「僕はダブルチーズバーガーのセットね、ドリンクはコーヒーのMサイズで。マスターは?」
「ん?おう。」
大山とビリーは都内のハンバーガーチェーン店、マクドナルドに居た。
「俺ァ、てりやきのセットでコーラMね。あ、レタスは抜きで。」
「抜き? それじゃ流石に脂っこくないかい?マスター」
「あのしなしな〜な生暖かいレタスは苦手なのヨォ」
そんな二人のやり取りをじっと見つめている男が居た。
「ほんじゃ頂き〜。ぁむっ」
「うわぁ〜、濃いそう...。」
「いやいやこれが美味いのヨォ。お前も今度やってみろって」
「ま、まぁ考えとくよ...。ん?」
ビリーが先程からの視線に気づく。
「ねぇマスター? あいつさっきからずっとこっち見てない?特にマスターを。」
「ぅん?俺を?...⁉︎」
大山が振り返り、仰天した。一番後ろの席から一人の男がじっとこちらを見ている。それだけならここまで驚く事はない。問題は男の身なりである。シマシマの袖に黄色いツナギ。そして白い化粧に赤いアフロ。このバーガー店のマスコットキャラクター、「ドナルド」のなりその物なのだ。
「なんだァ?ねぇお兄さん!今日ってドナルドパーティ※の日だっけ?」
大山は通りかかった店員に尋ねる。
「いいえ?あ...、あのお客様ですよね?最近ずっといらしてるんですよ...。店としましてもよく分からなくて...多分、コスプレ好きな方なんじゃないかと...」
「なるほどねェ...ありがと!」
「けとなんでマスターを凝視するんだろ。」
「さァね!新聞かなんかで俺の活躍見てファンになったのかも!」
大山は笑いながらレタス抜きバーガーをがっつく。
その後も男は大山をこっそり凝視し続けた。
「⁉︎ げっ 奥にレタス入ってんじゃないのォ...」
「仕方ないさ...本来入ってるべき物を無理言って抜いてもらってるんだから。」
「まぁな...。」
そう言って大山がティッシュでレタスを抜こうとしたその時だった。
ダンッ!!!
店内に突如巨大な打撃音がこだまする。先程のドナルド男がテーブルに思い切り拳をぶつけていた。
「「⁉︎」」
「....おいアホ。」
「え、あ、お、俺?」
ドナルドに思い切り睨みつけられ、大山は戸惑いながら自分を指差す。
「...ドナルドを怒らせてしまったね?覚悟はいい?」
「え、あ〜...俺なんかした?」
大山がビリーに意見を求めるが、彼も分からないと首を傾げる。
するとドナルドはズボンの裾に手を当てる。そして...
「‼︎」
「フッ!」
シュッ
突如としてナイフを彼に投げつけた。
「のわっ⁉︎」
大山とビリーは即座に避ける。
ゴォン‼︎
バキィッ
大山は即座にホルスターからコルトパイソンを引き抜き、ナイフを撃ち落とす。
「なんて物騒なドナルドパーティだよォ!警察だ‼︎ 皆外に逃げろォォ‼︎」
大山が警察手帳を見せて叫ぶと客達はパニックになり、皆外へ外へと逃げ惑い始める。
「...獲物を抜いちまった以上、見逃すワケにはいかんなァ...。」
大山はドナルドにパイソンを向けて撃鉄を起こし、ビリーも同じくサンダラーを構える。
「...う〜ん。」
ドナルドは不気味な笑みでしばらく黙り込む。
「これか⁉︎」
シュッ
するとまたナイフを投げ始める。
「おっ」 ゴォン‼︎
バキィッ
「これかぁ?」シュッ
「おっと危ない!」ドォン‼︎
バチィッ
ビリーも投げナイフを撃ち落とす。
「これも良いなぁ?」
それでも懲りずにドナルドはナイフを投げようとするも。
「遅いぜェ‼︎」
ゴォン...‼︎
「アラ〜〜⁉︎」
投げる前に大山にナイフを吹き飛ばされ、その衝撃で倒れ込む。
「ふぅ...。中々やるじゃねえの。その才能を別のトコに向けられりゃなァ...。」
そう言いながら大山は彼に手錠をかけようとするが....。
「...フッ‼︎」
ドナルドは突然起き上がり、どこから出したのか大山の口の中にレタスを投げ入れる。
「⁉︎ ォエッ‼︎ べ〜〜〜ッ 何しやがっ...アレ?」
その隙にドナルドは店の裏口から逃走しようとしていた。
「待ちなよっ‼︎」
ドン ドン‼︎
ビリーが発砲するも、間に合わずにドナルドは裏口から逃げ出してしまった。
「ぺっ...ぺっ...全くレタスなんかどっから出したんだヨォ...」
「...それにしても、なんでマスターを狙うんだろうね...。」
「さァね。こっちが聞きてぇよ...ゲホッ」
・ ・ ・
警視庁
「マックで襲われた⁉︎」
「そうなんすよ課長....ツナギに赤いアフロのピエロにィ...。」
「それってドナルドじゃねぇか?マックのマスコットの。」
クーが反応する。
「何でクー知ってんだァ?」
「知ってるだろ?俺たちサーヴァントは召喚された時代の知識は大体頭に入ってんだ。」
「ア、ソウダッタネ」
「とにかく無事で何よりです。でも....何故先輩が狙われたんでしょうか...?」
マシュが大山達にコーヒーを出しながら言う。
「俺にもさっぱり。ピエロに恨みを買われるなんて事ないハズなんだけどなァ...」
その時。
プルルルルッ...
部屋の固定電話が鳴り、課長が受話器を取る。
「!はい、こちら警視庁刑事部捜査課ですが。...はい⁉︎ 人が刺された⁉︎」
「「‼︎」」
「はい、はい...ご通報ありがとうございます...! ....二丁目のマックで殺人だ‼︎ どうやらまたそのドナルドの犯行らしい。柏田、向かってくれ‼︎」
「またドナルドっすか⁉︎ てかなんで俺を向かわせないんすか課長ォ!」
「お前は先程狙われたばかりだろう⁉︎ マックの近辺へ行くのは危険すぎる。柏田、頼むぞ!」
「了解しました!!」
こうして柏田は犯行現場のマックへ行き、大山とビリーは被害者が搬送され、死亡した病院へと向かった。
病院
「警視庁の大山っす。搬送当時の状況は?」
「心臓にかなり近い位置でナイフが深く刺さっており、出血も酷く...なくなってしまいました...」
マクドナルド
「警視庁の柏田です。当時の状況は?」
「ええ、うちのマスコットのコスプレをした男が急にお客様の胸にナイフを投げ....」
・ ・ ・
「被害者の女性は会社勤めの29歳。店内にて注文した商品を受け取り、席に着いた瞬間、例のドナルドに胸にナイフを投げ刺されたようです。因みに、これが被害者の受け取っていたレシートです。関係ないかとは思われるんですが、一応。」
柏田は被害者の身元や目撃者の証言を報告し、被害者の注文のレシートを提出する。
「んー...分からん!何がしたいってんだ。犯人は....。」
課長が唸る。
「俺と、そのお姉ちゃんの共通点.....」
大山はタバコに火をつけ、紫煙を吐き出しながら頬をついて考え込む。
「それにしてもよォ、マック食いに行きたくなるじゃねえか。えぇと?この姉ちゃんは何食おうとしてたんだ〜?」
唐突にクー・フーリンがそう言い、被害者のレシートを手に取る。
「ク、クーさん、あまり今はそう言った発言は控えるべきかと....」
マシュが宥める。すると。
「ええと、チキンクリスプのレタス抜きに...? ビッグマックの野菜総抜き....」
「「‼︎」」
クーがレシートを読み上げた瞬間、大山とビリーが反応する。
「...となぁ。この姉ちゃん、結構な偏食だな。.....? どうした2人とも?」
「いやな、実は俺も今日レタス抜きのハンバーガー食ってよォ....」
「それでその時、そのドナルドがマスターの方見てたんだ。」
「!...じゃあ、先輩とその被害者の方の共通点は...。」
「...ハンバーガーから具材を抜いている、という事だ...‼︎」
課長がゆっくり立ち上がりながら言う。
「じゃあドナルドの狙いは、ハンバーガーの具材を抜く客への怒り、逆恨み...⁉︎ だから大山さんもあの女性も...」
プルルルルッ‼︎
「「「‼︎」」」
その時、部屋の固定電話が鳴り、課長が受話器を取る。
「警視庁捜査課。...!そうか、了解した!...皆、駅前のマック付近でドナルドが目撃された!柏田!警ら課の連中を連れて駅前の交番の巡査たちと合流し、すぐマックに向かってくれ!」
「分かりました‼︎」
「大山、お前は絶対行くな.....よ?」
課長はそう言いかけるが、すでに捜査課の部屋に大山、そしてビリーの姿はなかった。
・・・
ドギャギャッ...
警視庁庁舎から後輪をスライドさせながら飛び出す覆面車のR32 GT-R。
「ったくよォ〜...まずーいまずーいレタス口ん中にぶっ込まれたまま大人しく引き篭もれるかってんだヨォ!このカリはきっちり返すぜルォナルドさんよ‼︎」
運転しながら大山はそう呟き、タバコを咥える。
「僕もあと一歩ってとこで非常口から逃しちゃったからね...傷つけられた西部一のアウトロー、ガンマンとしてのプライドを取り戻すまでは引き下がれる訳ないね。」
ビリーもタバコを咥え、大山に火を貸しながら返す。
「...! 大山さん!?課長から絶対謹慎食らったんじゃ...」
隣に並んだR34スカイラインのセダンを運転する柏田が窓を開けて尋ねる。
「謹慎って何よォ。俺はな〜んにも悪い事してません‼︎」
「...ま、普段の行いが、ね...。」
ビリーがボソッと呟く。
・・・
「・・・・」
駅前のマクドナルドの反対側の歩道の隅に、ドナルドは立っていた。
黄色い繋ぎのズボンにそっと手を当てて忍ばせているものを確認するドナルド。無論、そこにはナイフが入っている。しかし注目すべきは彼が、今までは持っていなかったやたら大きめのリュックをからっている事である。
「・・・・」
無言で横断歩道を渡り、そのままマックの店内へと入るドナルド。
「いらっしゃいませ〜.....っ!?」
彼が入店した瞬間、挨拶をしかけた店員はその姿に固まり、客達の間の空気が不穏になる。
そして。
「...お待たせしました。チーズバーガーのピクルスとオニオン抜きとLサイズコーラのお客様〜!」
「っ‼︎‼︎」
店員が、具材抜きのバーガーを注文した客を呼ぶ。ドナルドはそれを聞き逃さず、般若のような形相でその客を睨みつける。
「⁉︎....な、何か....」
そのチーズバーガーを注文した中年男性の客はドナルドと目があい、思わず後退りしてしまう。
「...ドナルドは嬉しくなると...いや、悲しくなると、ついやっちゃうんだ。」
するとドナルドはツナギのズボンに手を当て、ナイフを取り出そうとするが...
...ファンファンファンファンファン ギャギャッ
「‼︎」
店の前に大山達のパトカーが停まる。瞬間、大山とビリーは車から降り、ドナルドの足元に発砲する。
ドンッ‼︎
ゴゥン‼︎
「っアラああぁーーーッ!?」
弾はドナルドの太ももを擦り、ズボンの裾の下のナイフを弾き飛ばした。
「よーォ、3時間ぶりだなドナルドさんよ。無理やり食わせてくれたレタスのカリ返しに来たぜ。」
そう言って再びパイソンの撃鉄を起こし、ドナルドに向ける大山。
「っ.....ド...ドナルドは悲しくなると...ついやっちゃうんだぁ....」
しかしドナルドは痛みを堪えながら不気味に立ち上がり、そっと背中のリュックに手を遣る...
「っ‼︎ マスター、ヤバい!」
瞬間、ビリーが叫ぶ。
「‼︎」
「...GO!アクティ〜〜ブ!!」.
ズガガガガガガガガッ
途端にドナルドはリュックからサブマシンガン、MAC 11を取り出して店内に乱射し始める。絶え間ない銃声、そして床に落ちる薬莢の音と客達の悲鳴が重なり、店内は地獄絵図と化す。
「ヘッハッハッハッハッ‼︎」
「マックだけにMAC11てか!?シャレたつもりかァ?」
ビリーと共に瞬時にテーブル席の手前の壁に隠れた大山が呟く。
「全く下品な銃だよ...。サブマシンガンなんて。...オートピストルでさえ僕はあんまし好きじゃないのに。」
狂気的なピエロを前にしても余裕な2人はドナルドの弾切れを待ち、壁の後ろでそれぞれ銃を構える。
ズガガガガガガ....カチチッ
「...アラ!?」
そしてドナルドは弾切れになり、慌ててマガジンを交換しようとするが。
「レタスのお礼は357マグだァ...!」ゴォン‼︎
「ファイヤー...‼︎」 ドン ドンッ‼︎
大山のパイソン357とビリーのサンダラーが火を吹く。
「アラッ...痛アァアァア‼︎」
大山の弾はドナルドのMAC11を弾き飛ばし、ビリーの弾はドナルドの右肩に着弾し、ドナルドは倒れ込んだ。
・・・
「ドナルドはハンバーガーを愛してるんだ。ハンバーガーは完璧無欠で、それを壊して食べようとする客はこの世に生きる価値がないと思ったんだ....コレが奴の供述ですヨ、課長。」
警視庁に連行したドナルドを取調べした大山が報告する。
「全く近頃は何を考えとるか分からん奴が多すぎるな...」
お茶を机に置き、ため息を吐く課長。
「でも先輩、レタス入りのテリヤキバーガーも、美味しいものですよ!」
「ぎくっ!?」
マシュの唐突な発言に大山は固まる。
「そうだよマスター。レタスの美味しさを知らないのは人生9割損してるよ」
「言えてるな。」
ビリーとクーもマシュに便乗する。
「しょんなぁ....! あ、式ちゃんおかえり。ドコ言ってたの?」
両儀式が何やら袋を抱えて入ってきた。
「あぁ。...たまにはハーゲンダッツ以外も食いたくてな。...皆の分も買ってきてやった」
「うぉマックシェイクじゃねェの。サンキュー式ちゃ」
「マスターは、コイツを食ってからな。コレを食わないならシェイクはオレが貰う。」
そう言って式が大山に手渡したのはテリヤキバーガー。それもレタス入り。
「...誰か助けてくれヨォォォォォォ‼︎」
4年ぶりの新エピだってのに、クーさん、式ちゃん、相変わらず出番少なくてゴメンネf^_^;