――――――………………ッ、――――……!
目の前で、誰かが自分に向かって叫んでいる。
それを認識した瞬間。ああ、これは夢だと直感した。
何しろ。この風景はもう何年も前……過去に起きた出来事のものだからだ。
――――――……、………………。
――――――…………! ……ッ、……!
周りの大人たちが呼びかけあっている。
自分はそれを鈍い視界の中でしか見れない。
当然か。
過去は過去。自分の身に起きた出来事を再生しているだけだ。
当時の自分の視点からは見えても俯瞰してみることは出来ない。
何かを言っているのは分かるが、意識が朦朧としている所為か。頭に入ってこない。
自分の体の体温が低くなるのを薄らと感じる。
…………ああ。そういえば、こんな感じだったな。
この日は豪雨で、それもここ数年見ないようなものだった。
梅雨の時期というのもあったのだろうが、雨が一週間も降り続いていた。
自分の体に、打ちつけるように降る雨。
体温が低下している体。それもまだ子供の。
すぐに大人たちが自分を抱えて車の中へと連れて行く。
その際。自分に駆け寄る姿があった。
自分に向かって叫んでいた子だ。
自分はその子に見覚えがある。
近所にある公園で、一緒によく遊んでいた。
行動力があって、いつも一緒に遊んでいる子達をちゃんと纏め上げていた。所謂リーダーの素質を持った子。
たまに、纏め切れないときは自分がフォローをしていたのを覚えている。
遊ぶ内容は、子供らしいものだ。
鬼ごっこ。かくれんぼ。それから……ヒーローごっこ。
とはいえ。〝個性〟を全開で使っては大人に怒られることを学んでいる自分達が、個性を使って遊ぶことは殆ど無かった。
大抵がごっこ遊び……それっぽい雰囲気を出している。
たまに熱が入りすぎて個性を使ってしまうが、自分とその子で諌めていた。
強気な子。それが印象深かった。
そんな子が、自分の方に駆け寄りながら大人たちと話している。
視界が一気に悪くなる。
この後。自分は気を失い、そして三日ほどあの世とこの世の境を反復横飛びすることになる。
結果的に生きてはいるのだが、それをこの時点では知る由もない。
視界がブラックアウトする。
その直前。あの子に目がいった。
雨で、しかも意識も混濁状態でよく分からなかったが……。
普段は勝気な子が、このときは怯え、泣いているように見えてしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
酷く、懐かしい夢を見た。
「…………」
まだ寝ていたいと叫ぶ身体に力を入れて上体を起こす。
あまり快適な目覚めとはいえない上に、朝に弱い。
長く伸ばされた砂金のような色の前髪が顔にかかる。
「…………あぁ、もう」
ゆっくりとした動作で、その前髪を掃う。
常に跳ね気味な髪の毛ではあるが、寝起きである為更に酷い状態だ。
そのままベッドから降り、カーテンを少し開ける。
やや早い時間ではあるが、時期はもう四月で陽も昇ってきている。
「……眩しい」
窓から入る朝日に目を細めながらカーテンを再び閉じる。
ふと時計を見る。
電波時計は午前五時三十五分、と表示されている。
…………ヤバッ。二度寝したい……
思わず眠気と時間の確認で再びベッドに潜ろうとしてしまうが、今それをやると確実に遅刻してしまうことを思い出す。
深く溜息をつきながら、軽くジョギングでもと考え着替える。
その最中。夢の出来事を思い出し、手を止める。
「…………もう七年かぁ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
〝個性〟
それは、この世の生物が生まれつきに持つ「自然界の物理法則を無視した特殊能力」の総称。
当初は「異能」と呼ばれ。これらの力を持つ者は少なかった。
しかし。時間を経るに連れて、異能を持つ者は増加していった結果。「異能」は「個性」と名を変えた。
事の発端は、中国・軽慶市。
発光する赤ん坊が生まれたと、世界的に大ニュースになったことを皮切りに。徐々に特異な能力を発現する者が増えていったため。
今や全人口の8割が、何かしらの特異体質……個性を持って生まれてきている。
「超常」は「日常」に。
「空想」が「現実」に。
だが。同時に問題も起きる。
個性を使用した犯罪者が爆発的に増えたのだ。
超常黎明期。まだ、個性が異能であった時代だ。
人間、力を持てばそれを振るいたくもなる。
そしてそれは。持たざる者からすれば脅威的な暴力でしかなかった。
しかし。それらを諌める者も存在した。
同じ異能の持ち主達が結束し合い、自警団を組織。異能を使う犯罪者達を取り締まっていった。
そうしたことが繰り返されている間に、法の整備や体制も整い。異能が個性になっていった。
その最中、変化もあった。
異能……個性を悪用する者を
そして今日――――ヒーローは職業になった。
空想の中の超人が、現実になったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
広大な場所に、大勢の少年少女たちがいた。
普通の体格をしている者もいれば、2メートルを余裕で超えていたり。あるいは腕が複数あったりと、この個性社会の名の通りに。個性豊かな面々が揃っていた。
とはいえ。彼等は別に友好を深めようとしてこの場にいるのではない。
むしろ逆……蹴落としあうであろう運命にある。
彼等が立っている場所は、学校の敷地内。それも、ヒーロー育成機関のだ。
国立雄英高等学校。通称・雄英。
この個性社会。ひいてはヒーロー化社会に於いて、特別な意味を持つ学校だ。
最前線で輝きたければ雄英卒業が最低条件。そう言われるほどである。
中でも、ある一人のプロヒーローの名前があるのが大きいのだろう。
オールマイト。
『平和の象徴』『無敵のヒーロー』『真の英雄』『№1ヒーロー』
呼び名は数多く、また。それと同時に数々の武勇伝も多い。
曰く。彼が来た現場に於いて。救えなかった人間はいない。
曰く。常に笑顔と共にある。
曰く。一日で一万人以上を救った。
等々。
しかし。それと同じくらいに、謎も多いヒーローである。
個性や出自が殆ど知らされていない。そんなミステリアスな部分も、彼の人気の一つではある。
そんなトップヒーローが卒業したという学校だ。人気の程は窺い知れる。
但し。雄英の偏差値は79という気が狂ったような数字だ。
オマケにヒーローを目指すなら入らなければならない学科、ヒーロー科の倍率は毎年300倍というこれまた頭のネジを数本ぶっ飛ばしたかのような数字。
とはいえ。雄英も、ヒーロー科だけしかないわけではない。
普通科・経営科・サポート科。これら三つと合わさっているため。実際にヒーロー科の受験数は少し減る。
だが、それでも皆。思いは同じだ。
ここを受かり、ヒーローになる。
この場に集まった全員が、その思いでいる。
ヒーロー科への受験は、筆記ともう一つ。実技がある。
都市を模した場所を複数用意し、その中に受験生を割り振る。
制限時間内に、その中に配置された敵型ロボットを多く倒す、若しくは無力化し。ロボに記されているポイントが多いものが合格という。
戦闘系の個性を持つものは張り切ってストレッチをし、そうでないものも。自分の個性でどうポイントを取るか考えていた。
と、その中で。周囲の目を引く生徒がいた。
白を基調として緑のラインが入っているジャージを着ている。
背丈は高く、170前後程。細身だが、華奢ではなくしっかりとした印象を受ける。
若干幼さが残る中に、大人への変化が見られる顔立ち。
腿の辺りまで伸びたやや跳ね気味のボリュームのある金色の髪は、今はポニーテールで纏められている。
入念に身体をほぐし、グローブを装着していく。
まるで可憐な少女のようにも、お転婆な姫のようにも見える。
その表情に、周囲の男子はおおっ……! と声になるべく出さないように出している。
準備運動をし始めたその生徒は、周囲を気にする様子もなく。ただ開始の合図を待っていた。
周りも、意識を切り替えていく。
が、時折チラチラと視線をやる。
「…………可愛い子だな」
「ああ――――胸は残念だが」
その言葉に、もう一人が溜息をつきながら首を振る。
「お前は何も分かってない。いいか? ――――アレは隠れ巨乳という奴だ」
「仮にそうだとしても平原すぎんだろ。アレか。サラシでも巻いて抑え付けてるってか? これから試験なのに? 肺を抑えているのと同じだぞ」
「…………そういう個性なのかもしれん」
「胸の大きさを自由に変えられる個性か? 俺としては最高の個性だが今は意味無いだろ」
現実を見ろ。そういって肩を叩く。
「まあ、顔立ちは整っているからな。これからに期待しようじゃないか。もう無理だけど」
「バッカオメェ。ああいうのがいいんじゃねえか」
「チッ。よもや貧乳派だったとはな。ついさっき友誼を交わした間だが、今限りで袂を分かつ必要が出てきたな」
「この巨乳派閥の回し者め……!」
試験が始まる前に事件が起きそうだった。
流石に不味いと思ったのか周囲が止めに入り、少ないながらも受験している女子生徒からは蔑むような視線を貰った。
それと同時に、
『はいスタートォ!!』
という声がスピーカーから響いた。
それと同時に、一瞬旋風が巻き起こる。
長い金髪が、まるで箒星の尾のように棚引いていた。
向かう先は実技試験の場。模擬都市。
スピーカーの声の主―――プロヒーロー・プレゼントマイクは続ける。
『HEY HEY HEY!! どうしたBOYS&GILRS! まさか実戦にカウントダウンなんてものがあると思ったか!? 即断即決即行動!! 既に試験は始まってるぜィ!』
そういって、ブツリと切れた。
一瞬、静寂が包んだ。
そして、全員が一斉に走り出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
スタートの声がした直後。一足先に駆け出した。
…………危うくスタートし損ねるところだった。
走るスピードを緩めず、そのまま街の中へと突入する。
すると。前方に敵ロボットが出現した。
額にはそれぞれ「1P」と書かれている。
向こうもこちらに気づいたようで、腕を振りかぶり近づいてきた。
「目標補足――――ブッコロス! ブッコロス! ブッコロス!」
「ブッコロス! ブッコロス! ブッコロス!」
「ブッコロス! ブッコロス! ブッコロス!」
語彙力。素直にそう思った。
確かに敵をイメージしやすのだろうがそれにしたってボキャブラリーが貧困すぎる。
人間が入力したのか、AIの判断か。それにより設定した人間かロボの中身が非常に低スペックであることが露呈する。
距離は約5メートル。数は3体。
一番近くに来たロボの懐に入り込む。
敵を想定した造りとはいえロボはロボ。動きが単調で読みやすい。
瞬間。個性の応用で力を込めた拳で殴りつける。
ロボはそのまま殴り飛ばされ、ビルの角にぶつかりその機能を停止させた。
次にやってくるロボの相手をと思い、すぐさま後ろへと跳ぶ。
一瞬前までいた場所に、ペイント弾が撃ち込まれ地面が青く染まる。
そして回避をした分、地上を走ってきたロボに追いつかれる。
「I kill you!」
何故英語……?
両腕を伸ばしてくる。
ヒーロー科への入学とはいえ、入試で傷つけるような行為はプログラムされていない。あくまで捕まえる程度のこと。
先のペイント弾も、威力は無い風船のようなものだ。色が中々落ちないという地味に嫌なものではあるが。
それを屈んで回避し、そのまま拳を入れる。
力が上手く入らないためか仰け反る程度だが、体勢を立て直すには十分な間だ。
即座に回し蹴りを叩き込み、そのままロボの背後から迫ってきていた後続の1Pロボを巻き込む形で吹っ飛ばす。
再びペイント弾が飛来する。
今度は後退せず、前進することで回避。
…………射手は何処?
すぐさま周囲を警戒する。
と、路地裏からこちらを狙うロボを発見。胴体部分に「2P」とある。
向こうもこちらに再び狙いをつける。
「I’ll be back」
溶鉱炉に落ちてろ。
そろそろこのロボの発声パターンを考えた人間を問い詰めたいところだ。
そのままロボを行動不能にし、次へ向かう。
稼いだポイントはこれで5P。
後続の受験者も、そろそろやってくる。
ロボを探しながら移動し、一瞬後ろを確認する。
先頭の数名は、肉体強化系の個性でも持っているのか。他の受験者とは少し距離を離して来ていた。
こちらとの距離はまだ十分にあるとはいえ。アレではすぐに追いつかれるだろう。
追いつかれないよう、そしてロボを見失わないよう移動する。
…………絶対に受かろう。
気を引き締め前へと進む。
「――――大丈夫」
そう呟きながら。
やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
ほーら絶対やると思った!
そこまでして書きたいんですか!?
普通にセコい! 息をするように新作を書いていく!
姑息! ちっとも懲りてない恥知らず! 何処で買えるのその図太さ!
こんな風におもっておられる読者の方もいらっしゃることでしょう。
お久しぶりです。Koyです。
うん……うん……
書きたかったんだよ…………ゴメンね。
それでは。