いつか見た、あの夏の日まで。   作:雨魂

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十年振りのヨーソロー

 

 

 ◇

 

 

 

 浅葱色の畳が敷かれた部屋。窓の外にはキラキラ輝く海と、遠くの方には富士山も見える。窓辺にはテーブルと椅子が二脚置かれており、ここが一人部屋ではないことがそれを見るだけで理解できた。

 

 

「…………申し訳ないな、なんか」

 

 

 千歌に通されたのはこの旅館で一番良い客室。お盆前でまだ賑わっているような時期じゃないけど、こんな部屋を俺のためだけに使わせてもらうだなんてもったいない気がして、なんだか落ち着かない気持ちになった。

 

 バッグに詰めてきた荷物を整理しながら、窓の外に広がる景色をちらちらと眺める。やっぱり良い眺めだ。まぁいつまでも気にしてたら気も休まらないし、ありがたく使わせてもらおう。

 

 

「よーし、終わった」

 

 

 荷解きが終わり、背伸びをして凝り固まった背中の筋肉を伸ばした。そしてそのまま畳の上に仰向けに倒れ、古い造りの天井を見上げる。

 

 聞こえてくるのは、静かな波の音と蝉の鳴き声。朝までは東京の騒がしい街の中に居たっていうのに、気づけばこんな穏やかな場所に俺は居る。

 

 不安だった海も実際に見てみれば、どうってことも無かった。いや、むしろ怖いというよりも海ってこんなに綺麗だったのか、と感動を覚えてしまったのは自分でも予想外だった。

 

 天井を仰ぎながらそんなことを考えていると、ドアが控え目にノックされる。それを聞いて俺は起き上がった。

 

 誰だろ。千歌だったらもっと騒がしくドアの向こう側から呼んでくるだろうし、叔母さんかもしれない。何か用でもあるのかな。

 

 

「はーい」

 

「あ、休んでるところごめんね、信吾ちゃん」

 

「志満姉。どうかしたの?」

 

 

 ドアの前に立っていたのは、さっきと変わらないエプロン姿の志満姉。足元には白い段ボールが置かれている。

 

 

「実はね、ちょっとお遣いに行ってほしいの」

 

「お遣い?」

 

「そう。今、夕方に来るお客さんのために準備をしなくちゃいけなくて、手が離せなかったの」

 

 

 志満姉は段ボールを持ち上げ、申し訳なさそうな表情を浮かべてそう言ってくる。

 

 もちろん、俺に断る理由は無い。久しぶりにこの街を歩いてみたかったし、ちょうどいいか。

 

 

「いいよ。これを届ければいいんだよね?」

 

「ごめんね。信吾ちゃん、こっちに来たばっかりで疲れてるっていうのに」

 

「いや、全然疲れてないから気にしないでよ。それに、昔っからよくやってたじゃん」

 

 

 志満姉から段ボール箱を受け取り、そう言ってみせた。叔母さんからお遣いを頼まれることは昔もよくあった。

 

 

「それならよかった。じゃあ千歌ちゃんも行ってくれるみたいだから、一緒にお願いね」

 

「千歌も?」

 

 

 別にいいか。場所もあんまり覚えてないし、あいつに案内されながら散策しよう。

 

 

「そうだ。お駄賃でコレ、一つ食べていいわよ」

 

「ん? あ、夏蜜柑だ。懐かしい」

 

 

 志満姉は俺が抱えてる段ボール箱から、夏蜜柑を一つ取り出してくれた。

 

 普通の蜜柑よりも黄色がかって、少し皮が固い夏蜜柑。昔は千歌と裏山の畑に忍び込んで勝手に取って食べたりしたっけ。東京じゃ食べる機会が無かったから、久しぶりに食べてみたかった。

 

 

「ふふ、そうでしょ。じゃあ待っててね、千歌ちゃんを呼んでくるから」

 

「うん。よろしく」

 

 

 そう言って、志満姉は階段を下りて行った。それを見送り、夏蜜柑を手の上で弄びながらまた畳の上に座る。

 

 胡坐をかいて手に握る夏蜜柑を眺める。オレンジ色に緑のへた。なんか見てれば見てるほど、誰かに似ているような気がしてくる。

 

 そんなことを考えながら、皮を剥いて果肉を口に放り込んだ。やっぱり酸っぱいな。でも美味しい。

 

 そうして夏蜜柑を食べていると、階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。来たか。

 

 

「信ちゃーんっ。お遣いに行くよーっ! って」

 

「おう、お疲れさん」

 

「あー! いいなぁ夏蜜柑っ。千歌にもちょうだーいっ!」

 

「分かった、分かったから寄ってくるなっつーのっ。お前は赤いモノを見つけた猛牛かっ」

 

 

 蜜柑を見つけた途端、ちょとつもうしーんっ!と迫ってきた千歌の頭を右手で押さえつける。蜜柑ばっかり食ってるから蜜柑みたいな見た目してんじゃねぇのかこいつ。

 

 

「えへへ。じゃあ信ちゃん、アーンってして?」

 

「あ゛?」

 

 

 そんなやり取りをした後、俺たちはお遣いクエストへと出発した。パーティは俺と頭の中まで蜜柑で出来た従妹。頼むから蜜柑を海に落としたりすんなよ? それだけはどうにもできないからな。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 旅館の前にある海沿いの道路を西へと進む。時刻は正午を過ぎで、かなり気温も上がっているようだった。俺の手には夏蜜柑が入った段ボール。ミス・おっちょこちょいの称号を持つこの従妹には任せられなかったので、必然的に俺が持つことに。

 

 

「で、お遣いはどこに行くんだ?」

 

「淡島にあるお得意さまの所だよー」

 

「淡島って、連絡船に乗って行くあの島か」

 

「せいかーいっ。よく覚えてたね、信ちゃん」

 

「何回か行ったことあったしな」

 

 

 そんな話をしながら道幅の狭い歩道を歩き、俺達は淡島マリンパークの連絡船乗り場を目指す。

 

 

「ていうかまだお遣いやってるんだな、千歌」

 

「何おーう? 千歌だって今は若女将なんだぞ、若女将っ」

 

 

 むふーん、とドヤ顔を見せてくる千歌。ムカつく。確かにあの旅館で働いているんだからその称号に間違いはないが、中身が伴っていないのは気のせいではない。

 

 昔からこいつはよく叔母さんにお遣いを任されていて、それに俺もついて行くのはお決まりだった。こいつについて行くと、届けに行った家の人から必ずお菓子とか蜜柑を貰えたから。三つしかない蜜柑を取り合って泣かれた記憶も、あるようなないような。

 

 

「はいはい。未だにお遣いを頼まれる若女将さんな」

 

「うわーん、信ちゃんがイジメる~。後で美渡姉に言い付けてやるんだから」

 

「それだけは勘弁してくれ。初日から精神がイカれてしまう」

 

 

 千歌が泣き真似をしながら恐ろしいことを言い出した。マジでそれはダメだ。成長した今、昔のような罰を受けたら俺のメンタルは灰になってしまう。

 

 しばらくすると、あわしまマリンパークと書かれた建物が見えてくる。俺達はそこの駐車場にある船乗り場に向かった。

 

 タイル張りの地面を歩き、連絡船が止まってる所まで歩いて行く。足を滑らしたりしたら、すぐ横にある海に落ちてしまいそうだった。そうなった時の自分を想像してしまい、一度足を止めてしまう。

 

 

「ん? どうしたの、信ちゃん?」

 

 

 先を歩いていた千歌が立ち止まった俺に気づき、こちらを振り返える。首を傾げているところからして、俺が何を思っているのか多分分かっていないんだろう。

 

 深呼吸をして、怖がるこの感情を静めた。大丈夫だ。注意してゆっくり歩いて行けば落ちることなんてない。

 

 

「……何でもない。行こうぜ」

 

 

 そう自分に言い聞かせながら、また足を前に運ぶ。千歌は心配するような目を向けてきたが、すぐにいつも通りの顔に戻った。

 

 そうして俺達は連絡船の前に到着する。定期的に淡島と内浦を結んでいるこの連絡船。俺の記憶が正しければ十五分おきくらいに島と陸を行ったり来たりをしていた気がする。

 

 

「他の客は……いないな」

 

「そうだね~。これなら頼めばすぐに出してくれるかも」

 

「え。何その地元民しか知らなそうな豆知識」

 

 

 そんなアバウトなのかこの連絡船。まぁ、それで良いならいいんだけどさ。

 

 船内には客も乗組員もいないらしく、俺達は連絡船の前で船長が来るのを待っていた。

 

 そんな時だった。

 

 

 

「─────乗ってくかい、お二人さん」

 

 

 

 背後からそんな声が聞こえ、同時に俺と千歌は振り返る。

 

 そこに立っていたのは、白に青のラインが入った帽子と真っ白いシャツに群青のスカーフを首に巻いている、亜麻色の髪をした女の子。

 

 もしかして、この子が船長さんなのか? 別にそれはそれでいいんだけど、なんで黒いパイプを咥えているんだろう。服装もセーラー服だし、ちょっと痛いぞ。大丈夫か。

 

 

「あ、やっぱりいた。今日はバイトだったんだね」

 

「え。知り合い?」

 

 

 千歌がその女の子に声をかけた。マジか。大丈夫か、こいつの友達。千歌が普段どんな奴とつるんでるのか心配になって来たんだけど。

 

 

「千歌ちゃーんっ、久しぶり~」

 

「あはは、一昨日会ったばっかりでしょ~?」

 

「そうだったっけ? はは、ごめんごめん……って」

 

「ん?」

 

 

 千歌と話をしてたセーラー服の女の子が俺の存在に気づき、顔を向けてくる。

 

 

「…………千歌ちゃん。その男の子は?」

 

「あ、ども」

 

 

 会釈をしてからその子の顔を見る。亜麻色の髪のセミロングで毛先の方には緩いパーマがかかっている。青い瞳が特徴的で何となく海がピッタリと似合いそうな女の子だった。

 

 でも、なんか見覚えがあるような。いや、でも違うか。あの子がこんなに可愛くなってるだなんて想像できない。あの子の名前は───なんて言ったっけ?

 

 

「………………」

 

「………………どうかしましたか?」

 

 

 ガン見してくるセーラー服の美少女。目がちょっと怖い。サスペンスドラマとかで犯人が憎んでる人を殺す時の目に似てた。俺、なんかした?

 

 

「ふふ、まさか彼氏…………とかじゃない、よね?」

 

 

 セーラー服の女の子がそう言った途端、俺の背中に冷や汗が流れる。てか殺気!?  こんな美少女が殺気なんて出しちゃダメだろ!

 

 目だけで俺を仕留めてきそうなその亜麻色の髪をした美少女。ふと気になったんだが、もし俺が千歌の彼氏だったらどうなっていたんだろう。アレか。もしかしてこの子、いわゆる百合(ゆり)ってやつなのか。やめよう。人間には色々あるんだし、人が好きになるものをどうこう言う権利は無い。でも現実で初めて見た。しかもこの子の場合、かなり性質が悪いやつだ。千歌と付き合う未来の彼氏、ご愁傷さま。

 

 

「あはは、違う違う。覚えてない? 昔よく夏休みになると帰って来て、一緒に遊んだりしたじゃん」

 

「「え?」」

 

 

 千歌の言葉を聞いて俺と美少女の声が被る。俺はその子と顔を見合わせ、昔の記憶を思い返してみた。

 

 まさか、やっぱりそうなのか? でもマジで? 十年も経つと女の子ってこんなに変わっちゃうもんなのか?

 

 記憶の奥底にあった女の子の名前を、ようやく思い出した。そして目の前に立つ女の子に十年前によく遊んでいた女の子の面影を見つけ、確かめるようにその名を呼んでみる。

 

 

「…………もしかして」

 

「ひょっとして…………」

 

 

 セーラー服の女の子もやっぱり俺に見覚えがあるのか、小さく口を開けながらそう言って来る。

 

 泳ぎが得意だった、一つ歳下の女の子。あの子の名前は、そうだ。

 

 

 

「曜、ちゃん?」

 

「信、ちゃん?」

 

 

 

 俺達は名前を呼び合った後、同時に頷いた。それで思っていた事が正解である事が証明される。俺の感じていた予感は見事に的中した。

 

 数秒間の沈黙。にゃーっ、と海猫が近くで可愛らしい鳴き声を上げるのが聞こえた。

 

 

 そして。

 

 

 

「「えええええええええええええっ!?」」

 

 

 

 俺達も驚愕の声を揃って上げたのであったとさ。

 

 

 

 

「嘘っ?! なんで信ちゃんが内浦に居るの!?」

 

「いやいや変わり過ぎだろ曜ちゃんっ! ぜんぜん誰か分かんなかったぞ!?」

 

「あれ? でも、信ちゃんって女の子じゃなかった?」

 

「どういうことだ。なんで俺の性別が女になってる」

 

「だって、美渡姉に女の子の服着せられてた、ような?」

 

 

 なんでその記憶だけはしっかり覚えてんだよおおおおおおおっ! もうヤダ。死にたい。黒歴史というやつは十年くらいじゃ消えてくれないらしい。俺は今、そんな超どうでもいいことを知った。

 

 千歌は曜ちゃんに向かって、やっぱり? と言いながら笑っていた。やっぱりじゃねぇよ海に落とすぞこのバカ従妹。

 

 

「あー、あれでしょ? ゲームで負けた信ちゃんが美渡姉に千歌のワンピースを着せられたの」

 

「あ、そうそう。ウィッグも付けられてホントに女の子みたいだったよね」

 

「………………」

 

「ごめん信ちゃんっ。わたし、あの時のインパクトが強すぎてずっと女の子って覚えちゃってた」

 

 

 

 これはあれか。一度生まれ変わって来いというお告げなのか。幸い目の前には海があるし、飛び込めばまた新しい自分として生を受けられるかもしれない。いや、やめとこう。まず海が怖くて入る勇気が出てこない。

 

 両手を合わせて頭を下げてくる曜ちゃん。その可愛さに免じて、女だと思われてたことは許してあげよう。

 

 それ以上に、俺は彼女の変わり様に驚いていた。本当にこの子があの曜ちゃんだと、どうしても思えない。どんな風に成長すればこんなに垢抜けるんだろう。可愛くなり過ぎだろ。

 

 

「俺は正真正銘の男だよ。頼むから忘れないでくれ。で、曜ちゃんは何してんの?」

 

「え? 見ての通りだけど?」

 

「や、それが全然分かんないから訊いてんだけど」

 

 

 きょとんとした顔でこっちを見てくる曜ちゃん。なんでこんな日のこんな所でコスプレなんてしてんだろう。最初に抱いてしまった痛い子だという認識は間違いではないのか?

 

 

「えへへ。曜ちゃんはね、バイトでこの連絡船の船長さんをやってるんだよ」

 

「え、そうなの?」

 

 

 俺の横に立つ千歌がそう言って、曜ちゃんの代わりに質問に答えてくれた。それを聞いて、もう一度セーラー服姿の曜ちゃんに目を移す。

 

 

「はい、そうなのですっ」

 

 

 綺麗な敬礼を見せてくる曜ちゃん。どう見てもクオリティの高いコスプレをしてる女の子にしか見えないんだけど、そういうことで間違いは無いらしい。

 

 

「ってことで曜ちゃん、淡島まで連絡船お願いしまーす」

 

「了解っ。千歌ちゃんと信ちゃんを安心安全で淡島まで届けるよっ!」

 

 

 千歌がそう言うと、曜ちゃんは敬礼をしてから連絡船の方に近づいて行く。俺達はその後ろについて行った。

 

 

「よっと。落ちないように気をつけてね、信ちゃん」

 

「あ、ああ」

 

 

 (おか)からぴょんっとジャンプして慣れたように連絡船に乗り移る曜ちゃんと千歌。俺も後に続こうとしたがすぐ下が海ということに気づいてしまい、途端に足が竦んでしまった。

 

 そうやって移りあぐねていると、ビビってる俺に気づいた曜ちゃんが船の方からこちらに手を伸ばしてくれる。

 

 

「はい、信ちゃん。掴まっていいよ」

 

「ありがとう、曜ちゃん。助かる」

 

「いえいえ、船長として当然の行いだよ?」

 

 

 段ボール箱を落とさないように片手で持ち、曜ちゃんの手を握って連絡船に乗り移った。手が予想以上に柔らかくてドキッとしてしまったのは秘密。

 

 

「よっ、と」

 

「へへ、よくできました。そういえば信ちゃん、昔も船に乗るのが苦手だったよね」

 

「え、そうだったっけ?」

 

「うん。怖がっていつまでも陸の方にいるんだもん。乗せるのホントに大変だったんだよ? ね、千歌ちゃん」

 

「ああそうそう。果南ちゃんと三人で無理やり引っ張ったこともあったよね~」

 

 

 曜ちゃんと千歌がそんな昔話をし始める。けど、俺にはその記憶は残っていなかった。

 

 

「そう言えば、今日は二人で淡島まで何をしに行くの?」

 

「果南ちゃんの家までお遣いを頼まれたんだよ~」

 

「あ、じゃあダイビングショップまでだね。了解しましたっ。それでは、お二人様ごあんなーい!」

 

 

 曜ちゃんは敬礼をしてから操縦席へと向かい、俺と千歌は船内に移動して椅子に腰掛けた。しばらくすると、船のエンジンがかかる音が聞こえてきた。

 

 

「えへへ、信ちゃんビックリしてたね」

 

「あ? 何がだよ」

 

「曜ちゃん、すごく可愛くなったでしょ。きっとビックリすると思ってたからやっぱりなぁ、って思って」

 

 

 隣に座る千歌が笑いながらそう言ってくる。なるほど、曜ちゃんがここでバイトしてることを知らせなかったのは、俺を驚かせるためだったのか。

 

 

「確かに驚きはしたな。まさか会えるとも思ってなかったし」

 

「なら千歌のドッキリ作戦は大成功だったんだね。よかったよかった」

 

 

 お前を見た時も同じくらいビックリしたけどな、とは言えず、窓から見える海に視線を移した。

 

 みんな変わってる。それはここに来る前から予想はしてたけど、俺が思い描いていた想像よりも数段美人になってたり可愛くなってたりしてる。女の子っていうはそういうモノなのかもしれない。

 

 これからの数日間で、またそう言う人に出会えるんだろうか。でも、その人は覚えているのに、俺が忘れていてしまったりしてたら申し訳ないな。

 

 ま、そんなのはあんまり考えられないだろう。一緒に遊んだりした人の顔や名前を忘れるほど、記憶力は衰えていない筈だから。

 

 そう、例えば声を聞けば思い出せる。その人が何か言葉を発して、俺がそれを耳にすれば思い出されるモノは必ずある。だから思い出せる自信がある。

 

 その人が俺と十年前にどんな関わりをしていたとしても、きっと。

 

 

 

 

「それじゃあ行くよ二人ともっ。全速前進、ヨーソローッ!!!」

 

 

 

 

 ほら、また懐かしい言葉と声が聞こえてきた。

 

 




次話/果南って誰だ?
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