ネタ置き場   作:adbn

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Gathering

 今までいた空間を幾回りか小さくしたような場所だった。部屋奥のタペストリーの前には複雑な円陣が描かれ、その手前に液体の入った黒っぽい瓶が供えられている。奥に向かって両端の壁には三つずつ、重そうな扉があった。

 

 それを認識するかしないかのうちに、大量の情報が空間投影ディスプレイの形でポップした。

 [【信仰呪文:微回復(マイナーキュア)】が経験により習得可能になりました]

 [【信仰呪文:小回復(ライトキュア)】が経験により習得可能になりました]

 [【信仰呪文:祝福(ブレス)】が経験により習得可能になりました]

 以下略。秘術呪文もあったから察するに【奇跡】と【魔法】の内部スキルだ。

 

 神殿の中には自分の他に、二人のプレイヤー(推定)がいた。金髪の(イケメンというよりチャラい)青年と、若干ふとましい黒髪のおっさ……お兄さん。金髪の青年が辺りを見回したところで目があった。

「あ、どうも。ケイっす」

 ぺこりと頭が下がる。

「てんぷらです」

 お互い離れているものだからだいぶ大きな声だが、近づこうという気にはあまりならない。たぶんこれで終わりだし……。

「イクリプスと言います」

 慣れたと思っていたものの牙のせいで少し喋りにくい。噛んでしまわないか不安というのが正確か。

「まあ、なんかあったらよろしくお願いしますわ」

 それだけ言って、てんぷらさんはリアフレとの約束があるらしく足早に神殿を出て行った。そんなもんだよな。目が合っちゃったから挨拶しただけで、別にギルドってわけじゃないんだからリスポーン拠点同じなだけの他人だし。

 

 こっちも先に登録しておいた連携アプリ(掲示板とか、wikiとか、合流目的の通信とか、そういうフレンド以外との顔を合わせない交流は外部の(有料)アプリが必須になる。有料と言っても月にコンビニスイーツ一つ程度だけど)で連絡を取る……前にスキルの整理をしておかないとだな。どうやら先程「経験により習得可能になった」スキル群はその通りSP(スキルポイント)0で習得可能になっただけで、実際に覚えたわけではないらしい。とはいえ、魔法習得数一位を目指している以上習得しないという選択肢もない。そのため習得自体はすぐに終わった。スキルの詳細を把握するのはまた別だけど。

 ところで外部アプリ連携がデフォルトだとSP0の未習得スキルに混ざってるのはなんなの罠なの?

 

 [連携外部アプリの通信が入っています。接続しますか?]

 接続。

 

 セージ:というわけでキャラ作成終わったと信じて合流用に情報くれ

 カイン:盾持ちウォリアー

 シャルロッテ・エヴァード:灰色ノーフードローブ。メイジ。身長くらいの杖。150くらいで種族的にちょっと蛇っぽい。んで赤紫の髪。

 イクリプス:黒青系ローブ。信者と魔法使いのダブル。ぱっと見手ぶらでたぶんフード被ってる

 イクリプス:黒髪。180ちょいかもっと高いかもで縦に長い感じ

 カイン:種族忘れてたわ。オーガ系混血、推定身長190以上。200あるかは知らん

 セージ:あい

 セージ:俺長剣革鎧のW/Pで人間

 セージ:たぶんカインが一番わかりやすいからそれで。βママなら街の真ん中に噴水の広場あるからそこで合流

 

 外から見る神殿は、内観よりずっと小さかった。大量のプレイヤーを詰め込む為には当然なのかもしれない。全員のログアウトスペースとか確保するの無理だもんな。正直、ここが神殿だと知っていなければ見落としてしまうかもしれないくらい地味な箱だった。人気のある神様は違うのかもしれないが悪なんてそんなものだろうか。

 

 じっ、と路地裏の暗がりから視線を感じた。住民(NPC)だ。全体的に薄汚れた此処は治安のよくない地区なのだろう。見知らぬ男を凝視(みつ)めるのは少年少女ばかりではなかった。

 フードを下ろす。足早に歩き出す。人の声のする方へ、真当な騒ぎが聞こえる大通りへ向かう。現実(リアル)ならこの距離で分かるはずもない声が判別できるのは、高いWISの恩恵だろう。

 

 大通りから更に人の居る方、似たような簡素な服を、あるいはローブや革の鎧を、着た男女でごった返す空間へと向かう。到底収まる筈のない人数が広場の中に詰まって、それでも然程の混乱もない。先の神殿同様の、仮想現実特有の空間のずれをおそらくはNPCだろう人々も当然のものとして受け入れているようだった。

 

 周りを見ればなるほど驚くくらい盾持ちがいない。VRでタンクできる人間は少ないから致し方ない所もあるが。

 

 灰色のローブ、赤紫の髪、低い身長──それに当てはまる少女は、思いのほか近くにいた。

「シャルロッテ?」

 30センチは上から声を降らす(こればっかりは致し方ない)と、聞き覚えのある声が返ってきた。

イクリプス(日食)さんです?あ、ロッテで大丈夫」

「合ってる。呼び方も了解」

 

「人外、少ないな」

 想定していたよりずっと、見て分かるような人外プレイヤーは少なかった。流石に水棲であれば此処にはいないのだろうし、初期種族は人型から外れないらしいのでその所為もあるだろうが、まさかランダム枠が当たりだというのは知れ渡っていないのだろうか。いや知らなくても選ばないか?

「人外やりたかったら特化したVRやるでしょ」

 それもそうか。このゲームは正統派ファンタジーを謳ってるもんな。セージ曰く正統派ファンタジー(悪役もできる)(一行も出てこないモブにもなれる)(たぶん古代遺跡から出てくるタイプの兵器開発者にもなれる)らしいけど。

 

「蛇要素強いのにかわいいの納得いかねえ」

「そりゃCHA18(カリスマは最大値)だし」

「なる。すげーな思考走査」

 

「ルイーゼちゃんで合ってますか?」

「うちの苗字はエヴァードですけど」

 ……ああ、『ふたりのロッテ』か。児童文学なんてよく咄嗟に出てくるな。真面目に苗字付けるあたりロッテも大概中二よな。

「よし合ってる。カインですどうも」

「いえー。セージだ」

「ども。あ、こっちがイクリプス……微妙に長いわね」

「全然好きに呼んでいいよ。区別ができればそれで」

「んじゃリプスでいくわ」

「りょー」

 

 




アバターネーム:イクリプス
総計(トータル)レベル:6
HP27/MP28/FP33
STR12/CON9/DEX13/INT17/WIS17/CHA16
性質(アライメント)秩序にして悪(ローフルイーヴィル)
所属神殿/信仰神格:“悪なるものの王者”/“齎戦者”
種族(レイス)落胤・悪魔の血族(ティーフリング)[第一世代]Lv1+3
職業(ジョブ)魔法使い(メイジ)Lv1/信者(プレイヤー)Lv1
スキル:
【異界の血】──【夜目】【混淆】【属性耐性(微):火】【属性耐性(微):氷】【属性耐性(微):闇】【性質印象補正(負):善・中立】
【魔法】──【秘術呪文:火の矢(ファイアアロー)】【秘術呪文:魔力盾(シールド)】【秘術呪文:魔力追尾弾(マジックミサイル)】【秘術呪文:筋力弱化(エンフィーブル:STR)】【秘術呪文:小守護(ライトプロテクション)
【奇跡】──【信仰呪文:微回復(マイナーキュア)】【信仰呪文:小回復(ライトキュア)】【信仰呪文:祝福(ブレス)】【信仰呪文:小加害(ライトインフリクト)】【信仰呪文:食物浄化(ピュリファイ・フード)
呪文操作(メタマジック・コンパイル)
【言語習得:人界共通語(コモン)】【言語習得:地獄語(インファーナル)
【外部アプリ連携:共通文字通信】【外部アプリ連携:Linkage-wiki】【外部アプリ連携:Linkage公式掲示板】【外部アプリ連携:Linkage-Players’Market】
称号(タグ):[異界渡り]
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