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そこは、灰褐色の石でできた建物だった。巨大な岩を彫り込んで造られたことの証左のように、壁にも天井にも一切の継ぎ目はない。明かりはといえば広々とした空間の両端にずらりと並んだ燭台だけで、中央の方はさぞ暗いことと思われる。
部屋の最奥、一段高いところには、巨大な篝火とタペストリーがあった。タペストリー──いやあれは旗か──に描かれているのは、三本二組の矢を握り潰す拳の意匠──“悪なるものの王者”の神印。
床と一体化している篝火の台のすぐそこに、浮かんでいるものがいる。巨大なローブのために体つきは分からないが、それは大まかには人型をしているようだった。
背から広がる鴉の翼は微動だにしないが、重力に従う様子は見えない。人の頭は沈黙している。けれど首から垂れ下がるように生えたもう一つの、狼の頭は唸り声をあげている。
唸るように声を上げている。
狼が低く唸る。
「貴様等の役割はあの神を殺す事、其れだけだ。期待はしていない。精々無様に踊れ」
人の頭が口を開く。
「我らが主たる“悪なるものの王者”によりお前たちの魂は保護されている。肉の滅びは死ではない」
こちらは明瞭な共通語だった。数学の公式でも述べるような、平たく感情のない声。
「我らが主はお前たちに期待している。ゆえに、いくばくかの加護をお与えになるとのことだ」
堕天使は、神殿が
きっと質問は想定されていない。俺たちが所属するのは秩序にして悪、上位者が下位者を支配する
「武運を祈ろう、未だ弱き世界渡りたち」
「“悪なるものの王者”に栄光あれ。我等の世界を不当に支配する者等に災いあれ」
ブラックアウト。