もっとマスター刑事(デカ)   作:くらっか〜

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#6 偽物(前編)

 

「...全く何分待たせんだよゥ...」

 

2月の冷たい風が吹き付ける街角に、大山とビリーの乗る覆面パトカーのGT-Rは停車していた。ビリーが急遽トイレに行きたいと言いだしたのでコンビニ前に車を止めて大山は20数分も待たされていた。

 

「ったくよォ...拳銃は早撃ちのくせに下半身の拳銃は超遅撃ちってかぁ〜?」

 

そんな風に彼が愚痴を垂れながらハンドルにうつ伏せになっていると...

 

 

「お待たせ!」

 

車のガラスを叩く音と共に声がした。

 

「!やっと戻ってきたかよ〜この超遅撃ちが〜」

 

そう言って窓を開けながら答える大山。 するとビリーは何故か何も言わずに黙ったまま助手席へと乗り込む。

 

「そんじゃま、行きますか。」

 

そのまま、大山の覆面車は発進した。

 

 

「下半身のサンダラーは随分ジャムるじゃないの〜」

 

運転しながら大山はそう言ってタバコを咥えるが...

 

ゴリッ!

 

「ん。わりわり、冗談だって.....へ?」

 

頭に冷たい金属の感触が伝わってきて横を見た大山は固まった。助手席に乗っていた人物はビリーではない。おそらくウィッグであろう良く似た髪色の男。服装も似てはいるが、やや肥満気味で、右手にはコルト M1877サンダラーではなく、コルト SAA(シングル アクション アーミー)が握られていた。サンダラーより昔に出たコルト社の.45口径リボルバーである。

 

「...大人しくしてて貰おうか。」

 

と、そのしばらく後。

 

「ふぅー。僕とした事が。腹を下すなんてね...サーヴァントとしてもガンマンとしても情けない...ごめんねマスター...ってあれ?」

 

なんとコンビニからビリーが出てきた。彼はさっきまで止まっていたはずの主人(マスター)の車を探し、キョロキョロと辺りを見渡す。すると。

 

プップー...

 

「ごめんよビリー、ちょいと退屈でなー」

 

突然のクラクションに振り返ると、GT-Rから大山が手を振っていた。

 

「全く突然消えるなんて酷いじゃないか...」

 

そう言いつつも、助手席に乗り込むビリー。

 

車はそのまま発進した。

 

 

「今日は確か後聞き込み1件すれば終わりだったよねマス....ター?」

 

1日のスケジュールを確認しようと隣を見たビリーもまた固まる。運転席に座っているのは大山ではない。良く似たサングラスと髪型ではあるが、少し痩せ細っており、右手にはコルト パイソンの2.5インチではなく、コルト ダイヤモンドバックの2.5インチが握られていた。パイソンの廉価版として販売されていた.38口径リボルバーである。

 

「はいはい、しばらく大人しくしててくれよな〜。」

 

 

 

 ・ ・ ・

 

 

 一方その頃、警視庁

 

 

「課長!!」

 

「!どうした、慌てて。」

 

コーヒーを啜っていた課長の元に柏田が大慌てで走ってきた。

 

「大変です‼︎ 今、大山さんの車から無線が入ったんですが...!」

 

「また大山か...で、今度は何があったんだ?」

 

柏田に手を引かれ、課長は通信司令室へと向かう。

 

「先輩達、どうしたんでしょうか...?」

 

マシュが心配そうにドアを見つめる。

 

「さぁな、またいつもみたいに暴れてるだけじゃねえのか?」

 

クー・フーリンが指から火を出してタバコに付けながら言う。

 

 

通信司令室

 

「何ぃ⁉︎ ジャックされた⁉︎それに偽物⁉︎」

 

「ええ...車を止めていた隙にビリー君が偽物とすり替わっていたみたいで...、こちらです!」

 

「...警視庁捜査一課長の杉本だ。君は何者だ⁉︎」

 

課長は、マイクを掴んで叫ぶ。

 

『課長ォ〜...ビリーがグレちゃいましたよ〜』

 

「!大山、無事か⁉︎」

 

『なんとかね。頭と身体はちゃんと繋がってますよ。けどビリーお前見ないうちに太ったじゃねえの。』

 

「おいおいふざけてる場合か!!ジャック犯がそこにいるんだろう?」

 

『はい、代わってドウゾ。.....もしもし、捜査課長さんですか。』

 

大山の言葉からのしばらくの沈黙の後、犯人が口を開く。

 

「そうだ。...一体、何が目的なんだ?」

 

『ボクたちね...ここに居る大山さんとそれにビリーさん、2人が羨ましかったんですよ。新聞で度々見るお手柄刑事の記事。グラサンとコスプレのコンビ。だからボクたちもやってみたくなって〜』

 

「理由はそれだけか。....!それより、ビリー君はどうした⁉︎」

 

『大山さんの隣ですよ。...それじゃ。』プツッ

 

その言葉を最後に、無線が切れた。

 

「...大山の隣、か...」

 

「恐らく、偽物の方の大山さんの車に拉致されたと見て間違いないと思います...」

 

「そうだな...。」

 

・ ・ ・

 

偽ビリーを乗せた大山の車は、そのまま都内を適当に周回させられていた。

 

「なぁなぁビリー、ちょっと...オシッコ行きたくなっちったみたい。」

 

大山はもがきながら助手席のビリーを見る。

 

「我慢しろ。アジトで相棒と合流するまで後10分もかかるかかからないかだ。」

 

「あそ...。」

 

 

大山は空返事をしながらフロントガラスの向こうをこっそり覗く。今、丁度信号に引っかかった。周りを見ると、車も比較的少なく、あまり歩道にも人は居ない。

 

「な、このタバコに火ぃ、つけるのもアウトな感じ?」

 

彼は偽ビリーに銃を突きつけられてからずっと火のついていないタバコを咥えていた。

 

「...よし、ボクがつけてやる。お前が自分では駄目だ。」

 

そういうと偽ビリーは突きつけていたSAAを下げ、ライターを大山のタバコに差し出す。と、その瞬間。

 

ゴグッ... ゴッ!

 

大山は急にシフトレバーを2速に入れ、クラッチを繋げると、アクセルを思い切り踏み込む。

 

RB26エンジンのけたたましいサウンドを轟かせ、GT-Rは急発進する。

 

「っ...!!」

 

偽ビリーは急激にかかるGでシートに押し付けられるが。

 

グッ...

 

「ぅわっ‼︎」

 

大山は間もなくブレーキペダルを踏み、偽ビリーはダッシュボードに叩きつけられた挙句大山に首チョップされ、気を失った。

 

「ったく、油断だらけじゃねえの西部一のサーヴァントさんは。」

 

大山は軽口を叩きながら彼に手錠をかける。

 

 

「さて、と。こちら警視103!課長、聞こえますか〜?」

 

その後、無線を取り本部に呼びかけた。

 

『!大山、犯人はどうした?』

 

「伸びちゃってますよォだらしない。」

 

『!また無茶をしたのか...まぁ、無事なら良かった。』

 

「あれれぇ?やけに今日は優しいじゃないすか?」

 

『‼︎ち、違う!部下を心配するのは当たり前だだろう!上司をからかうもんじゃない!』

 

「はいはい、とりあえず、コイツ連れて本部に戻りますヨ。」

 

『はい分かった。』

 

 

・ ・ ・

 

「...まさか本気で僕を人質に出来るとでも?」

 

ビリーは偽大山の車の助手席で余裕すぎる態度でふんぞりかえっていた。

 

「もちろん。...確かにまともにやり合っちゃ俺如きが君に勝てないのは認めるさ。けど、問題ない。」

 

開き直りつつも、偽大山もまた余裕の風格を見せていた。その表情を見たビリーは先程までの笑顔を崩し、彼を睨みつける。...が。

 

信号で停車した瞬間、偽大山はグローブボックスから謎のスプレーを取り出す。

 

「‼︎(まさか...!)」

 

プシュッ...‼︎

 

次の瞬間、スプレーがビリーの顔に吹き付けられる。

 

「...!(ぼ、く....とした、事が...)」

 

そのままビリーはシートに倒れ、眠りについてしまった。

 

 

 

 

警視庁

 

「ほら、...どした? 口ついてんだろ?」

 

連行された偽ビリーは取り調べ室で大山と睨めっこしていた。

 

「...ま、しょうがねえか。クー、あれやったげて。」

 

大山は立ち上がってタバコに火をつけると、部屋を出ながら後ろのクーに言う。

 

「了解、マジでやっちまって良いんだな?」

 

「そそ。ま、殺さない程度にな。」

 

大山とクーは偽ビリーに向かってニヤリと笑う。

 

 

「!...な、なんだよお前ら...!ボ、ボクに何しようってんだ⁉︎」

 

 

ガチャ。

 

「先輩、どうでしたか?」

 

取調べ室から出てきた大山にマシュがコーヒーを差し出しながら尋ねる。

 

「ん、今からよ今から。」

 

「え?」

 

 

「アンサズ!!」

 

「ぎゃあああああぁぁ!!!」

 

 

「⁉︎」

 

突然のクーの声の後、偽ビリーの断末魔がドアを超えて部屋中にこだまする。

 

「クーさん⁉︎」

 

マシュは取調べ室に駆け寄りドアを開ける。

 

「あ、あが....もうしません、ご、めんなさい....」

 

見ると、偽ビリーが黒焦げアフロになってへたりこんでいた。

 

「あ、はは...先輩、これはちょっとやりすぎじゃ...」

 

マシュは苦笑いしながら大山を見る。

 

「良いの良いの良いの、これであの2人も良いオトモダチだから。いっぱいお喋りしてくれるんでねーの?」

 

 

「...しかし、問題はビリー君だ。彼は一体どうなったんだ。」

 

課長が唸りながら考える。

 

「まぁ、あいつのコトだから大丈夫とは..」

 

プルルルルルッ...

 

「!」

 

大山の言葉を遮り、突如固定電話が鳴る。

 

「はい、警視庁捜査課、課長の杉本です。....」

 

課長は電話を取り、しばらくするとスピーカーボタンを押す。

 

『久しぶりですね課長!俺です大山です!』

 

「何だとォこの野郎勝手なコト言いやがってェ!」

 

電話機にパイソンを突き付けようとする大山をマシュと柏田が必死に抑える。

 

「知らんな。うちの課にはお前のような人間はいない。」

 

『またまたぁー...まあそうですね、冗談はこれくらいにしておいて。単刀直入に言います。ビリー君は預かっています。』

 

「...そう言えば、目的は彼と大山が羨ましかったから...だったな?」

 

『その通り。僕らだって輝きたいんです。さて要求ですが、僕達が大山さんとビリー君として活動するのを黙認するならビリー君の命は保証しますよ。それじゃ。』 プツッ

 

その言葉を最後に電話は切れる。

 

 

・ ・ ・

 

 

「......ん、....!」

 

ビリーが目を覚ますと、薄暗い空間だった。身体を動かそうとするも、思うように動かせない。暗い中目が冴えてきた頃、椅子に両手首と両脚が縛り付けてある事に気づく。

 

「お目覚めかな?」

 

「!!」

 

突然の男の声と共に窓のブラインドが開けられ、一気に部屋が明るくなる。

 

「...最悪の目覚めだね。」

 

ビリーは軽口を叩きながら男の方を見る。やはり相手は偽大山。

 

 

珍しく後編へ続く...

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