前回、新たな夢喰いメリーキャラを出すと書いたのに一人しか出てない…。きっと、きっと次の話で出るはず!
壊理ちゃんのところを書きたくて仕方がないのに、まだ体育祭も終わってない!
会場では選手たちが騎馬戦の真っ最中。一年生の会場の裏で怪しい動きをする二人組がいた。
「さっさと爆弾仕掛けるぞ」
「ヒーローがこんだけいるのに爆弾事件が発生したとなっちゃあ、雄英の威信も地に落ちる。はっ、楽しみだぜ」
二人の男、いや
「まっさかてめぇの幻覚の個性でこんな内部まで入り込めるとはな」
「ヒーローの警備が甘くて助かった。外は警戒出来ていてもこんだけ内部に近づいたら、体育祭が注目を集めてくれるからな。悪いことやり放題だ」
「…すみません!!」
「「!」」
ここから選手たちの応援席はさほど遠くない。
敵たちが話していた場所は会場の中にいた誰かに見つかってもおかしくないところだった。
「あ、あの!何しているんですか!ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!」
「あぁ?」
「なんだよ嬢ちゃん」
注意する声が背後から聞こえた。振り向いた先には一人の女子生徒。制服から見て雄英の学生であることが分かる。
見つかったことに苛立ちを感じながら、その女子生徒をギロリと睨み付ける。短い黒髪と地味な丸眼鏡が特徴の生徒だ。
敵意を込めた目で睨まれたその少女は怯えたように体を揺らした。
「ひっ…!……あ、あの…だから、その」
「ちっ雄英の生徒か。見られたからにはただでは帰せねぇな」
「気をつけろよ。叫び声でもあげられたら面倒だ」
「あわわわわ」
「大丈夫だって。ちょっと痛い目見てもらうだけだからよぉ。ギャハハハハ!」
下品な笑い声を上げて少女に近づく敵。
逃げようとしても恐怖からか、少女は足がもつれて転けてしまう。
「あ、い……や……っ!」
「はっ。恐怖でまともに声もでねぇみてぇだぞ?」
「一応個性で動きを封じるぞ。逃げられたら困る」
「りょーかーい!」
敵の魔の手が少女に迫る。顔は俯いて見えない。きっと恐怖に染まった顔をしているのだろうと、敵は嗤った。
少女はガタガタと震え、そして…
「そうだね」
二人の敵に対して口許を歪めた。
「「は?」」
プシュ!
手に持っていた香水のボトルから中の液体を男たちの顔に振り掛ける。
怯えて動けない子供だと油断していた男たちは防ぐことも出来ず、霧状になった液体を浴びた。
「動きを封じなきゃ逃げられちゃうよ」
「何を!?…っ……………は?」
「…………から、だが」
身体がガクガクと震える。気づけば倒れていた。
手足に力をいれようとしても、痙攣して身体を起こすことも出来ない。視界が歪む。まさか毒なのかと嫌な汗が零れ落ちる。
「シビれて動けないでしょ?フクロツルタケから抽出した毒を元に作った特製品なのだ」
「お、まえ何者、だ…!」
雄英の女子生徒。そう思っていた。
だが、ただの女子生徒が毒なんてものを気軽に持っているだろうか?ヒーローを育成する学校の生徒が?
自衛のためだとしても、何か違和感がある。
男たちの苦しむ様子を楽しそうに眺めていた少女は、にこりと笑った。眼鏡の間からのぞく瞳は、キノコのような形をしている。
「いつでも世界の傍らに『
「ば、けもの…?」
ポンッと少女の手からキノコが生える。それはどんどん数を増やしていき、地面に倒れている男たちを拘束するまで増殖した。
「この行事は神様から邪魔をするなと言われているの。とっても重要な役割があるんだって!
私の役目は邪魔者の排除。だから、君たちにはご退場してほしいんだ!」
今日は神様の計画を進行させる大事な日。人間たちが夢に触れるためのイベントを邪魔させる訳にはいかない。
「…毒の後遺症は残るかもだけど、もう関係ないよね」
ヒーローがたくさんいるこの場所で動けない敵の末路は決まったようなもの。致死毒でないだけ良いと思ってほしい。
毒が身体に回りきる前に治療を受けれるかどうかなんて彼女には知ったことではない。
私たちの神様の邪魔をしようとする方が悪いのだから。
敵たちに背を向けて彼女は歩き出す。
「さーてと!他にも邪魔者がいないか探さなくちゃ。
………まだまだ試したい毒があるんだよ」
ちゃぷちゃぷと試験管に入った毒を揺らしながら、彼女は呟いた。
同時刻。会場から離れた別の場所では、大勢の敵を少女一人が圧倒していた。
「…はぁー!全くっめんどくせ!!」
「ぐぅっ」
足下に転がった敵の体を蹴る。呻いたからまだ生きているだろう。もう何十人倒したか分からないが、雄英が敵に襲撃を受けたからっていってもこの数はちょっと多すぎではないかと思う。…敵連合の影響力かあっちにいるエルクレスのカリスマか。とりあえず面倒なことには変わりない。
「こんな雑魚どもの相手しなきゃならねーなんて、警備ってのも大変だぜ」
「お前は、何者なんだ…」
「あ?私か?…ふむ、そうだな。もう大体終わったし、親切な私はその質問に答えてやろう」
敵はあと十人にも満たない。どれもこれも雑魚ばかり。これなら別に逃すこともないだろう。
「世界で一番大きい生き物は何だと思う?」
「…昔聞いたことがある。キノコだろう」
「おぉ!正解だ!
私は『
だから、けっこー強ぇぜ?
後ろから奇襲を仕掛けようとしていた敵に蹴りを入れて地に沈めた。会話で気を引いて攻撃しようとしたことは悪くない。けれど視線が動き過ぎだ。後ろに何かいると言っているようなもの。
キノコの形をした傘を肩に担ぎ上げ、ぐるりと肩を回す。大分数が減った敵を見てため息をついた。
手加減し過ぎて予想以上に疲れたのだ。息は乱れる様子もないが、精神的な疲れだ。人間は自分たちと違って脆いから力の加減が難しい。ちぃ姉みたいな毒だったら手加減なんてめんどくせーことしなくて済むのになぁ。
あんまり私向きじゃねぇぜ、この役目。
「ちゃんと役目を果たさねぇと、ちぃ姉やおお姉からのお仕置きが待ってるからなぁー。
手はぬけねぇんだよ、っと」
「がぁぁあ!!」
最後の一人を片付ける。バキッとか聞こえたけど、殺してはいない。大丈夫多分生きてる。
今回は裏でこっそりと動かなくてはならないと姉に言われたからだ。派手に力を使って目立ってはいけないし、死人が出たとあれば体育祭が中止になるかもしれない。敵相手でもほどほどに手加減してやらないとカミサマの計画が台無しになる。
ま、私らの同族ならどれだけ消滅しても問題にならないがな。
「残念だったなぁ。
お前らじゃ私に指一本、触れられないんだぜ」
通りかかる人がいない廊下の奥のような場所。騎馬戦が終わってすぐにこちらに来たので、しばらくは通りかかるものはいない。一応、近くに誰もいないことを確認して口を開いた。
「ヤエ」
「はい」
にょるんと壁からおかっぱ頭の少女が現れる。現れるというよりは壁から生えると言った方が正しいだろう。さすがに神メイドを自称しているからか、対応が早い。
「守備はどうだい?」
「妹たちが見回っているよ。ヒーローもいるし、そう簡単には突破出来ないと思いますのだ」
「リコとマナか…君たちは三姉妹だったね。
リコは一度ヒーローや敵連合に顔を見られているけれど、問題はないのかな?」
「会場から離れた場所にいるので心配ご無用!
雄英のプロヒーローにしか顔は見られてないし、今回は敵連合も来てないみたいだから上手くやっているはずだよ」
自信満々に肯定してくれるのは良いのだけど、この三姉妹は割とドジなところが多いから心配だ。力は強いから負けることはないだろうけれど。
「私たちは『
心配しなくても、きちんとお役目は果たすからね!」
「…そう、引き続き頼むよ。この行事はテレビで放送されるらしいからね。計画のためにもあまり邪魔されたくない」
「…少し前にあちらの力が大量に流れ込んできた」
「また灯台が…」
「彼じゃない」
エルクレスではない。むしろ彼はよくやってくれている。彼のおかげでこちら側に来るものは増えて、順調に計画は進行しているのだ。
「あれは世界が混ざったことによるものじゃない」
エルクレスたちが暴れたら、もっとこの世界が傷ついているはずだ。あの時そんな感じはしなかった。
そもそもぼくの近くでしかエルクレスに
エルクレスとぼく自身を除いたら、この不自然な力の増大の原因は限られる。
「『界境の門』が開かれて
あれは、ぼくの器が突然入ってきたぼく自身の力に悲鳴を上げただけのこと。門によって塞き止められていたものが、門が開かれたことによって一気に流れ込んできたのだ。
それが意味することはたった一つだ。誰かが門を開いた。ぼく以外の誰かが。そんなことが出来るのは…。
「……“彼女”が、近くにいるかもしれないね」
「?」
器のぼくとあちら側のぼくを隔てているあの門を開けることが出来るのは、“彼女”一人だけ。
「警戒を怠るな」
「はい」
ヤエは返事をするとその場から姿を消した。
“彼女”がこの場にいるなんて可能性はこれ以上考えたくなくて、緑谷くんたちのもとに急ぎ足で行った。
「ぼくもそろそろ動くとしようか。今日のメインイベントに向けてね」
三姉妹がようやく出せました!
ヤエ・アルミラリア
長女。キノコの床。姉妹の中では一番強い。自称で神メイドと言っている。
マナ・アルミラリア
次女。キノコの柄。様々な毒を使う。相手よりちょっとだけ強い力で勝つのが好きらしい。
リコ・アルミラリア
三女。キノコの傘。キノコで殴ったり、キノコから武器を作って攻撃することが多い。姉には逆らえない。