サブタイトルで誰が出るか察した人もいるかもしれない…。
最近夢喰いのキャラが出過ぎてヒロアカ要素が減っている気がしている作者です。
今回は長くなったので二つに分けました。
緑谷side
「これから手術さね」
「「手術ー?!!」」
轟くんとの試合に負けてリカバリーガールの治療を受けていたら、飯田くんたちが様子を見に来てくれた。手の怪我は随分と酷かったようでリカバリーガールの治癒の個性だけでは治りきらないらしい。手術をすると言って飯田くんたちに戻るように促していた。
緑谷くん、と呼ばれて顔を上げる。白儀くんがベッドのすぐ傍に来ていた。
「怪我、やっぱり酷いんだね」
「白儀くん…」
「緑谷くんの戦い方は、プロヒーローの人たちから見たら危ういって思われるよ。飯田くんたちも凄く心配してたし」
「……」
僕は個性がまだ制御出来てない。当然だ。他人から、オールマイトから貰った個性。
ヒーローが人々を不安にさせるような戦いをしてはいけない。オールマイトはいつだって笑顔で助ける。不安なんて感じさせない平和の象徴。
僕はそんな凄いヒーローから力を受け継いだのに…試合で負けてしまった。
けどね、と白儀くんは続けた。
「ぼくには緑谷くんの事情はよく分からないけど…緑谷くんはこんなに自分が怪我を負ってまで、轟くんになにか伝えたいことがあったんだろう?」
「!」
(気付いてたのか…!)
「ぼくから見ても轟くんはちょっと苦しそうだった。なにかに囚われているような感じがしてた。
だからきっと、今回の試合がそのなにかから解放されるきっかけになる…ような気がするんだ」
──
白儀くんがポツリと呟いたその言葉に頭が真っ白になった。ヒーロー。僕が?やっぱりってどういうことだろう?
突然言われた言葉に嬉しさを感じるよりも驚いた。
「ほら!あんたもさっさと出ていきな」
「あ、すみません。緑谷くんまた後でね」
「…え、あ、うん」
リカバリーガールに促されて白儀くんも退出していく。ヒーローと言われたことに驚いたままだったから、ろくに返事も出来なかった。
あの時、彼が言ったやっぱりって言葉の意味をもっと深く考えていれば、あんなことを止められたのかもしれない。
手術は短時間で終わった。早くみんなの試合を見に行こうと思ってベッドから起き上がる。
「もう少し休んでから行きな。体力だいぶ消耗して回復させてるからフラフラさね」
「あ、はい。ありがとうございます、リカバリーガール」
体力をかなり消耗したから起き上がったときにクラクラした。他の人の試合も勉強のために見たいが少し休んでから行ったほうが良い。
(白儀くんの二回戦は見れなかった…勝ち進んでるといいな。準決勝には間に合うようにいかないと)
なんとなく外を見ると木に登った黒猫がくわぁとあくびしていた。どこかから入り込んだのだろう。
「猫、か」
黒い猫…思い出すのは最近悩まされているあの悪夢。いやいやここは現実だ。
それに悪夢に出てくるのは、あんなのんびりとした猫じゃない。見た目は似てるけど。もっと殺伐とした感じだ。
(…そう言えば昨日はあの夢見なかったな)
猫の悪夢。ここ一週間毎日欠かさず見ていたのに、体育祭の前日にはあの悪夢に魘されることはなかった。
翌日が体育祭だから気を使ってくれたんだろうか?…それはないか。夢が気を使うなんて馬鹿らしい。
疲れを癒そうともう一眠りするためにベッドに倒れこんだ。
いや、倒れこもうとした。
「…いたっ…………………え?」
背中にジャリッとした砂の感触。小石が固くて痛い。
ふわふわのベッドに寝ようとしたのに一体どういうことなんだろう。
身体を倒した先には地面があり、見上げれば天井があるはずのそこには青い空が広がっている。
魚の骨で出来た旗が舞い、砂ぼこりに包まれた街並みに囲まれていた。所々に猫のマークが描かれている。
「僕は、起きてたはずだ…」
いきなり移り変わった景色に混乱しながらも周りを見渡す。近くには誰もいないようだ。けれど、見覚えがあり過ぎる。
「
ここは、僕が最近よく見る悪夢の中。猫の軍団に追いかけ回されるあの夢の光景に酷く似ていた。
いつも見る猫の軍団がいないことが、この場所があの悪夢であることの確証が持てないだけで。
「えっとリカバリーガールの治療を受けて、白儀くんや麗日さんがお見舞いに来てくれて…手術が終わった後保健室のベッドの上で窓の外を見ていたはずだ。
確かに眠かったけどそこまで激しい睡魔じゃなかったし…いつの間にか寝てた?いやいやそんなことない。背中痛いし、怪我したところも治療した後そのままだ。………じゃあ何で、何で僕はここにいる?」
現状を整理しようと直前までの記憶を探るが、余計混乱してしまった。
まさか白昼夢とかいうやつか?起きている時に見る幻覚のようなものだと以前聞いたことがある。それにしてはリアル過ぎる気もするが。
それとも本当に夢の中なんだろうか。確かにベッドの中にいたけどそんなすぐに寝てしまうだなんて…僕は目を閉じていなかったはずだ。
ジャリ、と地面から身を起こす。やけに生々しい感覚だ。体育祭が終わった後だったから身体に疲労が溜まってるし、腕の怪我はリカバリーガールに治療された時と変わりない。治療後に固定されてるからあまり激しく動かすことはできないだろう。
「デシャビュは夢と
ようこそ、少年。……いやお招き頂きありがとう、と言うべきだろうな」
「誰だっ!?」
(いつの間に!?気づかなかった…!)
後ろから声を掛けられて咄嗟に振り向いた。
全身を覆う赤いマント。顔の部分には悪魔が笑ったような顔の仮面。マントから覗く身体は筋肉が引き締まった男性のものだ。
頭の両側にあるものは明らかに無機質な物体なのに、猫の耳のように見えた。
格好からして
「…貴方は?」
「吾輩はお主のことをよく知っているが、ここは初めましてと言うべきだろうな。
子分たちとの逃走劇、いつも楽しく見させてもらっていたよ」
子分?誰のことだろう。
それにこの今まで見たことのない…猫?いや猫なのか?どう見ても人の体だ。ちらりと見えた黒い尻尾は見なかったことにしたい。
それに僕をよく知っているってどういうことだ。
……あれ?そう言えばこの前見た夢で最後に黒猫が何か言っていたような。
『親分直々に出頭するニャ』
(!まさか…この人が猫が言ってた親分か?!)
思考を巡らせる。あの猫が言っていた通り、この人が猫たちの親分だとしたら。目的が分からないが状況から見てこの人がここ最近の悪夢の犯人だろう。
毎晩追いかけられていた猫の軍団からも逃げ切れない僕はどうすればいいのか。
傷がある程度治ったからと言っても腕を動かせない。治療後の疲労が溜まった体で僕は逃げられるのか。
…捕まったら、どうなるのか。嫌な想像が頭を過る。
「クックック…そう怯えなくともよい」
タラリと額から汗が流れ落ちる。知らない間に緊張していたらしい。
「吾輩の名は『
君達が私達の世界を訪れるように、吾輩も君達の世界に参上たてまつった」
「………僕らの、世界?」
ヒーローと敵の関係を世界と表しているのか?でも、それにしては何だか意味が違うような…。
「“外”に出るためにはまずそちら側の“器”が必要なのだが…悪いがその体、譲ってはもらえないだろうか」
「…体を?言ってることはよく分からないけど…貴方は僕の体を狙って毎晩あんな夢を見せていたんですか?」
思い出すのはオールマイトと初めて会ったあの日のこと。
他人の体に入り込み、体の主導権を奪うヘドロの
「無論。『人の身を得れば、そちら側へ出ることができる』。
それを灯台の光は我らに知らしめた。吾輩はそれが真実なのか確かめたい。何、しばらく眠っていてもらうだけである」
「自分の体をはいそうですかって渡すつもりはない」
ジョンと名乗った
「そうか…ならば腕ずくでも渡してもらうとしよう」
その言葉を合図に反対方向に逃げる。応戦するにしても逃げるにしても、まずは距離を取らなければ。
走り回って建物の1つに隠れた。物が散乱している様子から倉庫かなにかだろう。
「はぁっ…はぁっ…!」
全力疾走したせいで息苦しい。片腕が固定されている状態で走ることはなかなか難しかった。
(なんとか撒けたか?どうにかして逃げないと…。
個性は使えない。右腕はもちろんダメだし、両脚は残しておかないと逃げられなくなる…ん?)
何かに見られている気がした。辺りを見回すと猫の置物が目に入る。目が開いているせいで見られているような気がしたのか。置物は僕を見てパチパチと瞬きをした。…………瞬き?
「ふに゛ゃあぁあぁああああああぁぁ!!!!」
「うっわぁ!?」
置物だと思った猫は本物だったらしい。動いたと思ったら叫ぶように鳴き声を上げた。今ので僕がこの場所にいると周囲に知れわたっただろう。
すぐ近くの壁がバキッと蹴破られた。
「探したぞ、少年。おにごっこは終わりかな?」
「っ…!」
蹴破ったのはさっきの敵。もう追い付いてくるなんて。後ろには十数匹の猫の兵を連れている。おとなしく並んでいるってことは、この建物を取り囲んでいる可能性が高い。
(地の利は向こうにあるから先回りされる。隠れようとしても子分の猫たちに見つかってしまう。この空間はあのジョンとかいう敵の個性だから逃げ切る事は難しい。どうする!?)
この状況はかなり不利だ。始めから相手の個性の中。こちらは一人に対して相手は毎晩の夢の通りなら百以上はいる。外部との連絡手段もないからヒーローの助けは期待できない。
(この個性の解放条件さえ分かれば…!)
せめて考察する時間が欲しい。こんな強い個性には必ず条件があるはずなんだ。
(もう一度なんとか距離を取らないと!)
左の人差し指で個性を使った。僕の個性は猫たちの前でまだ使ったことがない。動揺して隙を作れればその間に逃げられる。轟くんの試合のときのように爆風を起こして周りを囲んでいた猫の兵を吹き飛ばした。
「にゃ」
「うにゃぁー!」
「なんなのにゃ!」
「…ッ!!」
骨折の激痛に耐える。夢の中だから大丈夫かと思ったが
この空間は一体何なんだ。本当に夢の中なのか。
地面を蹴って走り出す。建物を取り囲んでいた猫たちは爆風によって一部包囲網に穴が空いた。猫の兵たちは僕が個性を使ったことに動揺して一時的に止まっている。
今のうちに逃げないと!
「うぁ!?」
「まさか夢といえ自身の体を壊す力を躊躇わず使うとはな。驚いた」
足払いを掛けられてベシャリと転ぶ。すぐに立ち上がろうとするが片腕は固定されていて、指を一本折ったばかりだからどうしてももたついてしまう。
追いかけてきた敵が地面に這いつくばった自分の目の前に立っている。絶体絶命の四文字が頭に浮かんだ。
(完全に出し抜けたと思ったのに!)
「だがこれまでだ。吾輩は追跡者。逃げ切ることは不可能である」
敵が武器を振り上げた。ダメだ、この体勢では避けられない。もう一度個性を使うよりも武器を振り下ろす方が早い。痛みを覚悟してギュッと目を閉じた。
「…っな!?」
「え」
ガキンと固いものがぶつかり合う音。驚愕したような声を出していたのは自分の勝利を確信していた敵だ。僕に振り下ろそうとしていた武器は、誰かの攻撃から防御するように構え直されていた。
(何が、起こった…?)
視界いっぱいにふわりと白いコートが揺れる。その人物はタンッと軽い音を立てて僕と敵の間に着地した。
「そこまでよ。この化け猫め!!」
また、次回!
多分次の日曜日くらいには投稿します!多分!