夢の向こうで見る夢を   作:大樹 紗夜

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1ヶ月以上も遅れてしまいました!お久しぶりです。
待っていて下さった方に申し訳ありません。やっと書けました。


今回は体育祭までの間の話です。夢喰いメリー要素強いです。


第10.5夜 忍び寄る悪夢

ニャアニャアと聞こえる猫の声。砂ぼこりが舞う人のいない町。どこか秘密基地のような雰囲気がある。

建物のいたるところに猫のマークが描かれ、上を見れば魚の骨のようなものが揺らめいている。

 

「また、ここ…!」

 

緑谷はこれから起こるであろう事態に備え、足に力を込めた。ワン・フォー・オールは使わない。まだ未熟な自分では個性を使えば動けなくなる。

とりあえず、今いる場所から出来るだけ遠くに行かなければならない。いつ彼らに見つかるか分からないのだから。

 

ふいに地面に三つの影が現れる。

反射的に上を見ると三匹の猫が玩具のような剣を持って切りかかろうとしていた。

 

「うわぁ!?」

 

身体を地面に転がして避ける。まさか出会い頭に切りかかられるとは思わなかった。玩具みたいだから痛くはなさそうだけれど。

 

「また君達か!なんなんだよ、毎晩毎晩!?」

 

もう見つかってしまったことに嫌気を感じながら、襲撃者の方を見る。

靴と手袋をつけ、二足歩行の猫。二匹や三匹程度なら緑谷もここまで焦ってない。

 

ニャーと三匹のうちの一匹が鳴く。それはまるで獲物を見つけたことを仲間に知らせているように。

近くの建物の扉が開き、鎧で武装した猫が出てくる。

その上の部屋から剣を持った猫が出てくる。

隣の建物から大砲を準備した猫が出てくる。

…最も全ての武装は玩具みたいなものしかないが。

他にも窓から、門から、建物の影から…町全体から緑谷に武装した猫が視線を向ける。

 

その数は百匹を超えるだろう。猫好きならまだしもこれだけの猫に見つめられてはただただ恐怖しか湧かない。口元がひくりと引きつった。

 

「捕まえるニャ!!」

「「「「「「ニャアァ!!」」」」」」

 

一匹の猫が声をあげ、それに応えるように百匹以上の猫が鳴き声をあげる。

そして、数百匹の猫が一斉に緑谷に向かって走りだす。

 

「っまずい!!」

 

今日も猫達との追いかけっこが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…まだ追いかけてくる」

 

必死に逃げてどれだけの時間がたっただろうか。何とか猫達から隠れて猫がいない建物の影に逃げ込んだ。ちらりと影から辺りを見るとではまだ猫達がキョロキョロと緑谷を探している。

 

「まるで猫の軍団だ。猫が武器を使って、二足歩行して、しゃべる猫もいるし…」

 

目覚めるまで何とか逃げる方法を考える。倒そうと思っても猫の軍団はとにかく数が多すぎる。個性を使うのは最終手段だ。

今みたいに隠れてやり過ごすのが一番いいかもしれないがあれだけの猫達が探しまわっているのだ。見つかるのも時間の問題だろう。

 

「!?離せ!」

 

これからどうするか考えていた時だった。壁から現れた手に両手を拘束されてしまう。

拘束を外そうと暴れる。場所がバレてしまったなら早くここから離れないと…!

緑谷に気付いた猫の軍団がわらわらと距離を詰めてくる。完全に囲まれてしまった。

 

「観念するニャ。お前は大人しくしておけばいいニャ」

「君達は一体何の目的で僕を捕まえるの…?」

「お前が知る必要はないニャ。これは来るべき日に備えてのただの練習…」

 

そう猫が話している時、唐突にその鳴き声は響き渡る。

 

「コーケコッコー!!!」

「…時間切れニャ」

 

朝を告げる鶏の声。この夢が終わった合図だ。猫達は必死に追いかけていたのが嘘のようにくるりと踵を返して砂ぼこりの中に消えていく。

しかし、一匹の猫が緑谷の方を振り向いてニヤリと笑う。

 

「もうすぐニャ…もうすぐ親分が直々に出頭するニャ。

ゆめゆめ覚悟しておくように、ニャ」

 

それだけを言い残し、その猫は姿を消した。

 

「…親分?待って!!何で君達は僕を…!」

 

伸ばした手は届かない。

 

 

 

 

緑谷はベッドから身を起こす。時計を見るとまだまだ登校するには早い時刻だ。

 

「はぁ…また猫に追いかけられる夢、か」

 

澄んだ空気に僅かに差す太陽の光。気分的には清々しいと言えないが、なんとなく気が引き締まる朝だ。

今日も1日が始まる。

 

「……僕、猫に恨まれるようなことしたっけ?」

 

緑谷出久はここ一週間、毎晩悪夢に悩まされている。

 

 

 

 

 

四時間目の授業が終わり、昼休み。いつもの三人と食堂でご飯を食べていた。

 

「はぁ…」

 

好物のカツ丼を食べていても思わずため息が出る。もちろん美味しいしカツ丼が何か悪い訳ではないが…頭に浮かぶのはあの悪夢。あれのせいで気分が落ち込んでばかりだ。

目的も相手が誰なのかも分かっていない。ただの夢だと笑うには無理があり、誰かが自分に対して個性を使っていると言われたほうが納得できる。

 

(日に日にやることが過激になってる気がするし…もうオールマイトにでも相談してみようかな)

 

自分に個性を授けてくれたあの人なら、一緒にこの不可思議な悪夢を解決する方法を考えてくれるのではないかと思う。…いやヒーロー活動に忙しいオールマイトにそんな迷惑はかけられない。

 

「どうした?緑谷くん。なんだか元気がないようだが」

「あ、飯田くん」

「もしや、体育祭のために身体を酷使しているのか?ヒーロー科の生徒が体調管理も出来ないのは情けないぞ」

「え!ち、違うよ!…ただ最近安心して眠れなくてね」

 

眠れない訳ではなく、安眠できない。身体的な疲れだったら改善の余地はあるかもしれないが夢見が悪いだけ。

 

「そうなの?もしかしたら体育祭が近いからストレス感じてるのかも!悩みがあれば聞くよ、私!」

「俺も微力ながら力になるぞ!緑谷くん!」

「ストレス溜め込むと大変だよ?」

 

心配そうにこちらを見つめる友人たちを見て、自分は本当に良い友人に恵まれたなと思った。麗日さんも飯田くんも白儀くんも。ヒーロー学科の生徒は優しい人が多い。…かっちゃんみたいな例外もいるけれど。

だからこそ、相談できない。たかだか悪夢を見るから落ち着いて寝られないとは言えない。

みんなだって体育祭に向けて準備が忙しいだろうに要らぬ心配はかけたくなかった。

 

「い、いやいや大丈夫だよ!!昨日はオールマイトの番組録り溜めてたの夜遅くまで見てただけだから!」

「そう?デクくんは本当にオールマイト好きやね!」

「だが、夜更かしは感心しないな。体育祭は近いと言うのに…しっかりと睡眠をとらなければ力が出ないぞ!」

「うん、今日は早めに寝るつもりだよ」

 

あの夢は気になるけれど、今は体育祭に集中しないといけない。

オールマイトみたいな最高のヒーローになるために頑張らなきゃ!

 

「体育祭頑張ろうね!麗日さん、飯田くん、白儀くん!」

「あぁ!」

「「うん!」」

 

これは体育祭が始まる前の話。

 

 

 

そして、緑谷出久がある真実を知る前の予兆。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…緑谷くん。君は、一体何を見ているんだろうね」

 

彼は縦長四角の瞳で緑谷を見ていた。いや、正確には緑谷を通して見ていた。

 

 

真っ黒に彩られた夢そのものを。





結構重要なフラグ立ててしまった…!割とノープランで書いてきたので、そろそろ話の流れを確定させときたかったんです。


次は明日にでも投稿しようと思います。
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