『勇者』三人じゃダンジョンとかを満足に攻略できません・・・・・・   作:あんこう鍋

1 / 2
友人にハーメルンでss書いてるのを特定されました・・・・・・。それも「この文章の書き方・・・・・・こんな変なキャラを書くのは・・・・・・ペロッ、これはお前だな!」って感じでした。何を言ってるのかわからないと思いますが、僕にもわかりません。友人の本気を垣間見た瞬間でした。
それはともかく、その友人に言われた事がきっかけで書き始めようと思います。

友「なぁ、ド○○エとかの勇者ってさどう思う?」

自「ド○○エ? そうだね、万能魔法戦士タイプの不法侵入者かな」

友「・・・・・・容赦ないな。まぁ、俺は器用貧乏な感じが否めないんだよな」

自「ほぅほぅ。でもさ、ド○○エだと勇者って強くね?」

友「だからさ、三人の微妙な勇者を主人公でなんか書いてくれ」

自「えーと・・・・・・世界観は?キャラクターは?シナリオは?」

友「お前の心のままに書くのだ。きっとそうすればよくわからんモノができるはずだ」

自「君は僕の事をどうおもっているのかなぁ?」

友「脳内に何かしらの異常のある人物。おっとこれは褒め言葉だぞ」

自「全然、褒めてねぇぇぇ!?」

そんな会話もあって、趣味全開で書いていこうと思います。


第一話 『出だしからこれか・・・・・・』

風が吹いている。風の通ってきた道に雨でもあったのだろうか、その独特な香りを届けた風が過ぎさると気持ち湿度が高くなったような錯覚を覚える。

 『風精霊の恩恵都市』『恩恵都市』と呼ばれる地形を利用した資源の半永久供給を可能とした都市の一つである。

 此処、『風精霊』は常時吹く強い風を利用した風車が、動力を生産しているのが特徴の都市だ。『都市』はその大きさと電気が使用できるという特徴がある。無論それなりの金銭が発生する。

 次に、『炎精霊』の場合はその熱から生まれた熱い水。温泉が有名であるだろう、そしてその温泉の近くから出ているガスによって魔物が都市の近くにいないのも大きな特徴であるだろう。

 鉄製品の製造や大きな鉱山も有する四つの『都市』の中で最も人が集まる都市であろう。

 そして『水精霊』の『都市』はその豊富な水資源による水車を利用した街並みが特徴で、水産物を多く他の『都市』や町や村に輩出している。

 それ以外では塩の生産も盛んであり他の島々との交流から『都市』の中で唯一貿易をしている都市でもある。

 『雷精霊の恩恵都市』はヤバイ。何がヤバイかといえばその電気の使用料金の安さであろう。『風』<『水』<『炎』<<<<『雷』の順番に電気の使用料金の安さは他の都市に比べても断然トップの『雷精霊の都市』だがヤバイのはそこだけではない。

 それは、一週間中晴れる日が2日あればいい。その他は大半が雷鳴轟く場所であり『避雷塔』と呼ばれる雷を受け止め、それを電力として変換する効率的かつ安全面を考慮した策がなければ常時都市の中を雷が落ちてくる最高に危険な都市と変貌するのだ。まったく笑えない。

 それでも、年に100件以上の雷被害があるというのだから“趣味か仕事かわからんが”あそこで住んでいる連中の気がしれない。

 

 さて、そんな最初に紹介した『風精霊の都市』は言わば『都市』の中で辺境と呼ばれる所だ。『雷精霊の都市』も大概だがあそこは大量の電気がないと出来ないような作業があるらしく、同じく辺境ではあるがその特殊性から扱いには雲泥の差がある。

 すなわち、同じ『都市』でもココは田舎の扱いであるのだ。そんな田舎な都市ではあるがそもそも『都市』とは何か?

 『都市』の名を冠する条件としてはただ一つ。『人が生活可能な環境かつ電気の使用が可能な環境』である。故に各『都市』では自然の力を利用して常に発電を行っている。ここもその一つである。

 文献や、“失われた文明”の解明によってこの世界の常識はほぼ解明されている。発電施設としての名残もその一つである。

 

 風に靡く黒髪を鬱陶しそうにしている青年。ジン・クロウニンは己の衣類を洗濯している手を止めて顔を上げる。理由は名前を呼ばれた為でそれが現在連んでいるパーティーのメンバーであるならば無視をする理由などないだろう。

 彼が視線を向けた先には活発そうな少女が居た。栗色の癖のある長い髪を揺らしている少女だ。組んだ当初は毎回のように女の子だからと注意していたがこんな風の強い場所では何だかんだでああなってしまうと思ってからは気にもしていない。

 大きめの瞳とピンと立った耳は毎回撫で回したくなる。しかし、何用であろうか? ウィルは少女レトリー・ダッケンに軽く手を振って挨拶をしながらも考える。少なくとも今日はもう一人のメンバー共々休みのはずだ、だからこそこうやって呑気に洗濯などできているのだ。

 レトリーの背には弓を背負い左手には魔術を起動させる為の道具。【魔力接続補助機構《スタッフ》】が装着されている。先程の『雷精霊の都市』で昔に制作された物である。現在の『冒険者』の必需品と呼べる物である。そして、それを装備しているという事は少なくとも平和的な内容でない場合が多い。

 我々は『冒険者』である。冒険者とは要するに『便利屋』だ。人々の雑用をこなしたり時に遺跡に趣いたり。魔物の素材を取りに行ったりする存在だ。

 

「ジン君! 大変だよ! アンちゃんが突然「見える! 私にも見えるぞ!」って叫んで遺跡に一人で行っちゃったよぉ!」

「なぁに、やってんだアイツはぁぁぁぁぁ!!?」

 

 アンちゃん事『アン・pn・コッツ』彼女は『機人族』である。。この世界には主に三種類の『人種』が存在し生活をしている。ひとつはジンの『精霊種』の特徴を受け継いだ『霊人』。そして『魔獣』の特徴を引き継いだ『獣人』。これは。レトリーが属する。

 そして最後が『機人』である。この三種の種族は元は『純人種』からの派生であると言われている。

 『純人種』。その存在はこの星ではもう一部の場所でしか見る事はできない。これも失われた文明からの情報からではあるが、簡単に説明すれば、かつて母なる星を汚染の限りを尽くした『純人種』は他の生存可能な領域を探し長い年月をかけてこの星に降り立った。

 しかし、この星の環境に『純人種』は適応できなかった。適応できないなら、適応できるようにすればいい。その過程で生まれたのは体内の臓器を人口の物に変えるというものであった。その結果人はこの星での生活を可能としたのだが、問題も多くあった。

 『魔獣族』と呼ばれる異形の獣と精霊との戦争がこの星では繰り広げられていた。それに巻き込まれる形となった人類は一番の被害者となった。獣魔族に略奪として攫われた純人種も多く。その血を受け入れざるを得なかった結果生まれたのが獣人であった。幸いにも現地の生物の適正も遺伝したのでこの星に適応した例の一つでもある。

 そして精霊に加護を受けて立ち上がった純人種もまた、長きに渡る戦いに信用と信頼を経て精霊と交わり新たな生命として星の一員となった。

 そういう点では『機族』は唯一純人種に近いと言えたが、彼らはその『獣魔族』とも『精霊』とも交わらなかった結果、種族としての血の濃さが弊害を生じさせ人としての能力に異常をきたすまでの事態に陥り、結果として他の種族の血を受け入れずにいられなくなった。

 とにかく、それだけの人種が蔓延る此処『ミッドガルズ大陸』では今日もジンにとっての平和などなく、いつでも出れるようにだけと纏めておいた装備一式を掴むとレトリーと共におバカな最後のパーティーメンバーを連れ出すために駆け出すのだった。

 

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 夕暮れ時の夜の気配が見える頃。『風精霊の恩恵都市』のレイニーとアイが現在拠点にしている『風の辿り着く場所』と呼ばれる宿は、食堂兼酒場としても経営している、この恩恵都市一番の酒場に来ていた。

 明かりの灯る店内は一日の終わりを締めくくろうと数多くの種族が入り乱れ、時に騒ぎを起こしながらも楽しんでいる。そんな中ジンは青筋を浮かべながら腕を組んで笑顔を浮かべている。

 彼の目の前には小柄な少女が不遜な態度で椅子に座っている、翡翠の肩までの長さ髪で前は目元を隠し、外からは見えないがその瞳にはレンズがはめ込まれている。

 時折、動揺を表すように小さな駆動音を立てレンズの絞りを調整している音に隣に座っているレトリーも心配そうな視線を向けていた。注文していた料理が到着すると同時にジンが向かいに座るアイへと口を開く。

 

「おい、俺とレトリーに迷惑をかけたポンコツ。なにか言い分があるか?」

「ジン。機人にその表現は差別になる。口には気をつけたほうがいい。あと、反省はしていないし、後悔もしてない!」

「普通は“反省するんだよ”!! 後悔した頃には遅いんだよ! つか今回はなんで突っ込んだの!?」

「そこに・・・・・・ダンジョンがあったから」

「・・・・・・なぁ、レトリー。こいつ殴ってもいいよな? 斜め四十五度で殴ってもいいよな?」

「えっ!? だっ、駄目だよ! 仲間に暴力はいけないよー」

「あぁ・・・・・・今の俺にはレトリーが唯一の癒しだぁ・・・・・・」

 

 隣で座るレトリーの頭をなでると触れた瞬間こそ「わふっ」と軽く驚いたものの直ぐに気持ちよさそうにしている。それに比べて・・・・・・

 

「なぁ、アイよ、俺達はパーティーだ。それも低レベルだ。わかるか? 低レベルなんだ。都市周辺の魔物を倒すとはわけが違うんだ。ダンジョンってのはそういう場所なんだよ」

「? どうしたのジン? そんな常識を語るなんて・・・・・・ひょっとして頭を打ったとか?」

「てめぇが、ソロで適正より遥かに危険なダンジョンに突っ込んだからだろうがぁぁぁ!!」

 

 『ダンジョン』。“通称『遺跡』”と呼ばれる場所が【ミッドガルズ大陸】各地に存在する。『冒険者』の憧れの場所であり、強力な魔物が闊歩し凶悪なトラップも満載の危険な場所だ。この都市から一番近い『風穴の遺跡』もまたその例に漏れない場所である。

 現在の確認されている階層は24階層。すくなくともそれより上はある。しかし、『レベル』の低くメンバーの少ない、ジン達が無謀に挑戦しても待っているのは骸一直線の未来しか見えない。

 そもそも、このパーティーは突破力がない。無駄にバランスのとれた布陣ではあるがそれゆえに他のパーティーのようにいざと言う時の無理が効かない部分はある。

 

 ジンは『勇者』である。勇者といえば主人公的な役割を連想するがこの世界に置いてそれは正しくも間違っている。ここで軽い説明をする前に先程の「魔獣族と精霊の戦争の勝者」について説明をしなければならない。

 細かい部分は端折らせて貰うが。その戦争――『聖戦』と現在呼ばれている戦争の勝者は精霊と純人種側の勝利で終わった。

 そして、精霊は獣魔族には首輪の意味を、純人種には恩恵の意味を込めて『聖印』を施した。それは戦争の勝者の行動としてはとても小さな物である、全ての生きとし生きるものに同等の恩恵を渡すという行為は、何処かで歪んだ種族間のひずみを回復させてゆく理由にもなった。勿論気の遠くなるような年月をかけてであるが。

 その聖印はその者の適正を表す証明でもある。身体の何処かに発現し。犯罪などを起こした罪人などはその聖印の上から焼印を押される。この世界に置いて聖印とは身分を証明する為にも使用されるのだ。

 『勇者』というのはバランスのとれたジョブである。個体差による部分も多いが『戦士系』より力が強いわけでもない。『魔術師系』ほど魔力も魔法も強くならない。『僧侶系』ほど回復補助の適性もない。ぶっちゃけ器用貧乏でしかない。そんな、ジョブには各種で特徴がある。勇者の特徴。それは『カリスマ』である。

 『カリスマ』は二種類のタイプがある。一つは調和である。パーティーと言えば言わば集団である。平均は4~7人ぐらいと言われているが、実際それだけの人数と行動を共にすれば何かしらの軋轢などが生まれる。

 そういう時にパーティーに一人『勇者』がいればかなりの緩和ができるのだ。いわばムードメーカーである。

 もう一つは鼓舞である。これは強いリーダーシップで仲間を惹きつける魅力で突き進むタイプである。どちらも一長一短はあるもののパーティーで行動する部分に置いて共通で必要な能力である。

 『勇者』の聖印があれば98%ぐらいの確率で発現する『カリスマ』。え? 100%じゃないのかって? 例外は何処でもあるもんだ。その例外、ジンは『カリスマ』をもっていない『勇者』である。。

 『勇者』の唯一の利点を持っていないバランスだけが取り柄の冒険者などほぼ価値がない。しかし、『指揮』と『誤縁』と謎のアビリティが発現している。それより『カリスマ』くれよ。と思ってしまったジンであったが。結果的に溢れてしまったジンはソロでの活動を余儀なくされていたのだった。

 

 次にレトリー。彼女も『勇者』である。レトリーはジンとは違って『調和のカリスマ』を所持しているが問題はそこではない。レトリーの使用する武器は粘りのある木材の前の部分を軽金属で纏わせた弓と短刀であるが、実はレトリーは距離感を図るのがものすごく下手であったのだ。

 ジンが初めてレトリーと出会ったのは都市周辺の獣を狩りに行った時の事だ。

 『灰色ウサギ』という獣がいる。食用として安価で人気もあり、ある程度の力量があれば子供でも捕まえられる程度の温厚な獣だ。人は薬草を採取する為に出てきたのだが、目の前に出てくるのであれば小遣い稼ぎ程度の気持ちで狩る。

 それだけの相手でしかない。そうやって狩った灰色ウサギの血抜きを行っているとふと、視線を感じたジンが振り返るとそこには驚愕の表情を貼り付けている『獣人』の少女が居た。

 

「どうしたんだ、あんた?」

「・・・・・・すごいです! どうやったらそんなに簡単に狩れるんですかー!」

「はぁ? いや灰色ウサギの事か? こんなのやろうと思えば子供でも狩れるだろ」

「ワタシ、子供以下ぁ!?」

 

 ガーンと音が付きそうなぐらいに驚いている少女。不思議に思いながらも少女が呆然としている間に薬草を探して近くの森に向かい、数刻してから予定の量を採取して都市に戻ろうとすると先程であった少女がまだ居た。

 

(まだいるな・・・・・・おっ灰色ウサギを見つけたな・・・・・・うっ!?)

 

 内面で驚愕するジンが見た光景は異常であった。なにしろ灰色ウサギはそこまで警戒心のない生き物であり、ペットや家畜として飼う家も存在する。そんな狩りやすい獲物を相手に剣を振り続ける少女。

 しかし、その光景は「少女が狩りをしている事を前提として見ているジンだから」こそで、何も知らなければウサギに見守られながら剣を素振りしている少女の構図でしかなかった。

 余りにも喜劇的な光景に唖然としながら眺めていると少女は力をなくしたように手に持っていた剣を落とし震える・・・・・・そして――

 

「なんで、当たらないのー! もうやだよー」

 

 わふーん! っと泣き出す少女にドン引きしながらもジンは放っておくこともできずに声をかけ、その結果パーティーを組む切っ掛けとなったのだ。そして壊滅的なまでに距離感を掴めないレトリーの癖に気がついたジンのアドバイスに沿って距離のあまり関係のない弓と密着するぐらい近づいて真価を発揮する短刀という装備に落ち着いたのであった。

 そして、彼女にはもう一つのアビリティがある。それは『鋭敏嗅覚』である。彼女は極度に鼻がいい。聞けば常時はある程度は抑えているが開放すれば4キロ先の血の匂いすら嗅ぎ分けれるらしい、しかし極度に情報量も多くなるので長時間使えない。とはいえ平時でも鼻の良さが災いしてかそれとも趣味嗜好なのか。彼女は『匂いフェチ』な特殊な性癖がある。

 パーティーを組んだ当初の話ではあるが、その日は暑い日であった。都市周辺では危険な魔物と呼ばれる『ブラッド・ウルフ』という魔物が居る。3~7頭の群れを作り集団で襲ってくる魔物であり。定期的に冒険者達が駆除している存在である。そこまで戦闘力じたいは高くなく殆ど被害もなく討伐は完了した。問題はそのあとであった。

 

「ねぇージン君。お願いがあるんだけどいいー?」

 

 都市への帰り道で唐突にレトリーが声をかけてくる、生返事を返しながらも聞いてみるとジンの匂いが気になるので嗅いでみたいというものだった。若干の不快感はあったが彼女が『獣人』なのを思い出したジンは仕方ねぇとボヤきながら許可を出す。

 わぁーい。っと言いたげに近づきジンの胸元に鼻を近づけるレトリー・・・・・・しかし。

 

「くんくん・・・・・・ふむふ・・・・・・おえぇ・・・・・・いやでも癖になりそうな・・・・・・おえぇぇぇ・・・・・・はぁ、はぁ」

「お前、人に喧嘩うってんだったら買うぞ? 喧嘩を売ってるんじゃないなら泣くぞ? ガン泣きすんぞ!」

 

 お願いを聞いてあげたら匂いを嗅がれて、しかも嘔吐かれたでござる。この日から体臭のケアを念入りにしはじめたジンなのであった。

 まぁ、それはともかく。若干のネタ的な彼女はそれ以外では素行に問題もなく。現在は好んでジンとパーティーを組んでくれる、ジンからすればありがたい存在である。ではアイはといえば。彼女の場合は実力だけであればこのパーティでトップであるといえる。

 

 そして、ジンに説教を受けている少女。『アイ・pn・コッツ』の出会いも酷かった。ジンとレトリーが組んで3ヶ月ぐらい経った頃の話。彼女と出会ったのは『風欠の遺跡』の3階層の入口。そこに彼女は慢心創痍で倒れていた。

 

「ジン君! 誰か倒れてるよ!」

「ん? おお本当だな。死んでるなら装備剥ぎ取るか」

 

 自然にクズのような発言をするジンに信じられない物を見るような目を向けるレトリー。

 

「ゲスすぎるよ! 一応『勇者』でしょ!?」

「何言ってるんだレトリー、勇者ってあれだろ? 他人の家に不法侵入してタンスとか漁るのが勇者の基本行動だろ?」

「初めて聞いたよぉー・・・・・・うーん、そうなのかなぁ・・・・・・」

「っというわけで、見たところ生きてるようだが。助けはいるか?」

 

 悩むレトリーを無視して倒れている少女の近くまで歩いていき声をかけるジンの言葉にかすかに反応する少女。

 

「ふむ・・・・・・レトリー。すまんがこの子を仰向けにひっくり返してくれ。俺は治療の準備するから」

 

 ジンの指示にわかったーと返事を返してから、倒れている少女をひっくり返し、悲鳴を上げる。

 

「な!? どうしたレトリーって、怖っ!? 血まみれで目だけ見開いているの怖っ!?」

 

 姿を現した顔は鮮血に濡れており、それだけでも耐性のないものにはキツイ光景だというのに、その少女はその瞳を見開き、視線をジン達に向けている。はっきり言って軽いホラーである。

 

「こ、怖いよぉ! ジン君、ワタシ無理ぃ!」

 

 即座にジンの背後に隠れるレトリーに一瞬、殺意を覚えるジンであったが少女の瞳を見て彼女が機人である事に気がつく。機人にはその体に必ず機械のような部品が存在する、そしてその体は自意識を得た瞬間から成体であり、そこからは普通の人のように老いてゆきその活動を終える。

 機械の部分も交換する事で半永久的な活動も可能と言われているが実際は肉体の限界がその可能性を潰す。まったくもって“どうしてその様な中途半端な変化で止めたのか”良くわからない存在である。 

 取り敢えず、真水で血を洗い流し、止血剤を含ませた布で傷口を覆ってゆく。その間も視線だけはジンを捉えており、なにか悪いことをしているような気持ちになってゆくジンが治療を終えた頃。彼女のレンズが微弱な回転と前後を行い、そして・・・・・・。

 

「こんな、生まれてまもない幼児の身体に触れるとは・・・・・・さては貴方。ロリコンだな?」

 

 まさかの暴言であった。この時になって、ようやく目の前の少女の意識がなかった事を知った二人であった。そして、レトリーに振り返るジンの目を見た瞬間レトリーはその表情を引きつらせる。

 

「なぁ、レトリー。こいつをモンスターの目の前に置いといたら、安全に狩りが出来ると思うんだがどう思う?」

「えっ? ジン君・・・・・・本気、じゃないよね?」

 

 光の無くなった目で冗談では済まされない事を口にするジンに本気でドン引きするレトリーに「冗談だよ。そこの君も、さっきのは冗談だよな?」と少女に尋ねると。少女は冷や汗を浮かべ肯定するのだった。

 急遽帰還となったジン達は『風の辿り着く場所』へ少女・・・・・・『アイ・pn・コッツ』を連れてゆき、レトリーに身を清めさせてから事情を聞いてみると、アイがこの世に出てきてから今だ三日も経っていないらしい。これは珍しい事である。そもそも機人は“特定の遺跡から生産される”存在である。

 『遺跡』とは失われた文明の名残の意味もある、すべてがそうではないしむしろ、そういう機能を有している遺跡なそれこそ希であり。その機能の中に『機人』を製造できる場所があるらしい。ジン自身も人伝に聞いた話であり現物を見たわけではない、そもそも『霊人』や『獣人』に比べれば『機人』の数は少ない。

 『機人』も生殖行動はできる。その結果生まれる命は他の種族になるし。『機人』同士では星の環境に耐えられないらしく、殆どが新生児の頃に死んでしまうか。遺跡の一部の区間でしか生命活動のできず。外で生きるためには内部を人口臓器に変えるしかない。

 つまり、『機人』には『生産された個体』と『生殖活動で生まれた個体』がいる。アイの場合は前者であり、あの『風欠の遺跡』で生まれた事になる。もしかしたらあそこも『失われた文明』に関連しているのかもしれない。まぁ、憶測な上に根拠もない。ついでに言えば、それを確かめられるような実力もない。無い無い尽くしの現状に溜息をついてしまうジンであった。

 

「所で、生まれてから訳も分からずあそこで彷徨っていたら、魔物に襲撃されてなんとか逃げ出した先で俺たちに出会った・・・・・・これでいいか?」

「おおむねその通り。さっきは暴言を吐いて悪かった。後悔している」

「アイちゃんは素直に謝れる、いい子だねー」

 

 そういってアイの頭を撫でるレトリーに満更でもなさそうなアイの様子に苦笑するジン。彼の頭の中でこの少女の処遇について考えていた。装備もなしに三日間ダンジョンで生存できていた事を考慮してみれば彼女は使えるかもしれない。どの道彼女には行くあてもないだろう。ジンはアイにパーティーの勧誘をしてみる。

 

「なぁ、アイ。もしよかったら俺とレトリーのパーティーに来ないか? 少なくとも知り合いの居ない状況よりはいいと思うがどうだろう? レトリーはどうだ?」

「え? 生理的にジンは無理。ちょっとないわ」

「・・・・・・おいお前、流石に怒るぞ?」

「アイちゃんが入ってくれるならワタシうれしいなー」

「レトリーのお願い。断れない。よろしく。」

「おいぃ!? 流石に俺でも泣くぞ!?」

 

 あんまりなアイの手の平を返す対応に悲痛な声を上げるジン。こうして三人のパーティーが結成されたが、アイの『聖印』を確認した瞬間ジンは人知れず泣いた。

 アイも『勇者』だった。そんなに珍しいわけでもないがこうも『勇者』ばかりが集まるパーティーなど聞いたこともない。

 機人特有の部分が濃いアイの瞳は『視覚強化』と『危険物発見』のアビリティがある。なるほど、とジンも納得する。あそこまで生き残る理由を垣間見た瞬間であり。なかなかに使い勝手の良さそうなアビリティであった。

 しかし、そんな彼女の『カリスマ』も問題があった『鼓舞のカリスマ』であった。これはまずい。何がまずいかといえば、調和と鼓舞には一長一短があるとは説明したが。実は『鼓舞』はある程度の数と質が高いパーティーに人気がある。その理由は単純明快である。押し切れるほどの突破力にさらに上乗せされるからだ。

 ではジン達のような数の少なくて突破力の少ないパーティーではどうなのか。正直、『調和』も『鼓舞』も他のジョブの仲間がいてこそ真価を発揮する。はっきり言って『勇者』だけのパーティーには無用の長物どころか邪魔にしかならない。

 事実、勝手に自分を鼓舞して突っ込んでいったアイ。それが、冒頭の「単騎でも突っ込んでしまう猪みたいな勇者」の出来上がりなのであった。

 

 悲惨な結果にこそならなかったが、レトリーが気づいて急いで知らせてくれた為に二層の途中で保護することに成功したからよかったものだが。一歩間違っていれば仲間を失う可能性もあった訳だ。

 だが、それだけダンジョンに行きたかったのだろうとも思えたのも事実だ。ジンは息抜きも必要と割り切ることで溜飲を下げるとアイとレトリーに明日の予定を告げる。

 

「まぁ・・・・・・とにかく、無事であるならよかった。明日も天候がいいそうだ。またダンジョンに潜ろうと思うから体調を整えておこうぜ」

「ジン。それは、フリかい?」

 

 懲りないアイの言葉にジンの表情が凍りつく。そして、深く、深く息を吐いた瞬間――今度こそジンは吠えた。

 

「アホかぁぁ! んな訳ないだろうがぁぁぁ!!」

 

 彼の怒声は夜の都市に消えてゆくのだった・・・・・・。




キャラクター紹介:その1
 ジン・クロウニン 年齢:19歳 性別:男 
種族:霊人 Lv6
ジョブ:勇者

アビリティ:『指揮』『誤縁』

使用可能術式:
:初級攻性術式
:下級攻性術式
:初級治療術式
:初級支援術式

『風精霊の恩恵都市』で生まれた霊人の青年。冒険者としては13歳から活動しているが、『勇者』の最大の特徴と言える『カリスマ』が発現しなかった為にパーティーを組んでもらえずにソロでの活動が主になっていた。
戦闘面では他の二人のサポートと指揮。可変式の片刃の槍の長さを器用に変えて臨機応変に戦う戦い方を得意とする。
18歳の時にレトリーとアイに出会い、仲間同士の仲が安定し始めた頃から物語は始まる。

 レトリー・ダッケン 年齢:16歳 性別:女 
種族:獣人 Lv4
ジョブ:勇者

アビリティ:『敏感嗅覚』『カリスマ(調和)』

使用可能術式:
:初級攻性術式
:下級攻性術式
:中級攻性術式
:初級回復術式

『炎精霊の恩恵都市』出身の獣人の少女。そのまんまの犬系少女であり、絶望的なまでに距離感を図るのが下手。なんだかんだで世話を焼くジンに懐いており行動を共にする、戦闘面では後衛であり、パーティーの中で唯一中級術式を扱えるが燃費は悪く、現在では使えても2~3回が限度。それでもジンのパーティの切り札的存在でもある。


 アイ・pn・コッツ 年齢:1歳 性別:女 
種族:機人 Lv8
ジョブ:勇者

アビリティ:『視覚強化』『危険物発見』『カリスマ(鼓舞)』

使用可能術式:
:初級支援術式
:初級治療術式
:下級治療術式

『風精霊の恩恵都市』の近くにある『風欠の異性』から生まれた少女。ジンとレトリーに助けられた縁でジンのパーティーに加入する。名前の「pn」とは『機人』には必ずついている形式であるが。それについては詳しくは分かっていない。戦闘面では主に前衛と罠の発見などを担当する。身体能力が高くもっとも戦闘回数が多いためかパーティーの中でもっともLvが高く、地味にジンの心をえぐっている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。