夢の向こうで見る夢を   作:大樹 紗夜

4 / 23
週一と書いといて曜日指定をしてなかった…。
土日のどちらかに投稿するようにします!

感想もらったら嬉しいものですね。感想くださった方、見てくださった方ありがとうございます!

今回は結構時間軸とびます。視点めっちゃ変わります。
読みづらかったらすみません。


第3夜 入学と個性把握テスト

どこかの路地裏。時刻はまだ昼だというのに、ビルの影が重なって夜のような暗闇を作っている。不良や敵など、後ろ暗いことをする人間が好んで潜むこの場所で、彼はたった一人佇んでいた。

 

白い制服の裾を捲り、片腕を外気に晒す。周りに人気はない。彼の行為を目撃する人間などいないだろう。

彼は傷一つないその腕に向かってもう片方の手を振り上げ、

 

「dream comes true」

 

手に持ったナイフを振り下ろした。

 

切りつけた所からビシャビシャと血が溢れ出す。

この儀式は幻界(向こう)現界(こちら)を繋げるためのもの。

まずはあの少年(・・・・)をヒーローにするために、相応しい役者を招待しなければならない。自分を起こしてくれた礼として彼にはとっておきの(物語)をプレゼントしよう。

地面に向かい落ちていく赤色の雫は、落ちる瞬間に扉を開く鍵へと姿を変えた。

コンクリートに音を立てて突き刺さり、地面にに3つの扉が開かれる。

 

「おはよう」

 

彼は扉から現れたものたちに満足そうに微笑んだ。

 

「さぁ、長い夢の始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英高校。オールマイトなどの人気ヒーローを多く輩出している名門校である。また倍率300倍を超える最難関高校でもある。

新品の制服に身を包んだ彼は、今日から通うことになる雄英の校舎に入っていった。

 

雄英高校の校舎は広い。行くべき教室は分かっているのだがなかなかたどり着けず、校舎内を歩き回っていた。

 

「困ったなぁ。ここはどこだろう?」

 

要するに迷子になっていた。長い廊下で一人悩む。食堂、保健室、職員室とこの場に来るまで通りすぎてきたが、職員室を通ったときに道を聞いておくべきだったか。このままではホームルームに遅れそうだ。ちょっと適当に歩き過ぎた。

 

「…あの、大丈夫ですか?」

「ん?」

 

次はどう進もうかなと考えていたら雄英の制服を着た女の子に話しかけられた。短めの茶髪にどこか人を安心させる雰囲気を持った、所詮癒し系女子というものだ。制服がこちらと同じように新品であることから見て、同じ新入生だろうとあたりをつける。

 

「ちょっと道に迷っちゃってね。自分のクラスに行きたいんだけど…1-Aの教室ってどこにあるか分かるかい?」

「あなたもA組なの?!私もA組だから一緒に行かない?」

 

同じクラスだと知って彼女の顔が明るくなる。緊張が解けてにこやかに笑う様子は微笑ましい。

 

「本当かい?ありがとう」

「いえいえ、ヒーローを目指すものとして人助けは当たり前だからね!」

 

照れ笑いながら言う彼女に感謝し、こちらも笑顔で対応する。そのまま二人で廊下を歩き始めた。

 

「私は麗日 お茶子!これから宜しくね」

 

「ぼくは白儀 響。こちらこそよろしくね、麗日さん」

 

 

 

 

 

バリアフリーが意識された大きな扉を開ける。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や製作者方に申し訳ないと思わないか!」

「思わねーよ、てめぇどこ中だよ端役が!」

 

既に教室に入っていた生徒が言い争いをしていた。眼鏡をかけた真面目そうな生徒と爆発頭の不良のような生徒。初日で言い争いをするとは、雄英高校だからと言って個性的な生徒が揃っていると言えばいいのか?

 

「あ、そのモサモサ頭は!!地味目の!」

 

隣にいた麗日さんが声をあげる。知り合いかな?と思ってその視線を追うと、緑頭のあの少年がいた。

 

「あ!君はあの時の!!」

「え、ええ?」

「白儀くんも知り合いなの?」

「以前倒れてるところを助けてもらってね。ずっとお礼を言いたかったんだ。

あの時は、ぼくを起こしてくれてありがとうございました」

「え、いやあの」

 

深々と頭を下げる。自分が目覚めたのは道と言っても車道だ。車に引かれたりなんてしたら、未完成の“身体”を破壊される可能性だってあったのだ。意識が覚醒する前に壊されたらまた一からやり直しになるところだった。本当に感謝している。

 

「あ、そうだ!自己紹介しない?私は麗日お茶子!よろしくね」

「み、緑谷です」

「ぼくは白儀響。よろしくね、緑谷くん」

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

にこやかに自己紹介していると寝袋に入ったままの男が教室に入ってきた。

 

「はい、君達が静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君達は合理性に欠けるね。

君達のクラスの担任の相澤です。

…早速だがこれを着てグラウンドに出ろ」

 

着ていた寝袋から体操服を取り出し言った。

 

 

 

 

 

 

グラウンドに出て伸びをする。今の時間帯的に他のクラスは入学式の会場に向かい初めているのではないかと疑問に思うが、何をするのだろう?

 

「これから個性把握テストをします」

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

驚いた生徒をあしらうように相澤先生は言った。

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ。

雄英は“自由”な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。

中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録をとって平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ。

それじゃあ、入試二位の爆豪、中学のソフトボール投げの記録、何メートルだ?」

 

「…67メートル」

 

「じゃあ個性ありで投げてみろ。円から出なけりゃ何してもいい」

 

相澤先生からボールを受け取った彼は身体をほぐしながら円の中心に立った。

 

「死ねぇ!!!!」

 

ボールは勢いよく飛んでいく。爆豪という彼は少々気性が荒いらしい。ヒーローを目指すものとして死ねはないだろう。クラス全員がそう思った。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

表示された数字は705.2メートル。個性ありの力だとしても凄まじい。

 

「何だこれ!!すげー面白そう(・・・・)!」

 

「705って飛びすぎだろ!」

 

「個性思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!」

 

沸き立つクラスに、ざわりと相澤先生の雰囲気が変わった気がした。

 

「面白そう、か。

お前達はそんな腹積もりでこのヒーローになるまでの3年間を過ごすつもりか?…よし、総合成績最下位だったものは見込み無しとして除籍としよう」

 

相澤先生の無慈悲な言葉に沸き立っていたクラスは突然冷水を浴びたように熱が冷める。

 

「最下位除籍って……入学初日ですよ!いや初日じゃなくても理不尽過ぎる!!」

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵達。いつどこからくるか分からない災厄。

日本は理不尽にまみれている。そういった理不尽を覆すのがヒーロー。

放課後マックで談笑したかったならお生憎様、これから3年間雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。PlusUltraさ。全力で乗り越えてこい。

さぁデモンストレーションは終わり、こっからが本番だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相澤は二人、気掛かりな生徒がいた。

一人目は緑谷出久。入試で0ポイント(ヴィラン)を倒し、救助(レスキュー)ポイントだけで受かった生徒。

個性を使った瞬間手足が折れ行動不能になった、まるで個性を発現したばかりの幼児(・・)

もう一人は入試一位(・・)の白儀響。実技試験でスタートした瞬間に、会場内の(ヴィラン)一つ残らず破壊(・・・・・・・)した生徒。あまりのイレギュラーさに教師陣は合格にするか迷ったが、入試の形式的に不合格はおかしいという意見が出て合格になった。

おかげでその会場の受験生はポイントゼロで誰一人合格できないという前代未聞のことになった。

 

(『超パワー』と『実現』…一方は自分の身体を壊し、もう一方は底が分からない個性。やはりあの実技試験は合理的じゃないな)

 

相澤は実技試験の時のことを思い出す。巨大な0ポイント(ヴィラン)を一撃で倒した緑谷。本人はその後手足がバキバキになったが、人を助けようとした気持ちは見ていて分かった。まだ緑谷は納得できる。だが…

 

(個性は身体機能の一種。緑谷の個性はしっかりとした反動がある。なら、白儀の個性は何なんだ)

 

あの時、スタートの開始が知らされた瞬間。柏手一つで会場内の敵を様々なもので破壊した白儀。剣で刺され、斧で切り裂かれ、こけしに押し潰され、人形に殴り壊され、樹に貫かれ、どこからか現れた猫に破壊されたりと、現実ではあり得ないような不可思議な光景。それはまるで夢のよう(・・・・)だと教師陣は自分の目を疑った。

 

個性を大規模に使ったであろう白儀本人は受験後、何事もなかったように会場を後にしていた。その顔に疲れというものは全く感じず、あれほどの個性の反動がないのか不気味にさえ思った。

 

(…このテストで見極めるか)

 

内心呟く。緑谷はあの個性だったら最下位になるのは間違いない。個性を使いかけたら、自分の個性で消せばいい。

白儀はここで“底”を見極める。ヒーローとしての見込みがなければ除籍にすれば良い。

そう決意した相澤の後ろ姿を茶髪の生徒はじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

第1から第4までの種目が終わり、緑谷は焦っていた。

クラスの皆は流石ヒーロー科というべきか、自分の個性を上手く使って大きな記録を残しているというのに自分は目立った記録を残せていない。それもそうだろう、皆は個性を幼い頃から持っていた。

自分はオールマイトの個性をもらったが、入試で初めて個性を使い未だに個性使用の反動が凄まじい。使用したらどこかの骨がバキバキになる。下手に使えない。

しかしこのままだと間違いなく最下位…除籍になる。

 

「緑谷くんはこのままだとまずいぞ」

「ったりめーだ、無個性の雑魚だぞ!」

「無個性?彼が入試で何を成したのか知らないのか!」

「は?」

 

かっちゃんと飯田くんの話が聞こえる。やはりこのボール投げで記録を残すしかない。

覚悟を決めてボールを投げた。

 

「46メートル」

 

聞こえた相澤先生の声に驚愕した。

 

「なっ確かに今使おうって…」

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」

 

相澤先生の言葉にはっとする。確か個性を消せるヒーローがいなかったかと。

 

「消した…!あのゴーグル、そうか!抹消ヒーローイレイザー・ヘッド!!」

 

あまりメディアに顔を出さないヒーロー。その正体が相澤先生だったことに気付いた。

 

「見たところ…個性を制御できないんだろ?

また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりか?」

「そっそんなつもりじゃ…!」

 

「どういうつもりでも周りはそうせざる得ないって話だ」

 

入試の時のことを思い出す。あの時だって麗日さんがいなければ大怪我じゃすまなかったかもしれない。

 

(相澤先生の言う通りだ。これまで通りじゃヒーローになんてなれやしない)

 

覚悟を決めた目で前を見据える。それは見ようによっては玉砕を覚悟したように見えたかもしれない。

 

(今の僕にできることを!)

 

親指だけ(・・)個性を発動して投げる。

 

「先生…まだ動けます!」

「こいつ…!」

 

結果は705.3メートル。

相澤先生に自分の覚悟を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷くんが初めて良い記録を残せた。こっそり手を貸すか迷っていたが彼の目に諦めの色はなかった。

その後の種目では指の痛みからか、たいした記録は残せなかったが問題はいらないだろう。

 

「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数字だ」

 

自分の結果は一位。緑谷くんは…やはり最下位だった。だが、心配はいらないだろう。

 

「ちなみに除籍はウソな」

「!?」

「君達の全力を引き出す合理的虚偽」

「「「はぁーーーー!!?!」」」

 

相澤先生の言葉に皆が驚愕した。

 

「教師がウソっていいのかな?」

「冷静に考えてあんなの嘘に決まってますわ」

 

何はともあれ彼の夢は終わらないようで安心した。

…さて、次はぼくかな。

 

 

 

 

 

「相澤先生。放課後、時間大丈夫ですか?

…ぼくの個性についてお話したいことがあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




白儀 響(しらぎ きょう)
 長い茶髪を一つにまとめた眉の太い少年。顔は整っている。基本的に何でもできる。個性は『実現』。

夢喰いメリー原作とは設定ちょっと変えていきます。
ヒロアカ勢だけでは勝ち目がない場面も多少考えてるので…。
他の夢喰いメリーのキャラも出すつもりです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。