かつて、日本を破滅から救った三好将和。その将和もとうとう老いには勝てず、妻夕夏と共に永眠した。
「夕夏、あの世でもよろしく頼むよ」
「任されたわ貴方」
「暫くしたら私もそちらに行きますよ」
息を引き取った二人に美鈴は涙を流しながらそう呟くのであった。
「人生、何が起きるかは死んでからでも分からんのだな……」
将和はそう思う。時は戦国時代、つまり将和は今度は戦国時代に来ていたのだ。
(記憶は五歳時からでしかも場所は阿波国ときたもんだ……)
将和がいる屋敷の場所は阿波国三好郡芝生ーー阿波国で三好郡と言えば日本史、特に戦国時代が好きな者がいれば直ぐにピンと分かるだろう。
(拾われたのがまさか三好元長とはな……)
将和の記憶であれば五歳時の時は孤児だったらしく、偶然にも通り掛かった三好元長が拾ったという事である。
名前も三好将和であり元長の養子ではあるが庶子の長男という形であった。
(問題は……)
そう思っていた将和だがドタバタと二人の男女が将和の元に走ってきた。
「兄貴!! 今日こそ兄貴から一本取るからな!!」
「申し訳ありません兄様、又四郎が……」
「分かった分かった、相手になるぞ又四郎。大丈夫だ孫次郎」
将和は二人にそう言う。孫次郎と又四郎、この二人は後に三好長慶と十河一存になる人物であるが一つ問題があった。
孫次郎と呼ばれたのは明らかに女性だからだったのだ。しかも将和はその女性をかつて明治の世へタイムスリップする前から知っていた。
(戦極姫3に出てくる三好長慶まんまじゃねーか)
姿こそ幼いがかつて平成の世にて将和が熱中していたゲームのキャラであった。
(又四郎も面影がゲームの一存に似ている……て事は此処は過去の日本ではなく戦極姫3の日本だな……)
そう分析する将和である。将和自身も何故自身がまた転生したのかは考えてはいるがまだ答えは出ていない。
(全く……神様は俺に休息を与えてはくれんのかね……)
将和はそう思いながら一存の槍捌きをかわすのであった。その後、大物崩れ等順調だった元長が運命が変わった。
木沢長政の飯盛山城を攻囲していたが10万の本願寺門徒の参戦で状況は一変、本願寺門徒に蹴散らされ逃げ込んだ顕本寺を取り囲まれ元長は足利義維を逃がすのに精一杯だった。主君から見限られた上に、勝ち戦を大敗北に貶められた元長は自害して果てた。その自害の様とは、自身の腹をかっ捌いただけで終わらず、腹から取り出した臓物を天井に投げつけるという壮絶さであったという。
「何!? 義父が……」
「はっ、無念の一言であります……」
阿波にて将和は元長の悲報を聞いた。
(このままでは三好家は瓦解する……)
原作までの三好家道筋は分からない。だが容易でないのは確かである。将和は直ぐに元長の弟である三好康長の元を訪れて三好家当主就任を要請した。
「叔父上、義父殿亡き今は叔父上が当主となり三好家を支えるべきかと……」
「いや……儂にはそんな役目は無理だろう。これまで通り三好家の一門衆として支える」
「し、しかしでは当主には誰が……」
「御主がやれば良かろう」
康長の言葉に将和は目を見開いた。
「お待ちください叔父上。私は確かに三好家の者ではありますが出自については御存知の筈……」
「確かに出自は知っておる。だが御主の才は広く知られておる。今の三好家を支えるのは御主しかいない」
前世の知識もあった事で色々と政に参加しているおかげもあり阿波国にて将和の名は広く知られていた。しかし、それでも将和は当主就任は固辞した。
「叔父上、私には当主の座は務まりますまい。だが孫次郎ならばどうですか?」
「孫次郎か……だが孫次郎はまだ幼い」
「なので孫次郎が元服するまで私が当主代行として三好家を支えまする」
「成る程」
将和の言葉に康長は納得の表情をした。これにより将和は三好家当主代行に就任した。当初は家臣達も将和の事を毛嫌いをしていたが将和は細川家と一向一揆の和睦を促したり、細川家との和睦を拒否した一向衆を蹴散らして摂津越水城を奪回したりしてそのような声は直ぐに消えたのである。
また、その後も細川と睨み合いをしつつも将軍義晴の命令で京の治安維持をしたりして三好家当主代行の仕事を果たしたのである。
そして孫次郎は元服して名を利長とした。後の三好長慶となる二歩前の事である。
「これでようやく肩の荷が降りる」
元服の孫次郎を見つつホッと安堵の息を吐く将和だったがそれもつかの間であり何と利長、当主は将和がなるべきと言い出したのである。
「待て待て待て、どうしてそうなる」
「兄様は上手く遣り捌いていた。貴族の顔見知りも少ないしそれなら兄様が継いだ方が……」
「いやいや、お前が当主であるべきなんだよ。大丈夫だ、俺が支えるから」
将和は康長らと共に説得して何とか利長が当主になるのである。利長の心配を他所に三好家の勢力範囲は更に増していく。又四郎は十河氏の養子となり十河一存と名を変えて三好家一門衆の一員となり四国の三好家拡大を支えるのである。
この頃、三好家は史実と異なり阿波・讃岐・更には伊予を抑えていた。そして利長と将和は細川晴元の要請で四国から畿内に上陸して晴元の配下となり晴元を支援していく。
「兄様、細川は元は父の仇です。それを……」
「焦るな利長、焦りは禁物だ。今は雌伏の時だ」
利長に将和はそう言うのであった。その後、畠山や足利義晴らとの抗争を経て三好政長父子追討を契機として遂に晴元に反旗を翻したのであった。
「利長は晴元なんぞ気にするな。今は政長父子に専念してを滅ぼせ」
「無論だ」
「一存と長逸は利長の側で補佐だ」
「承知したぜ兄貴」
「承知致しました」
弟一存と三好長逸が頷く。更に将和は新たに任官した松永久秀と岩成友通に視線を向ける。
「久秀と友通は俺と共に」
「畏まりましたわ」
「分かりました~」
久秀は口元を扇子で隠し友通はにこやかに答えた。そして三好家は動く、利長らは政長を討ち政勝を降伏せしめて将和らは京の入口である山崎に布陣して細川を迎え撃つ構えをしたが晴元は足利義晴・義輝父子らを連れて近江国坂本へ逃げたのであった。
(政勝は降伏……少々早いけどまぁ三好三人衆になる器だから此方で鍛え直したら大丈夫だろ……問題は六角だが……)
そう思いつつ将和は久秀に視線を向ける。
「久秀、お前は信貴山城に入り大和の筒井を抑えろ。筒井を捕らえるなりしたら大和はくれてやる」
「フフフ、感謝しますわ将和様」
久秀はニヤリと笑い将和に頭を下げるのであった。そして将和は部屋に一人籠り思案する。
(これで三好家はとりあえずの磐石は得た……が油断すれば直ぐに史実と同じ運命になる。それだけは避けたい)
将和はそう思いつつ記憶のある日本地図を描く。
(四国……後は土佐だけを抑える。畿内……本願寺と上手く連携しつつ堺と大和、京を抑える。中国地方はまだ大内義隆がいるし手を出せんしまぁ播磨に備前くらいか。九州は島津と同盟をして大友と龍造寺を倒さないとなぁ……)
西は脳内で整理する。
(んで以て尾張のノブノブだ。尾張を統一したらしいから桶狭間までのフラグは近いな……それまでに紀伊を通して伊勢に介入すれば……問題は虎と龍が当分死にそうに無いという事だな……案外北条と同盟を結ぶのも手だな)
そう思う将和である。斯くして将和の思いは他所に物語は始まるのである。
「播磨を取り中国地方の足掛かりとする」
「将和はん、あんたは何をする気や?」
「何だと思う顕如?」
再び畿内で騒乱が幕を開ける。
「三好将和を討て!!」
「そいつは素敵だ義輝。面白くなってきたぞ!!」
「長慶に助けてもらった命……此処で使うわ!!」
新しい時代の幕開けとも言える桶狭間の戦い。
「首は捨て置け!! 狙うは今川義元の首ただ一つ!! うつけの信長に続けェ!!」
『ウオォォォォォォォォォ!!』
「今川義元、尾張桶狭間にて討死しました!!」
「……来たか」
そして将和と信長は関ヶ原で激突をする。
「三好将和の天下とは何ぞや!?」
「『富国強兵』『日ノ本の統一』也!!」
「共に来い信長。お前が目指す天下は俺が知っている」
西の動乱。
「大友が耳川で大敗北!!」
「三好家とは縁が切らないようにしないとねぇ。そうだ、義弘ちゃんを三好将和のお嫁さんにしましょうか」
「( 'ω')ファッ!?」
ついでに将和の取り合いも勃発。
「将和の嫁は私だろう」
「黙れ信長、武に長けた妾がなるべきじゃのぅ。なぁ将和よ?」
「わ、私はどうせ胸も皆に比べたら小さいし……」
「正室は私だろ兄様?」
「」逃げた
どうなるかは全て作者次第である。
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