雄英といえばヒーロー科。そういわれるくらいには、雄英高校ヒーロー科というのは有名だ。
とはいえ。雄英も学校、教育機関。
つまり通常授業もちゃんと存在している。
体育祭や職場体験といった、普通の学校にもあるような行事もある。
ヒーロー科といえどそれは変わらず、午前は通常科目の授業があり。午後からはヒーロー科特有のヒーロー基礎学となる。
雄英の教師陣は全てプロのヒーロー。その指導内容も一流と呼ぶに相応しいものだ。
中でも今年はNo.1ヒーローであるオールマイトが教壇に立つということもあり、生徒達の意欲も上昇している。
そして。授業だけでなく、学校としての機能も一流だ。
セキュリティは最新鋭のものを配備。また、サポート科の生徒達が作った警備用ロボも幾つか採用しているという。
最も。それらは正式採用というより、稼動を重ねてデータを集めることが目的であるようだが。
更に。ヒーロー科の授業には実習が多いため。それに伴った施設も充実している。
災害救助などを学ぶためのもの。市街地や危険地帯での戦闘を想定しての施設等等。
さて。
ヒーロー科・普通科・サポート科・経営科。違いはあれど、生徒達共通の楽しみというものもある。
その一つが食事。つまり昼食だ。
ここ雄英高校の食堂はプロヒーロー・ランチラッシュのおかげで、安価で美味い料理を提供してくれている。
懐事情が厳しいのが常の学生にとってはまさに救世主のような存在だ。
そしてその昼食時。
全ての科が一同に集まり、賑わいを見せる食堂。
その一角に異様な光景が広がっていた。
テーブルを、両隣と向かい三席。計六人分を占拠するほどの料理の皿。
六人で談笑しながらの食事風景かと思いきや。座っているのはただ一人。
目の前のテーブルに並べられた料理と同じくらいボリュームのある長い金髪。
整った顔立ちは今。至福のときと言わんばかりに、目の前の料理を自分の中に吸収しながら笑顔になっている。頬はどんぐりを詰め込んだリス状態になっている。
樹咲アリスだ。
周囲の生徒はその様子を食事をしながら、時折箸を止め見入っている。
近くを通った生徒は想像を超えた量をさも平然と平らげている様子を見て驚き、しかもそれを行っているのが線の細い生徒ということにさらに驚く。
「……おい。アレ、あの体の何処に入ってんだ……?」
「まさか個性がそういう系か……?」
「いやでもそれにしたっておかしいだろ……」
「でも、アレだけ食っても貧しいんだな……」
「胸以外に無いから言い訳出来ないぞ」
「ば、バッカお前! 悪いかよ!!」
どこかで握手を交わしながら互いの手を握りつぶそうとしている者が現れたが、そんなのに気にしていたら昼食の時間が減るだけだ。
当の本人はというと、
…………すっごい美味しい……!
満足そうだった。
見た目美少女なため、席を近づけようとする男子生徒がいるがテーブルに載っている料理の量を見てそのままUターンしていく。
口に入っているものを飲み込んだかと思うと、すかさず次を口の中に放り込む。
あっという間に持ってきた皿の半分が綺麗に消えた。
…………これであの値段だから学生にはありがたいよね。
「アンタ……よくそんなに食えるね」
デザートでも持って来るべきだったかどうか考えてると、声を掛けられた。
見ると。一人の女生徒がトレイを持ちながらやや引き気味にこちらを見ていた。
「……ふぇふぃふぁいはらふはっへいいほ?」
「食ってから喋れ」
口や胃が大きいのはまだ分かるが食道は一体どうなってるんだろうか。
そんな疑問をふと思い浮かべる女生徒。
アリスはそのまま口の中のものを飲み込む。
「席無いなら座っていいよ?」
「あー。うん。どうも」
そういうと。空になった皿を脇に寄せ、スペースを作る。
アリスは、その生徒をじっと見る。
「……何?」
「ん、いや。同じクラスだよね。確か、耳朗?」
「そうだよ。アンタは、えーと……樹咲、でいいんだよね?」
「うん。そう。樹咲アリス。よろしくね」
よろしく。と少し笑顔になる。
ショートカットの髪に、長い耳朶……のように見えたピンジャック。
同じく1-Aのクラスメイト。耳朗響香だ。
「にしてもアンタ凄いね。遠目で見ていたけど、アンタの周り。男共で山が出来ていたよ」
「あ、はは……まあその、割と昔からなので……」
「分かる。アンタモテそうだもん。まあ、この状況で割りと台無しだろうけど」
そういって、ピンジャックがテーブルの上の皿群を指す。
「んー。でも大体このくらいはいつも食べるよ?」
「それでその体型? 嘘でしょ……」
「いやいや。ちゃんと動いたりしているから」
そういうと、半分ほど食べていた天丼の丼を持つ。
そして次の瞬間には、中身は空になってテーブルに置かれていた。
「――――――ふう」
「手品かよっ!?」
その光景を見ていた全員が思わず叫んだ。
そんなことは気にせず、アリスは再び次の料理へと取り掛かる。
「……エンゲル係数がえげつない事になってそうなんだけど。アンタの家」
「んー。皆わりとコレくらい食べるからなぁ」
「大食いチャンピオン一家かアンタは」
まるで掃除機で吸い取っているかのように次々と消えていく料理。
そこからものの十分もしない内に、全ての皿が空になる。
「ふー。ご馳走様」
「なんかもう見てるだけでこっちが腹膨れてくるよ……」
「え、大丈夫? それ食べようか?」
「まだ食うんかい!!」
冗談冗談と手を振る。
慣れているのか、テキパキと皿を片付けながら話しかける。
「そういえば午後だけど。いよいよオールマイトの授業始まるね」
「ん、あー。そういえばそうだった」
「ヒーロー基礎学だけど。普通の座学かな?」
「あのガタイで教科書片手に座学ってシュールすぎるんだけど……」
確かに。
アリスは想像する。
身長2メートル超えの筋肉ムキムキの巨漢がスーツをきっちり着て教壇に立ち、教科書片手に座学…………
「――――う、ん。いいと、思うよ?」
「いやそこで無理するなよ……」
「い、いやいいと思うよ? ほら。シュールも行き過ぎればコミカルになるって言うし」
シュールなのは認めてるんじゃん。
ツッコむと。アリスは少し顔を逸らす。
「まあヒーロー基礎学って実技も結構あるみたいだし。そっち担当かもよ」
「あー、そうだね。うん」
そっちの方が似合う。そう思いながら、皿を積み上げ席を立つ。
「じゃ。私行くね。また午後の授業で」
「んー」
ひらひらと手を振りながら耳朗は返事をする。
大量の皿を持ちながら歩く様はまるで罰ゲームでもやっているかのようだが。全ては持ち歩いている本人が食べたものである。
耳朗はその後姿を見ながら、ふと疑問に思う。
…………そういや。アイツ……
なんで女子なのに男子制服着てるんだろうか……?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヒーロー基礎学。
文字通り。ヒーローの基礎を学ぶための科目。
座学は勿論のこと。実戦形式でも行われる。
ヒーロー科の生徒たちにとって重要な科目であり、カリキュラム全体の半分を占めるほど。
そして。本日行われるヒーロー基礎学の教師は誰もが知るヒーロー。
「わ、た、し、がぁ――――――扉から普通に来た!」
バリアフリー意識の巨大な扉から普通にやってきた筋骨隆々で、外見がまるでアメリカンな服装――ヒーローコスチュームに身を包んだ大男。
笑顔を絶やさないこの人物こそ、No.1ヒーロー。オールマイトである。
彼が入室するだけで、教室のテンションは最高潮。
これだけで彼の人気の高さが伺えるというもの。
中には両手を組み天に感謝でも捧げているような、モジャモジャ頭の生徒もいた。
彼が教壇に立つと教室内は静まる。
「うむ! 皆元気で結構だ! では早速授業と行こう!」
そういって、成人男性の平均より大きな手で白いプレートを前に突き出す。
「ヒーロー基礎学。今日行うのはズバリ! 戦闘訓練だ!」
そこには「BATTLE」と書かれている。
戦闘訓練と聞き、何名かの生徒は高揚の声を上げる。
オールマイトは生徒達の反応を見て頷く。
「OKOK。テンション上がってきたね? っと。その前に、だ。これを着てもらおうか。入学前に送ってもらった要望書に合わせて作成された君たちのコスチュームだ」
形から入るのも大事なことだ。
そういって手元のリモコンを操作すると、壁がせり出してくる。
その中には、出席番号順に並んだコスチュームケースが入っていた。
「着替えたら演習場に集合ね! では、私は先に行ってるよ!!」
言うが早いか、オールマイトは颯爽と教室を後にする。
次々に自分のコスチュームを手に取る生徒達。
「いやーこうして受け取ってみると感動だよな!」
「今まではテレビの向こうのヒーロー達見てイメージ膨らますくらいしか出来なかったしな」
「ちゃんと要望通りに出来てっかなぁ」
各々がコスチュームケースを手に持ちながら、更衣室へと向かう。
が、その中で一人。挙動不審な生徒がいた。
樹咲アリスだ。
その顔色は微妙に優れない。というより、少々困り気味だ。
自分のケースを手に取りながら周囲を見渡している。
…………どうしよう……っ!
その様子に緑谷出久が気づいて近づく。
「樹咲さんどうしたの?」
「えっ!? あ、あーええっと、な、なんでもないよ?」
何故疑問系。明らかに動揺しているが一体なんだというのだろうか。
と、出久の後ろから眼鏡を掛けた少年。飯田天哉と、少しほんわかな雰囲気を持つ少女。麗日お茶子が現れた。
「どうしたのかね樹咲君。具合でも悪いのか?」
「あ、いや。そうじゃないんだけどね……」
先ほどにも比べて目に見えて動揺している。
すると。ケースを後ろ手に持ちながら早口で捲くし立てる。
「じ、実はちょっと私のコス特殊でね! 個性の関係もあってか一度確認をしたいんだ!!」
「むっ。そうだったのか。いやしかし、こう言っては不躾かもしれんが。着替えるときに確認できるのでは?」
「そ、それはっ…………は、早めに確認しておくに越したことはないでしょ? うん。そうだ!」
苦しい言い訳だ。出久とお茶子はそう思ったが天哉は成程と何処か納得したようだった。
「うーん。まあ人それぞれだよね樹咲さん! あ、私。麗日お茶子。よろしくね」
「おっと。俺としたことが自己紹介がまだだった。飯田天哉だ。よろしく」
「うん。よろしくね二人とも。樹咲アリス。呼び方は、お好きにどうぞ」
それだけ言うと、アリスは自席に戻ってケースの中身を確認する。
どんなコスチュームなのか気になる三人だったが、授業に遅れるのもいけないと考え。その場を後にする。
教室には、アリス一人だけが残った。
「……よしっ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
演習場に到着した1-Aの面々を見渡すオールマイト。
「うむっ! 皆まずは格好からだ。今日からヒーローとして歩む! その自覚をまずは持たないとね!」
キラリと白い歯が輝く。
と、まるでロボットのような外見をしたコスチュームを身に纏った飯田天哉が手を挙げる。
「先生! ここは入試の時の演習場ですが。市街地演習をやるのでしょうか?」
「いや、今日はもう二歩先へと進む! 屋内戦闘だ!」
近年。敵犯罪は屋外よりも屋内に多いという統計がある。
非合法な武器の売買。麻薬取引。
そういった意味でも、屋内というのは犯罪の起こりやすい場所なのだ。
「君たちには今から二人一組のチームアップを組んでもらう。片方がヒーロー側。もう片方が
何か質問はあるかな? とオールマイトは訊ねる。
…………よしよし。此処までは順調だ。
笑顔を浮かべてはいるが、内心は不安で一杯である。
何しろアドバイスの経験は多少なりあれど。こうして子供達に授業をする、というのは初めての経験だ。
勝手が分からない、ではすまない。目の前にいる子達は、これからの社会に羽ばたくヒーローの卵たちなのだから。
…………一応カンペも用意したんだけど、使わないほうがカッコいいよね……!
自分は仮にもNo.1ヒーローなのだ。ソツなくこなして見せてこそヒーローとしての姿のはず――――――
「勝敗の決定はどうするのでしょう?」
「負けたほうが何かペナルティってあるんでしょうか?」
「チーム分けはどう行うのでしょう!」
「……ブッ飛ばしていいンスか」
前言撤回。無理。
若者の勢い舐めてた……! 今の気分は聖徳太子……!
何気ない仕草でカンペを取り出して読み上げる。
「えーっとね……まず勝敗から説明しよう!」
ヒーロー側は敵側の二人、もしくはターゲットを確保するかで勝利。
敵側は、ターゲットを時間一杯まで守るか。ヒーロー側の二人を確保するかで勝利。
負けても特になく、むしろ負けたほうが反省点などが分かりやすく。次へと繋げられるだろうということ。だからといって負けて言いわけではないが。
「あと、これは訓練だ。怪我を恐れず思いっきりやりなさい。まあ、度が過ぎたと判断すれば中止にするけどね」
ちなみに、とオールマイトは箱を取り出す。
「ちなみにチーム決めはくじだからね!」
「適当なのですか!?」
飯田は愕然とするが、出久の言葉で納得する。
プロヒーローは突発的事態に対し、即席のチームアップを組むことが往々にしてあるので。それを意識しているのではないかと。
ふと。一人、手が挙がる。
「先生。質問です」
「ん? 何かな
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「私達。全員で21人いるんですけど。余った一人はどうなるんですか?」
「ハッハッハ! 大丈夫。ちゃんと考えてあるよ。このクジの中には一つだけ何も書かれていない無地のものがあるから――――ち・な・み・に。その人が誰と組むかは当たってからのお楽しみだ」
陽光に反射するほどの白い歯を見せながらオールマイトはにこやかに笑う。
…………うーん。爽やか。
これがある意味。彼がナンバーワンヒーローたらしめている所以なのかもしれない。
人に安心を与えるのは、何も脅威の排除だけではない。
大丈夫だと。もう安心だと、自ら笑顔になり相手の不安を和らげることも重要となってくる。
肉体だけでなく、助ける相手の心を救っているから。彼はトップヒーローとなっているのだろう。
と。やけに周囲が静かなことに気づく。
それと同時に、自分に多数の視線が突き刺さるのも感じた。
振り向くと、クラスメイトたちが自分を見ている。それも、かなり驚きを込めた目で。
「先生! オールマイト先生!!」
その中の一人。アリスと同じ金髪で、如何にも今風な若者。有体に言ってしまえばチャラそうな少年、上鳴電気が手を挙げる。
「ん? どうかしたのかい? 上鳴少年」
「い、今……なんて?」
「……? 誰と組むかはお楽しみ?」
「違う違う違う!! そこじゃなくてその前!」
んー? と首を傾げるオールマイトに、重要なのはそこじゃないと、上鳴が叫ぶ。
…………はて。何かおかしいことを言っただろうか?
オールマイトは思い出す。
特に不自然な場所はなかったはずだ。
今日の授業の為に、前日から頭の中でシミュレートを繰り返し。先人達の教えの詰まった参考書を読み漁ったりして脳内に叩き込んであるのだから。
実はこっそり。午前中の授業を見学させてもらっている。
自分以外は教師経験豊富なヒーローたちばかりなので、大変参考になる。それと同時に、教えることの難しさもよく分かる。
…………ンンー、教師って難しいネ!
それはともかく。
自分の発言には特におかしい部分はないだろう。
強いて言うならと、オールマイトは此処でようやく思い至った。
「……ハッハッハ! さては上鳴少年と同じ間違いをしてしまっている生徒がこの中にいるな? ダメだぞ。相手を外見で判断しては」
オールマイトの発言に、アリスもなんとなく上鳴が言いたいことに気づいて苦笑いを浮かべる。
「外見だけで判断というのはとても危険だ。もしかしたら相手はトンでもない手段を隠し持っているかもしれない。個性が自分の考えているものと全く別のものをもっているかもしれないのだから」
「じ、じゃあ……まさか……!」
ほぼ全員の視線が向く。
アリスは苦笑しながら、全員を振り返る。
「あー。うん。改めて自己紹介するね。私は樹咲アリス――――一応、生物学上は『男』だよ?」
数名が膝をつき、数名が合点が言ったとばかりに力なく笑う。
「チクショウ……胸は無いけど超絶美人だから声かけようと思ってたのに……!」
「あぁ……それで男子の制服着ていたわけか……」
「普通に可愛いって思ってしまった俺は一体……」
「やー。大丈夫じゃない? 私も普通に思ったし」
そんな中一人。飯田がアリスに訊ねる。
「むっ。では何故更衣室に来なかったんだ? 俺の記憶が正しいのなら、君は来ていなかったはずだが」
その問いを聞くと、アリスはああ……と苦笑する。
「えーっと。大した理由じゃないんだけど……中学の頃から同じクラスの男子に「いやお前いるとなんか変な気分になりそうっていうかなるからお願い教室で着替えてくれぇ!」って懇願されて…………前に同じ場所で着替えてたら男子からの視線が物凄くて……」
ああ、と納得するような声が出る。
…………確かに。注目集めそうだなぁ。
緑谷出久は思う。
樹咲アリスの外見は完全に女性そのものといっても過言ではないほどに綺麗だ。
スラッと長い背丈に、細く。ともすれば華奢に見られかねない身体の線。腿まで伸びた滑らかで豊かな金髪に白い肌。
奇跡的なまでに女性寄りの顔立ちに、淡紅色の瞳がそれを際立たせる。
声も高く、まず初見で彼女――否。彼が男性だと断定できるものはまずいないだろう。
あと一人称が「私」というのもおそらく勘違いを加速させている。いやまあ別にその一人称は他の男性も使っている。現にオールマイトだってそうだ。
だが筋骨隆々な大男が使うのと、外見詐欺の少女然とした少年が使うのとでは受ける印象は違うだろう。
そんな人物と同じ部屋で着替える。そっちの気がなくとも何かに目覚めそうだ。
オールマイトはその様子を見て何か納得したのか頷く。
「よぅし! 誤解も解けたことで、Let’s くじ引きタイム!」
高らかに箱が掲げられた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
…………うん。まあなんとなく察してた。こういうのは言いだしっぺがなる法則が昔からあるんだって。
それぞれがクジを引き、各々。ペアとなる人物と組んでいった。
その中で。アリスは無印のボールを引き当てていた。
「おっと。樹咲少年がシングルか」
「みたいですね。えーっと。この場合、私の相手は誰なんでしょう?」
「HAHAHA! 心配要らないさ。言っただろう? 組む相手は用意してあるさ」
と、太陽光を反射している白い歯を見せながら笑顔で答えた。
…………終わった人ともう一回やるのかな?
そう思い、クラスメイトを見る。
何名かは同じ考えをしているようで、こちらをじっと見返してくる。
それを見たオールマイトは指を横に振る。
「いやいや。流石にもう一回生徒同士をぶつけることはしないさ。というか。君の相手はもう此処に来ているんだよ?」
えっ、と全員が辺りを見渡す。
周囲は街を模した演習場。まさか何処かに潜んでいるのだろうか。
オールマイトを見ても、ただにこやかに笑っているだけ――――――
「…………先生?」
「昔から。生徒がペアを組めないときには必ず組む相手が存在しているのは知っているかな?」
そういって、さらに笑顔になり。鍛えに鍛えたであろう自身の大胸筋をトントンと指で小突いた。
「――――――――んんんんんんんんんん!?」
「ハッハッハ! いいリアクションだ! そして大当たりだ樹咲少年! 一足先に、プロヒーローと一対一だ!」
あ、勿論ハンデはつけるからね?
可愛く言っても事実は変わらず。つまり――――
…………現行のNo.1ヒーローと一対一で戦えと……!?
常に壁を用意するのが雄英の教育方針。
初っ端から。デカすぎる壁に真正面からぶち当たったアリス。
周囲からは、Oh……という声が漏れ聞こえる。それと同時に、同情する声も。
「まあまあ。勿論。樹咲少年も全力でぶつかってきたまえ! 何度も繰り返し言うが、これは訓練だからね!」
しばし天を仰いでいたアリスだが、やがてオールマイトに向き直る。
「お、おお、オール、マイト……」
んー? とオールマイトはアリスの顔を覗きこむ。
何を言うんだ? と全員が黙っていると、アリスは。結構無理矢理作りましたと言わんばかりの笑顔で――――
「わ――――――私が、勝ちます……!」
根拠のない宣言だった。若干声が震えている。
それを聞いたクラスメイト達は一度深く頷くと。
「テンパり過ぎだ……!」
どうもKoyです。
「はーい二人組作ってねー」
「せんせー。一人余りましたー」
「じゃあ先生と組みましょうかー」
「やったー」
「あ、でもこれは生徒の自主性を促す為に私は殆ど何もしないから実質貴方一人ね?」
「組む意味」