もっとマスター刑事(デカ)   作:くらっか〜

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#3 新入

カルデアから、警視庁に新しいサーヴァントが1人送られてくる事になった。大山と柏田は羽田空港入り口に車を停めて待っていた。

 

「大山さん、確か...女の子でしたよね?」

 

「そ。名前は、『両義式』。」

 

「うぅ〜ん...マシュちゃんも可愛いけど、今度の子も楽しみだな〜」

 

「んじゃ俺とお前どっちに懐くか賭けてみる?」

 

「! 良いですよ?」

 

「負けた方はランチ奢る。」

 

「や、やりましょ!」

 

「お、来たみたいネ。」

 

空港の自動ドアを抜けて出て来たのは、黒髪のショートボブ、赤いジャケットの下は何故か着物という不思議なコーデの少女。

 

「なんか、独特なファッションセンス持ってるみたいですね...でも可愛い ////」

 

「じゃ、勝負すっか。」

 

「行きますよ!」

 

まず柏田が車から降りて彼女の前に立つ。

 

「り、両義式ちゃんだね?僕は警視庁の柏田!よろしく...ね?」

 

彼女はそんな柏田をまるで気づいていないかのようにスルーしていく。

 

 

車から降りた大山が彼女の手を掴む。

 

「...何だよ。」

 

「ちょいとお待ちをお嬢さん。」

 

「あんたがオレのマスターの刑事って事なんだろ?話は聞いてる...後で署に行けば文句ないだろ?」

 

「そんな事言わずに!良かったら、ご一緒にランチなんかいかがです?もし先約が無ければ。」

 

「署の中の食堂なんて言うんじゃないのか?」

 

「冗談じゃないよォ 中華街でフルコースってのはどう?」

 

「...その後ハーゲンダッツのストロベリーも付けるか?」

 

「もちろんもちろん!いくらでも。」

 

「...ふっ...仕方ないな...付き合ってやるよ。」

 

彼女は少し観念したように笑う。

 

「ではでは、どうぞ!」

 

大山は車の助手席のドアを開けて彼女を乗せる。

 

「それじゃ、中華おごり!」

 

彼は満面の笑みで柏田にピースサインする。

 

「...ちぇっ」

 

 

・ ・ ・

 

「そういや自己紹介がまだだったね。俺は警視庁の大山健次。敏腕刑事でもあり、君のマスターでもあるワケ。」

 

「一応向こうで話は聞いてるから知ってるよ...オレは両義式。ま、適当に暴れてやるよ。」

 

「そりゃ頼もしい事で!」

 

 

「はぁ...財布、最近膨らんでたのに。」

 

後部座席で柏田は己の財布から食事代を抜いてため息をつく。

 

 

 

 

中華料理店

 

「うほー、豪華ァ!さ、式ちゃん!遠慮しないで食っちゃおうよォ!こいつのオゴリだから!」

 

大山はそう言いながらカニチャーハンをがっつく。

 

「ったくチョーシに乗っちゃって...!」

 

そう呟きながら柏田は細々と小籠包をつつく。

 

「...あんたも大変だな。」

 

先程は柏田をシカトしていた式だが、大山の彼のこき使いっぷりを見兼ねたのか、柏田に同情の声をかけた。

 

「! あ、ありがとう〜...」

 

柏田は涙目で彼女に握手を交わそうとする。

 

...が。

 

 

「なんだとォ!?」

 

 

「「「!」」」

 

突如彼らの居る場所の下の階にあるレジで男が大声を上げる。

 

 

「で、ですから...あと1万円ばかりお代の方が足りないと...」

 

レジでは会計をしていた男が支払い額が全く足りない事を指摘されて店員に絡んでいた。

 

「だ〜か〜ら〜...あるじゃねぇか1万円札ぅ」

 

男はトレーに置いていたくしゃくしゃの札を店員に見せる。

 

「...それ、千円札ですよ?」

 

「うるせえぇ!!!」

 

男は逆上し、店員の胸ぐらを掴み上げる。

 

「ぐぁっ...」

 

スッ...

 

「!」

 

男は懐に手を突っ込み、果物ナイフを取り出す。

 

「細けぇ事気にする男は好かれねぇぞ...?」

 

「や、やめ...」

 

 

 

「気にしなさすぎる男もどうかと思うけどなァ」

 

 

「ッ!?」

 

 

突然の声に驚いた男が振り向くと、大山と柏田が拳銃を構えていた。

 

「な、なんだテメェら!」

 

「警視組若頭、大山〜!なんちって。」

 

カチャッ

 

大山はパイソンの撃鉄を起こした。

 

「大山さん、真面目に真面目に。警視庁捜査課の者だ!大人しくその人を解放して投降しろ!」

 

カチャッ

 

それに続いて柏田も愛銃、コルト ディテクティブ スペシャルの撃鉄を起こす。

 

 

「...けっ、警察か...う、撃てるもんなら撃ってみろよおぉ!!!」

 

激情した男は店員の首元にナイフを近づける。

 

「くっ...どうします大山さん?」

 

「ま、狙えねぇ事ァないけど。」

 

大山はパイソンの照準をしばらく男の手元に合わせていたが...

 

...チキッ

 

「!大山さん?」

 

彼は起こしていたパイソンの撃鉄を戻す。

 

「やっぱここは、カノジョに行ってもらおうぜ?」

 

大山はパイソンをバレルの方に持ち替え、グリップで式の方を指す。

 

「お手並み拝見といきましょか、お嬢さん?」

 

「...やれやれ。ま、マスターの指示だしな。」

 

式は仕方なさそうに言うと、男の方へ歩いて行った。男は突然見知らぬ少女が近づいてきて困惑する。

 

「なんだァ嬢ちゃん? 」

 

 

...サッ

 

「!?」

 

男が口を開いた瞬間、彼女は男の視界から消えた。いや厳密に言えば消えたように見える程の速さで移動したのだ。

 

 

 

ザシュッ...

 

「!ぎゃああっ」

 

次の瞬間、男の腕は式が取り出したナイフで切りつけられた。その痛みにナイフを落として人質の店員を離す男。

 

「...っぐぅぅ...」

 

 

「す、凄い...あっ いけねっ」

 

柏田は式の早業に呆気に取られていたあまり、ディテクティブを落としてしまう。

 

 

「...どうだ?オレの腕は認めてくれたか?マスターさん。」

 

「うんうん、ベラボー!」

 

大山は頷きながらパチパチと手を叩く。

 

「俺たち中々良いコンビ組めそうだね?」

 

「マスターの指示がまともな内はな。良い関係になるんじゃない?」

 

「ハハ、こりゃ手厳しいこって。」

 

その後、男は確保され、大山たちは署へ連行した。

 

 

警視庁

 

「皆、ただいま〜!」

 

「先輩、柏田さん、お帰りなさい。」

 

部屋に大山たちが入ると、マシュが出迎えた。

 

 

「えらく遅いと思ったらまた事件か...まぁ良い。とりあえずその男は後で取り調べろ。」

 

「了解。そして課長、彼女が新しくきた、両儀式ちゃんです!」

 

「...よろしくな。」

 

「ああ、こちらこそ宜しく。課長の杉本だ。すまないね、うちの大山に変な事してないと良いんだが...」

 

 

「課長ォ、俺を一体どんな人間と思ってんすか?」

 

「女たらしで不真面目で拳銃はやたらと撃つけしからん人間だな。」

 

「紳士でユーモアのある銃の名手と言って欲しいですな!」

 

 

 

「...マスターのどこが紳士なんだ?」

 

「さぁね...」

 

部屋の奥でクー・フーリンとビリーがヒソヒソ話し合う。

 

その夜。

 

大山らマシュを覆面パトカーのGT-Rに乗せ、街中を巡回していた。

 

「新しく来た式さん、昼間の事件で大活躍だったそうですね、先輩。」

 

「ん、まぁね。中々の腕前だったヨあの娘。」

 

「それに比べて私は...あの時、最後の特異点の戦いの後から...私の身体は、力を失ってしまいました...」

 

マシュは少し俯いて言う。

 

「マシュ...」

 

「今はもうサーヴァントとして戦う事も出来ません。先輩達のお役に立てているのかどうか...」

 

「んな事ァねえよ!マシュが淹れてくれるコーヒー、美味いぞ?」

 

「!...先輩!...ありがとうございます。」

 

マシュが嬉しそうに笑ったその時。

 

 

『警視103!応答願います!』

 

「おっと。はいよ、こちら警視103!」

 

『殺人事件発生!現場は、新橋2丁目のコーポ高坂、直ちに急行して下さい!』

 

「103了解!」

 

「先輩、急ぎましょう!」

 

「おうよ!」

 

 

大山はスピンターンして新橋の現場へと向かう。

 

 

 

 

コーポ高坂

 

 

パシャッ... パシャッ...

 

現場では既に鑑識の撮影などが行われている。

 

「うぃーす。」

 

「どうも。」

 

大山とマシュが現場のテープをくぐると、そこには...

 

「あれれ。」

 

「柏田さんに式さん!」

 

現場には柏田が式を連れて先回りしていた。

 

「なーんでカノジョまで連れてきたんだよぉ」

 

「良いじゃないすか別に...大山さんだってマシュちゃん連れてるでしょ!」

 

「うぅ...まぁ、な。でもよく付いてきたなァ...」

 

「これ、買ってあげたんですよ!」

 

柏田は満面の笑みでコンビニの袋に入っているハーゲンダッツのストロベリーを見せる。

 

「あ...」

 

 

「コイツはちゃんと覚えてたよ、マスターさん?」

 

 

「き〜っ、卑怯もんがァ...まあいいや、んで、状況は?」

 

「はい、被害者は宇田一樹21歳。射殺されてました。それも頭を1発で。」

 

「ヘッドショットか...弾は?」

 

「どうやら38口径のリボルバー弾みたいです。弾の線条痕※からして、発射したのはS&W社の小型リボルバーじゃないかとの事です。」

 

「てことは、俺のチーフ君と同じか...」

 

大山は腰に下げたバックアップのS&W M36を取り出して言う。

 

「指紋とかは、残ってなかったんですか?」

 

マシュが聞く。

 

「うん、流石にそこまで迂闊な犯人ではなかったみたいだよ。」

 

 

「ま、何はともあれ成仏してくださいまし。なんまんだ〜なんまんだ...」

 

大山は遺体の前で手を合わせる。

 

 

 

翌日

 

大山は事件の起こったマンション付近の住民に次から次へと聞き込みをしていた。

 

「どんな小さな事でも思い出せませんかねぇ奥さん。あ、よく見るとまあ綺麗!おたくいくつ?20前後?」

 

「まぁ、お口がお上手ね刑事さん!」

 

べた褒めされたどう見ても40前後の主婦は機嫌が良くなる。

 

「...そうねぇ、あ、そうそう!確か...昨日、あのマンションに見慣れない人が入っていったわね...」

 

「見慣れない人?」

 

「ええ、銃声が聞こえるちょっと前。ボサボサの明るい茶髪で眼鏡でゲームのグッズみたいなパーカーの、いかにもオタク!って感じの男の人で...やけに周りを気にしてたわ...もちろん無関係かもしれないけどね!」

 

「いえいえ大丈夫っすよ!どうもありがと奥さん。」

 

大山は主婦に軽く手を振ると路肩に止めたGT-Rに向かう。

 

 

「何か収穫はあったか?」

 

一緒に来ていた式が車のナビシートから言う。

 

「ん、良い情報ゲッツ。多分ビンゴよ。昨日マンションに怪しい男が出入りしてたらしくてなァ...もうちょい探ったらたどり着けるだろうよ。」

 

彼はそう言いながら車に乗り込み、エンジンをかける。

 

 

 

「ああ、多分その人紫藤くんじゃないかしら!」

 

「紫藤?」

 

事件の起こったマンションの2軒隣のマンションの住民に先程の情報を伝えて聞くと、目撃された男と思しき人物を知っている住民に接触する事に成功した。

 

「はい、紫藤 大石(だいせき)君、このマンションの最上階に住んでる大学生ですよ。」

 

「このマンションの最上階に! 部屋番号分かります?」

 

「確か、702号室でしたよ。」

 

 

・ ・ ・

 

702号室

 

「どちら様ですか?」

 

部屋を尋ねると、初老の女性が出迎えた。

 

「すみませんね、警視庁捜査課のモンです。」

 

大山は警察手帳を見せる。

 

「け、刑事さん?」

 

「ええ、紫藤 大石君に用がありまして。お母さん方ですか?」

 

「え、ええ、そうですが...大石は何日か前に家を出ました。」

 

「...え?」

 

「あの子...大学受験に失敗したっきり、ゲーム漬けのニートになってしまって...主人とも相談して、近いうちにどうにか働かせて独立させようと思っていたんです。でも...」

 

「でも?」

 

「そんなあの子が何日か前、突然『金は揃えられるから今から出て行く』なんて言って家を飛び出したんです。まだ就職先すら見つかってないのに...主人はその内帰ってくるから心配するなと言うんですが...」

 

「なるほど...大変みたいっすね。」

 

「...それで、あの子に何か?」

 

「あ、それがですね...実は、昨日このマンションの2軒隣のとこで、殺しの事件が起きちゃってまして....そのちょっと前にマンションに入っていく怪しい人物が目撃されてるんですよね...実は特徴がらおたくの大石君に合致するみたいで。」

 

「ま、まさかあの子が...そんな...!」

 

「どうにか、彼に連絡取れないすかね?」

 

「それが...出ていった以来、携帯の電話にもメールにも出なくて...GPSで場所を調べようにもOFFにしてるみたいなんです...」

 

 

・ ・ ・

 

 

「こちら警視103!犯人と疑わしき人物を特定。紫藤 大石 21歳、無職。数日前に実家から出て以来行方知れずの模様。重要参考人として至急手配願いまーす!」

 

『了解しました!』

 

 

 

大山は誇らしげに無線を置くと、タバコを取り出して火を付ける。

 

「いやぁ、今日の俺はチョーシ良いなァ〜」

 

タバコをふかしながら呑気に車のボンネットに腰掛ける大山。その様子を眺めつつ何気なく周囲を見渡した式だが...

 

「...!」

 

車を停めている反対の方向の家の角で何者かがこちらを伺っているのが目についた。ボサボサの髪に、眼鏡、ゲームのグッズのパーカーの男。紫藤 大石である。

 

「おい、どうやら現れたみたいだぞ、マスター。...」

 

式は大山に声を掛けようとするが、目を離した間に彼は居なくなっていた。

 

「.....」

 

再び佇む紫藤に視線を向けると、既に身体は逃げようと小走りしていた。

 

「...オレだけで行くか。」

 

式は車を降りると、紫藤の元へ一目散に駆け寄った。無論逃げ出す紫藤。

 

 

 

「ただいま〜式ちゃーん、ジュース買ってきたよ〜」

 

大山は近くの自動販売機に飲み物を買いに行っていた。

 

「式ちゃ〜んてば。...ん?」

 

車内はもぬけの殻。

 

「...呑気に散歩に行くような子でもなさそうだしなぁ...」

 

 

 

その間紫藤を追跡し続けた式だが、しばらく走って入った路地で見失ってしまう。

 

「......」

 

その時。

 

 

ガッ...!

 

 

「!」

 

突如、彼女の視界が曇る。

 

「ッ...」

 

倒れ込み気を失う彼女。彼女の立っていた横の廃アパートの2階の階段から紫藤がトンカチを投げつけたのだ。

 

「や、やった...!当たった!」

 

 

紫藤はそのまま気絶した式を抱えてアパートの中へと入っていった。

 

 

 

 

警視庁

 

「...たーだいま〜...」

 

結局大山は式を見つけられずに本部に戻ってきた。

 

 

「先輩、式さんは?」

 

「...居なくなっちった。」

 

 

「「「居なくなった?」」」

 

捜査課の部屋に居る皆が口を揃えておうむ返しに言う。

 

「どういう事なんだ大山...」

 

「いやね課長、犯人の手掛かり掴んでからちょっと、...それもほんのちょっとだけパトカーから目を離してただけなんですよォ...ま、あの子の事だから遊び歩いてるってワケじゃなさそうですけど。」

 

「じゃ、もしかして犯人見つけたんじゃない?」

 

回転椅子に座っていたビリーが身体ごと振り返る。

 

「有り得るかもな。けどよマスター、もう彼女が居なくなって3時間くらい経つだろ?それでも全く連絡よこさねえなんてのはちょいとヤバイんじゃないのか?」

 

デスクに寄りかかって腕を組んでいたクーが口を開く。

 

「ま、まぁあの子なら大丈夫じゃねぇかな?」

 

 

プルルルル...

 

「「「!!」」」」

 

その時、部屋の固定電話が鳴り出す。

 

 

ガチャッ

 

「はいはい、こちら警視庁捜査課!」

 

大山が電話を取り、スピーカーボタンを押す。

 

『あ、その声もしかして昼間マンションの前に居た刑事さん?」

 

「ん、見てたワケ?そ。昼間の刑事。」

 

『彼女、居なくなったでしょ?』

 

「その口ぶりじゃ今はおたくの手の中って感じだな。」

 

『そう。はっきり言う!!彼女は今俺の部屋の壁!!縛り付けてある!』

 

「せめてベッドの上で寝かせてやってくれよォ。レディだぜ?」

 

『あいにくシングルベッドなんでね。とにかく彼女を返して欲しいなら俺の指名手配取り消して?』

 

「まだ現時点じゃ重要参考人なだけなんだけどな...それじゃ自分が犯人だって認めちゃうワケ?オタク。」

 

『もうそんなのどうでも良いんだよ...こっちには人質が居る...もう一回言う!彼女に手出しして欲しくなけりゃ取り消して?...プツッ』

 

その言葉を最後に電話は途切れた。

 

「...課長、一旦解いてみます?手配。」

 

「...そうだな。仕方あるまい。」

 

 

 

・ ・ ・

 

 

「ん、...ん?」

 

暗い部屋の中で、式は目を覚ます。

 

 

「...ここは...」

 

周りを見渡すと、そこは薄汚い廃アパートの一室。

 

 

「目、覚ましたの?」

 

 

「!」

 

気づくと、自分が先程まで追っていたはずの男、紫藤がにやけた顔で立っている。

 

「...お前、犯人だろ?なんで殺したんだ?」

 

 

「はっきり言う。あいつ邪魔。...高校の時、あいつ陰キャだったくせに、クラス会通してからやけに目立つようになりやがった...俺の方が顔も良いのに...」

 

そう言って彼は近くにある鏡に向かってキメ顔する。

 

「だからあいつを殺して金掻っ払ってやったんだ。」

 

「.......」

 

「それはそうとさ、なんで俺が君を縛り付けたのか、分かる?」

 

紫藤はそう言いながら式の身体を舐め回すように眺める。

 

そして。

 

「こうするため!!」

 

式の脚を乱暴に掴むと、本当に舐め回し始めた。

 

 

「...ッ!...」

 

(...気持ち悪いっ!)

 

 

式は脚を舐められる感触に鳥肌を立てながら顔を歪める。

 

「たっぷり遊んでやるからね〜」

 

 

 

 

その頃

 

大山達は式を探すため、紫藤の電話発信源を調べたが、繁華街のど真ん中で携帯電話によってかけられていたため、式が消えた地点の近くを手当たり次第に聞き込んでいた。

 

「ああ、そこの角でそんな娘見たよ。確か、凄い勢いでメガネの男追いかけてたな。」

 

「本当っすか?んで、どっちの方向に?」

 

「確か...あのアパート、だったかな?」

 

「どうも!行くかビリー!」

 

「OK!」

 

 

もう日が暮れ始めた午後6時半。ようやく大山は彼女の監禁された建物を見つけ出した。 その後、柏田が車でクーを連れてきて、廃アパートの手前で作戦会議となった。

 

 

「うっしゃ、皆んな、弾あるかぁ?」

 

大山はパイソンの撃鉄を起こして言う。

 

「もちろん!」

 

ビリーは得意いげにM1877サンダラーのシリンダーを回す。

 

「万全です!」

 

柏田も答えながらディテクティブのシリンダーを戻す。

 

「銃じゃねえが、こっちもOKだぜ!」

 

クーは杖を構える。

 

「!クー、お前こんなとこでまさかウィッカーマンを?」

 

「まさか。ルーン魔術だよ。」

 

「だ、だよな。...行くでっ!」

 

大山はタバコを咥え、アパートの階段を上がっていき、皆も後に続く。

 

 

 

 

マンション内

 

 

「ハァ...ハァ...!」

 

紫藤は遂に式の身体中を触りながら舐め回し始めた。

 

「ッ!ァッ...やっ...!」

 

流石の式も縛られた状態で身体を舐めまわされ、段々と彼女の心に恐怖心が芽生え始める。

 

「ハァ...ハァ...怖気付いた?」

 

「ち、違っ」

 

「はっきり言う!嘘だね。」 バッ...

 

そう言うと彼は式の着物を引き剥がし、胸元を露わにした。

 

「!」

 

「もう抵抗やめたら?楽になれるよぉ........フフッ...フハハハハ」

 

 

その時。

 

 

ゴォン!

 

 

「⁉︎ ぐぅっ...」

 

「!」

 

突如彼の肩を弾丸が掠める。大山がドアの牛乳受けからパイソンを撃ったのだ。

 

「よっしゃ!...ってかやっぱりあいつけしからん事を〜!」

 

大山は牛乳受けから部屋の中を覗きながら再びパイソンの撃鉄を起こす。

 

「...もう許さん。」

 

紫藤は部屋の隅に置いてあった袋からあるものを取り出す。S&W M40 センチニアル。38口径のリボルバー拳銃である。

 

 

ガンッ!

 

「「「!」」」

 

「はっきり言う!!邪魔するなああ!!!」 パンッ!パンッ!

 

ガン! ガンッ!

 

激昂した紫藤はM40をドアに向かって乱射し、ドアに次々と穴が開いて行く。

 

 

パンッ!

 

 

「!!ぐあっ!」

 

「!柏田ァ!」

 

紫藤の撃った弾が柏田の肩に命中する。彼はその勢いで倒れこむ。

 

「大丈夫か?クー、その傷頼むぜ!」

 

「任せとけ!」

 

 

柏田をクーのルーン魔術による治療に任せ、大山とビリーはドアノブに向かって集中発砲する。

 

ゴォン ゴォン ゴォン! ドン ドン ドンッ!

 

バキッ...

 

そして二人してドアを蹴破る。

 

 

「っ!」

 

 

「ようやくお顔が見れたね、犯人さんよ。」

 

 

「...くそっ!」

 

観念して床に崩れ落ちた紫藤に手錠をかけた後、大山は縛られた式の元へ向かう。

 

「...遅いぞ。」

 

「悪りぃな。...けど一人で突っ走るからこうなるんだぞォ?...それにしても随分と涼しそうなカッコだね。」

 

「...! ひゃっ!///...!」

 

式はもろに露出した胸元を見られて取り乱し、己のあげた可愛らしい悲鳴に更に顔を赤く染めた。

 

「...バカ。変態刑事。」

 

「ごめんごめん、けどボクはマスター刑事です。」

 

 

・ ・ ・

 

警視庁

 

「犯人の紫藤はあの後も何人も殺して金奪うつもりだったんだとよ、んでもってある程度金が溜まったら働いてきたって親に嘘ついて自分もやれば出来るってところ見せたかったみたいヨ」

 

「全くえげつねえ野郎だな。」

 

「まあ、何はともあれ式さんが無事で良かったです!」

 

マシュが皆にお茶を出しながら言う。

 

「いやぁ、マジで今回は僕散々な目に遭ったなぁ...中華奢らされたり肩撃たれたり。けどクー君、君の魔術ってやっぱり凄いね!すっかり治っちゃった。ありがとう!」

 

「別に大した事ねえよ。こんなもん貸しにもならねえ!」

 

クーは歯を見せてニカッと笑う。

 

「けど大山さんは彼のマスターな訳でしょ?だったらいつでも傷が治せる訳で。」

 

「ん?...な、何が言いたいワケ?」

 

「これからは僕の弾よけになってくださいよぉ」

 

「⁉︎な、何言い出すかと思えば...」

 

 

「ところで、マスター?」

 

唐突に式が口を開く。

 

「...約束のハーゲンダッツストロベリー。まだあんたから貰ってないけど。」

 

「げっ!」

 

「そうだ!今回式君が拐われてしまったのは大山、お前が現場を離れたのが原因でもある訳だし。よし、お前に式君、マシュ君、ビリー君、クー君、柏田、私の分のアイスクリームを買ってきてもらおうか。」

 

課長がにやけた顔で言う。

 

「なぬぅ⁉︎そりゃないですよ課長!」

 

「悪いねマスター、僕はなんかチョコの奴。」

 

「!ビリーぃ...」

 

「じゃ俺はバニラで。」

 

「クーぅ...」

 

「僕は抹茶で!」

 

「か、柏田ァ...」

 

大山は絶望の表情のままマシュを見る。

 

(ま、マシュならきっと気を利かせて...!)

 

 

「せ、先輩、私は一番安いもので大丈夫です!」

 

 

「あ......そ、そう。」(頼むのね)

 

大山の心は完全に粉砕しましたとさ。




さて、今回から式ちゃんレギュラー入りで〜す!...後半の廃アパートのシーンは空の境界で式ちゃんが白純に舐めまわされるシーン参考にしてみました...w(お目汚し失礼致しました)

※線条痕・・・銃の銃身内部にあるライフリングと呼ばれるら旋状の溝によって弾丸につく痕。これを見る事で弾丸が発射された銃を特定する事ができる。

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