日本 羽田空港
日本から外国へ、外国から日本へと飛行機が飛び交う場所。
その出口から数人の人物が出てくる。
「ここが...日本! 特異点 Fの時とは似ても似つかない別物ですね...」
ピンク色の髪に黒縁眼鏡の少女、マシュ・キリエライトは全く未知の世界に目を見開いて呟く。
「ふ〜ん、なんか周りもビルばっかりでつまんないね。」
そうつまらなそうに言うのはマシュ達が特異点Fの後、人理修復の過程で出会ったサーヴァント、ビリー・ザ ・キッド。
「ま、そう言うなよ坊主。案外面白いかもしれねぇぜ?」
ビリーにそう語るのは、以前一度マシュ達と共闘したクー・フーリン。
彼らは皆人理修復の為、マスターと共に戦ってきたサーヴァントである。
「...それにしても遅いね、マスター。」
「はい。確かに12時頃に空港に迎えに来ると言ってたんですが...。」
彼らがそんな話をしていた時。
突如サイレン音が聞こえてきた。
「!...あれは...」
「パトカーって奴か?」
すると白いランサーエボリューションIIIが猛スピードでビルの後ろから出てきた。
続いてサイレン音の主が出てくる。 R32型 スカイラインGT-Rの覆面パトカー。
「!おい、あれ!」
クー・フーリンがGT-Rを指差す。乗っていたのは、彼らのマスターであり、警視庁捜査課の刑事、大山だった。
「先輩⁉︎」
「なんだか結構忙しそうだね。」
「ちっきしょう!ランエボなんて下品な車転がして逃げやがって!おまけにナンバー隠してるしよォ...」
ランエボはそのまま加速し、次の角を右折する。
「逃すかァ!...ってあれ」
丁度ランエボが曲がった所で信号が赤になり、一斉に車が走り出す。
「くそぉ〜っ...!」
大山はランエボを見失ってしまった。
「こちら警視103! 見失っちゃいました」
『何っ⁉︎ 何やってるんだ全く...』
「ま、とりあえず署に戻んます。」
大山は引き返し、マシュ達のいる空港前に車を向かわせた。
「あっ 帰ってきました!」
大山は丁度マシュ達の前に車を停める。
「よ!マシュ!久しぶり!」
「はい!お元気でしたか?」
「ん、まぁ。けどこっちに帰ってきてからも中々忙しくてな、昨日くらいから腰が...ビリーとクーも、元気か?」
「まぁね。」
「近頃はちょいと退屈だったけどな。」
「ま、乗ってくれや。とりあえず署に戻って皆紹介すっから。」
「はい!」
マシュ達は大山のGT-Rに乗り込む。
「ところで先輩、さっきは何か事件でも?」
「あのクルマがね、女のコを撥ねて逃げちゃったワケ。」
「えっ⁈」
「そんでもって、あと一歩って所で信号が赤になって逃しちまったって訳か」
クー・フーリンが笑う。
「あ〜ぁ...課長の怒号が飛ぶぞぉ...」
警視庁
「! 大山!お前って奴は...!」
捜査課の部屋に戻るなり、課長が大山に駆け寄る。
「まぁまぁ課長。あ、それより!こちらがカルデアから来たサーヴァントの皆!」
「初めまして。マシュ・キリエライトです。」
「クー・フーリンだ。」
「僕はビリー・ザ ・キッド。よろしくね?」
「ああ、君たちか。上が要請してきたサーヴァントは!私は課長の杉本だ。以後よろしく。」
「課長!」
突然若い刑事がやってくる。
「! 課長、そちらは?」
「ああ、上の要請でウチに来たサーヴァントの皆だ。」
「彼らが! どうも!僕は...」
「こいつは柏田。ま、俺の子分みたいなもんかな?」
そう言って大山が彼の言葉を遮る。
「そりゃないですよ 大山さん...」
「初めまして!マシュ・キリエライトです。こちらはクー・フーリンさん、ビリー・ザ ・キッドさんです。」
「あ、あぁ、改めてよろしくね!」
「...所で、さっきはあんなに慌てて何があったんだ?」
「ああ、そうでした! ...さっき大山さんが逃しちゃったホシなんですが、目撃者の中に同級生がいて、身元が割れました!」
「何⁉︎」
「一体どこのだぁれ?」
大山はタバコに火をつける。
「はい、木ノ井 口太(くちた) 19歳、都内の専門学校に通う学生です。」
「専門学校?」
「ええ、自動車整備系の学校に。そして同級生の話によると、犯行に使われたランサーエボリューションは彼の愛車で間違いないそうです。」
「けど、ナンバーが隠されてたんだから探しにくいったらありゃしないよなァ...」
大山達がそうやって頭を抱えていた時。突然捜査課の固定電話の着信音が鳴り響く。
「はい、警視庁捜査課課長ですが。....ん? なんです?もう一度お願いできますか?」
電話を取った課長の顔色が変わる。逆探知の合図を出し、電話のスピーカーボタンを押した。
『だから、俺のデモンストレーションはお楽しみいただけたのかって聞いてんだよ。考えてみて? あんな女一人殺しただけで俺が満足できると思う?』
「そもそも貴方はどちら様です?」
『は?バカなの?日本の警察がこんなに低脳とは思わなかったよ。犯人だよ。さっきランエボで女を撥ねた犯人!』
「では犯人さん、一体どういうつもりで?」
『 ...今からもう一人撥ねます。場所は...どこだと思う?夜の7時に撥ねるから、それまでに場所突き止めてよ!』
プツッ...
その言葉を最後に、電話は切れた。
「...逆探知は?」
「霞が関1丁目の電話ボックスです!」
「近いな... とりあえず行くかビリー。」
「OKマスター!」
大山はビリーを引き連れて走りだす。
「先輩!」
「おい、くれぐれも無茶はするなよ!」
・ ・ ・
署を出た大山とビリーはGT-Rに乗り込み、霞が関一丁目の電話ボックスに向かう。
信号が赤になり、一旦停止する。
「...にしても、ただの轢き逃げじゃなかったんだね。」
チャッ...
ビリーが愛用銃の「コルト M1877 サンダラー 」の弾を確認する。
「ま、ナンバー隠してた時点で何かあるとは思ってたけどな。」
チャキッ
そう返しながら大山も懐から「コルト パイソン 2.5インチ」を取り出す。
「お、マスター銃変えたんだね。」
「まぁね。コルト社のロールスロイス。パイソン357。有名なマグナムリボルバーっつったらコイツだろ!」
「マグナムね...召喚された時代の知識は頭に入ってくるから知ってるけど、ただパワーがあるだけじゃ扱いにくいんじゃないかな〜?」
「んな事ァねえよ。...ま、お前さんみたいな優男が撃ったんじゃ、マズルジャンプどころか銃ごとガンジャンプしちまうかもな!」
信号が青になり、懐に銃を戻しながら大山が笑う。
「誰が優男だって?」
チャッ
ビリーがサンダラーを大山のこめかみに当てる。
「oh! ソーリー、ソーリー。」
やがて逆探知で突き止められた電話ボックスに到着し、中に入り、手がかりを探す。
「...何にもねえな、帰ろうぜビリー...」
変わった所もないごく普通のボックス内の様子に大山はため息をつく。
「マスター!」
「ん?」
大山が振り向くと、ビリーが小さな紙切れを持っていた。
「こんなのが下に。『場所はここ。19+1、11+21、18+1、4+1』って書いてあるよ。」
「何だそりゃ?算数の宿題か?」
「19+1、11+21、...と何だって?」
『18+1、4+1っすよ課長!』
「18+1、4+1っと...それが次の犯行の場所だと落ちていた紙にはそう書いてあったんだな?」
大山からの連絡で課長はメモを取る。
『そうです。だから推理、宜しく頼んますよ?』
「宜しくって言っったって...お前とビリー君はどうするんだ?」
「ま、俺たちもぼちぼち考えますよ。じゃ。」 プツッ
大山は電話を切る。
「!おい、大山!...全く...自分勝手だな本当に...」
「...あの、課長さん?」
マシュが課長に尋ねる。
「ん?何かな、マシュ君。」
「はい、その暗号文なんですが...19+1とか...もしかしてそれらを組み合わせると一つの文字になるんじゃないでしょうか?」
「文字?」
「じゃあ、まずアルファベットででも考えてみるか?」
クー・フーリンが提案する。
「アルファベットですか... じゃあまず数字をアルファベットに置き換えて... 19は、S。1はA......あ!これを組み合わせると、SA(さ)!」
「おっ! いい線行ってんじゃねえか?じゃあ11+21は... K+U、KU(く)!」
「18+1は...R+A、RA(ら)! ...4+1はD+A、DA(だ)!」
「さ、く、ら、だ... ! 桜田公園‼︎」
課長が閃いたように言う。
一方その頃、大山とビリーは車に寄りかかりタバコをふかしていた。
「次のヤマは、7時か...」
「場所、見つけられそうにないね。」
「どうすっかなぁ〜...」
『警視103へ!大山!聞こえるか?』
突如無線が入る。
「ん、どうかしたんすか?」
『ああ、次の犯行の場所がわかった!場所は桜田公園!』
「桜田公園? ホントなんすか?」
『間違いない。マシュ君が暗号の解き方に気づいた。あれは数字をアルファベットに置き換えて足すと一つの発音になる!』
「それで、全部組み合わせると、桜田公園ってワケっすか。 でかしたぞマシュ!」
『い、いえ!... お役に立てて幸いです。』
「ほんじゃ、桜田公園へLETS'GO‼︎」
「いいね〜!」
大山とビリーはGT-Rに乗り込み、急発進する。
桜田公園
子供たちや子連れがはしゃぐ、平和な風景。 その公園沿いの道路に白いランサーエボリューションが停車している。
「...呑気な奴らだ。今から撥ねられるとも知らずに...」
ランエボの所有者であり、犯人の木ノ井はゆっくりと動き出す。すると...!
ギャァアアッ...
突然公園に乗り上げ、スピードを上げ始めた。
「! きゃああ!」
「くるまが...⁉︎」
そのまま公園にいる人々めがけて直進する。
「はっはっは‼︎ 俺のランエボで死ねるんだからこんな幸せな死に方ないだろ!」
と、その時。
キィイッ...
大山達が到着する。
「!おいおいマジかよ⁉︎ ビリー!」
「OK!」
チャキッ
二人とも銃を取り出す。
ドン!
ドォン!
パリィンッ!
二人の撃った弾はランエボの窓ガラスをかち割り、木ノ井はハンドルを切って停車した。 幸いにも公園にいた人間は皆無傷である。
「チッ...警察にも暗号解けるぐらいの頭の奴がいたんか!」
木ノ井はそのまま反対方向に走り出し、公園を出た。
「よぉし、後ぁ追っかけるだけ!」
大山達もGT-Rで後に続く。
木ノ井はそのまま大通りに出て逃走する。
「ったくよォ、俺と鬼ごっこもいいけど、その代償は高くつくぜ!」
チャキッ...
大山はパイソンの撃鉄を上げる。
...ドォン!
プスッ!
大山はランエボのタイヤを撃ち抜く。
「じゃ、僕も‼︎」
ドン!
プスッ!
ビリーもサンダラーでもう片方のタイヤを撃ち抜く。
「はっ⁉︎」
ランエボは段々とスピードを落とし、やがて脇道に完全に停車した。
ランエボが止まったのを見て、大山とビリーはGT-Rから降り、ランエボに駆け寄る。
「よーし、動くんじゃないぞ?」
「......チッ...銃使うとか卑怯だよ。 男ならクルマで勝負しろクルマで!」
「あいにく僕は車には興味ないんでね。好きなのは、これだけさ!」
ビリーがそう言いながらサンダラーを取り出す。
「じゃ、タイホね。」 カチャン!
大山が木ノ井に手錠をかけ、GT-Rの後部座席に乗せる。
「ま、一件落着か。」
「そうだね。まぁ、僕はもうちょっと遊んでも良かったけど。」
・ ・ ・
警視庁
「犯人の木ノ井は、日頃のストレスなどから興味本位で犯行を行ったそうだ。」
捜査課の部屋で課長が語る。
「ストレス溜まってんなら海行って叫べばいいんだよ。バカヤロオォ!って。」
「せ、先輩。それだと周りの方に迷惑かと...」
マシュが苦笑いする。
「まぁ、最近はこういう訳の分からん奴が多いからな。これからのヤマも大変だろうよ。」
「上等だよマスター!また撃ち合いのチャンスが欲しいね!」
「言えた。」
大山とビリーは顔を見合わせて笑う。
「息ぴったりですね、二人とも。」
二人の楽しげな雰囲気を見てマシュが言う。
「銃を使うサーヴァントと銃を使うマスターか。...なんかおっかねえな。」