ネタ置き場   作:adbn

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シュラウド兄弟in禪院家。シュラウド兄弟はいつもの人外シュラウド兄の世界線。神様ルート閉幕後、魂の一部だけ遊びにきてる感じ。神様(イデア)眷属(オルト)暇潰し(バカンス)。呪術側は羂索はいないけど呪胎九相図も虎杖悠二もいるタイプのふんわり世界線。


【twst×呪術】冥烙の夢【オルイデ♀】
禪院の末妹


イデア・シュラウド/石読孁黎

 

 石読孁黎(いしよみれいり)には、前世の記憶がある。異世界の話であり、厳密には魂が丸ごと転生したわけでもないが、ひとまず置く。重要なのは三つ。孁黎の前世は男であり、今世は女であること。大事な大事な弟がついさっき生まれて、彼が確かに前世の弟であること。

 それから、孁黎の前世──イデア・シュラウドが人ならぬものであり、(オルト)はその眷属であったこと。ずっと昔はそうでもなかったけれど、地下の玉座に座ってから何千年と経っている今はの孁黎(イデア)にとっては、そうだ。三代目冥王(イデア・シュラウド)にとってたったひとりの、イデアだけの配下。歪みなきもの(オルト・シュラウド)。いつだって、手放しはしない。冥府の王(呪術師の守護者)としての権能を継いだ身に、この世界で通せぬ無茶は多くない──まあそうは言ってもこの体に馴染むまでにもまだ数年はかかりそうだが。

 


 

禪院直毘人

 

 禪院家当主にその報がもたらされるまでは僅かに二時間だったが、それでも禪院直毘人はもっと急げなかったのかと小言を洩らした。石読(分家)の子が二人、術式を発現した。そこまでは良い。片方は相伝である。それも良い。十種影法術でないのなら、さほどの重要性ではない。問題はもう一方だ。

 後天性の天与呪縛。そう称された、称さざるを得なかったほどの呪力と容貌(非術師の目に異様は止まらないらしいが、一見すれば人より呪霊に近い)。それを得た娘がいる、と。娘だ。天与呪縛なら一代のものだろうに、禪院をして呪術師として厚遇せざるを得ない呪力。間違いなく特級術師へ上がる()。本当に、どうしてこれが男でないのか。

 

 姉の孁黎(れいり)は五つ。弟の彌烙(みろく)は三つ。まだ術者として矯正の効く年頃かと思いきや、特に娘の方はあまりに聡明だった。どこかの歳経た特級呪霊が受肉したのだと言われた方が、よほど納得のいくくらいに。焔の髪と金の瞳がどれほど奇異の目で見られるか、抑え込まれている呪力がこの家でどれだけの意味を持つのか、間違いなく知っている者の眼をしていた。

 

「孁黎と、彌烙だったな」

「はい、御当主様」

「そうです。ご当主さま」

 彌烙の禪院にしては明るい髪と瞳は、母方に外国の血が入っているからだろう。この二人の母親は、おそらくもっとも有名な帰化呪術師である小泉八雲の血を引く女だった。──人工受精でもなんでも良い、あと数人産ませるか。

 

「お前たちは本家で引き取る。今日から禪院を名乗れ」

 俺の養子とする、口調も好きにしろ、と言っておく。禪院で女児が不自由なく過ごすにはこのくらいのことが必要だ。損なうなと言ったところで聞く連中ばかりではない。

 

 要望が有れば聞こう、とは言った。今のうちに縛りを結んで、可能なら本家家中から婚約者を見繕っておきたい。そう思ったのが間違いだったのだろうか。禪院は古い家だ。直毘人の上の代までは伯父姪程度の契りは横行していたし、古い記録ならば半血の兄妹婚もないではない。だが。

「……産むなら(彌烙)の子がいい」

 これは流石の直毘人も言葉を失った。初めの一瞬、悪くない選択肢だと思った自身を含めて。続く言葉に、本気だと悟る。

「人工受精も嫌だけど、卵子提供して勝手に生まれる分にはいいよ。オルト、じゃない彌烙の子供は彌烙に任せるけど、できれば人工受精止まりがいい。あとは──まあ、彌烙と引き離さないなら、なんでも」

 五つの子ではあるが、禪院の女の扱いを理解している。その上で自分の体と遺伝子の価値を鑑みて、ほぼ最良の選択肢を提示してきた。ついでのように告げられた内容も本題だろうと思いつつ、直毘人(禪院)にとっても特に問題はない。一才子を作らないと言われるならともかく、この娘が相伝一人で繋げるなら安いものだ。五条の嫡男など、まだ六つ七つだというのに暴虐の限りだというし、彌烙の教育はは術式より情操を重視させておこう。既に危うい末息子と同じ道を辿られるのは困る。

 

「……まあ、いいだろう。その代わり、『禪院の一員として』呪術界に尽くすよう」

「うん」

 こくりと頷く娘と、しかし縛りが結ばれた様子はない。後日書面で契約条項を確認する、と言ってきた。抜け目のないやつだ。

 

「連れていきたい使用人はいるか?」

彌烙(オルト)、いる?」

「ううん。姉さんは?」

 これは当主は駄目かもしれんな。家中に興味がなさすぎる。特に娘。改善できれば良いが、無理ならば武力的な後ろ盾か。まあまだ判断するに十年はある。急ぐことはない。

 


 

禪院彌烙

 

 禪院彌烙(ぜんいんみろく)は生まれる前から姉のことを知っていた、ような気がする。うっすら、ぼんやり、なんとなく。姉が自分を呼ぶ異国の響きのことも、ぐるぐる回る力のことも。

 

「姉さん」

「どうしたの、彌烙(オルト)

 彌烙が呼べば、姉はいつでも応えてくれた。呪力に溢れ、姿も頭もいい姉は、その所為で嫌われることも沢山ある。姉の方も彌烙、否、オルト以外の存在には意地悪なのだと、彌烙だって知っている。けれど、彌烙の味方は今のところたった一人だ。彌烙の大切も、一人だけだ。

「あのね、昨日の訓練で扇さまがね──」

 すぐ上の兄になった直哉さまも、彌烙の訓練の際度々現れる扇さまも、期待していると声を掛けたご当主さまでさえ、彌烙のことは大切でないことには、とっくに気がついていた。

 

 禪院彌烙の生得術式は、禪院相伝術式の一つである「呪蓄統法」だ。呪力を物質に溜め込み、あるいは既に物質に宿った他者の呪力を均質化する術式。呪具の生産に非常に向いた術式だが、一時に元々の呪力量以上は扱えないため、生来の呪力量が物を言う。彌烙は、呪力を多くは持たなかった。呪術師になれないほどではないが、炳に入るのは難しいだろう。血肉でできた器にオルト・シュラウドは馴染まない。きっとその所為だ。

 

 皆、欲しいのは彌烙ではない。姉と、姉の子だ。だからこうして、食事に毒など混ぜる。彌烙(オルト)の魂は生まれる前から孁黎(イデア)のものだというのに。死んだくらいで、イデア・シュラウドが弟を諦めるはずがないのに。引き剥がせるだなんて叶わぬ幻を見る。

 

「姉さん、約束だよ

 これが何度目でも、オルトは同じことを言うだろう。これが魂からの要請でも、彌烙だって同じことができるならそうする。

僕は姉さんとずっと一緒にいるから、僕の声を聞き逃さないで

「勿論。病める時も健やかなる時も、生死の境の向こうまでだって」

 これで一安心、かな。禪院彌烙(オルト・シュラウド)がどんな形になろうと、孁黎(イデア)がその声を聞き逃すことはない。その代わり(それに加えて)離れていくこともない。勝手に消えることさえできない。生きていても、寝たきりになっても、植物状態でも、呪霊になっても、あるいは呪いと化すこともなく魂だけで彷徨うことになっても、絶対に。

 

「……うん。ずっと一緒にいようねオルト。僕が《最後の死者》に戻るまで、その先だって、神も呪いも魔法もみんな無くなるその日まで

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