夢の向こうで見る夢を   作:大樹 紗夜

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だいぶ期間があいてしまいました…。すみません。

今回は誰視点か分かりやすいように分けてみました!
読みやすかったらいいな!


第14夜 “人”知れずの邂逅

???side

 

 

「えーっと…なんとか中に入れたけど、ここはどこかしらね?」

 

きょろきょろと辺りを見回してもあんまり人の気配はない。

会場周囲にはプロヒーローと呼ばれる人間たちが多くいる。ただの警備にしてはかなりの人数がいるし、全体的にピリピリしているような…何かを警戒しているのだろうか?

 

「道を聞こうと思ったけどやめた方が良さそうね」

 

勝手に忍び込んでいる自覚はある。けれど別に騒ぎを起こしたいわけじゃない。

ちょっと体育祭とやらを見学して、手掛かりを探したいだけだ。…手がかりがここにあるかどうかも分からないが。

 

(これだけ人間が多ければ人に取り憑いたやつがいるはず…人が集まる中心に近い場所が狙い目ね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白儀side

 

 

昼休みが終わった後の競技はトーナメント形式の一対一のバトル。シンプルでいいね。

 

「飯田くん…場外!白儀くん二回戦進出!!」

 

審判であるミッドナイト先生の声が響く。一回戦は難なく突破できた。

 

「よし!」

「くっ…流石だ」

 

飯田くんは悔しそうに地面を叩いている。

何があったかって?飯田くんがレシプロバーストした瞬間に場外にぶっ飛んだだけ。一歩目の位置にキノコを出してまるでトランポリンに跳ねるように綺麗に飛んでくれた。

 

「おいおいイレイザー!お前んとこの生徒どうなってんの!?白儀一歩も動いてなかったぞ!」

「あいつの個性は実現。夢で見たものなら何でも再現可能だそうだ。どうやったか知らないが、飯田のレシプロの脚力を逆手にとって自滅させたんだろう」

「マジかよ!?」

「あれは飯田が初っ端からレシプロするの読んでたな。

飯田は長期戦が無理だと短期戦で済まそうとしていたようだが、完全に読み負けたな。白儀は最小限の動きで決着をつけ次の試合に体力を温存させた」

 

さすが相澤先生よく分かってる。先生の解説を聞きながら、いまだに地面を叩いている飯田くんに手を伸ばした。

 

「大丈夫?地面に落ちる時に変な音がしなかったから、骨折はしてないと思うけど…」

「あぁ大丈夫だ。骨はどこも痛くない」

 

飯田くんの手を引っ張って立たせる。見たところ骨折はしていないようだ。無傷とは言わないが、軽いかすり傷があるぐらいか。

 

「…白儀くんは、俺が最初にどう動くか読んでいたんだな」

「なんとなく、ね。でも最初にあんなスピードを出されたらなかなか対応出来ないと思うよ。ぼくも内心焦ったし」

「そうか。…ありがとう。次も頑張ってくれ」

「もちろん」

 

自分たちがフィールドから出ないと次の試合が始められない。早く観客席に戻ろうと入場ゲートの方へ進む。

会場では飯田くんを励ます声やぼくの勝利を祝う声が響いている。少し恥ずかしい。応援してくれた人に応えるように観客席に向かって手を振る。その時、視界の端に見えたものに驚愕した。

 

(あれは…!)

 

見つけた。

 

見つけて、しまった。

 

何事もなかったように視線を外す。一瞬だけ顔が強張ってしまったかもしれない。変に思われていなければいいが。

 

「鉢合わせは困るんだよね。…今回は諦めるしかないか」

 

彼女に会うにはまだ時期が早い。メインイベントは失敗に終わるだろうと予感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

 

 

襲い来る氷を生身の腕で砕く。砕かれた氷は日の光に反射してキラキラと散っていった。

 

「君の!力じゃないか!!」

「ッ……!」

 

緑髪の少年が叫ぶように言う。対戦相手の赤と白の髪の少年は大きく目を見開いていた。

 

観客席から応援する声は聞こえない。それもそうだろう。

緑髪の少年の両腕は紫に変色して腫れ上がっている。見ているだけで痛そうだ。確実に骨が何本も折れているだろう。まだ少年の域を出ない子供が、痛みに動けなくなってもおかしくないのに立っている。戦おうとしている。

 

それほどまでに彼を突き動かす思いがあるんだろう。

 

「…すごいわね」

 

眩しいものを見るように目を細めた。この世界に来て人間と接する機会が増えたが、彼ほど強い思いは見たことがない。

観客席からこっそり試合を覗いていたが体育祭とはこういうイベントだったのかと驚いた。

 

赤と白の髪の少年は攻撃しようと構える。そして両者が動こうとした、その時。

 

 

 

キィィンと耳鳴りのような感覚がした。

 

 

「!」

 

 

激しい吹雪とそびえ立つ氷山。全てを凍てつかせるような極寒の地。視界を埋め尽くす白い吹雪は生き物をただの物体に変えてしまうほど冷たい。

 

冷たい雪の地面には赤と白の頭をしている少年が倒れている。つい先程まで試合をしていた、確か…と、トドロキショート?と呼ばれていた人間だ。

 

突然移り変わった世界に内心驚きながらも、吹雪に飛ばされないように帽子を抑える。バサバサと白いコートが風に揺れた。

 

「寒っ!ここは…誰かの“庭”?またアタシの許可なく勝手に門を通ったのね」

 

吹雪で視界が悪いがだんだんと目が慣れてきた。

 

この庭の主はこちらには目もくれず、訳が分からないという風に辺りを見回している。混乱しているのだろうか?

 

「なぜ俺は…?ここはどこだ?俺はいつこちらに来た?」

「ねぇアンタ。戸惑ってるとこ悪いけど、用がないならさっさと帰ってくれないかしら?」

「誰だ貴様…?……その鍵は!」

「本来アタシたちはこっちに来るべきじゃないわ。眠りの世界でしかアタシたちは役目を果たせない。

起きてる世界に憧れるのは分かるけど、大人しく帰りなさい」

 

白い化け物がこちらをギリリと赤い目で睨む。三メートルはありそうな巨大な体躯。四本の腕を持ち、頭部を硬い兜のような殻で覆っている。身体全体に白い体毛が生えており白い雪に紛れそうだ。イメージ的には雪男、というのがぴったりな見た目である。

その化け物こそが、この庭の主だった。

 

自身の象徴である鍵を見てこちらの正体に気付いたようだ。説得したら帰ってくれるだろうか?

 

「アタシが誰か知ってるなら何も心配いらないでしょ?無事に送り返してあげるから安心して」 

「送り返す、だと?一番帰らなければならないお前がこの世界に留まっているのによく俺に言えるな!!

せっかく現界に来たんだ。しかも俺の“器”は誰がやったか知らないが、親切にも支配済み。

…ならば俺がやることはただ一つ」

「ぅあっ…えっちょっと?!」

 

説得は失敗に終わったようだ。発言に所々気になる部分があったが言及出来そうにない。

 

(せっかく会えた手掛かりだけど…仕方がないか)

 

化け物を中心にぶわりと雪が吹き荒れる。周囲の温度がまた一段と下がった。

化け物の周囲にあった雪は集結し、氷の礫となってこちらに向けられた。

 

「あっぶないわね!!」

 

間一髪で避けるが少しだけ氷と触れてしまったコートの裾がピキピキと凍っていく。直撃すれば氷付けだ。

 

「俺の名は『氷壁(ダイアロック)』フリムスルス!

お前を倒し、こちらで思う存分っ人間供を喰らってやる!!」

「……ま、そう簡単には帰ってもらえないか。じゃあ力づくでも帰ってもらうわよ!」

「全てを凍らせて奪う。閉じ込めて喰らう。

この氷山の掟(ダイアロック)、砕けるものなら砕いてみろ!!」

 

化け物が少女に向かって拳を振りかぶる。体格差もあり、少女が受ければ一撃で致命傷になりそうな攻撃だった。

 

最も、それが当たればの話だが。

 

「自分の居場所に戻りなさい!」

「ぅぐあぁっ!!」

 

一瞬で化け物の眼前に跳び、鍵を持った拳を構える。

彼女の華奢な拳が化け物を殴り飛ばした。ドゴっと鈍い音をたてて頭部の兜が割れる。

それと同時に化け物の背後に巨大な門が現れた。

 

「扉よ開け!!」

 

少女の声で扉が開き、化け物を吸い込んでいく。化け物は最後まで門に入らないように抗っていたが、世界の境を越えたものに彼女の『送り返す力』は拒否できない。

すぐに化け物を吸い込み扉は閉じられた。

 

「アンタがどういう理由でこっちにきたのか知らないけど、部外者が試合中に横槍入れるんじゃないわよ」

 

パキパキと世界が剥がれ落ちていく。夢から覚める合図だ。

 

「っ!?」

 

突然、後ろからゾワリと不気味な気配がした。迎撃するように後ろに振り上げた手は空を切る。辺りを見回しても誰もいない。何だ今のは。

 

「今誰かいたような…気のせい?」

 

もうこの空間には自分以外いないはずだ。しかし、ナニカの気配を感じた…ような気がする。

 

 

胸にモヤモヤとしたものを残しながらも、悪夢は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白儀side

 

 

 

「…白儀くん…白儀くん!どうしたの?ぼんやりして」

「…あ、ごめんね。何かな?」

 

いつの間にか試合は終わっていたようだ。麗日さんに話掛けられるまで気付かなかった。

結果は轟くんの勝ち。緑谷くんもかなり粘っていたけれど負けてしまったようだ。二人の激闘で試合フィールドは大破。セメントス先生がいても修復には少し時間がかかりそうだ。

 

「デクくんさっきの試合で怪我したから、お見舞い行こうよって話してたんだ!白儀くんも行こう!」

「うん、さっきの試合は激しかったからね。緑谷くん大丈夫かな?」

「怪我酷くないと良いけど…あ、でも白儀くん次の試合大丈夫?時間的に」

「大丈夫だよ。次の試合までまだ時間があるし、フィールドがあんなに損壊してるからね。直すにも時間がかかるだろうから。ぼくも緑谷くんが心配だから行くよ」

「二人とも早く行こう!」

 

飯田くんが走るように腕をカクカクさせて待っていた。

応援席から立ち上がり、麗日さんたちと一緒に保健室へ向かう。緑谷くんはかなり腕を酷使していたから心配だ。

歩き始めた足を少し止めて、誰もいなくなったフィールドを振り向いた。

 

氷壁(ダイアロック)が幻界に帰ってしまったことを残念に思う。先程こちらに来たばかりなのに運悪く遭遇した彼女に送り帰された。

 

(…あと少しだったんだけどなぁ。彼女がいなければ轟くんの夢は叶えられたのに)

 

せっかく会えたから捕まえようとしたら、あと少しのところで勘づかれてしまった。危ない危ない。殴られるかと思ったよ。まだ彼女と戦うには早いんだ。

ぼくを会場で見ても特に反応がなかったということは()()()の記憶がないようだ。

 

(現界に落ちた衝撃で一時的に忘れてしまったのかな?

…寂しいね。ぼくはいつも彼女のことを想ってるというのに覚えてもらってないなんて)

 

しかし先程ぼくを殴ろうとしていたから完全に忘れた訳でもなさそうだ。本能的にぼくを警戒している。

 

それなら時が来れば必ず思い出すだろう。

 

 

「またね、『門番(シープ)』メリー・ナイトメア」

 

 

 

 

 

「白儀くん早くー!」

「行くぞ!」

「ごめんね。今行くよ!」

 

 

 

 




キャラ紹介

・フリムスルス
二つ名は氷壁と書いてダイアロック。氷を操る夢魔。全身白い体毛の胴体に口があり、四本の腕を持つ。巨大な化け物。夢喰いメリーの原作では殺されていたけれど、この作品では生きている。作者が優しいからだね!

いつの間にか轟に取り憑いていたらしい。

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