暴ッ!!個性()は何を噛むためにある?

個性()は何を裂くために研ぐ?

ヒーロー(この社会)から個性(自分)の自由を勝ち取るためにだ!!」

 

エルクレスの身体から彼の象徴である炎と光が溢れ出す。それはまるで彼の意思の強さを現すように眩いものだった。

 

「つまり、君は個性を自由に使える世界が欲しいと?」

「誰もが好きに生きられる世界。それを解放してやって何が悪い」

 

この個性が溢れた超常社会。個性によっては自分の個性を隠して生きなければならない。自分の全力が出せない、あるはずの“力”を使えない。…あぁそれはなんという理不尽だろう。

だから彼は求める。“力”を自由に振りかざせる世界を。

 

「全くエルったら、いきなり呼ぶんだから。もう少しで坊やたちをイかせてあげれたのに」

「旦那~楽しんでる~?キケケ」

 

きわどい格好をした美女と一つ目の小さなピエロが彼の傍に並ぶ。

 

「来たか。ノワール、ランズボロー」

「新手か…!」

 

エルクレスは己の武器である炎を纏った巨大な戦斧を構えた。彼はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「刹那の狭間に万の責苦を。悪夢の海へヨーソロー」

 

 

 

 

エルクレスが振り上げた拳を地面に叩きつけるようにして振り下ろした。

 

「煌天、発破ァ!!!」

 

激しい閃光と熱。地面を抉る威力の爆発がエルクレスの拳を中心にして起こる。

 

「うわぁっ!」

「…ぐぅ!!」

 

咄嗟に防ごうとしたセメントスの壁も容易く破壊し、プロヒーローたちを吹き飛ばす。

平和の象徴(オールマイト)は脳無を倒したダメージと活動時間の限界が近いので下手に動けない。

 

「おいおいだらしねぇなぁ?それでもプロかよ」

「これじゃあ、エルが楽しんで終わりかもね」

「やっちゃえー旦那ー!」

 

エルクレスは呆れた声で言う。エルクレスの仲間のノワールとランズボローはヒーローと戦闘するエルクレスを見て嗤っているだけだ。

スナイプがエルクレスの動きを止めようと銃を撃つ。

 

「こんな豆鉄砲じゃ俺に穴は開けられねぇよ!」

 

しかし彼には通用しない。普通の(ヴィラン)なら貫通するはずの、鎧の間から覗く肌に銃弾が当たっても彼はびくともしなかった。

エルクレスは片腕を大砲に変化させ周囲を焼き払う。その炎は近くの建物に穴を開け、地面を溶かした。

激しい戦いは続く。拳で、大砲で、戦斧で、エルクレスはヒーローを追い詰める。ヒーローたちも必死に応戦するが、エルクレスにダメージを与えることは出来なかった。

 

「強い…!」

「大規模な空間の移動に炎の異形型個性…まさか脳無と同じように複数の個性を持っているのか?!」

 

エルクレス()一人に対し、雄英のプロヒーローが生徒の前で圧倒されるというあり得てはいけない事態。

かと言って未知の個性相手にどうすれば良いのか分からなかった。

 

「お前らの命で俺の炎を燃え上がらせてみろ!!破ッー破ッ破ッ破ッ!!!」

 

エルクレスは心底愉しそうに嗤う。その感情の大きさを現すように頭の炎が激しく燃えた。

あそこ(・・・)では出来なかった破壊と闘争。下らない人間(・・)の相手しか出来ない限られた世界。

そこから解放された彼は暴れる。破壊こそが彼の夢。自身の()を燃やすためヒーロー(燃料)に向かい続ける。

 

しかし、そんな夢は一つの声と供に終わりを告げる。

 

「ストップ…なのだ」

「…!?」

 

突然キノコの道がヒーローたちとエルクレスを分断するように生える。

 

「よぉ灯台。神様からの伝言を届けに来てやったぜ…なのだ」

 

丸眼鏡を掛けた女の子が大きなキノコのような傘を持ち舞い降りる。勝ち気そうな少女だ。

 

(ヴィラン)の仲間か!?」

 

誰かが叫ぶように問う。エルクレスだけでもかなりの脅威なのにこれ以上(ヴィラン)が増えれば確実に生徒を守りきれない。

彼女はミニスカートを翻し、顎に手を当て考える。

 

「…ふむ、仲間か。同族ではあるけどな。こんな暴れん坊と私を一緒にしてもらうのは困る。

いつでも世界の傍らに、私は『傍世(コロニー)』リコ・アルミラリア。

神様のお告げを届けるのがお役目なのだ」

 

そう答えるとヒーロー側には興味がないというようにエルクレスたちに向きなおる。

 

「やりすぎだな灯台。いくら神様がいるからって“庭”を持ってくるにはまだ早いだろう?」

「発ッ…あの野郎が許可を出したんだぜ?」

「残念ながら神様が出したのは暴れる許可だけだ。誰がここまでやれと言った?

あぁ、そうだ。神様からの伝言だけどな…『世界はまだ不完全だ』…だってさ」

 

バキリ、とエルクレスが塗り替えた世界が崩壊し始める。

 

「ここに私達の神様が居てもあちらの門はまだ生きている(・・・・・)…なのだ。思いっきり暴れたいんなら、先に門を破壊してからにするんだな」

「チッ…ノワール、ランズボロー。今回はこれで消灯だ」

「えぇー!!旦那もう帰っちゃうの?!」

「エル、もう終わりなの?」

 

リコの言葉に憎々しげに舌打ちをしてエルクレスは踵を返した。ノワールとランズボローは渋々とそれに続く。

 

「じゃあな、ヒーロー供。次会うときまで屈辱の泥土を這いつくばってろ…発ッ発ッ発ッ!」

 

世界の破片がボロボロと落ちていく中でエルクレスの嘲笑う声が聞こえる。

元のUSJの景色に戻る頃にはエルクレスたちとキノコの少女までもがその場所から消えていた。

 

 

 

 

 




USJで結構夢喰いメリーキャラが出てしまいました。
…収集どうつけようかなぁ?

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